伊藤伸二の吃音(どもり)相談室

「どもり」の語り部・伊藤伸二(日本吃音臨床研究会代表)が、吃音(どもり)について語ります。

2019年09月

禅僧・櫛谷宗則さんが、吃音を通して「生きる」ことを語る

 吃音以前に、生きている


 2019年9月27日(金)の大阪吃音教室は、新潟県五泉市の禅僧・櫛谷宗則さんをお迎えします。今年で4回目になります。今年の演題は、「吃音以前に、生きている」です。
過去3回の演題は、2016年は「自己の存在価値を自身のなかに見出す」、2017年は「吃音を新しい命の明るさで生きる」、2018年は「苦しんで生きていこう」でした。吃音を理解し、僕たちを応援していただいていることが伝わってくる、深い演題だと思っています。
 櫛谷さんとの出会いは、15年前くらいになります。朝日新聞のコラム「小さな新聞」で、僕たちのニュースレター「スタタリング・ナウ」が紹介された記事を読んだ櫛谷さんから、ご自分が編集し出版しておられる「共に育つ」への原稿依頼がありました。それまで縁のなかった仏教関係の冊子への執筆依頼は、当時、仏教に惹かれ始めていた僕にとってはありがたいことでした。毎回、出版されるたびに冊子「共に育つ」を送って下さり、僕たちのニュースレターもずっと読んで下さっています。読んで、ときどき、はっとするような感想を書いて僕を励まし続けて下さっています。
 いつだったか、新潟で講演があったとき、足を延ばして五泉市のお寺にお伺いしたかったのですが、都合がつかず、お会いすることができませんでした。2014年、大阪市天王寺区のプレマ・サット・サンガで2日間座禅会をされると知って、1日参加しました。一番前に座っていた私に、休憩時間、「伊藤伸二さんですね」と声をかけて下さいました。「参加申し込み」は、事務局宛てにしていたものの、声をかけていただいたときはびっくりしました。そのとき、櫛谷さんは、僕の顔をまっすぐに見て「あなたの目は何かと闘っている目だ」とおっしゃいました。鋭い目で、見抜かれたような気がしました。思えば、1965年からずっと、「吃音を治す・改善する」文化と闘ってきたのですから、するどい目つきになっていたのでしょう。そのとき、何か文章を書いていただけませんかとお願いして、書いて下さいました。それは、「スタタリング・ナウ」2015年4月号に掲載しています。その文章に添えて下さったお手紙にこう書かれていました。

 「これもご縁と思い、精一杯書かせていただきました。治す派との闘いは、対立しないで伊藤さんご自身の、吃音を光とする生き方を深めていかれること、その生活そのものが一番の道(武器)ではないかとふと思いました」

 その後、大阪の座禅会に来られる前日の金曜日に、大阪吃音教室に来ていただいています。これまで吃音にまったく縁のなかった櫛谷さんが、吃音をしっかりと認め、吃音と共に生きていこうよ、それがどもる人の生き方じゃないかと、背中を押して下さっているように思います。

 ぜひ、大阪吃音教室にご参加下さい。大阪吃音教室は、毎週金曜日、大阪市天王寺区の應典院で、夕方6時45分から9時まで開いています。9月27日は、櫛谷宗則さんに来ていただきます。毎週、講座の内容が決まっています。詳しくは、「大阪吃音教室」で検索して、会場やスケジュールなど、確認して下さい。ぜひ、ホームページをご覧下さい。

櫛谷宗則(くしや しゅうそく)
 昭和25年、新潟県五泉市の生まれ。「宿なし興道(こうどう)」といわれた豪快な禅僧、澤木興道老師の高弟、内山興正(こうしょう)老師について19歳で出家得度(しゅっけとくど)。安泰(あんたい)寺に10年間安居(あんご)する。老師の隠居地に近い宇治田原町の空家・耕雲庵(こううんあん)に入り、縁ある人と坐りながら老師のもとに通う。老師遷化(せんげ)の後、故郷へ帰り地元などで坐禅会を主宰。大阪では谷町のプレマ・サット・サンガで、毎年9月末に坐禅法話会を続けている。

 <編著書>
『禅に聞け−澤木興道老師の言葉』『澤木興道 生きる力としてのZen』『内山興正老師 いのちの問答』『澤木興道老師のことば』『禅からのアドバイス−内山興正老師の言葉』(以上、大(だい)法(ほう)輪(りん)閣(かく))
『コトリと息がきれたら嬉しいな−榎本栄一いのち澄む』(探求社) 『共に育つ』(耕雲庵)など。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2019/9/22

吃音親子サマーキャンプ 卒業式 もう一人の卒業生のこと

自分のことばをこんなに温かく待ってくれる人がいる

 もう一人の高校3年生は、こんな話をしました。

 
私はこれまで自分と向き合うことが怖くて、逃げてばかりいました。言いたいことも言わないで、人との関わりを避けて生きていました。どもることが怖かったし、吃音は劣っているものと考えていたので、それに立ち向かう勇気がありませんでした。だんだん自分のことも嫌になり、学校では、いつ当てられるかひやひやして過ごしていたし、ずっとそこに神経を張っていて、一日が終わる頃には気疲れしていました。
 私は、吃音親子サマーキャンプに参加して、明るくなりました。それは、自分のことばをこんなにあったかく待ってくれる人がいると気づいたからです。そして、キャンプだけでなく、日常生活でも自分のことばに耳を傾けてくれる人がいることに気づきました。今まで、人はどもる私の話なんか聞いても面白くないし、聞きたくないだろうと、勝手に思い込んでいました。ところが、キャンプで、人は聞いてくれるのだと思ってからは、人間関係も良くなり、前に比べてどもれるようになりました。どもらないように避けて通ってきたのが、どもれるようになって楽になったのです。


 世間一般の吃音のとらえ方は、「どもらないように」言語訓練をします。キャンプに参加する子どもだけでなく、大阪吃音教室に参加する成人も、「どもれるようになって楽になった」と言います。ここに専門家と、どもる子どもやどもる人との大きな食い違いがあります。「どもることを否定し、少しでも改善すること」に重きを置く人にとっては、この感覚は理解できないかもしれません。
 彼女は、サマーキャンプに参加して、「考え方は1回でだいぶ変わったけれど、2回、3回と回数を重ねるにつれ、ありのままの自分でいいという考え方が染みついていきました。よく考えてみると、いつの間にか吃音に助けられて自分がいるんだとなあと思います。悩んできたことも意味があるもので、無駄なことなんて何もなかったと思いました」と言います。高校生になると、キャンプでの話し合いも積極的になり、いろんな人としゃべりたいと思って、この3日間は過ごし、こんなにしゃべりたいと思った3日間はないと、キャンプを振り返りました。

卒業式 鈴木 彼女は、小学生のとき、サマーキャンプの卒業式を見ながら、泣いていたことがありました。卒業生に共感している姿を見て、僕は、彼女が卒業するときまではキャンプを続けたいなと思いました。いつの間にか、その年を迎えたことになります。その涙の意味は、彼女の作文でわかりました。自分にもこんなふうに卒業する時がくるのかなあとの期待の涙だったようです。

 もうひとつ印象に残っているのは、彼女が書いた「英国王のスピーチ」を見ての感想です。僕は、たくさんの言語聴覚士養成の専門学校で、吃音の講義をしてきました。講義の前に、「英国王のスピーチ」を見て感想を書くという課題をよく出します。送られてくるレポートは、言語訓練によって吃音が改善され、開戦のスピーチができた、言語聴覚士の役割を果たせてよかったというものばかりですが、彼女は、作文で、こんなふうに書いていました。

 
ところで、「英国王のスピーチ」という映画を見ました。どもりを治そうといろいろがんばっても結果は同じで、治りませんでした。でも、ジョージ六世は、どもっていても自分は自分と思い、どもってもいいやという気持ちがあったから、最後、国民に向かって開戦のスピーチができたのだと思いました。一番最後は、感動して泣きました。


 言語聴覚士を目指すたくさんの学生のレポートを読んできましたが、「英国王のスピーチ」をこのようにとらえた人はいません。
 僕は、講義の中で、「英国王のスピーチ」について、開戦のスピーチが成功したのは、ジョージ6世がどもってもいいと、どもる覚悟をしたからだと、話しています。詳しくは、日本吃音臨床研究会のホームページで、そのことを紹介していますのでお読みください。

 彼女の6年のときの作文も興味深いものでした。

 
私はどもりのことを、恥ずかしいことだと思って、ずっと悩んでいました。でも、話し合いのときに、「神様がいて、その神様は百分の一の人にどもりをプレゼントするんだって。ぼくたちはそのプレゼントに当選した人だと思ったらいいよ」と言ってくれた子がいました。そのことばは、私の心にすごく響きました。
 げきは、初めはわき役になろうと思っていたれど、目立つ役でもいいかなと思って立候補しました。初めからすごくどもって、なかなか劇が進みませんでしたが、私なりに一生懸命練習しました。当日、すごくきんちょう感をもって、いどみました。私は、せりふを言うのにせいいっぱいで、役に成りきれてはいなかったけれど、ものすごく達成感を味わいました。最後の卒業式では、卒業する高校3年生の姿を見ながら思わず泣いてしまいました。私もいつか、こんな卒業式の日がくるのかなと思うと、今からとてもわくわくします。

 
 僕は普段から涙もろいほうです。卒業式の文章を読んでいるとき、その子どものキャンプでの様子が思い出されて、「よく成長したなあ」と思い、思わず泣いてしまうことがあります。今年は、久しぶりに泣いてしまいました。劇でひどくどもりながらがんばっていた彼女の姿が思い出されました。何度か話し合いのグループで一緒だったこともあり、これまでのことが思い出されて、卒業証書が読めなくなりました。代わってもらおうとしましたが「ダメ」と言われて、なんとか最後まで読みました。
 
 小学校低学年から参加し、高校を卒業する年までつきあうと、子どもの成長の素晴らしさに毎年出会うことができます。その喜びで、これまで続けてきたのかも知れません。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2019/9/13

吃音親子サマーキャンプ 卒業式

自分のことばで自分を語り、卒業していく子どもたち

 最終日、劇の上演の後は、恒例の卒業式です。
 毎年、卒業生がいます。今年も、2人の高校3年生が参加しました。卒業式をするようになったのは、12年くらい前でしょうか。小学校4年生のときから高校3年生まで欠かさず参加していた子が高校3年生になり、最後のサマーキャンプだと思うと、何か記念に残るものを渡したくなって、でも、事前に何も用意してこなかったので、劇のときに使うかもしれないと思って持ってきていた、青い色画用紙に、メッセージを書きました。最終日の朝、即興の卒業証書が完成し、渡したのです。
卒業式会場 その年以降は、恒例になりましたが、高校3年生だから卒業証書を渡すのではありません。条件があります。3年以上キャンプに参加していることが条件です。3年以上参加しないと、「吃音を否定せずに、吃音を言い訳の材料にしないで、自分の人生を大切に生きる」の価値感がからだに浸みないと考えているからです。高校2年、3年と連続して参加し、とても濃厚な経験をしても3年に満たない高校3年生には卒業証書は渡せませんでした。何人もの子どもが悔しがっていました。岩手県から連続して高校の2年間参加した子どもが、ちょうど3年生の時、キャンプとその高校の一番大切な行事が重なりました。残念ながらその子は参加できないと考えていたので、卒業証書は渡せないなと思いました。ところが、「これは、今の僕の人生にとって、一番大事なことなのだ」と学校側に事情を話して、学校を休んで親子でキャンプに参加し、卒業していきました。これほどまでにキャンプの卒業式を大切に考えていてくれたのかと、胸がいっぱいになりました。
 卒業証書のメッセージは、もちろん統一されたものではなく、ひとりひとりのことを思い出し、文案を練ります。その子だけのための、完全にオリジナルの卒業証書です。今年の卒業生は、7年間参加している2人の女の子でした。僕が卒業証書を読み上げ、渡します。そして、「がんばろうな」の思いを込めて握手をします。そして、本人のあいさつがあります。いつも、僕は、この場面をすごいなと思います。どの子も、メモを見ず、今、浮かんでくる自分の思いを大切に、自分のことばを紡ぎ出して、みんなに語りかけます。キャンプに来る前のこと、初めてキャンプに来たときのこと、キャンプで得たもの、これからの生活についての思いなど、それは見事なあいさつです。
卒業式 角田 これまでの先輩の卒業式を見ているからでしょうか。どの子も、そのスタイルです。子どもたちは、自分のことばで語ることを、このキャンプで学んでくれたのだと思います。最後に、それを参加者の前で実践してみせている、そんな気がします。もちろん、どもりながら、でも、まぶしいくらいに輝いている卒業生です。子どものあいさつの後、子どもを連れてずっと参加している親も話します。

卒業生のあいさつを少し紹介します。

これまで生きてきた中で、どもりでよかったなと思える18年ではなかったかもしれないけれど、どもりでも悪くはなかったなと思える18年でした。このサマーキャンプに来て、学校の友だちとかクラスメイトも仲間だけど、それとはまた違った仲間に出会えました。もうすぐ大学受験もあるし、バイトもしたいと思っているし、これから、子どもではなく、大人として扱われることも多くなっていくと思います。不安ばっかりだけど、みんなのことを忘れずに、思い出しながら、勇気をもって、歩んでいきたいと思います。今まで支えてくれて、辛いときに話を聞いてくれて、本当にうれしかったです。来年は、スタッフとして来ようと思うので、来年もご縁があれば、お願いします。


 お母さんのあいさつも、少し紹介します。

 
7年前、小学生の時に、一緒に吃音親子サマーキャンプに来ました。そのときは、娘が、小学校で男の子にからかわれたとか、本が読めないとかで泣いている姿を見て、私が強くないといけないのに、私も一緒に、ふたりで泣いているようなお母さんでした。サマーキャンプに来た1年目は、会場の最寄り駅の河瀬の駅に着いたときから私は泣いていました。そのときに知り合った高校生のお母さんたちが、みんなすごく明るくて、自分の子どものどもりのことを泣かずに語っていました。私も将来、そんなお母さんになれたらいいなと思って、7年間、過ごしてきました。去年、あるお母さんから、「初めて来たときはずっと泣いていたね。あの涙、一体どこに行ったの?」と言われました。うれしくて、あの頃、憧れたお母さんに少し近づけたかなと思いました。まだまだ、不安がないわけではありませんが、この子は、親の私が言うのも何なんですけど、いつもにこにこしていて、明るくて、周りに人が集まってくるような子です。それを活かして、これからも、進んでいってくれたらいいなと思っています。この子の成長を見守ってくれたスタッフの皆さん、私の大切な友であるお母さんたち、私たち親子にとても幸せな時間を下さって、本当に感謝しています。


 参加していた高校3年生は、2人でしたが、昨年まで連続で参加していて、今年どうしても参加できなかった高校3年生がいます。サマーキャンプの前に、そのお母さんから手紙をもらいましたので、卒業式の時に読み上げました。

 
息子が小学5年の終わり頃、帰り道でひどく追いかけられ、上履きでなぐられ、泣きながら帰宅してきたのでびっくりしました。そのとき、たまたま母が図書館で借りてきた本『どもる君へ、いま伝えたいこと』(解放出版社)が手元にあって、じっと伊藤さんの写真を見つめてから、この人に電話してみようと息子と話をして、吃音ホットラインに電話をかけてみました。「サマーキャンプに来たらどうかな?」と言われて、ことばの教室もやめ、夏はサマーキャンプに参加してみることになりました。あのとき、手元にあの本がなかったらと考えると、想像がつきませんが、とても悪い方向へすすんだと思います。今があるのは、伊藤さんはじめ、スタッフの皆さんのおかげです。本当に感謝しかありません。
 サマーキャンプでは、話し合いの時間、部屋で他愛ないことを話す時間、最後に見る劇、親の表現も、先輩の体験談も、最後に聞く伊藤さんの話も、全てが大好きでした。人と気持ちが通い合えた経験、自分の気持ちを受け止めてもらった経験、他の人の苦労を知る経験、とても大切だと感じました。
 何よりも、「吃音者宣言」はやさしい。「あなたはあなたのままでいい」。さわやかな自己表現はまだうまくないけれど、ぼちぼちやっていこうと思います。今年のキャンプが皆さんにとって、実のあるものになりますように。
 これからも、いろいろとあると思うけれど、皆さんとの日々を胸に、のりこえていけると思います。息子のこと、これからも見守って下さい。私も、息子のことを大切にして、一緒に笑って過ごしていこうと思います。また、会える日を楽しみにしています。


 もう1人の卒業生のことは、明日に。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2019/9/11

吃音親子サマーキャンプ最終日 劇の上演

吃音親子サマーキャンプ 親の表現「のはらうた」と、子どもの劇「コニマーラのロバ」

 3日目、いよいよ最終日です。子どもたちは、朝から元気、広場で遊んでいます。ラジオ体操をして、いよいよ最終日のプログラムがスタートします。
 午前10時からの上演に向け、子どもたちは、リハーサルをします。そして、この短い時間に、親たちも、話し合いのグループごとに集まって、表現活動の練習です。工藤直子の「のはらうた」からとった詩を4編、グループごとに振り付けを考え、動きをつけ、工夫してひとつの作品に仕上げます。リピーターの親たちが大活躍。初参加の人も、恥ずかしそうにしていたのに、いつの間にか、楽しそうに動いています。この光景も僕は大好きです。2日間にわたり、話し合いをしてきた仲間だからの信頼の上に立った表現活動だろうと思います。今年も、すばらしいパフォーマンスを披露してくれました。
 会場全体開場が9時55分、開演は10時。たった5分の間に、100名を超える参加者がそろいます。子どもたちの劇の前座を務める親たちは、少し緊張の面持ちで、スタンバイしています。僕のこんなことばから、開演しました。

 「ここ荒神山での吃音親子サマーキャンプは、今年で30回目。
 夏の終わり、いつも変わらぬ姿で、私たちを迎えてくれた荒神山。丘の上の大きな木は、荒神山のシンボル。そして、その周りにはたくさんの小さな虫たちが、元気に動き回っています。ひとりひとりは小さくても、大勢集まることで大きな力になることを、荒神山の虫たちから教えてもらいました。仲間の力は大きい。仲間がいるから乗り越えられる。まず、だんご虫から、みんなを大歓迎するダンスの披露です」。

親の表現親の表現 大地の願い最初のグループが、だんごむしになって、だんごダンスを披露しました。       
2番目のグループは、せみすすむです。
3番目のぐるーぷは、かぶとむしてつおです。
4番目は、かまきりりゅうじです。
そして、今年は、最後にもうひとつ、親全員で子どもたちを囲むように円くなりました。
この声で、子どもたちを包み込みました。温かく、力強い親たちの声が響きました。

  だいちのねがい               だいちさくのすけ

 う〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜んと てを ひろげ
 し〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っかり みんなを だきしめる
 それが われら だいちの やくめ
 それが われら だいちの ねがい

     う〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜んと てを ひろげ
     し〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っかり みんなを だきしめる
     それが われら 親の やくめ
     それが われら 親の ねがい

子どもの劇1子どもの劇2子どもの劇3子どもの劇4そして、いよいよ子どもたちの劇です。
今年の劇は、「コニマーラのロバ」(原作 エリナー・ファージョン)。それぞれに練習してきたことをせいいっぱい表現しました。せりふが多くても少なくても、舞台でセリフを言っているときは、その子が主役です。どもってなかなか声が出なくても、待ちます。自然に待つので、負担に思うことなく、その場にいることができます。みんな、いきいきと劇を作り上げていました。前座も含めて、すばらしい荒神山劇場でした。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2019/9/10

第30回吃音親子サマーキャンプ 2日目


第30回吃音親子サマーキャンプ2日目 深い学びの一日

 午前中は、作文からスタートです。この作文の時間は、サマーキャンプの大切なプログラムのひとつです。前の日の夜、年代ごとに分かれて1回目の話し合いをしました。それは、仲間と共に、また、仲間の発言に触発されて、自分のどもりをみつめる時間でした。
作文 そして、夜を共に過ごした後の最初のプログラムが作文になっています。夕食や風呂の時間、眠る前の時間は、1回目の話し合いで話したことを振り返り、熟成する時間になっているのだろうと思います。そして、朝、自分や自分のどもりに、ひとりで向き合う時間です。サマーキャンプの経験が浅いスタッフ向けの「サマーキャンプ基礎講座」に参加しているスタッフを除いて参加者全員が集合します。説明はごく簡潔にして、後は静かに時間が過ぎていきます。親も、教師も、言語聴覚士も、自分の子どもや自分がかかわる子どもるにまつわるエピソードや、吃音についての自分の思いを書きます。学生時代に原稿用紙に向かってから久しぶりだと言いながら、思い出して書いていました。「今回は、ちゃんと書けた。書きたいと思うことがはっきりしていたから、しっかり書いた」と言いながら提出してきた高校生がいました。話すことも同じで、話したいと思う経験をすること、書きたいと思う経験をすることが、日常生活の中にあるかどうかが大事なポイントになるようです。
 作文の後は、2回目の話し合い。作文の時間を過ごしてきたことの効果はあるようで、さらに深い話し合いができたようです。
 午後は、親と子どもは別プログラムです。子どもは、劇の練習と荒神山へのウォークラリー。親は、学習室で、親の学習会です。
学習会全体学習会 伸二学習会グループに分かれて 今年の僕のテーマは、健康生成論です。説明した後、首尾一貫感覚の3つの感覚、把握可能感・処理可能感・有意味感を育てるために、親として子どもに何ができるだろうか、グループに分かれて、話し合いました。

 子どもたちが荒神山から帰ってくる頃、親の学習会も終盤に近づきます。僕たちが、親子での参加を原則にしているのは、学童期から思春期へと子どもたちが変化していくのに合わせて、親も勉強する必要を感じているからです。吃音を治すこと、改善することはできないけれど、吃音と共に豊かに生きることはできると考えています。しかし、吃音治療が難しいのと同じくらい、どもりながら豊かに生きていくことも簡単なことではありません。社会の偏見や大きなお世話の配慮が子どもの生きる力を奪っていきます。それらに抗い、自分らしく生きていく子どもの伴走者として、親も成長していってほしいと願っているからです。親も真剣に、吃音とどもる子どもの子育てを学びます。

カレー 子どもたちのウォークラリーにも、いろいろあったようでした。突然の雨に降られたようですが、大きな混乱はなく、無事に帰ってきました。そして、夕食は、野外クラフト棟で、恒例のカツカレーでした。この荒神山を会場にしてから、夕食は、決まって野外でとってきました。2日目の夕方、みんなが大きな家族になって、賑やかに食事をしているこの光景は、何度見ても、温かく、やさしいものを感じます。僕は、この光景が大好きです。

 夜は、子どもたちは、劇の練習、親は、フリータイムです。事前レッスンに参加したスタッフを中心に、練習が続けられます。劇を仕上げることが目的ではなく、自分の声やことばに向き合い、相手に届く声を感じ、劇という虚構の世界を楽しむ、そんな時間を子どもたちは過ごしていました。

 学習室での親たちの集まりは、親のセルフヘルプグループのようです。不安や緊張でスタートした初参加の人の顔が緩んできます。何度も参加している親が、初めて参加する人を押しつけがましくなく、包んでいます。リピーターの子どもがいつのまにか初参加の子どもを巻き込んでいくように、サマーキャンプの文化が静かに流れていっているようです。

スタッフ会議 長い一日が終わって、夜のスタッフ会議。それぞれが関わった場での印象的なエピソードが語られます。子どもたちの成長、変化を、みんなで共有できるいい時間でした。
 その後に番外編のように、吃音を生きる子どもに同行する教師・言語聴覚士の会のメンバーが集まりました。夏の初めの津での全国難聴・言語障害教育研究協議会全国大会、親・臨床家のための吃音講習会、そしてこの吃音親子サマーキャンプと、短い夏の間に何日共に過ごしたことか、濃密なつきあいの仲間に感謝です。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2019/9/7

竹内敏晴さんから学んだ、からだとことばのレッスン

9月8日(日)の吃音を考える会
〜竹内敏晴さんから学んだからだとことばのレッスン〜

 吃音を考える会は、年に3回、日曜日に開催します。
 金曜日の大阪吃音教室には、仕事の都合でどうしても参加できない、遠くに住んでいるので平日は参加できない、普段の吃音教室は2時間くらいしかないので、もう少しじっくりと参加したい、そんな声にお応えする形で、日曜日に開催しています。
 9月8日(日)のテーマは、伊藤伸二が担当する、「竹内敏晴さんから学んだ、からだとことばのレッスン」です。

 大阪吃音教室の金曜日の講座には、常に、ことばのレッスンを入れています。
 9月8日の吃音を考える会は、そのロングバージョンとして企画しました。いつもの大阪吃音教室より長い時間を使って、からだを動かしたり、ことばについて考えたり、歌を歌ったり、詩を読んだり、芝居のせりふを言ったりします。声を出す楽しさ、喜びを、みんなで味わう時間になってくれることと思います。また、どもりそうなとき、どもって声が出なくなったときの対応についてもみんなで考えます。ことばや声、どもることについて、日頃、疑問に思っていることを出し、日常生活でちょっと気をつけたいことなども提案できたらと思っています。
 吃音そのものは改善できなくても、相手に向かってからだを開き、伝えたいことばを届けることはできます。どもりを治すためではなく、日本語を話す人としての日本語のレッスンは、ことばで苦労してきた私たちだからこそ、取り組みたいことです。
 どもりたくないからといって、下を向き、早口でぼそぼそと話していては、相手には伝わりません。日本語は、「ん」以外の音にはすべて母音がついています。母音をしっかり押し、一音一拍を意識して、声を出してみましょう。

 竹内敏晴さんが亡くなられたのは、2009年9月7日でした。ちょうど10年になります。一時期、病気で耳が聞こえず、そのため歪んだ発音しかできなかった経験をされた竹内さんは、最後まで、どもる私たちのことを仲間と思って下さり、大阪吃音教室の外部講師として何度も来て下さいました。また、吃音親子サマーキャンプでは、子どもたちのために芝居のシナリオを書いて、スタッフに演出指導もして下さいました。
 竹内さんから学んだ「からだとことばのレッスン」を、ぜひ一緒に体験してみましょう。
 どなたでも参加できます。お待ちしています。

 
日時  2019年9月8日(日)13:00〜17:00
 会場  應典院B研修室(いつもの大阪吃音教室の会場)
 服装  動きやすい服装でお越し下さい。スカートは避けて下さい。
 持ち物 からだを動かし、声を出すので、飲み物を各自ご用意下さい。
 参加費 大阪スタタリングプロジェクト会員は300円、
未会員は500円



日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2019/9/4

吃音親子サマーキャンプ 保護者の感想

吃音親子サマーキャンプに参加して〜感想を紹介します〜

 吃音親子サマーキャンプの報告の続きをと思っていましたが、仲間の坂本さんが、参加しての感想を送って下さいました。坂本さんは、自分の娘さんが小学5年生のとき、音読ができず泣いたことをきっかけに、まず、僕の本を片っ端から読み、それが縁で大阪スタタリングプロジェクトにつながりました。その娘さんは、もう大学生。その後、親である坂本さんは、成人のどもる人の例会である大阪吃音教室に、年間通じてほぼ欠かさず参加しています。もちろん、吃音親子サマーキャンプの常連スタッフです。今年は、娘さんも、キャンプ卒業生の若いスタッフとして参加しました。
 哲学者でもあり、思慮深く、鋭い論考をするかと思えば、冗談も多くお茶目なところもある、坂本さん。笑いやユーモアのセンスは、僕によく似ています。大切な仲間のひとりです。
 そんな坂本さんの感想を本人の了解を得て、紹介します。

       
吃音親子サマーキャンプの余韻に浸っています

 吃音親子サマーキャンプのことが、キャンプの最終日当日、朝日新聞大阪版社会面に掲載されたと、朝のラジオ体操の時に紹介され、歓声をあげたのですが、9月2日には、東京版の生活面にも載ったとのこと、嬉しいことです。さて、今年は30年を記念してのセッションや当日の記事のおかげでいつにもましてサマーキャンプの印象が濃く残っています。
 2010年の秋、娘が吃音に悩みだした頃、当時手に入るだけの伊藤伸二さんの本を読み、ノートをとりながら、そして今でも時々ですが『吃音ワークブック』(解放出版社)の、サマーキャンプの参加者140人が参加した時の集合写真の表紙を眺めることがあります。その後、集合写真は撮ったことはないので、奇跡の一枚だと思うのですが、均一化されていない人たちがばらばらでありながらも連帯感をもって写っている。濃い顔の人たちが実に嬉しそうに写っている。子どもたちの笑顔もとびっきりです。伊藤さんがここにいて、この人は親か、この人はスタッフだろうとか思いながらよく眺めました。
 スタッフとして参加してのこの9年は、この写真に載っている人たちと出会う旅であったのだと感じています。この場をともにする一員であることが私にとって何よりの喜びです。
 特別何かをしているわけではないのですが、話し合いに耳を傾ける、沈黙の時間をともに過ごす、感じたことをことばにして返す。演技に驚き、笑い、ことばが出る時間をともにする。何より大切なのは、アホなことを言い続ける!?
 同じ参加者としてあの場で応答性を生きることが「あなたはあなたのままでいい あなたはひとりではない あなたには力がある」というメッセージを証していることになっているのだと思います。
 お互いのプレゼンス(存在)がプレゼント(贈り物)になっている場がサマキャンなのでしょう。
                              坂本英樹


日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2019/9/4

第3回ちば吃音キャンプが近づいてきました

第3回 ちば吃音キャンプ

 昨日は、新潟での吃音講演会・相談会の案内をしましたが、その前に、第3回ちば吃音キャンプがあります。
 僕の仲間のことばの教室の担当者、千葉市立院内小学校の渡邉美穂さんが企画してくれる千葉での1泊2日の吃音キャンプです。渡邉さんは、滋賀県での吃音親子サマーキャンプに20回以上参加し続けていますが、千葉でも同じようなキャンプをしたいとずっと思っていました。その思いを温めてきて、千葉でキャンプを始めたのですが、早くも第3回となりました。
 渡邉さんから送ってもらった案内を紹介します。締め切りは過ぎているようですが、参加希望の方は、一度連絡をとってみて下さい。

  
小学生・中学生・高校生のための 第3回ちば・吃音親子キャンプのご案内

 私たちは、どもる子どもたちと、ことばの教室の個別学習やグループ学習で、吃音について語り合ってきました。回数を重ねる度に、子どもの語りは、どんどん変わってきました。自分の吃音を、自分のことばで表現できるようになってきたのです。
 しかし、どもる子ども同士の出会いや語り合いの場は、それほど多くありません。
 そこで、私たちは、学校以外でも、ゆっくりと語り合える場をつくりたいと考え、「ちば・吃音親子キャンプ」を企画しました。今回は、第3回目です。自然豊かな環境の中で、ゆっくりのんびり吃音について考えませんか。子どもたちは、これから学童期から思春期に入り、どんどん成長していきます。私たち大人も、子どもたちと一緒に吃音を学び、吃音と向き合うことが大切です。
 大阪から日本吃音臨床研究会会長の伊藤伸二さんにゲストとして来ていただきます。子どもたちが自分らしく生き生きと暮らせるように、また保護者の皆さんがどのように子どもを育て、見守っていけばいいのか、共に考えましょう。
 担当者の方も、是非ご参加ください。また、ご自分が担当しているどもる子どもやその保護者にもお知らせください。子どもたちや保護者に、出会いと語り合いの場を作り、担当者も具体的な関わり方を学ぶ時間になるだろうと思います。皆様のご参加をお待ちしています。


1 目的    吃音がある子どもと保護者の出会い
        吃音について考え、語り合い
2 対象    吃音がある子どもとその家族 教師 言語聴覚士 
3 日時    令和元年 9月15日(日)   12:30開始
               16日(月・祝) 15:00終了
4 内容    吃音についての話し合い/伊藤伸二さんの講話やワークショップ
        作文/自然散策/工作/室内レクレーション など
5 場所    千葉市少年自然の家 
        千葉県長生郡長柄町針ヶ谷字中野1591−40
   TEL 0475−35−1131
6 参加費   5.000円(宿泊 食事 保険 資料などを含むすべての費用)
7 主催    ちば・吃音親子キャンプ実行委員会  スタタリング・ナウちば
8 後援    千葉市ことばを育む親の会
9 申し込み  千葉市立院内小学校 渡邉美穂(ことばの教室) 宛
        〒260−0007千葉市中央区祐光1−25−3 
TEL 043−227−5576
9月2日(月)締め切りですが、定員になり次第締め切ります。
10確認事項
集合・解散 現地(千葉市少年自然の家)集合、現地解散
ルール
 ○宿泊室での飲食は禁止です。
 ○館内は、禁煙です。指定された場所でお願いします。
 ○キャンプでは、新しい仲間との時間を大切にしたいので、ゲーム機や携帯電話など   の使用をご遠慮ください。
持ち物
 ○宿泊に必要な物や常備薬など必要と思われるものをお持ちください。ホテルではありませんので、タオルや洗面用具などもありません。また、自然の中です。天候によっては少し気温が低くなるかもしれません。体調に合わせて上着などもご準備ください。(上履きやスリッパは、必要ありません)
 ○飲食物の持ち込みは、禁止されています。ただし、水分補給のための飲料は持ち込めます。食事の際に、水筒にお茶を補充することができます。また、自動販売機もあります。
 ○作文を書く時間がありますので、筆記用具をお持ちください。
生活
 ○宿泊の部屋は、親子別々になる予定です。心配な方は、ご連絡ください。
 ○食事は、1日目の夕食  2日目の朝食・昼食 の3食です。すべてバイキングです。
 ○宿泊棟は、22時に施錠となり消灯となりますので、お静かにお願いします。そして、次の日のプログラムに支障がないように睡眠時間の確保をお願いします。

11 ゲスト紹介
日本吃音臨床研究会会長 伊藤 伸二 さん
21歳の時、セルフヘルプグループを創立し、大阪教育大学専任講師(言語障害児教育)などを経て、現在伊藤伸二ことばの相談室を主宰。第1回吃音問題研究国際大会を大会会長として開催し、国際吃音連盟の礎を作る。論理療法、交流分析、アサーティヴ・トレーニング、竹内敏晴のからだとことばのレッスン、認知行動療法などを活用し、吃音と上手につきあうことを探る取り組みをしている。
<著書>
『どもる子どもとの対話〜ナラティヴ・アプローチがひきだす物語る力』『吃音の当事者研究−どもる人たちが「べてるの家」と出会った』(金子書房)
『どもる君へ いま伝えたいこと』『親、教師、言語聴覚士が使える、吃音ワークブック』(解放出版社)
『両親指導の手引き書41 吃音とともに豊かに生きる』(NPO法人全国ことばを育む会)など多数。

 伊藤さんは、2日間一緒に、キャンプに参加してくださいます。講話だけでなく、相談したいことや聞きたいことなどを質問する時間があります。吃音や子育てに役立つワークショップ(学習会)なども行う予定です。また、伊藤さんと子どもたちとの語り合いもあります。吃音がある大人と出会い、子どもたちが将来について考えるチャンスになります。是非、たくさん伊藤さんと語り合いましょう。

12 アクセス
電車・バスの場合 JR外房線茂原駅南口下車、小湊鉄道バス「ロングウッドステーション」・「労災病院」行きに乗り、「千葉市少年自然の家入り口」で下車。
所要時間:バス約20分 徒歩20分
自動車の場合 京葉道路蘇我ICより県道14号千葉茂原線(茂原街道)を茂原方面へ約40分、皿木交差点を右折(長柄大多喜線入る)、右側に太陽建設を見ながら左折(案内看板あり)、約500m先の案内看板を右折、約1.3劼農虱媚埔年自然の家の駐車場。


日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2019/9/3

吃音親子サマーキャンプ・朝日新聞東京本社版生活面でも紹介

吃音親子サマーキャンプ参加20年の渡辺貴裕さんの、うれしいキャンプの紹介


 2019年8月25日付け朝日新聞大阪版の社会面に引き続き、9月2日付け、朝日新聞東京版では、生活面に、吃音親子サマーキャンプの記事が掲載されました。大阪版とは、タイトル、小見出し、掲載の写真など、少し違うようですが、大筋はそのままです。大阪版の記事の時、参加者で、芝居の演出をして下さっている東京学芸大学教職大学院准教授の渡辺貴裕さんが、自身のフェイスブックで紹介して下さったものを紹介します。

 
吃音親子サマーキャンプ、今年も無事終了。
 今回は、第30回ということで、3日目の午後に、このキャンプで起きている&起きてきたことを振り返るプログラムがあった。私は進行役を頼まれたが、「なぜキャンプに参加し続けているんですか?」など、事前に募った質問に答える形で、普段見えにくいであろう、それぞれの立場のスタッフ(成人吃音者、ことばの教室の教師、キャンプ卒業生…)からの思いや経験が語られる場になったのは、よかったかなと思う。
 また、朝日新聞の取材が入り(記者の小若さんがお子さん連れでフル参加)、本日25日付けの朝刊社会面(大阪版)に大きく記事が出ている(朝日新聞デジタルの紙面ビューアで「大阪」を選ぶと読める)。この興味深いキャンプの場について広く発信されるのは、ありがたい。
 私の名前も、「演劇指導」に携わる大学准教授として出してもらっている。が、私にとっては、別に専門家だから関わっているというわけではなく、学生の頃から参加し続け、気付いたら20回目になっていた、というだけの話だ。
 今日の最後の振り返りプログラムでも話したことだが、学生の頃は、空いている時間があればどんどん子どもの中に入って体当たりで一緒に遊んでいたが、最近は、暇さえあれば横になって休んでいる。体力的な衰えもあるが、それくらい、このキャンプは、「何かをしてあげる」とか「世話をする」とかなく、「役に立たなきゃ」と気負う必要もなく、自然体で、みんなが対等の立場でかかわれる場だ(主催の伊藤さんの方針で「先生」呼ばわりもしないし)。
 今回の新聞記事でも、また私が以前書いた原稿(『街に出る劇場』所収)でも、焦点が当たっているのは、演劇の部分。が、それと並んでキャンプの柱になっているのが、子どもたちによる(あるいは保護者らによる)吃音をめぐる話し合い&作文だ。
 今回私は高校生グループの話し合いを担当した。一番少ない子でも7回は来ているような、リピーターの子たち。吃音で、つらいことも含めさまざまな経験をしてきて、それを仲間と語り合って、いろんな時期を経ながらここまで来た高校生ら。彼ら&彼女らの話し合いは、時にとても深い。
 集団面接やら部活の合宿やら、ずっと一緒に過ごすわけではないけれども一回きりでもないかもしれない相手がいる場で、自分の吃音について公にして説明するか、という話をしていたときに、「他の学校の難聴の子が部活の合同練習のときに、最初にみんなの前で自分の難聴について説明していてすごいと思った」みたいな話をある子がして、そこからさらに、「見えやすい障害」(足が不自由で補装具をつけているとか)の良さと難しさという話題になった。
 吃音の「見えにくい」がゆえの難しさ(困難を分かってもらいにくい、しゃべらなければ隠せてしまう、etc.)はよく話に出るので、私はてっきり、他人に分かってもらいやすいとか、「見えやすい障害」の良さのほうに話が集中するのかと思っていた。が、彼らの捉え方はそうではなかった。
 「見えやすい」ゆえのある種のメリットを認めながらも、彼ら&彼女らからは、「『見えやすい』ものだと、『この障害はこう』みたいな決めつけから入ってしまう恐れがある。先入観なく説明できるほうがいい」とか、「『見えやすい』ものだと、相手は『どうしよう』って一歩引いてからになってしまうかも。吃音の場合だと、それなしでスタートできる可能性がある」とか、さまざまな角度から話が出て、さらに、社会からの認知&理解についての話(彼らいわく「知名度」)にも入っていった。
 すごいなあ。答えが一つに定まらないような問いについて、自分の感覚をくぐらせたうえで、それぞれの考えを出し合う。最近の言葉で言うと、「哲学対話」と呼べるかもしれないが、ここでは、自分が吃音の当事者であることをベースに、より切実感をもった話し合いが行われているようにも思う。
 他にも、「自分がどもりの当事者であることによって、どもり以外のことでのいじめられたりからかわれたりしている人に対しても、気持ちが分かったり助けやすくなったりすることがあるだろうか」というテーマをめぐる話や、あるいは、ある子が出していた「どもりは自分にとって『二人三脚』のようなもの」という表現に対するそれぞれの受け止め方と考えの交流とか、刺激的だった。
 話し合いに立ち会っている私の側が、「なるほどなあ」と目を見開かされる。
 来年は第31回。主催の伊藤さんは76歳になる。
 この「特別」な場であるキャンプを、いかに社会の「特別」ではなくしていくか。今日の最後の振り返りプログラムのテーマの一つでもあった、大きな課題だ。

 学生のときからキャンプに参加して、今回が20回目だという渡辺さんならではのコメント、とてもありがたく読みました。吃音親子サマーキャンプには、こんな渡辺さんのような、長く参加し続けているスタッフがいます。キャンプ卒業生でずっと関わってくれている人がいます。そんな人たちの思いがつまったすてきな空間である吃音親子サマーキャンプ。2日目の出来事については、次回紹介します。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2019/9/2

新潟での吃音講演会・相談会のお知らせ


どもる人、どもる子どもの保護者、教師、言語聴覚士のための吃音講演会・相談会inにいがた
   
8月は、全国難聴・言語障害教育研究協議会(全難言)全国大会・三重大会からスタートしました。その後、第8回吃音講習会、そして、第30回吃音親子サマーキャンプと、あっという間に8月が終わり、今日は9月1日です。嵐のような1ヶ月でした。
 セミの声が秋の虫の声にかわり、朝晩は、ぐっと涼しくなって過ごしやすくなりました。
 さあ、これからは、「吃音の秋」が始まります。

 まず、新潟での、講演会・相談会のご案内です。僕の古くからの知り合いの家田寛さんが、こんな企画を立てて下さいました。
 新潟には、ことばの教室の研修で、呼んでいただきましたが、相談会・講演会というのは初めてです。どうぞ、お近くの方、ご都合がつきましたら、ご参加下さい。直接お会いし、お話できることを楽しみにしています。家田さんたちが配布している案内です。


  
どもる人、どもる子どもの保護者、教師、言語聴覚士のための
                    吃音講演会・相談会inにいがた
           テーマ 〜吃音を生き抜くために〜

【日時】2019年9月23日(月・祝)13:00〜17:00
【会場】新潟市万代市民会館
     〒950-0082 新潟市中央区東万代町9-1 TEL 025-246-7711
【主催】きつ音セルフにいがた 日本吃音臨床研究会
【後援】新潟言語障害児懇談会
    新潟日報社
    朝日新聞新潟総局
    毎日新聞新潟支局
    読売新聞新潟支局
【内容】講演・相談  講師 伊藤伸二(日本吃音臨床研究会会長)
【参加費(資料代含む)】1家族800円 一人参加も同額
     資料…NPO法人全国ことばを育む会発行の「吃音とともに豊かに生きる」他。
【問い合わせ先】きつ音セルフにいがた 家田寛
            TEL 090-1693-0099
            メールアドレス house.sessafe.164@docomo.ne.jp
【予約不要】当日、直接会場へお越し下さい。
【講師紹介】伊藤伸二(いとうしんじ)日本吃音臨床研究会会長
 小学2年生の秋から吃音に悩み始める。1965年にどもる人のセルフヘルプグループ、言友会を設立。論理療法、認知行動療法、アサーション・トレーニング、竹内敏晴からだとことばのレッスンなどを活用し、吃音と上手につきあうことを探る。吃音親子サマーキャンプや親、教師、言語聴覚士のための吃音講習会などを開催。大阪教育大学専任講師(言語障害児教育)などを経て現在、伊藤伸二ことばの相談室主宰。長年、大学や言語聴覚士養成の専門学校で吃音の講義を担当。
著書『どもる子どもとの対話〜ナラティヴ・アプローチがひきだす物語る力』(金子書房)、『どもる君へ いま伝えたいこと』(解放出版社)など多数。
 日本吃音臨床研究会のホームページ kituonkenkyu.org
 伊藤伸二のブログ         kituonkokufuku.com
 
※託児の用意がありませんので、小さいお子さんの同伴はご遠慮下さい。


日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2019/9/1
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