伊藤伸二の吃音(どもり)相談室

「どもり」の語り部・伊藤伸二(日本吃音臨床研究会代表)が、吃音(どもり)について語ります。

2019年05月

『どもる子どもとの対話〜ナラティヴ・アプローチがひきだす物語る力』

『どもる子どもとの対話〜ナラティヴ・アプローチがひきだす物語る力』

41xDLTUJWlL._SX342_BO1,204,203,200_ 昨年12月、金子書房から出版した『どもる子どもとの対話〜ナラティヴ・アプローチがひきだす物語る力』。12月にきちんと紹介したつもりでいたのですが、初めて手にしたときのことや、八重洲ブックセンターにかわいいポップをつけて並べてあったことなどは写真とともに紹介していましたが、本の内容についての詳しい紹介はしていませんでした。発行から5ヶ月が経った今、改めて内容を紹介します。

 『どもる子どもとの対話〜ナラティヴ・アプローチがひきだす物語る力』
      伊藤 伸二・国重 浩一 編著 金子書房  定価 2,376円(税込み)
                           2018年12月25日発行 

 「吃音に対する否定的な物語」を書き換えることが大切だと僕たちは考えてきました。そのために、子どもと親、子どもとことばの教室の担当者や言語聴覚士が、どもる子どもとどのように対話をしたらいいか。ニュージーランドの大学院でナラティヴ・アプローチを学んでこられた、臨床心理士の国重浩一さんと、吃音を生きる子どもに同行する教師・言語聴覚士の会の仲間たちがディスカッションして作り上げた本です。
 どもる大人のナラティヴが変わった体験も紹介し、どもる子どもにかかわる人だけでなく、どもる大人にとっても、より豊かに生きるためのヒントが得られると思います。

【目次】
『どもる子どもとの対話』に寄せて         統合的心理療法研究所 平木典子
序章 どもりのふしぎさ                         国重浩一
1章 ナラティヴから読み解く、吃音の特徴と吃音問題の本質        伊藤伸二
2章 どもる子どもとのナラティヴ・アプローチ的な対話の実際    
                       睫攅戚/渡邉美穂/溝上茂樹/黒田明志
3章 ナラティヴ・アプローチとはなにか                 国重浩一
4章 それぞれのナラティヴが変わる               吃音の当事者ほか
5章 どもる君へ                            伊藤伸二
『対話』への期待              国立特別支援教育総合研究所 牧野泰美
   

【詳しい内容の紹介】     
序章 どもりのふしぎさ 
 ナラティヴ・アプローチの専門家である国重さんが「吃音」とどう出会い、関心をもつようになったか、ナラティヴ・アプローチから見た「吃音のふしぎさ」から、吃音とナラティヴ・アプローチの相性の良さが読み取れます。

1章 ナラティヴから読み解く、吃音の特徴と吃音問題の本質 
 吃音に対する否定的な物語と、「吃音は治る、治すべきだ」との言説が人生を縛ったと考え、その物語を書き換えていった伊藤伸二が、吃音に悩み始めた原因と、悩みから解放されていったきっかけを整理。世界の吃音研究・臨床の動向やさまざまな領域から学び、対話を続けたことを基に、吃音の特徴と吃音問題の本質を解説。

2章 どもる子どもとのナラティヴ・アプローチ的な対話の実際
 どもる子どもの吃音の否定的なストーリーを肯定的なものに書き換える共著者としてのことばの教室の教員が、実際にどもる子どもと対話している、ことばの教室での11の学習場面の紹介。
☆初めて子どもと出会うとき ☆吃音チェックリスト・吃音の氷山 ☆言語関係図 
☆どもりカルタ ☆吃音キャラクター ☆当事者研究
 
3章 ナラティヴ・アプローチとはなにか
 ナラティヴ・アプローチとは何か、初歩的なところから、最も大切な核心部分までを専門用語をできるだけ使わずに解説。ナラティヴ・アプローチの主要な用語も、会話の流れに沿って説明。さらに、臨床に役立つ外在化の実際の会話の例を紹介し、ナラティヴ・アプローチを初めて知る人にとっても、関心がもてるように国重浩一さんが分かりやすく解説。

4章 それぞれのナラティヴが変わる
 どもる子ども、どもる大人、どもる子どもの親、言語聴覚士、ことばの教室の教員が、これまでの吃音の否定的なナラティヴ(物語)からどう変わったかの様々な体験を紹介。
☆世界的なミュージシャンの故スキャットマン・ジョンさんの体験
☆世界的な小説家のデイビッド・ミッチェルさんからのメッセージ
☆消防士になりたいという夢をもち、実現させたひとりの青年のインタビュー
☆大阪吃音教室の仲間、看護師・山本直美さん、会社員・藤岡千恵さんの体験も収録。
☆言語聴覚士の池上久美子さん(カナダ・アルバーター大学吃音治療研究所)の、自身の吃音臨床経験を丁寧にみつめ直し、「吃音を治す、改善する」の考え方から変わっていった体験。北米の吃音事情の貴重な報告も収録。

5章 どもる君へ
 伊藤伸二が語る、学童期・思春期の子どもに直接語る書き方で、「どもる君へ」の16のメッセージ。

 ナラティヴ・アプローチと初めて出会う人への基礎的な解説書にもなっています。
 ぜひ、お読み下さい。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2019/5/31

吃音を生き抜く子どもたちにとって、今なぜ対話が必要なのか


第8回 親、教師、言語聴覚士のための吃音講習会のご案内
       どもる子どもとの対話〜子どものレジリエンスを育てる〜


 今年8月1・2日、僕の故郷、三重県津市で、全国難聴・言語障害教育研究協議会全国大会三重大会が開かれ、僕は、そこで、吃音分科会のコーディネーターと吃音の講習会の講師を担当します。その翌日から、第8回 親、教師、言語聴覚士のための吃音講習会を開催します。
 僕は、高校まで津市で過ごしました。小学2年生の秋からは、何のいい思い出のない故郷です。どもっていても、とても元気だった僕は、小学校2年生の秋、学芸会の劇でせりふのある役を外されたことで、吃音に悩み始めます。どもりは悪いもの、劣ったものというマイナスの影響を受け、それから21歳まで、ずっと暗黒の世界でした。高校入学後、すぐに自己紹介が嫌さに大好きだった卓球部を辞め、逃げの生活が始まりました。音読の免除を願い出て、国語の教師から冷たい仕打ちを受けました。ほんとに何のいい思い出もありませんでした。しかし、丁寧に、丹念に、振り返っていくと、一緒に自転車でお伊勢さんまで行った友だちもいたし、怪我したとき鞄を持ってくれた友だちもいたようでした。吃音が大きく僕の心の中を占めていて、あったはずのよかったことを見えにくくしていたようでした。
 あの頃、ひとりでもいいから、「どもっていてもいいよ」「どもっていても大丈夫」と言ってくれる人がいたら、「何に困っているの?」と聞いてくれる人がいたら、僕の学童期・思春期は大きく違ったものになっていたのではないかと思います。
 どもることで困っているのはどもる子ども自身です。そして、困っていることを一番知っているのは、子ども本人です。その子どもとの対話の必要性について、今、こんなことを考えています。講習会の2日間、多くの方と出会い、語り合い、深めていくことができたらと願っています。ご参加、お待ちしています。

  
吃音を生き抜く子どもたちにとって、今なぜ対話が必要なのか
                      伊藤伸二・日本吃音臨床研究会

 「あなたはあなたのままでいい」「あなたはひとりではない」「あなたには力がある」
 私たちは、どもる子どもたちと、対話や日常生活の体験を通して、このメッセージを互いに確認し合ってきました。社会では、多様性が言われ、多様な働き方、生き方が肯定的に捉えられるようになりましたが、「私は私のままでいい」と思えない、自己肯定感の低い子どもや青年が少なくないのが、現実の社会です。
 一方で、トラウマになり得るような過酷な経験をしても、劣悪な環境に育っても、健康を保ち続ける人々が3割程度いることが、いくつかの調査研究から明らかになっています。病気や障害の原因を追及し、治療・改善して健康な生活を目指す「疾病生成論」に対して、この3割の人たちにどのような条件があったのかを追求する「健康生成論」や「レジリエンス」の考え方が生まれてきました。技法としては、当事者研究、ナラティヴ・アプローチ、オープンダイアローグ、ポジティブ心理学などが注目され、その実践が数多く紹介されるようになりました。
 これまで、アメリカ言語病理学をベースにした吃音の治療では、言語訓練を中心にした、「吃音を治す・改善する」ことに視点が置かれてきました。100年以上も続いた吃音研究・臨床の歴史をみても、「吃音を治す・改善する」は、一部の人には成果が見られたとしても、多くの人にとっては、成功していません。アメリカのスピーチセラピストの9割以上が、吃音の臨床に苦手意識をもつのはそのためです。そして、現実に多くの人の吃音は治っていません。
 社会でいかに多様性が言われ、自己肯定感を育てる、といわれても、吃音をネガティブなものと捉える限り、どもりながら豊かに生きることは難しいでしょう。吃音が未だに原因が解明できず、「ゆっくり、そっと、やわらかく」発音する流暢性形成技法しかもたない、これまでのアメリカ言語病理学をベースにした取り組みは限界に来ています。
 発達障害者支援法や、障害者差別解消法などがあっても、社会の意識はそう簡単に変わるものではありません。吃音に対する社会の理解も、「吃音と共に生きる」ことに必ずしも結びついていません。障害があるなしにかかわらず、誰にとっても現代は生きにくい社会といえるでしょう。吃音と共に生きることは簡単ではありません。安易に「どもってもいい」とは言えないでしょう。吃音治療の歴史と現実、どもる人たちが生きてきた人生を踏まえた上での「吃音を生き抜くための吃音哲学」が必要です。
41xDLTUJWlL._SX342_BO1,204,203,200_ 私たちは、どもる子どもとの対話を通して、吃音哲学を作り上げていこうとしています。その手がかりとして、昨年末に、『どもる子どもとの対話〜ナラティヴ・アプローチがひきだす物語る力』(金子書房)を出版しました。より具体的な学習場面、子どもとのやりとりや対話の場面を再現しました。また、吃音を生き抜く子どもたちにとって、対話がなぜ必要か。どのようなテーマで対話をするか。対話につながる素材は何か、ことばの教室の実践と共に提案しました。どもる子どもたちが、自分のことや自分の吃音のことを、自分のことばで語ることや対話することに、大切な意味があると考え、私たちの仲間はそのことに取り組んでいます。

吃音講習会の詳細は、下記のホームページでご覧下さい。

 吃音講習会のホームページ  アドレス:www.kituonkosyukai.com/

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2019/5/30

吃音についての発信力を強めたい

 吃音についての発信力を強めたい

 毎週金曜日に例会を開いている、NPO法人大阪スタタリングプロジェクトが開催してる「大阪吃音教室」が公式ツイッターを開設しました。そこで、僕もツイッターを始めました。ブログは以前から書いているのですが、ネット文化になかなかなじめない僕は、SNSが苦手です。しかし、最近の吃音に対する「100万人が悩んでいる」「就職活動が大変」などの、記事ばかりがあふれることには危惧をもっています。
 
 僕は、21歳まで人一倍吃音に悩み、「吃音が治らないと僕の人生はない」とまで思いつめてきたので、吃音の悩み、苦しみは、それこそ人一倍わかります。にもかかわらず、「吃音を治すことばかり考えず、吃音を治す気持ちや努力のエネルギーを、自分らしくよりよく生きようよ」と自らにも、社会にも宣言したのが、1976年の「吃音者宣言」です。
 今後、その方向に動いていくだろうと楽観的に考えていたのですが、最近は「苦しい、つらい、なんとか吃音を改善しよう」との情報があふれ、僕が言友会を創立した1965年ごろの吃音の世界に戻っているような気がしています。
 その中で先日、ネットニュース「BuzzFeed」で千葉雄登さんが、私へのインタビュー記事を書いて下さいました。

     https://www.buzzfeed.com/jp/yutochiba/live-with-roar


 そして、医学書院の「ケアをひらく」シリーズの編集者の白石正明さんが、ツイッターで紹介して下さいました。うれしくなって、慣れないツイッターで、「リツィート」なるものをしました。
 今、私たちの主張は残念ながら、極めて少数派になってしまいました。これは20年ほど前には、私としては考えられなかった動きです。めげてばかりはいられません。苦手、慣れないと言っている場合ではないので、できるだけ、機会を見つけて発信していこうと覚悟を決めました。
 そこで、今回、白石正明さんのツイッターにリツィートしたものを紹介します。

 【白石正明 @shiraishimas】
 しかし、伊藤伸二さんの「吃音者宣言」は歴史に残る宣言だな。吃音は、体の不具合と社会との「接点」において浮上する問題だから、軽く見られやすい。しかし同じく社会との接点で浮上する発達障害や高次脳機能障害などが注目されるにつれ、この宣言の価値があらためて理解されてくると思う。   20:07 - 2019年5月28日

 【伊藤伸二がリツイート】
 ありがとうございます。これから夏から秋にかけて、講演や吃音キャンプが続きます。吃音の健康生成論的アプローチが、今年の私の話すテーマになりますが、「吃音者宣言」は、健康生成論の「把握可能感」「処理可能感」「有意味感」の3要素があったからできたのだと思います。吃音者宣言について再考します。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2019/5/30

第8回 親、教師、言語聴覚士のための吃音講習会

第8回 親、教師、言語聴覚士のための吃音講習会

 親、教師、言語聴覚士のための吃音講習会が今年、第8回を迎えます。吃音を生きる子どもに同行する教師・言語聴覚士の会の仲間たちと日々の実践の中で考えたこと、感じたことを出し合い、語り合う中で生まれてきた講習会です。関係者に配布した案内です。

  第8回 親、教師、言語聴覚士のための吃音講習会のご案内
        どもる子どもとの対話〜子どものレジリエンスを育てる〜

           顧問 牧野泰美(国立特別支援教育総合研究所上席総括研究員)

 私たちは「どうしたら吃音と共に豊かに生きることができるか」を、どもる子どもたちや家族と一緒に考えてきました。吃音は世界中で100年以上研究されてきましたが、原因も根本的な治療法も解明されていません。私たちは吃音を治すことはできませんが、対話することはできます。その中で、多くのどもる子どもや大人と関わり、吃音をマイナスのものとしない生き方があること、そして子どもたちは深く考え、語ることができることを知りました。
 そこに至る過程の中で見えてきたのが「対話のもつ力」であり、この私たちの気づきを支えるのが先入観なく子どもの話を聞く「無知の姿勢」や「その人が問題ではなく、問題が問題である」問題の本質を見極める、ナラティヴ・アプローチとの出会いでした。さらに、今回示された「特別支援学校学習指導要領解説・自立活動編」には、指導例として「吃音について学び、吃音をより客観的に捉えられるようにする」が、具体的な内容として「吃音理解に関する本を一緒に読む中で、吃音に対する『分からない故の不安』の軽減を図る」ことが挙げられています。これは私たちがこれまで行ってきた「どもる子どもとの対話の実践」に通じるものです。この講習会では、こうした取組の中で、私たちが大切にしていることを、どもる子どもの保護者や成人のどもる人も含む参加者のみなさんと共に見つめ直し、整理していこうと考えています。また、どもりながら、ろう学校の教員として仕事を続けてきた佐々木和子さんに、どのように日常生活をサバイバルしてきたか、インタビューや参加者のグループでの話し合いを通して、彼女のレジリエンス(回復力・逆境を生き抜く力)を探ります。
 全国のどもる子どもの保護者、ことばの教室の担当者、関係する教師、言語聴覚士と一緒に、日ごろの実践を捉え直し、新たな展望を開くために、熱く、楽しく、有意義な時間を作りましょう。 (実行委員長 三重県津市立修成小学校ことばの教室)

日時 2019年8月3日(土) 9:45〜19:15
       4日(日) 9:00〜16:45
会場 三重県教育文化会館 5F・大会議室
内容・プログラム
  8月3日(土)受付9:30〜
・話をめぐる対話(基調提案に代えて)
       伊藤伸二・日本吃音臨床研究会
       ことばの教室担当者(睫攅戚澄‥邉美穂 溝上茂樹 黒田明志)
・全国難聴・言語障害教育研究協議会全国大会の発表の報告
                <吃音分科会> 横浜市立東小学校  土井幸美
                <難聴分科会> 千葉市立院内小学校 金井あかね
・吃音を生きる成人へのインタビュー 元ろう学校教師 佐々木和子さん
・ミニ講座 ゝ媛擦鮴犬抜く吃音哲学の前提  伊藤伸二・日本吃音臨床研究会
    [健康生成論、レジリエンス、オープンダイアローグ、哲学的対話、
            ナラティヴ・アプローチ、ネガティブ・ケイパビリティ]
・グループでの話し合い [この日の学びを中心に、日頃感じていることなど]
・懇親会 ※希望者

  8月4日(日)受付8:50〜
・ミニ講座◆ 崑佻叩廚里發腸椎柔
              牧野泰美・国立特別支援教育総合研究所上席総括研究員
・どもる成人のセルフヘルプグループによる講座  大阪スタタリングプロジェクト
・ミニ講座 吃音を生き抜く吃音哲学のすすめ  伊藤伸二・日本吃音臨床研究会
・どもる子どもとの対話の実践報告・演習 ことばの教室担当者
・みんなで語ろう、ティーチイン
講習会参加費  6,000円
参加申し込み方法
 下記の,發靴は△里い困譴の方法で、申し込みください。
”要事項を記入し、ハガキか封書で郵送する。
吃音講習会のホームページから、参加申込書をダウンロードして、必要事項を記入し、メールまたは封書で送る。
☆必要事項…〔樵亜覆佞蠅な)⊇蠡位勝´自宅住所(郵便番号)づ渡暖峭罅覆△譴丕藤腺悗癲豊ゥ瓠璽襯▲疋譽后´懇親会参加の有無
☆郵便振替 加入者名:吃音講習会   口座番号:00960-0-282459
☆参加申し込みと同時に、郵便局より参加費を振り込んで下さい。参加申し込み書と参加費の入金確認ができた時点で、正式参加申し込みとします。両方の確認ができましたら、受講票をお送りします。当日、受付で受講票をご提示下さい。
申し込み先  千葉県千葉市立花見川第三小学校 黒田明志
 〒262-0046 千葉県千葉市花見川区花見川1-1
 Mail:kituon-kosyukai@live.jp
問い合わせ先 日本吃音臨床研究会
〒572-0850 大阪府寝屋川市打上高塚町1-2-1526 TEL/FAX 072-820-8244
吃音講習会のホームページ  アドレス:www.kituonkosyukai.com/
 これまでの講習会の報告、大会要項に載せた資料などご覧になれます。講師からの貴重な提案や、ことばの教室の実践報告、どもる子どもや大人の声など、参考になる資料が満載です。ぜひご覧ください。
講師紹介
◇牧野泰美 国立特別支援教育総合研究所上席総括研究員
 専門は言語障害教育、言語獲得、コミュニケーション障害とその支援など。「全国公立学校難聴・言語障害教育研究協議会(全難言協)」をはじめ、各地の「きこえとことばの教室」の担当者や、親の会等と連携しながら、子どものことばやコミュニケーションへの支援の在り方、きこえとことばの教室の役割などについて研究活動を進める。
 著書に、『言語障害のおともだち』(ミネルヴァ書房)、『基礎からわかる言語障害児教育』(学苑社)など。
◇伊藤伸二 日本吃音臨床研究会会長
 21歳の時、セルフヘルプグループ言友会を創立。大阪教育大学専任講師(言語障害児教育)などを経て、現在伊藤伸二ことばの相談室主宰。第1回吃音問題研究国際大会を大会会長として開催し国際吃音連盟の礎を作る。論理療法、アサーティブ・トレーニング、竹内敏晴レッスン、認知行動療法などを活用し、吃音と上手につきあうことを探る。
 著書に、『両親指導の手引き書41 吃音とともに豊かに生きる』(NPO法人全国ことばを育む会)、『吃音の当事者研究−どもる人たちが「べてるの家」と出会った』(金子書房)など。


日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2019/5/28

大好きだった卓球も、恋も吃音を言い訳に手放した。どもりながら生きる道を選ぶまで


先ほど、ネットニュースで一般公開された記事です。

多くの人に読んでいただきたいと思います。できるだけ拡散していただければうれしいです。



大好きだった卓球も、恋も吃音を言い訳に手放した。どもりながら生きる道を選ぶまで
「吃音を治す努力を否定する」。そんなメッセージを1976年に宣言した人々がいる。半世紀近くも前に、どもりながら生きることをなぜ声高に宣言することができたのか。

Yuto Chiba
千葉 雄登 BuzzFeed Editorial Intern, Japan

これは本文の一部です。下記のURLでお読み下さい。

https://www.buzzfeed.com/jp/yutochiba/live-with-roar

小学校で過ごした6年の間、音読の時間が何よりも苦手だった。
順番が回ってきたときに頭文字でどもってしまわぬよう、いつだって先回りをして自分が読まなくてはいけない文章の頭文字を必死に探す。
どもりやすいのは「た行」。緊張すると自分の名字ですらつまずいた。

どもった瞬間、突然生まれる静寂が何よりも怖い。気付けば愛想笑いが上手になっていたのは、気まずい沈黙をとりあえず笑ってやり過ごす、そんな時間があまりに長かったからだと思う。
「普通に喋りなよ」という言葉を何度も投げかけられた。きっとクラスメイトに悪気はなかったはずだ。でも、無邪気に突きつけられる「違い」への違和感は大人のそれよりも時に鋭い。

とはいえ中学校に入学した頃から、どもる頻度は減っていった。より正確に言うと、どもりそうな言葉がわかるようになった。どもりそうなときは、とっさに違う言葉で言い換える。どうしても言い換えられないときには、その言葉の前に「えっと…」や「あのー」なんて言葉を付け足して勢いをつけてしまえば問題ない。
これは僕の実体験だ。
大学入学後、これが「吃音」と呼ばれるものだと知った。きっかけはある新聞記事だった。そこで「生きづらさ」として記されているものを、私は知っていた。

そんな吃音当事者で「吃音を治す努力を否定する」と1976年に宣言した人々がいる。吃音のセルフヘルプグループ・言友会だ。
どもることを治すことに必死だった小学校、中学校時代を過ごしたからこそわかる。「どもりながら生きる」ことへの覚悟は並大抵のものではないはずだ。
なぜ彼らは「どもりながら生きる」ことを、こんなにも声高に宣言することができたのだろう。

日本吃音臨床研究会会長 伊藤伸二 2019/05/27

動画配信中4 日本吃音臨床研究会のホームページ概要

動画配信中4 ホームページの概要

 力を入れている動画について、紹介してきました。最後に、この日本吃音臨床研究会のホームページの概要をお知らせします。

A どもる君へ
 学童期、思春期のどもる子どもに語りかけるように、伊藤伸二が、自身の体験に基づき、子どもたちへメッセージを送っています。吃音親子サマーキャンプの話し合いの中で、子どもが何を考え、学校での発表や音読の体験、からかいなどにどのように対処しているかを紹介しています。中学・高校生を対象に書いたものは、僕の思春期の苦悩を書きました。今、小学生を対象にした文章を少しずつ書いている途中です。

B 知っておきたい吃音知識
 正しい知識を持つことは、吃音と共に生きる上で不可欠です。原因、治療の歴史、真の吃音問題、国際大会や国際吃音連盟のこと、海外の情報など、吃音の正しい知識を整理します。

C 臨床の広場
 吃音と共に生きるをテーマに、全国のことばの教室の実践を紹介。『吃音と向き合う、吃る子どもへの支援−ことばの教室の実践集』を1冊そのまま掲載しました。明日からの実践に役立つ実践・情報です。

D 伊藤伸二のページ
 言語聴覚士養成の大学や専門学校で吃音の講義を担当してきた伊藤伸二が自分自身の体験だけでなく、これまで出会ってきた多くのどもる子どもたちやどもる人たちの体験を整理し、新しい臨床を提起します。全難言大会・鹿児島大会での記念講演や北海道言語障害児教育研究大会での記念講演などの講演記録、映画「英国王のスピーチ」の映画の見方など、どもる当事者としての視点から、吃音問題の本質に迫ります。

E セルフヘルプグループ
 あなたはひとりではない、あなたはあなたのままでいい、あなたには力がある、この3つを基本にしたセルフヘルプグループの活動を紹介。朝日福祉ガイドブックの「セルフヘルプグループ」を、朝日厚生文化事業団の許可を得て全文掲載しています。この冊子は、朝日新聞厚生文化事業団によって1998年3月31日に発刊されましたが、絶版になりました。これは、多くの当事者が執筆したきわめて貴重な文献です。セルフヘルプグループの社会的意義や実際の活動を広く知って欲しくて、ホームページへの掲載をお願いしたところ、許可をして下さいました。

F 吃音資料館
 新聞記事、吃音に関する書籍、論文、文芸作品に見る吃音、どもる著名人や、これまでかかわりのあった人たちとのエピソード、海外情報など、バラエティに富んだ資料館です。内須川洸さん、水町俊郎さん、竹内敏晴さんの部屋には、これまでの著作や論文などを掲載。吃音に関する知識・情報の宝庫です。

G どもる子どもの保護者の皆さんへ
 子どもがどもり始めたときの不安への対処、子育ての大切なポイントを伝えた「どもりの相談」のパンフレットを全文紹介しています。『どもりの相談』は、当時、私たちに深くかかわって下さっていた内須川洸・筑波大学教授、ことばの教室の教師、どもる子どもをもつ母親、どもる私たちが、何度も書いては議論し、書き直すという粘り強い取り組みの中から生まれました。また、財政的には、あゆみの箱、安田生命社会事業団、ライオンズチャリティファンドから、多額の援助を受け、5万部という大量の発行が実現しました。多くの人の手によってできあがったパンフレットです。新聞で紹介され、全国から問い合わせや注文がありました。5万部発行したにもかかわらず、長い年月の中で、今は手元にはなくなりました。41年前のパンフレットですが、内容は少しも色あせていません。ぜひ、お読みいただきたいと思い、紹介することにしました。

H 吃音の動画
竹内敏晴さんから学んだ「日本語の発音・発声のレッスン」や、映画上映とトークイベント、どもる人本人が、自分の体験を綴った「ことば文学賞」受賞の作文を、どもりながら朗読している様子、大阪吃音教室の講座など、映像で見ることができす。大阪吃音教室の講座「吃音Q&A」は、さまざまな質問に伊藤伸二が答えています。どもる成人の生き生きと話す姿は、子どもに勇気を与えることでしょう。

I 書籍『吃音者宣言−言友会運動十年』 
 言友会創立10年の節目に「吃音者宣言」文を起草しました。「吃音者宣言」の解説の意味で『吃音者宣言−言友会運動十年』(たいまつ社)を出版しました。40年以上も前に出版された本ですが、今も、この本の精神は色あせていません。むしろ、今の時代に多くの人に読んでいただきたいとの思いが膨らんできました。「どう治すかではなく、どうよりよく生きるか」が問題だとする私の考えに近い、考え方や実践が、2000年になって急速に広がっているからです。
 医療社会学者、アーロン・アントノフスキーによる、究極の恐怖を経験したアウシュビッツの強制収容所から生還した女性の3割が、良好な健康状態を保ち続けられたのはなぜかの調査研究から生まれた「健康生成論」。心理学者ウェルナーによる、ハワイ諸島のカウアイ島の貧困、暴力、犯罪など多発する劣悪な環境に生まれ育った子どもの約3割が能力のある信頼できる社会人として育っていたとの調査研究から生まれた「レジリエンス」。これらの研究が、今、世界で関心をもたれるようになりました。
 「べてるの家」の当事者研究、ナラティヴ・アプローチ、オープンダイアローグなども、この流れに共通するものです。これらの流れを参考にしながら「吃音者宣言」をもう一度再考し、私は、「吃音を生き抜く吃音哲学」を作ろうとしています。出版社そのものがなくなりましたので、1976年たいまつ社発行の『吃音者宣言−言友会運動十年』を全文紹介しました。

 ブログだけでなく、フェイスブックやツイッターでも配信中です。伊藤伸二が今考えていること、講演会や研修会、相談会で話したこと、読んだ本や観た映画の感想、これからのイベントの予定など、読みやすいエッセー風のものです。

日本吃音臨床研究会のホームページ www.kituonkenkyu.org

伊藤伸二のブログ www.kituonkokufuku.com/

日本吃音臨床研究会のフェイスブック www.facebook.com/JapanStutteringProject

伊藤伸二のツイッター twitter.com/jspshinjiito

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2019/5/27

動画配信中3 吃音について正しく知ろう

動画配信中3 吃音について正しく知ろう

 大阪吃音教室では、「吃音と上手につきあう」ことを目指して、年間のスケジュールを組んでいます。4月の開講式の後は、つきあう相手である吃音についてきちんと知っておこうと「吃音基礎知識」の講座が定番になっています。それを動画で紹介しようと、動画プロジェクトが立ち上がりました。
 大阪吃音教室の運営委員の、藤岡千恵さんと井上詠治さん、西田さんが中心になって事前に質問項目を考え、たくさんの中から選定します。選定された質問を藤岡さんが自分の体験と絡めて質問していきます。それを井上詠治さんが撮影してくれ、後日、文字を入れるなど編集作業をしてくれます。事前の打ち合わせはまったくしない、ぶっつけ本番です。動画の撮影が始まるまで、僕はその質問内容はほとんど知らないようにしています。何の用意もしない方が僕は好きなのです。藤岡さんの質問を受けて、彼女と対話をしながら質問に答えていきます。
 このやりとりを、大阪吃音教室の講座の中で、つまり聴衆がいる場ですることに意義があります。動画を見て下さる人たちを代表して、大阪吃音教室の仲間が聞いてくれている。この場の支えがあるから、緊張感をもって僕もその場にいることができるのです。編集は一切しない、ぶっつけ本番の緊張感が好きなのでしょう。藤岡さんとの対話の中で、普段考えていなかったことが、ふと浮かんできます。1965年の夏に東京正生学院で吃音に向き合い始めてから、吃音のことばかりを考え続け、7000人を遙かに超えるであろう、どもる人と直接出会ってきたので、その人たちの体験が僕のテータベースに入っていて、何か質問をしてもらえると活性化するのでしょう。ぜひ、藤岡さんと僕のやりとりを見て下さい。
 これは、4回のシリーズになっています。最近のものは紹介しましたが、これまでに出てきた質問は、次のとおりです。

2017.4.14 大阪吃音教室
・吃音の原因
 どもりになりやすい遺伝子があるとか、脳科学の発展で、どもる人の脳の機能に問題があるなどと言われるようになりましたが、吃音の原因は解明されたのですか。
・どもりは治るか
 「吃音は治せる」という本もありますし、ネット上では吃音は改善できると宣伝するところがあります。吃音は治るのでしょうか。
・どもりの波
 すごくどもる時と、あまりどもらない時の調子の波があります。どもる人はみんな、私のように波があるのでしょうか。
・どもりと障害
 吃音は言語障害のひとつですが、吃音は障害ですか。病気ですか。すごく調子がいいときなどは、障害と思えないし、すごくどもる時もあって、その時は障害のように思うのですが。
・吃音と発達障害
 吃音が発達障害支援法の中に入っていますが、吃音は発達障害なのでしょうか。紀元前の時代から文献に残っている吃音と、最近、注目され始めた発達障害とは違うように思うのですが。
・どもる人の人口
 吃音は人口の1%の発生率があると、ずいぶん前から言われていますが、子どもの頃を振り返っても、大人になった今でも、周りにはそんなにいない気がするのですが。
・どもる人の仕事
 どもる人は話すことの少ない、電話の応対等があまり必要ない仕事に就いた方がいいと言われたことがあります。どもる人はどんな仕事に就いていますか。また、どんな仕事が向いていますか。
・世界の吃音
 日本語以外でも、どもる人はいるんですか。
・どもりの説明の仕方
 自分がどもることについて学級の中で説明している子どもがいると聞きました。また、成人になると就職試験の面接で吃音について尋ねられることがあると思います。そのような時、どのように吃音を説明すればいいですか。

2017.11.10 大阪吃音教室
・どもりと不安
 不安がなくなれば吃音がよくなるからと、精神科医に抗不安剤を処方されたのですが、吃音と不安について話して下さい。
・不安への対処
 吃音の大きなテーマは、どもることを予想する「予期不安」ですが、どう対処したらいいですか。
・緊張とのつき合い方
 「緊張するからどもるのだ。リラックスして」とよく言われますが、どもるから緊張するのか、緊張するからどもるのか、緊張とのつきあい方を教えて下さい。
・事前練習の効果
 音読やプレゼンテーションの前に練習をするのですが、効果はありますか。
・しゃべりやすくする工夫
 吃音を治すことは難しいとは思いますが、少しでもしゃべりやすいように工夫することはどうですか。
・自己紹介の工夫
 自己紹介がとても嫌で、自己紹介がありそうな場面にはできるだけ出ていきたくないのですが、どもる人が自己紹介で工夫することはありますか。
・第一声が出ない
 連発のどもり方なら、何か話そうとしていることが相手に伝わるのでいいと思うのですが、難発(ブロック)の状態になって、第一声が出てこないので困ります。どんな対処ができますか。
・どもりは差別用語?
 どもりは差別用語だという人がいますが、私たちは「どもり」をよく使います。どもりは差別用語なのですか。

2018.04.13(金) 大阪吃音教室
・魅力的などもり
 大阪吃音教室には魅力的などもる人が多いですが、魅力的などもりになるには、どうしたらいいですか。
・対人関係と吃音
 人の悩みは「対人関係」がほとんどだと言われますが、吃音と対人関係について話して下さい。
・どもる人の武器
 どもることはある意味、ハンディだと思いますが、人間関係や仕事に出て行くとき、どもる人の武器になるようなことはありますか。
・難行から易行
 言語訓練で吃音を改善しようとするのは「難行苦行」で、吃音を認めて生きる方が易しい道(易行・いぎょう)というのはどういう意味ですか。
・どもる覚悟
 どもるのに、覚悟っているのですか。
・笑いとユーモア
 大阪吃音教室では、「ユーモアスピーチ」「吃音川柳」「どもりカルタ」の活動がありますが、吃音にとってユーモアはどんな意味をもちますか。
・治らないことの意味
 紀元前300年代の「デモステネス」は訓練をして治したと言われていますが、周りを見渡しても多くの人が治っていないように思います。「治らないことの意味」を考えたいです。

日本吃音臨床研究会のホームページ(www.kituonkenkyu.org)

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2019/5/26

動画配信中2 自分の体験を読む・大阪吃音教室の講座風景 

動画配信中2 自分の体験を読む・大阪吃音教室の講座風景

 大阪吃音教室を運営するNPO法人大阪スタタリングプロジェクトと日本吃音臨床研究会では、ホームページの充実の中で、動画配信に力を入れています。
 吃音親子サマーキャンプの卒業生でもある、井上詠治さんが、撮影・編集に力を注いでくれているおかげですが、吃音親子サマーキャンプの卒業生は、キャンプのスタッフとして参加するだけでなく、「吃音と共に豊かに生きる」実践者としてさまざまな活動に力を入れてくれています。
 そのような仲間の力に支えられて、僕も、吃音のネガティヴな側面だけでない人生をいろんな形で発信をしていこうと考えています。
 前回は、一問一答を紹介しましたが、他の動画を紹介します。その中でも、ことば文学賞の受賞作を作者自身が読むコーナーが、僕は大好きです。ぜひ味わってください。 
吃音の動画
吃音の動画のコーナーにあるいろいろな映像

 ,海箸佇験愍泙力読
 大阪吃音教室では、話すことだけでなく、書くこと、読むことなど、コミュニケーション力を育てることにも力を入れています。その中の、自分の体験を綴ることは、「ことば文学賞」として、一つの文化を作ってきました。自分の体験を書くことは、客観的に人生を見つめ直し、自分自身で体験を整理することにもなり、また、後に続く人たちへの財産にもなります。ここでは、吃音体験を綴った本人が、自分の書いた作文を読んでいます。文字で読むのとはまた違ったものが伝わってきます。

 應典院コモンズフェスタにおける映画上映会とトーク
 大阪吃音教室が毎週金曜日に開かれる会場の應典院が主催して開催されたコモンズフェスタに参加しました。企画したのは、アメリカのどもる青年が作ったドキュメンタリー映画「The Way We Talk」を上映し、その後のトークイベントです。漫画家で、生きづらさをテーマにした当事者研究を大阪で主催している一ノ瀬かおるさんを交えてのトークの様子を見ることができます。

 B膾綉媛散擬爾旅嶌舵景
【吃音キャラクターづくり】
 僕の仲間のことばの教室の教員は「吃音キャラクター」の実践を積み重ねています。
 「自分のどもりをキャラクターにしたら、どんなものになる?」と、どもる子どもに投げかけます。ポケモンなど、キャラクター文化に親しんでいる子どもたちは、すぐにいろんなキャラクターを描きます。紙粘土で作る子どももいます。自分のどもりを外に出すイメージです。これは、ナラティヴ・アプローチの外在化です。そのキャラクターに、名前をつけて会話をします。吃音の客観視です。教員を交えての対話を繰り返す中で、自分ではどうしようもない怖いものだと考えていた吃音が、自分の力でなんとかできる、つきあうことのできるものに変わっていきます。子どもたちの実践を真似て、どもる大人も取り組んでみました。その様子を映像で紹介しています。

【吃音チェックリスト】
 とらわれ度、人間関係開放度、回避度の3つのチェックリストの紹介と、その結果をどう考えるか、グループで話し合っています。

【言語関係図】
 X軸=どもる症状、Y軸=聞き手の態度、Z軸=話し手本人の受け止め方の3方向からなる箱の形、大きさ、容積で、その人の吃音の問題の量と質が分かります。自分の吃音の問題を分析し、それをこれからの生活に活かしていくために、何ができるか、話し合います。

 っ歹睇卆欧気鵑ら学んだ、からだとことばのレッスン 
 吃音の改善を目指してはいないけれど、相手に届く、表現力のある声は出したいと考えます。そのために、誰にでも役に立つことばのレッスンをしています。これは、「からだとことばのレッスン」をしていた演出家・竹内敏晴さんに学んだことを受けています。竹内敏晴さんとのつきあいは長く深く、大阪での、竹内さんの「からだとことばのレッスン」の事務局を10年以上続けてきました。吃音親子サマーキャンプで子どもたちと取り組む芝居のシナリオ作り・構成・演出を、竹内さんはして下さっていました。耳が聞こえなかった経験をもつ竹内さんは、僕たちのことを仲間として、大切に考えていて下さったのです。亡くなられた後、「竹内さんから学んだ、からだとことばのレッスン」と題する日本語のレッスンを大阪吃音教室では続けています。

 このほかに、前回紹介した「吃音Q&A」のシリーズが3回分あります。これについては、次回にまわします。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2019/5/25

動画配信中 吃音についての一問一答

動画配信中 

 最近、吃音がメディアで取り上げられることが増えました。それはありがたいことですが、取り上げられ方には、違和感を覚えます。その端的な表現が、「どもる人100万人がみんな悩んでいる」です。
 100万人という数字は、おそらく吃音の発生率が1%から来ているのでしょう。その数字も確かなものとは思えないのですが、ずっと昔から言われているので、それはそれとして受け止めますが、その全てが悩んでいるとなると、それは違うだろうと思います。
 確かに僕自身が21歳まで深刻に悩んでいたので、吃音の悩みは人一倍分かります。しかし、悩んでいたのは「吃音は必ず治る」の情報しかなく、吃音について知らなかったからです。100年以上も吃音の研究・臨床がなされ、原因も解明されず、「ゆっくり話す」以外吃音治療法がないことが分かった現在、吃音を認めて、吃音と共に生きる生き方が当然出てきます。吃音のつらかったことも、しんどかったことも、悩んだこともあったけれど、今は、どもりと自分は切り離せない、どもりがあったから今の自分があると、心底思っているどもる人は、僕自身も含めて、僕の周りには大勢います。「吃音と共に豊かに生きている」人が少なくないにもかかわらず、「100万人が悩んでいる」と表現されると、確かに存在する、僕たちのようなどもる人がいないことになってしまいます。
 違和感を覚える僕たちに何ができるか、どもりながら豊かに生きている僕たちの存在を書籍やホームページを通して発信していくしかないのではないかと思います。
吃音の動画 今、日本吃音臨床研究会のホームページを、大阪吃音教室の仲間と一緒に、リニューアルしつつあります。日本吃音臨床研究会のホームページは、幼児の吃音、学童期・思春期の吃音、成人の吃音を網羅した情報を掲載しています。最近は動画に力を入れています。
 動画をぜひ、ご覧下さい。
 まず、今年4月に行われた講座「吃音Q&A」の動画を紹介します。次の8個の質問が出され、僕がそれに答えていきました。 

日本吃音臨床研究会のホームページ(www.kituonkenkyu.org)

 今回配信した最新の動画
録画風景 新 2
1.人前で話す前の心構え
 どもる私たちが、発表やプレゼンテーションなど、人前で話す前にすべきことは何かありますか?
2.どもりは面接に不利? 
 どもる人は受験や就職の面接に不利でしょうか。
3.100万人が悩んでいる? 
 最近メディアで吃音が取り上げられることが増えてどもる人は人口の1パーセント、日本にも100万人のどもる人がいて、100万人のどもる人が悩んでいるという報道がされていますが、本当に100万人が悩んでいるのかな、と疑問に思います。
4.どもる人の甘えとは 
 吃音者宣言文の中に「甘え」という表現が出てきますが、どういうことですか?
5.子どもがどもっている時
 どもる子どものお母さんから吃音ホットラインによく寄せられる相談として、「子どもがどもっている時に助けてあげていいのでしょうか?」というのがあると聞きますが、どうなんでしょう。
6.どもる自分を好きになる
どもる自分が好きではありません、どうすれば好きになれますか?
7.どもれる体になるとは?
 伊藤さんの著書、『どもる子どもとの対話〜ナラティヴ・アプローチがひきだす物語る力』に、「僕はどもれない体からどもれる体になった」という表現がありました。どういうことですか。
8.どもりのアイデンティティ
 「他人がどもりに気づかなければ、私はどもりではない」という人がいるようですが、他人がどもりに気づかなければ、私はどもりではないのでしょうか?

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2019/5/24

吃音の問題の本質とは何か 3


   吃音氷山説で、自分のどもりを分析する <感情>

 大阪吃音教室の定番の講座が、「自分のどもりの課題を分析する」です。言語訓練が吃音にとって効果がないことを認識している僕たちは、効果がないものをいつまでも追い求めるのではなく、効果があることに取り組もうとの現実路線をとっています。
 それは、自分自身がとっている行動、思考を変えることです。論理療法や認知行動療法を活用して、「思考、行動」に取り組みます。思考、行動は本人が決意しさえすれば比較的変えることはできるのですが、最後に残るのが「感情」です。そして、吃音の最大のテーマは「吃音の予期不安」「どもる場面の恐怖」です。これは自然に沸いてくるものであり、変えるといっても、なかなかやっかいです。
 ここで登場するのが、日本の唯一の、日本発の精神療法「森田療法」です。「どもる不安や恐怖があっても、しなければならないこと、したいことは思い切ってする」です。その行動の結果として、「感情」が和らぎます。
 1965年に僕は、「森田療法」を知らないままに、不安があっても、恐れがあっても、不安の入り込む前に行動し、行動中心の生活をしていたら、不安はまずなくなりました。そして、どもった後の恥ずかしさや惨めさも、回を重ねるごとに、場に慣れてきたのでしょうか、和らいでいきました。
 「森田療法」についてはまた書きますが、今回の大阪吃音教室では、吃音を否定的に捉えていたら、「感情」の面でどのようなマイナスの影響があるか、出し合いました。 

    
感情
・劣等感(話すことだけでなく、いろいろなことへの劣等感情)
・みじめ(どもった後の、周りの目、雰囲気を感じてみじめになる)
・このままどもり続けたら、どんな人生になるか。死んでしまいたい、絶望感
・話す前のどもるかもしれないとの不安
・どもった後の、恥ずかしさ
・どもったことで、ちゃんと相手に伝わらなかったと感じると、悲しい
・どもることへの恐怖、周りの視線への恐怖
・どもることへの、なぜ自分だけがという憎しみ
・どもらない人への嫉妬、どもらない人がうらやましい
・人が怖い
・どもるのが嫌さに、したいこと、しなればらにないことをしなかったことへの後悔
・どもったことで、相手に迷惑をかけたのではないかという申し訳なさ、罪悪感
・電話をすることへの恐怖
・どもる自分に腹が立つ
・ちゃんとできなかったことへの不全感
・孤独感、疎外感(音読でどもった後の昼休みなど)
・どもるつらさがなかなか理解されないことが、さみしい
・なんで私だけが!(どもりなのか!)という悔しさや怒り

 吃音を否定し、話すことから逃げていると、このような感情がいつまでもついてくるのではないでしょうか。大阪吃音教室では、思考、行動、感情を自分自身で把握して、それにどう対処すればいいか、みんなで考え合います。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2019/5/22
Archives
livedoor プロフィール

kituon

QRコード(携帯電話用)
QRコード