伊藤伸二の吃音(どもり)相談室

「どもり」の語り部・伊藤伸二(日本吃音臨床研究会代表)が、吃音(どもり)について語ります。

2018年12月

『どもる子どもとの対話』と対面

八重洲ブックセンターで、『どもる子どもとの対話』に出会いました

 26日に大阪を出発して、まず、甲府に行きました。27日は、雑誌で見た「ほったらかしの湯」に行きました。天気予報は曇りとのことでしたが、雲ひとつない晴天で、甲府盆地が一望できる眼前に、写真のとおり、雪をかぶった富士山の頭がくっきりと見えます。
ほったらかし3ほったらかし4
 日本一の絶景温泉がどこかと問われれば、海と一体となっている温泉もよかったですが、この「ほったらかし温泉」が候補の一つに上がると、僕は思います。
 日本一周を2回経験して、温泉が大好きな僕は、全国各地のかなりの数の温泉に入っています。長年、毎年の年末に行っていた湯布院では、広い露天風呂から見える由布岳が大好きでした。しかし、日本一の絶景露天風呂とも口コミで伝わる山梨県の温泉「ほったらかし温泉」は、富士山と甲府盆地の眺望に訪れた多くの人の心が動くことでしょう。時間を忘れて90分も「富士山」と眼下に広がる甲府盆地を眺めながら、今年1年をぼんやりとふりかえっていました。甲府に来た一番の目的は、このほったらかしの湯に行ってみたかったからでした。

ほったらかし1ほったらかし5ほったらかし2ほったらかし6ほったらかし7

 写真撮影禁止なので、この温泉の雄大さを紹介できないのが残念です。

 大満足して、東京に入りました。
 28日は、新しくできた豊洲市場へ。うーん、築地の方がよかったなあ。豊洲市場で食事をする予定でいましたが、やめて、銀座に行きました。シネスイッチ銀座で「家(うち)へ帰ろう」の映画を見ました。70年前、ホロコーストから逃れたユダヤ人の老人が、自分の命を救ってくれた友人との約束を果たすため、時を経て、アルゼンチンから故郷ポーランドまで旅する姿を描く奇跡のロードムービーです。僕の映画好きは繰り返し書いていますが、小学生から洋画に親しんでいた僕は、吃音で苦しかった学童期・思春期を映画で救われました。今は、ちがった感慨で映画を見ています。「家へ帰ろう」もこれまでの人生を振り返ることができた映画でした。

 その後、学生時代のホームタウンのお茶の水の古書街に。たくさんの思い出のつまった大好きな町です。児童書・絵本の店「ブックハウスカフェ」をみつけて入りました。来年は吃音の絵本をつくりたいとの思いがふくらんできました。

 29日は、東京に来る前偶然TVで見た麻布十番の商店街へ。2日早い年越しそばを更科堀井でいただき、これまた偶然看板を見た、天然温泉「竹の湯」という銭湯を探し、ようやくみつけて入りました。黒いお湯でした。地元の人がわっと入って、まさに芋の子を洗うような感じでした。久しぶりの銭湯体験です。

 30日は、築地市場へ。場外は営業していると聞いていましたが、ものすごい盛況です。人、人、人で、身動きがとれないほどでした。年末の風物詩なのでしょう。その後、両国へ行き、ちゃんこ鍋をいただきました。体も温まって、おなかいっぱいになりました。

 その後、東京駅すぐそばの八重洲ブックセンターへ。7階に、心理や教育のジャンルの本が置いてあります。みつけました!
八重洲ブックセンター1八重洲ブックセンター2
 特別に作られた<『どもる』子どもと対話する>というポップカード。その横に輝いているのは、表紙が前面に出ている『どもる子どもとの対話〜ナラティヴ・アプローチがひきだす物語る力』の本です。
 この本の制作にかかりきりになったこの1年のしめくくりにふさわしい光景でした。
 来年は、なんとかこの本をできるだけ多くの人に紹介していきたいと思います。

 僕の吃音ブログを読んで下さった皆さん、ぜひ、お読みいただき、周りの人に紹介していただけますよう、ご協力をよろしくお願いします。
 このブログ、これからは、吃音についてだけでなく、日常の風景も綴っていきたいと思います。来年は政府から名付けられた「後期高齢者」である、75歳になります。吃音には真剣に向き合いつつ、私生活は、わがままに、楽しく生きたいと思います。

 よいお年をお迎え下さい。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2018/12/31

今、東京で2018年を振り返っています

 今、東京で2018年を振り返っています

 今年も残りわずかになりました。
 改めて今年をふりかえり、よく動いたなあと感じています。
 12月の初めは、千葉で、ことばの教室訪問と翌日の研修会、相談会がありました。このときに、金子書房の『どもる子どもとの対話〜ナラティヴ・アプローチがひきだす物語る力』ができあがってきました。本当に苦労してつくっただけに喜びもひとしおです。不思議なもので何度も読み返しているのに、また、あとがきを読んでいました。相談会・研修会のことは後日、報告できればと思います。
ラグビー1ラグビー2
 翌日は年末の恒例となったラグビー早明戦です。前評判は明治の方がよくて、僕たちも勝つものと思って気楽に見ていたのですが、思いがけない展開になりました。実力差はあまりないのに、残り10分というときには、31対13という差がついていました。ほとんど負けを覚悟した時、俄然明治が力を出し始め、2トライ2ゴールで、31対27という4点差までつめ寄りました。明治がボールを支配したまま、80分を経過。1トライすれば逆転というところまで追い詰めました。奇跡の逆転を信じたのですが、ちょっとしたミスでノーサイド。一度は負けを覚悟したのに、あそこまで追い詰めると、やはり惜しかった! 負けてしまいましたが、おもしろいゲームでした。
 校歌を歌うことも、紫紺のシャツや旗に懐かしさを感じることも、終わった後の銀杏並木も、恒例になったラグビー観戦でした。
ラグビー3ラグビー4ラグビー5ラグビー6ラグビー7ラグビー8
 その後、大阪に帰り、今年最後の「スタタリング・ナウ」の編集をし、15日は大阪吃音教室の忘年会でした。

 12月22・23日、吃音親子サマーキャンプに参加した、高知の保護者の働きかけで、高知での吃音相談会と翌日の研修会が実現しました。吃音相談会が終わった後、高知市の言語聴覚士会の役員の人たちとの懇親会がありました。そこに、当時京都大学の学生で、大阪教育大学の伊藤研究室に良く出入りしていた、高知県のことばの教室の教師になっていた、なつかしい人との出会いもありました。このことはまた書きたいと思います。

 いろいろなことがあったのに、なかなかブログの更新ができませんでした。来年1月には昨年を振り返ってのブログを書きたいと思います。

 今年1年がんばったご褒美に、この年末年始は、東京で過ごしています。昨年は玉造温泉でした。今年はお江戸の正月です。着いた日からあちこち歩き回っています。

 日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2018/12/30

東京・吃音ワークショップ

伊藤伸二・東京ワークショップ


 「吃音を治すことにこだわらず、どもりながらどう生きていくかを目指そう」を大事にして活動していますが、どうしても活動の中心は、大阪や関西になってしまいます。
 そこで、どもる問題について考えたり話し合ったりする関東地方でのワークショップを年に一度開催しています。今回で、第7回目になります。
 参加者ひとりひとりの吃音の悩み、知りたいこと、体験したいこと、学びたいことに関わり、それを皆で共有するスタイルで進めていきます。
 吃音について深く考えたい方、どもりながら生きていく上でいろんな思いを抱えている方、どもる仲間とじっくり話したい方、僕や日本吃音臨床研究会の活動に関心があっても大阪まではなかなか行けない方、この機会にぜひご参加下さい。

 内容は参加者の要望によって組み立てますが、次のようなことが考えられます。

◇吃音を生きる、論理療法、交流分析、認知行動療法、アサーティヴ・トレーニング、ポジティヴ心理学などについて
◇吃音で学校や職場などで苦戦している問題についての具体的対処の当事者研究
◇どもって声が出ないときの対処・サバイバル
◇吃音を治す言語訓練に代わる、竹内敏晴さんから学んだ、日本語の発音・発声のレッスン
◇今、困っていること、悩んでいることの課題を明らかにし、展望を探る、ナラティヴ・アプローチ的な公開面接<哲学的対話>
◇当事者研究の手法を用い、やりとりをしながら、今後の対処を明らかにする
         
□日時 2019年1月14日(祝日)   10:00〜17:00

□会場 北とぴあ(東京都北区王子1−11−1)601会議室
  TEL 03−5390−1100
      JR京浜東北線「王子」駅北口徒歩2分
      東京メトロ南北線「王子」駅ト崕亳直結

□定員 18名  

□参加費 5,000円…当日、受付でお支払い下さい。

□申し込み方法 
 〔樵亜´年齢 住所 づ渡暖峭罅´タΧ函´ο辰傾腓辰討澆燭い海箸篳垢たいこと
 О貌伸二・吃音ワークショップを知ったきっかけ を書いて郵送かFAXでお申し込み下さい。

□申し込み締め切り 2019年1月10日(木)

□問い合わせ・申し込み先  日本吃音臨床研究会
     〒572−0850 寝屋川市打上高塚町1−2−1526
           TEL/FAX 072−820−8244


日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2018/12/28 

どもる子どもとの対話−ナラティヴ・アプローチがひきだす物語る力 うれしい感想

 どもる子どもとの対話に寄せて

 渡辺貴裕さんとの出会いは、彼がまだ京都大学の大学院生のときでした。竹内敏晴さんのからだとことばのレッスンを大阪で始めたころ、毎月1回、通ってきていたレッスン生でした。今は、東京学芸大学の准教授です。学生の頃から、吃音親子サマーキャンプには、ずっと参加し続けてくれていて、竹内さんが亡くなってからは、芝居の演出をして下さっています。スタッフへの事前レッスンをして下さる渡辺さん抜きには、吃音親子サマーキャンプでの芝居は成り立ちません。
 そんな渡辺さんが、金子書房からの新しい本『どもる子どもとの対話』を読んで、ご自身のfacebookで、次のような紹介をして下さいました。渡辺さんの了解を得て、ここで紹介します。


 もう20年来吃音親子サマーキャンプその他で私がお付き合いさせて頂いている伊藤伸二さんが、「ナラティヴ・セラピー」の国重浩一さんと出した新刊。
伊藤伸二・国重浩一『どもる子どもとの対話 ーナラティヴ・アプローチがひきだす物語る力』
http://www.kanekoshobo.co.jp/book/b378004.html
良い本だ!
物語の語り直しによる、支配的物語(「どもりは直さなくてはならない」であれ「どもっていては豊かな人生は送れない」であれ)からの解放。自分独自の物語の紡ぎ直し。
第2章に収められた、実際の子どもたちとの対話に、それよく現れている。
この本からあらためて考えさせられたこと。
教師やセラピストはいかに、「治してあげるべき何か」を持つ相手への上下の関係(画像のA)を結んでしまいやすいか、ということ。共通の目的へと共に取り組んでいく三角形の関係(画像のB)に立つのは、当たり前のようなのに、難しい。前者のほうが、ある意味、「専門家」として安心できるんだよなあ、きっと…。どもることに限らず、これはいろいろなこと(「低学力」に「問題行動」に…)にあてはまる。
渡辺さん 図AB
本書、これまでの伊藤さんの本以上に、子どもの声を聞くとはどういうことか、そこで大人は何をできるのかとか、テーマの広がりゆえ、吃音への関心をもつ人以外にも入りやすいものになっている。また、「ナラティヴ・アプローチ」とはどういうものかを知る手引きとしても、具体例が伴っている分、分かりやすい。
私にとっては、これまで伊藤さんの活動との接点というと、吃音親子サマーキャンプでの劇づくりの部分が強かったのだが(今年出た石黒広昭編『街に出る劇場』にも書いた)、今回の本の内容は、私が関心をもって取り組んできている「対話型検討会」やら専門職養成やらと重なる部分がおおいにあって、なんだかとても不思議な感じがした。それは多分、サマーキャンプの劇づくりを教育モデルで捉えられてしまう(私の書き方のまずさのせいでもあるが)ことに対して私が抱いた違和感ともつながってくる。
本書で出てくる、専門家自身の変容。
沖縄の専門学校で言語聴覚士育成に携わる平良さんの言葉。
「滋賀で行われた吃音親子サマーキャンプでは、子どもの力に圧倒されました。子どもは弱い存在、守らなければいけない存在と、私はどこかで思っていたのでしょう。」(p.190)
「言語聴覚士が対象とする人のほとんどは、自分で語ることができませんが、どもる人は語ることばをもっています。その語りのなかに、その人の悩みや葛藤をセラピスト自身の価値観や経験から容易に想像し解釈してかかわる危険性を感じました。私も自分のことを語ることで、自分自身の思考が変わり、言語聴覚士に対する認知が変わり、そのことで行動が変わる経験をしました」(p.191)
この語り、素敵だ。
対象を「弱い存在」とみなす発想や安易にストーリーに当てはめてしまうような捉え方の問い直し。
その重要性は、教師にもそのまま通じる。
この平良さんもそうなのだが、本書には、私の知り合いが多数登場する。
その一人、宮城県女川町からキャンプに参加していたりなちゃん。小6のときの最初のキャンプで私は同じグループで、当時彼女は不登校だったはずだけれどキャンプではよくしゃべっていて、山登りしながら私に延々なぞなぞを出してきて(その大部分を私は答えられなかった)、…といったことをよく覚えている。彼女はキャンプが気に入ったようで翌年以降も参加して劇も楽しんで、学校も行くようになっていた。
そんな彼女は、震災の津波で亡くなった。同じくキャンプに参加されていたお母さんも一緒に。
彼女のことはずっと自分の心に重たく存在してきたし、やはり今でも彼女のことが書かれた部分を読むと涙が出てきてしまう。
それでも伊藤さんは、りなちゃんとの対話や作文を紹介したうえで、書いている。
「彼女のことは決して忘れず、語り継いでいこうと思います。」(p.161)
私もそうしたい、と思う。



日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2018/12/19




『どもる子どもとの対話〜ナラティヴ・アプローチがひきだす物語る力』出版

金子書房『どもる子どもとの対話〜ナラティヴ・アプローチがひきだす物語る力』
本屋さんの店頭に並んでいます


どもる子どもとの対話 ジュンク堂天満橋 「吃音に対する否定的な物語」を書き換えるために、子どもと親、子どもとことばの教室の担当者や言語聴覚士が、どのような対話をすればいいのか、ニュージーランドの大学院でナラティヴ・アプローチを学んだ臨床心理士の国重浩一さんと、吃音を生きる子どもに同行する教師・言語聴覚士の会の仲間たちがディスカッションして作り上げた、実際の子どもとの対話に役立つ本『どもる子どもとの対話〜ナラティヴ・アプローチがひきだす物語る力』が完成しました。

 千葉での吃音研修会・相談会に間に合うようにと、出版社にはかなり無理をしていただいたようです。前日の11月30日、刷り上がったばかりの本を、編集者が50冊、僕たちが宿泊しているホテルまで届けてくれました。ホテルのロビーのソファに座り込み、しばらく読みました。できあがるまでのいろいろなことが頭に浮かび、感慨深いひとときになりました。
 翌日の研修会や相談会の会場で、たくさんの人が買って下さいました。

 千葉から大阪に戻ると、まもなく、僕の家にも、出版社から本が送られてきました。大阪吃音教室のメンバーのひとり、西田逸夫さんから、「ジュンク堂に並んでいました」とメールがありました。まだ、店頭には並んでいないと思っていたのですが、メールとともに送られてきた写真は、間違いなく金子書房の新刊です。
 早速、次の日、僕も紀伊國屋に行ってみました。確かにありました。
 2013年に「吃音の当事者研究」を出版してから5年。久しぶりの出版です。

 僕が吃音に悩み始めたのは、吃音に対してもった否定的なナラティヴで、そのナラティヴを書き換えていくことが、僕の吃音の旅でした。その体験から、子どもの頃に吃音に対する否定的なナラティヴをもたないことが最も大切だと考えてきました。そのための具体的な取り組みとして、僕の体験をナラティヴで整理し、どもる子どもとの、ナラティヴ・アプローチ的な対話を続けることばの教室の実践をたくさん紹介することができました。
 共著者の国重浩一さんが、ナラティヴ・アプローチを分かりやすく解説して下さり、実践に対して解説・コメントもして下さいました。ナラティヴ・アプローチが最も大切にしている、たくさんの質問を提示し、実践の意味づけ、後付けをしていただきました。
 ナラティヴ・アプローチに関心をもつ人々にとっても、入門書的な分かりやすい本になりました。
 
 できるだけ多くの方に紹介し、広めていきたいと願っています。ぜひ、お読み下さい。そして、お知り合いの人にご紹介いただければ、幸いです。

 ご希望の方は、書店でも、アマゾンでも、購入できます。
 また、日本吃音臨床研究会にご注文いただくこともできます。2376円を、郵便振替でご送金いただければ、送料は当方負担でお送りします。
   加入者名 日本吃音臨床研究会  口座番号 00970-1-314142

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2018/12/18
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