伊藤伸二の吃音(どもり)相談室

「どもり」の語り部・伊藤伸二(日本吃音臨床研究会代表)が、吃音(どもり)について語ります。

2018年09月

東京大学先端科学技術研究センターでのイベント、終わりました

東京大学先端科学技術研究センターでのイベント、終わりました


9月7日、午後1時半より、東京大学先端科学技術研究センターで、「どもる人たちの当事者運動を振り返る 伊藤伸二さんを囲んで」というイベントが行われました。
東大イベント 先端研前
 これは、東京大学先端科学技術研究センターの大学院生の山田舜也さんが企画して下さいました。
山田さんは、昨年10月、大阪吃音教室に初めて参加され、その後、2度の新・吃音ショートコースや東京ワークショップ、吃音親子サマーキャンプでご一緒しています。東大スタタリングというグループを運営し、当事者研究についてもグループで取り組んでいる若きどもる当事者です。
 山田さんが所属する東京大学先端科学技術研究センターには、盲ろうを生きる福島智・東京大学先端科学技術研究センターバリアフリー分野教授、車いす生活の熊谷晋一郎・東京大学先端科学技術研究センター当事者研究分野・准教授が所属しておられます。
東大イベント タイトル東大イベント 伸二講演
 僕が75分、お話した後、福島さんと熊谷さん、山田さんも登壇し、僕の話を受けた感想を語るところから、総合討論が始まりました。
東大イベント 福島・熊谷東大イベント 伸二
 僕は、この講演のお話を受けてから、いろいろこれまでのことを振り返りました。1965年の夏、大学1年生の時に入寮し、吃音治療に励んだ、東京正生学院での30日間は、僕にとってどんな意味があったのか、その秋に創立した言友会というセルフヘルプグループの持つ意味、言友会創立後10年の動きとその意味など、これまでも考え、語ってきたことだけれど、改めて資料を持ち出して考えました。その中で、僕は、自分の学童期までさかのぼりました。
 小学2年生の学芸会でせりふのある役から外され、その後、どもりに悩むようになったという話はよくしています。そのエピソードから、教師の配慮、配慮の暴力、対等に子どもと相談する必要性など提案してきました。そして、そのときに持ってしまった「どもりは悪いもの、劣ったもの、恥ずかしいもの」「どもっていれば、有意義な人生は送れない」「どもりを治さないと僕の人生は始まらない」などのストーリーのまま、僕は21歳まで生きました。
 21歳で別のストーリーを手に入れました。セルフヘルプグループで活発に活動していくのですが、小2から21歳までの「勤勉性のまったくない、無気力」のブランクがありながら、どうして学童期・思春期の取り戻しができたのか、それは、僕の学童期以前、小2以前の、両親からの基本的信頼感と、僕の非認知能力のおかげだったのではないかと気づきました。非認知能力は、ひとつのことに粘り強く取り組む力、内発的に物事に取り組もうとする意欲のことであり、忍耐力、社会性・自信・楽観性などですが、それがあったから、僕は、21歳のとき、方向転換できたのだと思います。言い換えれば、言語訓練より、非認知能力を育てることこそが、幼児期・学童期に大切なのではないかと思うのです。
 東大でのイベントに向け、いろいろと考え、準備する中で、整理したことをきっかけに、まとめてみました。
 
 盲ろうの福島さん、脳性まひで車いす生活の熊谷さん、それぞれの支援者・通訳者、そしてこの企画を考えてくれた山田さんたちのおかげで、充実した豊かな時間を過ごしました。盲ろうの福島さんとのコミュニケーションは、支援者のおかげで時間差がまったくなく、障害を感じさせないもので本当に驚きました。映像や本の表紙でしか知らない福島さん、熊谷さんと、楽しく話せたことは、不思議な感覚でした。
 「あの本の人、実物の伊藤がいる」と時々言われることがありますが、こんな感覚かと初めて思いました。どもりでよかったと思える瞬間です。

 平日なのに、関東地方の、吃音プロジェクトの仲間が参加してくれ、心強く感じながら、壇上にいました。また、会場には、元TBSのデイレクターの斎藤道雄さん、医学書院編集者の白石正明さん、「どもる体」の著者伊藤亜紗さんもいて下さり、それぞれが、僕の話はおもしろかったと感想を言って下さり、一所懸命考えて用意した甲斐がありました。
 どもる子どもの子育てについて、これまでもいろんな柱をたててきましたが、東京大学での今回の話が、今後の僕の話の中心的な話題となりそうです。

 今回のことで考えた事、とても大切なことがありましたので、おいおい紹介していきます。今回は、イベントが終わったことの紹介です。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2018/9/12

強烈な台風21号 大阪を直撃

強烈な台風21号、大阪を直撃

 9月4日、朝はまだ青空が広がっていました。早々と電車の運休が決まっていて、これで本当に台風がくるのかなと思うくらいでした。それが、突然、急変しました。
 午後1時過ぎ、空が暗くなったかと思うと、激しい雨風になりました。たたきつけるような雨と風です。
 東京大学先端科学技術研究センターでの講演の、パワーポイント、レジメ作成の最終の追い込みの時期だったのですが、ベランダの様子が気になります。風が強く、外の樹は大きく揺れ、マンション自体も揺れているように感じます。
 そして、午後2時半ころ、風が強くなり、窓ガラスも揺れています。こんなすごい風は、これまで経験したことがないなあと思っていた時、バキッと大きな音がして、ベランダにある、お隣の部屋との仕切り板が割れました。火事のときなど、ここを蹴破って避難して下さいとある、あの仕切り板です。お隣のベランダに置いてあった、ゴミ用のポリバケツ3個が、仕切り板を打ち破って、侵入してきました。そして、仕切り板がなくなったベランダを、ポリバケツは自由に左右に行き来していました。
台風 ベランダ 仕切り板
 風雨のピークは、午後2時から4時ころまででした。
 後でニュースで見るテレビの映像も、トラックがひっくり返る様子や樹が根元からなぎ倒される様子、工事現場の足場が崩れる様子、家の屋根がはがれる様子を映し出しています。台風で、こんなすごいのは、初めてかもしれません。昼間の直撃だったので、よけいにその思いを強くしました。
 夜もまだ風は強く、雨も時折強く降っていましたが、一夜明けて、5日は、さわやかな風と青空の朝を迎えました。
 今朝、かなり集中して、昨日、送るはずだったレジメをようやく仕上げて、送りました。
 やれやれと思い、ゴミを捨てに外に出てみると、マンションのゴミステーションのそばのフェンスが見事になぎ倒されたかのように曲がっています。
 買い物に行くため、車を走らせると、ところどころ屋根にブルーシートが掛けられている家や、屋根の瓦が落ちている家もありました。また、信号機が斜めを向いていて、どこを見て進めばいいのかとちょっと迷うところもありました。警察官が出て、信号機代わりをしている姿も見ました。
 夕方、近くの寝屋川公園をスロージョギングしてみると、太い木が根こそぎ倒れているのを何本も見ました。倒れている木で通れなくなっているところもありました。
 今年は、6月の地震、7月の水害、そして酷暑、今回の台風と、自然の恐ろしさを実感した年でした。
 自然災害は、我が家には直接の被害はもたらしていません。おかげさまで、元気です。電話やメールで心配していただいたので、現状をお知らせしたく、ブログで報告させていただきました。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二  2018/09/05

東京大学先端科学技術研究センターでの講演、近づく

東京大学先端科学技術研究センターでの講演が近づいてきました

 吃音ホットラインという、僕が開設している電話相談には、いろいろな人から電話がかかってきます。どもる本人、どもる子どもの保護者、ことばの教室の担当者や言語聴覚士など、どもる子どもやどもる人にかかわる臨床家、そして、看護師や保健師など援助職の方からも、電話があります。
 さきほども、新潟の看護師さんから電話があり、少しお話しました。そのとき、間近に迫った7日の、東京大学先端科学技術研究センターでの講演を紹介しました。来年の東京ワークショップのこともお伝えしました。
 直接お会いできる、なかなかない機会です。
 平日なので、難しいとは思いますが、間近に迫ってきたので、再度、ご案内します。


 東大スタタリングという自助グループを運営している山田舜也さんという人と、最近、いろいろなところでご一緒することが増えました。東京で開催する東京ワークショップ、関西で行った新・吃音ショートコース、そして終わったばかりの吃音親子サマーキャンプなど、濃密なおつき合いが始まったところです。その山田さんが、私を講師に、次のような内容で話しをしてほしいと、講演の企画を立ててくれました。

・どもることに悩んでいた大学生の頃の伊藤が、誰と出会い、どのような対話を通じて、どのように、どもることについての考えが変わっていったのか。
・50年の活動の中で、伊藤の考え方がどのように変化していったのか。
・言友会を創立して最初の10年ぐらいのエピソードで印象に残っていることはどんなことか。

 また、講演の後のディスカッションでは、今の吃音についてのメディアでの取り上げられ方や、若い世代のどもる人たちの活動など、今の吃音をめぐる状況が、伊藤にどう見えているのか、などについて話を聞きたいとのことです。

 平日の午後の開催というイベントですが、ご都合が合いましたら、ぜひ、ご参加下さい。

 東大先端科学技術研究センターのホームページからの案内です。

『どもる人たちの当事者運動を振り返る 伊藤伸二さんを囲んで』

概要:吃音者の自助グループ『言友会』を立ち上げ、世界で初めて、第1回吃音問題研究国際大会を開催するなど、日本の吃音の当事者活動の先頭に立たれてきた伊藤伸二さんをお招きし、これまでの吃音者の歩みを振り返り、話り合うイベントです。

登壇者(敬称略、五十音順):
 伊藤伸二(日本吃音臨床研究会会長)
 熊谷晋一郎(東京大学先端科学技術センター准教授/小児科医)
 福島智(東京大学先端科学技術センター教授)
 山田舜也(東京大学大学院博士課程/東大スタタリング主宰)

主催:東京大学先端科学技術センター 福島研・熊谷研

日時:9月7日(金)13:30〜17:00

場所:東京大学駒場競ャンパス先端科学技術センター3号館南棟 Eneosホール

プログラム:
  13:00    受付
  13:30    開会挨拶
  13:45−15:00 講演 伊藤伸二
            「吃音の当事者活動の50年を振り返って」
  15:15−16:00 総合討論 福島智、熊谷晋一郎、伊藤伸二、山田舜也
  16:15−16:55 フロアからの質疑応答
  17:00     終了

参加申し込み 〇疚勝´∀⇒軅茵´所属 を記入し、メールにてお申し込み下さい。
メールアドレス  info@bfr.jp

詳しくは、下記を参照して下さい。
http://www.rcast.u-tokyo.ac.jp/events/index_ja.php#events434


日本吃音臨床研究会会長 伊藤伸二  2018/09/05

丁寧に、ことばを大切に生きる

新・吃音ショートコースの感想〜丁寧に、ことばを大切に生きる〜

 新・吃音ショートコースで出されたひとりひとりの問題や課題について、あるときは交流分析の手法で、あるときは論理療法で、あるときは当事者研究風に、関わりました。話題を提供した本人はもちろん、参加している周りの人たちのその場でのしっかりとした支えとその後のレスポンスが、充実していました。ニュースレター「スタタリング・ナウ」で紹介する予定です。ここでは、参加者の感想を紹介します。

・吃音を治す、改善するといった考え方でなく、うまくつきあう、吃音の自分を受け入れることを心がけていきたいと考えることができました。そのために必要な考え方として印象に残っていることばが「自分が自分を傷つけている。悩みは比較することから生まれる。要求水準の高さ」です。これらのことばは、吃音以外の悩みにも当てはまると思うので、自分自身の生き方を豊かにする材料にしたいです。もちろん悩むことがいけない訳ではなく、悩みをなくそうとは思いません。ただ、悩みに支配されない、前を向ける人間になろうと思います。
 そして一番大きいのが、吃音に対するプラスの誤解です。吃音が必ずしもマイナスなイメージではなく、誠実といったプラスのイメージにもなり、また、自分が抱えていた対人援助職として生きていけるかという不安も軽減されました。これが実際の場で定着するためには時間がかかるかもしれません。しかし、自分を大切にして、吃音とうまく向き合いたいと思います。

・「幸せになることは人間の権利であり、義務である。決心さえすれば、今からでもすぐに幸せになることができる」ということばに一番感銘を受けました。一日目に私の話を聞いてもらったとき、相手が自分を傷つけているのではなく、自分が自分を傷つけているということを言ってもらいました。自分で自分を苦しめていたんだと思います。
 自分のだめな考え方に気づく練習をしたり、相手の強みを認めてリスペクトしたりする、紹介されていた「ポジティヴ心理学」を学んでいきたいと思います。すぐにはできないでしょうけど、そのように意識して自分を大切にしていく姿勢を身につけていきたいです。自分の心が浄化できた2日間でした。多くの人のいろいろな考えや意見を聞くことができてよかったです。

・私は初めてこの会に参加したので、皆さんとお会いするのは初めてでしたが、そういった感じがしないくらいアットホームな場で、皆さんが「ここに来たらほっとする」とおっしゃっていた気持ちがよく分かりました。当事者研究では、皆さんが普段の生活の中でたくさん悩み、自分のことも周りの人のことも、とにかくたくさん考えて生きておられることが分かり、楽天的な私はいかに普段「なんとなく」生きているかを思い知りました。話し合いの中で出てきた「ていねいに、ことばを大切にしながら過ごしていく」ということをモットーにしてこれからより良く生きていこうと思います。ことばの教室が子どもたちにとっての安全基地にできるように、これからの教室経営を考えていこうと思います。

・ただなんとなく参加をしただけなのに、たくさんのことを学ばせていただきました。「強みを探す」ということばが心に残っています。「いいところをさがす」は、よく聞くことばですが、嫌いな人の特徴はどうしても「いいところ」とは考えることができずにいました。「強み」と考えることで、人と問題を切り離して考えることができるような気がします。まだしっかりと把握できているわけではありませんが、楽になりました。
 声を出すレッスンは楽しい時間でした。普段は大きな声をあまり出すことがない自分が、大きな声で歌った時、気持ちよかったです。

・普段は、ことばの教室で関わる、子どもや保護者のことを考え、自分のことはついつい後回しにしていました。この2日間で、皆さんのことを通じて自分の今を振り返ることができました。人の中で生きたいと思いつつ、人との関係について悩み苦しむこと、みんなもそうかと思ってほっとしたところもあります。今回、人との関わりで悩みながら今日まで過ごしてきたことを、ひとつひとつ確かめることができました。相手をリスペクトする、相手の強みを見つける、1年経ったときに自分の気持ちをそっと伝える、などです。ああ、よかったんだ、なんとなくではなく、私なりにきちんと丁寧に取り組んできたんだと、心がすーっとしました。私、すごい!と思って日常に戻ることができます。これからは、なんとなくに流されず、ていねいに自分をみつめていきたいと思います。

 ひとりひとりの感想は、真摯に自分をみつめ、自分のこととして考えたこの2日間の充実した時間を仲間と一緒に共有できたことへの感謝であふれていました。このような時間をともに過ごすことができ、僕もとても幸せでした。
 来年も、同じ時期に、第4回新・吃音ショートコースを行いたいと思っています。
 真剣に人生を考える人たちと過ごす時間は、心を豊かにします。
 よかったら是非。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二   2018/09/01
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