伊藤伸二の吃音(どもり)相談室

「どもり」の語り部・伊藤伸二(日本吃音臨床研究会代表)が、吃音(どもり)について語ります。

2017年11月

吃音(どもり)についての質問に答える

10

 日本吃音臨床研究会のホームページに映像を公開しています。その中の一つに、吃音についての、様々な質問に、僕が答えるという「吃音の基礎知識」のコーナーがあります。第一回目の様子はすでに、公開していますが、今回、その二回目の収録が大阪吃音教室の例会の中で開かれました。
 あらかじめ、よく出される質問、質問者が質問したい項目を考えてはおきますが、答えを用意しているわけではなく、僕がその場で即興で答えるというものです。
 最近の僕の講演や講義では、たとえば60人程度の参加者の場合でも、質問用紙に、今一番聞きたいこと、疑問をもっていることを書いてもらい、その場で全ての質問に答えていくというスタイルをとっています。せんだっての、国立特殊教育総合研究所での一日の講義でも、2コマはそのスタイルで進めました。

 今回、大阪の仲間の藤岡千恵さんが質問をして下さいました。ひとつの質問にだいたい10分程度で答えていきました。僕は質問をしてもらうと、頭が活性化して、それまで考えていなかった、言ってこなかったことも、質問に答える中で出てきます。今回も質問者の藤岡さんとのやりとりの中で、今まで言ってこなかったことが飛び出して、とてもおもしろい時間でした。

 25名の参加者の前で、カメラの前で話すのはほどよい緊張で、だから、今まで口にしていなかったことも飛び出してくるのでしょう。普段、大阪吃音教室に参加している人たちも、初めて聞いた話があって、おもしろかった、ためになったと言ってくれました。

 映像プロジェクトの井上詠治さんが、かなりのエネルギーを使って制作してくれています。編集作業が終われば、日本吃音臨床研究会のホームページにアップされます。是非、映像で見る「吃音Q&A」のコーナーを見て下さい。
 先月末、言友会中部地区大会がありましたが、そこに参加していた人の中で、ホームページの映像を見てくれていた人がいて、「プロに頼んでいるのですか」と言われました。映像も音声もとても鮮明だから、そう思ったそうです。

 日本吃音臨床研究会や大阪スタタリングプロジェクトの活動を記録して、YouTubeで公開するプロジェクトが軌道にのってきたこと、とてもありがたく、仲間の力でそれがやり遂げられることに僕は誇りを持っています。インターネット上には、間違った情報、どもる子どもやどもる人を幸せにしない情報が充ち満ちています。

 どうか、日本吃音臨床研究会のホームページに、吃音の動画として、吃音の基礎知識の映像があること、お知り合いに知らせていただければうれしいです。僕が質問に答える映像だけでなく、ことば文学賞の作品を作者が読んでいる映像、竹内敏晴さんから学んだことばのレッスンの映像も公開しています。

 今回の質問項目です。 大阪吃音教室 どもりQ&A 11月10日  質問項目

◆どもりと不安
・どもると不安が高まるのか、不安だからどもるのか
・どもる人の悩みのひとつ「話す前は不安が高まって何も手につかなくなる。不安への対処法が知りたい
◆緊張とのつき合い方
・緊張しやすいです。緊張を和らげるのに効果的な方法を教えてください。
◆事前練習の効果
・発表の前日に事前練習すると、余計に緊張が高まります。別のどもる人は、事前練習したら気持ちが楽になるといいます。事前練習はしたほうがいいですか?
◆喋りやすくする工夫
・どもりは治らなくても、日常で喋りやすくなるための良い方法があればできるだけたくさん教えてください。
◆自己紹介の工夫
・名字が言いにくいので自己紹介がいやです。どうすれば自己紹介をうまく切り抜けられますか?
・自己紹介が嫌で、自己紹介がある場を避けてしまう。
◆第一声が出ない
・吃音の状態のひとつ、ことばそのものが出てこないブロックの状態は、人から見て「何が起こっているのか」がわかりにくい。どもっているとは認識されにくい。
・会社の電話で第一声が出ないので無言電話だと思われて切られてしまうという声もある。
・第一声が出ないときの対処など
◆どもりは差別用語?
・「どもり」ではなく「吃音症」という言葉が目につく。昔は「どもり」と言っていた。
・「どもり」という言葉はあまり使わないほうがいいですか?と聞かれることがある。
◆どもりと落ち込み
・どもる人の悩みのひとつに「どもったあとは何日も落ち込んで引きずります。どうすれば引きずらずに明るくいられますか?」がよく出る。


すでに公開されている映像
◆どもる原因 ◆どもりは治るか ◆どもりの波 ◆どもりと障害 ◆吃音と発達障害
◆どもる人の人口 ◆どもる人の仕事 ◆世界の吃音 ◆どもりの説明の仕方

日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2017/11/11



千葉で吃音相談会をします

 
 千葉での吃音相談会、ひとりひとりと哲学的対話を

 吃音相談会と名づけられた年に一度の相談会を、大阪、神戸、岡山、横浜などで開催してきました。その中でも、横浜は、関東地方で唯一の相談会でした。
 
 これは、僕が大阪教育大学にいたとき、研究生として、また卒業してからも研究室に顔を出していてくれた清水俊子さんが中心に企画・運営して下さっていたものでした。いつ頃から始めたのか、よく覚えていないのですが、昨年の秋まで、おそらく20回を超えて続いてきたものでした。そして、清水さんの相棒として、今は亡き言語聴覚士の安藤百枝さんも、この横浜での吃音相談会には欠かせない人でした。安藤さんも、僕が大阪教育大学にいた頃、自分の息子がどもることをきっかけに吃音について学びたいと研究生として入ってきた人でした。
 組織などない横浜の地で、会場を借り、新聞社などに案内の掲載を依頼し、申し込んできた人に誠実に対応し、当日を迎えるということをずっと続けてくれました。
 参加人数が少なくてもいい、年に一度、清水さんや安藤さんに会えるだけでいいと言い続けてきましたが、毎年、それなりに人は集まり、いい時間を過ごすことができました。「スタタリング・ナウ」で紹介した、プロのバイオリニストの小林悠太君も、この横浜の相談会で出会った人でした。

 この横浜の相談会は、昨年で一応の幕を閉じ、今年からは、千葉で相談会を開催することになりました。スタタリング・ナウちばの渡邉美穂さんが中心になって、会場を探し、広報活動を行い、企画・運営してくれることになったのです。

 関東地方で、このように年に一度、相談会が開けること、ありがたいことだと思います。
 吃音親子サマーキャンプや新・吃音ショートコースなど、活動の拠点がどうしても関西中心になってしまいます。
 2月12日の東京でのワークショップと、この相談会が、数少ない関東地方での活動です。

 どもる子どもとどうかかわるか、参加者からの相談や質問を中心に語り合います。また、僕自身の体験、僕がかかわった大勢のどもる子どもやどもる人の体験、そして最新の研究や情報をもとに、子育てや子どもとのかかわりについて提案します。ぜひ、ご参加下さい。
 詳細は、下記の通りです。

        千葉吃音相談会
〔日時〕12月2日(土)13:30〜16:30(受付 13:00)
〔会場〕千葉県教育会館 本館 303号室
〒260−0013 千葉市中央区中央4−13−10
       TEL 043−227−6141
〔対象〕どもる子どもの保護者、ことばの教室の担当者、言語聴覚士、通常学級の教師等
〔参加費〕1500円(本代・資料代として)
〔申し込み方法〕―蚕蝓´¬樵亜´E渡暖峭罅´せ劼匹發稜齢(学年)
 チ蠱未靴燭い海函知りたいこと、今困っていること を明記の上、お送り下さい。
〔申し込み先〕〒260−0007 千葉市中央区祐光1−25−3
           千葉市立院内小学校 ことばの教室 渡邉美穂さんまで

2月12日の東京でのワークショップの詳細については、また後日、お知らせします。

日本吃音臨床研究会会長 伊藤伸二 2017/11/09

オープンダイアローグとムーミン

絵本カフェ「ハーゼ」での豊かなひととき

 僕の家の近くには、大阪府立寝屋川公園という広大な公園があります。食後に、そこをスロージョギングすることが日課になっています。いろいろな健康法が取り上げられていますが、僕が続けられているのは、このスロージョギングだけです。大体45分から1時間くらい、本当にゆっくり走ります。いつも同じ道だと飽きてくるので、ときどき、道を変えます。

 昨年のこと、いつものように走っていて、絵本カフェ「ハーゼ」というお店をみつけました。お店らしくない、普通のおうちのようなエントランスですが、絵本カフェという名前に惹かれて入ってみました。壁の三方に絵本が並べてあります。一方はガラスで、明るい日差しが入ってきます。ゆったりとした気分で本を読むのに最適の空間でした。
 カフェオレを注文し、並べてある絵本を見ていると、店の方が話しかけてこられ、僕もつられていろんな話をしました。その方のお連れ合いが、僕とよく似ていることで話が弾みました。糖尿病仲間でした。僕も、合併症のことはいつも気になっていて、腎臓だけはなんとか死守したいと思っていましたので、予防もかねていろいろ質問しました。話し好きの方のようで、初対面でここまで話しますか?というくらいあけっぴろげにいろんな話をして下さいました。

 何より興味深かったのは、そのお連れ合いが幼児教育の専門家で大学で教えていること、絵本が好きで絵本を探して世界を旅していること、絵本のもつ力を伝えたいと思っていらっしゃることなど、僕の関心と共通していることがたくさんありました。

 その後、お連れ合いの長谷雄一さんともお会いしました。吃音についての絵本を作りたいという夢を持っているので、それについてご相談もしました。すてきな絵本も紹介していただきました。何度かハーゼにおじゃましていたのですが、最近は、忙しくて、顔を出すことができずにいて、気になっていました。そんなとき、絵本の集いをするからぜひとお誘いのお手紙をいただきました。なかなか実現できなかった集まりで、お話のタイトルは、「ムーミンの本当の姿」でした。
絵本カフェ ハーゼ
 10月30日(月)13時30分から絵本の集いが始まりました。参加者は、保育に携わっていた方、絵本が好きな方、ムーミンが好きな方のように見受けられました。総勢12、3名でした。

 僕は、ムーミンについては、全く知りませんでした。アニメも見たことがないし、本も読んだことがありません。知っているのは、姿がカバに似た動物だということだけでした。
 お話は、ムーミンはカバか妖精かというところから始まりました。カバではなく、妖精とのことでした。フィンランドにある民間伝承、日本でいう日本むかしばなしのように長く伝わっているもので、半分はお化け、半分は精霊だと長谷さんは説明されました。

 ムーミンに限らず、物語を見るときに、3つのポイントがあると言って、<三間>を紹介して下さいました。
 ゞ間 ∋間 C膣屬裡海弔任后

 ,龍間は、ムーミン谷で、誰もが安心して自分を出せる場所。
 △了間は、フィンランドは夏と冬の差が大きく、昼と夜の時間の長さも大きく違い、物語の描き方も季節によって違うとのこと。
 の仲間は、ムーミン谷の住人たちで、たくさんいるそうです。一番人気は、スナフキンだそうですが、僕は全く知りませんでした。

 <三間>は、教育、保育、子育てなどを考えるときも大事なポイントになります。忙しい現代の子どもたちにとっても、必要なことでしょう。長年続けてきたセルフヘルプグループは、まさに<三間>がそろっています。吃音親子サマーキャンプも、この<三間>を軸に考えることができるなあと、お話をお聞きしながら考えていました。

 ムーミンの作者であるトーベ・ヤンソンは、芸術家の家に生まれ、このお話は、1939年頃から構想を立て、1945年に発行されたそうです。ちょうど第二次世界大戦をはさんでいることから、反戦の意味がこめられているとお聞きしました。だから、ムーミンのお話には、ー屐´△金 K塾蓮,出てこないそうです。車は戦車をイメージするから、お金は経済戦争を、暴力はことばどおりです。

 ここで、僕は質問しました。暴力が描かれていないということだけど、「言い争い」程度はどうなのかと。言い争いということはあったようです。ぎりぎりのところまではいくとのことでした。

 ムーミン谷の住人の中で一番人気のスナフキンは、教育者らしからぬ教育者だそうです。命令はせず、相手に考えさせる問いかけをするそうです。アドバイスや提案はするけれど、決定は本人に任せるとのことです。問いかけの教育といいます。

 そこで、フィンランドといえば、オープンダイアローグ発祥の地。対等な関係で、話し合いをするということと、どこかでつながっていると感じました。
 ムーミンとオープンダイアローグが僕の中で結びつきました。ムーミンを生んだフィンランドだから、オープンダイアローグの発想が出てきたのだと、僕の中では結びついたのです。
 ムーミンと、オープンダイアローグの地、フィンランドに行きたくなりました。
 ムーミンのお話の奥深さに触れることができ、とてもいい空間でした。こんな時間もいいなあとしみじみ思いました。

日本吃音臨床研究会会長 伊藤伸二 2017/11/02

言友会中部大会


言友会中部大会

 言友会中部地区大会で話してきました。言友会から離れて20年以上が経ち、ほとんどの言友会と関係がなくなりました。唯一、関係が続いているのは、岡山言友会くらいですが、今回は長年の親友、岐阜言友会の村上英雄さんからの依頼があったので、出かけることができました。村上さんとのつきあいは、もう45年になります。

 21歳のとき、僕は、どもりを治すために東京に行き、正生学院で必死に訓練しました。でも、僕の吃音は治りませんでした。そして、そのとき出会った人たちとセルフヘルプグループ・言友会を作りました。
 村上さんは、言友会が創立して4、5年くらい経ったときに、言友会に入ってきました。僕が運営委員長の時、事務局長として僕を支えてくれました。事務所をつくるために、真っ黒になってアルバイトをした写真に一緒に写っています。
 村上さんが、大阪教育大学に行って吃音の勉強をしたいと言い出し、以前から知っていた神山五郎先生を紹介するため、一緒に会いに行きました。そのときの話が面白かったので、僕も大阪教育大学行きを決めました。このことは、以前のブログでも書きました。
 ついていった僕が、大阪教育大学に残り、その後、そこから活動を広げていきました。今の僕をつくるきっかけに、彼は大いに貢献してくれたことになります。その彼からの依頼ということで、すぐに引き受けました。

 秋は、静岡、岡山、島根、群馬などで、どもる子どもたちやその保護者、担当者たちとのキャンプが続いています。そんな中で、どもる大人が対象の集まりは、久しぶりの感じがしました。

 10月28・29日、会場は、岐阜県高山市の「お宿・信田」でした。40人くらいの参加です。懐かしい顔もたくさんありました。みんな、それなりに年を重ねてきています。僕も、同じだけ年を重ねてきました。「伊藤さんが来ると聞いて、参加しました」と言ってくれた人も何人かいました。

岐阜中部大会 横断幕
岐阜中部大会 講演中の伸二
岐阜中部大会 伊藤とみんな
岐阜中部大会 集合写真

 今、僕が考えている吃音哲学を語りました。その後、歌を歌い、詩を読み、言語訓練ではない、声を出す喜び、表現する楽しさを知ってもらいたいと思い、日本語のレッスンをしました。

 4時間ぶっ通しの私の話は、歌やことばのレッスンを入れたとはいえ、参加者にはしんどかったかもしれません。
 年を重ねてくると、もうどもっていることが大きな問題ではなくなるようです。自分だけのことを考えたらそのとおりでしょう。僕ももちろんそうですが、僕の経験が、次の世代に受け継がれていってほしいなとは思っています。僕たちがしてきた、同じ失敗は繰り返さず、吃音とともに豊かな人生を歩んでほしいのです。
 
 使命感に燃えているわけではありません。ただ自分が楽しいからしているのですが、どこかで誰かの役に立っていればこんなにうれしいことはない、そんなことを思いながら、今、活動を続けています。その後の懇親会は、盛り上がっていたようです。交流を深めることも、大切な活動のひとつです。

 翌日は、台風の影響もあり、少し先に失礼して、大阪に戻りました。

 2週連続で週末は、台風の影響を受けました。なんとか早く切り上げるなどして直撃を受けずに済みました。

 さあ、週末3度目は沖縄です。幼児吃音について話します。多くのどもる人の経験から、今の教育・医療・福祉の現場の大きな変化から、吃音だけが取り残されているのが残念でなりませんが、最近の大転換の話を、吃音に結びつけて話す予定です。今後、幼児期の吃音について、発言していこうと思っています。沖縄がそのスタートになります。
 日本吃音臨床研究会会長 伊藤伸二 2017/11/01
livedoor プロフィール
QRコード(携帯電話用)
QRコード
  • ライブドアブログ