伊藤伸二の吃音(どもり)相談室

「どもり」の語り部・伊藤伸二(日本吃音臨床研究会代表)が、吃音(どもり)について語ります。

2016年11月

吃音キャンプ おきなわ 感想


 中学生の時、初めて吃音親子サマーキャンプに参加した有馬久未さん。彼女が高校1年生のときの、サマーキャンプに参加しての作文が残っています。「キャンプは私を豊かにしてくれる。自分の考えを持っている人や、夢や目標をもっている人たちと出会えるキャンプに参加して、どもりでちょっと良かった」と書いています。その彼女が、20年ぶりに、吃音親子サマーキャンプではなく、沖縄のキャンプに参加しました。
 20年の歳月の中で、成長し、今社会人として働いている彼女が、沖縄のキャンプについての感想を書いてくれました。20年の歴史の重みを感じます。素直な彼女の感性に乾杯。


沖縄の空気に包まれ、癒され       
           有馬 久未

沖縄のキャンプから帰って一週間後、実家に帰った時、母と夕食の準備をしながら「先週沖縄に行ってきてん」と話してみた。「そう、海に行ったの?」「ううん、私が子どもの頃に行った吃音のキャンプあったやろ、今回沖縄でキャンプがあって、そのお手伝いに。」
 多くの出会いがあったこと、心が動かされたこと。学びがあったこと。参加して、とても気が晴れたこと、感謝していること―――意外にも、心を軽くして話している自分に気づく。そして母はしきりに「そう、それは良かったねぇ」と穏やかな笑顔で答える。意外にも。

 約20年ぶりの吃音キャンプだった。前回は、正真正銘、どもる子どもとして。そして今回はどもる大人、スタッフとして。楽しみでありながら、これまで何の恩返しもしてこなかった私に何ができるだろうと不安もあった。それでも沖縄行きを決めてからは、10代の初参加の時に抱いた、初めて吃音の人たちと吃音のことについて話せること、共感してもらえること、吃っても全く咎められないことに対するあの言い知れぬ安堵感を、改めて思い出していた。

 キャンプ当日、出会いの広場に始まり、レク、話し合いや作文の時間など、数々のプログラムが進められていく。子どもたちの心にどんな変化が起こっているのか、想像するだけで心が高まる。懐かしさを感じながら、話し合いの時間では、どもる子どもの保護者のグループに入れていただいた。悩みや迷い、嬉しかったことなど、皆さんのお話はどれも愛情に溢れていた。同時に、自分の親もこんなふうに考えてくれていたのかなと思いを巡らせた。
また、このキャンプを支えた言語聴覚士の方々、言葉の教室の先生方の思いを近くで聴けたのは、とても贅沢な時間だったと思う。どなたも信念を持ち、どもる子どもたちとの関わり方を真摯に考えておられた。それは、私にとって結局「自分ごと」でしかなかった吃音を、良い意味で客観視する時間でもあった。

 休憩の時間など、広場で年齢関係なく一緒に走り回る子どもたちはきっと、単に「外で遊べて楽しい」以上のワクワクを心に抱いていたのだろうと思う。そしてキャンプが終わって日が経った今、参加した子どもたちはどのような気持ちでいるかなと考える。
 このキャンプによって劇的に変わることができたら、それが一番素晴らしいと思う。でも、それがすぐに実現できなくても、決してダメではないとも思う。葛藤しながら、自分の生き方を自分で選択する場面で、キャンプで得たことを噛みしめられたら良いと思う。できるだけ、吃音を言い訳にせず過ごせたらいい。それが人によっては1週間後かもしれないし、5年後、10年以上後かもしれない。それぞれのタイミングがあって良いのではないか。

―――私は母と心が通わないと感じた10代の頃から、吃音のことを含め、自分の心の奥底にある思いを伝えることは少なくなっていた。
 しかし考えてみると、20年ほど前に伊藤さんの記事を新聞で見つけては連絡をとり、翌年にはサマーキャンプに一緒に参加してくれたのは、まぎれもなく母だった。その後は日々の生活に流され、私自身どもりを受け入れられずに思い悩むことも少なくなかったが、それでも大人になって自分の意思で大阪吃音教室に参加し、大阪スタタリングプロジェクトの会員になり、吃音のことに留まらない、人との関わりや心の持ち方について考える場に恵まれながら、何とか日常に向かっていく今日の私の原点は、20年前のあの日だったのだろう。親にしてもらったことは無数にある。吃音に悩む思春期の私を放っておかなかった母に、ちゃんと感謝を伝えなければ。

 というようなことを、実家でジーマーミー豆腐を母と食べながら考える。沖縄のことを話さずに一人で食べてしまわないで良かった、一緒に食べる方が格段に美味しい。こうしみじみ思いながら。


 1996年、第7回吃音親子サマーキャンプに参加した、高校1年生の有馬さんが書いた作文を紹介します。

   
どもりで、ちょっと良かった
               有馬 久未
 帰ってきて丸一週間経った今、サマーキャンプでの楽しかった思い出ばかりが頭に浮かんでくる。もしかしてあの3日間、夢の中にいたんじゃないかと思うほど。おととし初めて参加した時には感じたことが多すぎて何から書いたら良いのか分からず、結局書かなかった感想を、今度こそは書き残しておこうと思う。
 私の知っている人たちがあまり参加しないと聞いていたので多少の不安はあったものの、やはりお互いに悩みを知っているだけあってすぐに仲良くなれる。このキャンプの大きな魅力だと思う。普段の私なら、初対面の人と話す時にはなるべくどもりたくないと思うから、しゃべることばがとても限られてきて、うわべだけのつき合いになってしまう。ここではそんなことに気を使う必要は全くない。笑われることも、妙な気まずい雰囲気が流れることも。初めてどもりを話題にして話した時、「あー、分かる分かる!」というその言葉がこの上なくうれしかったし、今回もとても新鮮に思えた。
 劇が終わった後の、父母の方の感想の中で、「声を出そうと一生懸命がんばっている姿は感動的」ということばが、心に強く残っている。どもりでない子が書いた文章も、とても温かく、久しぶりに心を打たれたという感じだった。
 このキャンプは、私を豊かにしてくれる。自分の考えを持っている人や、夢とか目標を持つ人に出会って、刺激されるから。そしてまた、私も大きくなりたいと思うのだ。
 もし私がどもりでなかったら、この人たちと会うこと、存在を知ることさえなかったんだと思うと、この偶然が不思議でたまらない。また、こういう場を与えてくれる人がいて、私はラッキーだと思う。どもりでちょっと良かったなと思う。

日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2016/11/30

写真で見る、吃音親子キャンプinおきなわと番外編


沖縄でのキャンプの様子を写真で紹介します。

はじめのあいさつをする平良和さん沖縄キャンプ1 平良挨拶

伊藤伸二のあいさつ沖縄キャンプ2 伸二挨拶

芝生の上での開会式沖縄キャンプ3 開会式全体

千葉の渡邉美穂さんによる出会いの広場沖縄キャンプ4 出会いの広場渡邉

出会いの広場でのパフォーマンス沖縄キャンプ5 出会いの広場パフォーマンス

集合写真沖縄キャンプ6 集合写真

スタッフのためのキャンプの基礎講座沖縄キャンプ7 基礎講座

みんなで輪になって2日間を振り返りました沖縄キャンプ8 ふりかえり

会場の石川少年自然の家。たたずむのは鹿児島から参加した溝上茂樹さん。沖縄キャンプ9 自然の家溝上

沖縄県平和祈念資料館沖縄 祈念館 全体

沖縄県平和祈念資料館のそばの、きれいな海沖縄 祈念館 海

沖縄県平和祈念資料館、名前が刻まれた碑沖縄 祈念館 碑

旧海軍司令部壕の中を歩く坂本英樹さん沖縄 旧海軍壕 坂本

日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2016/11/29

沖縄キャンプ番外編  平和への祈り


 石川少年自然の家を後にして、スタッフの方の車に乗せてもらい、那覇市内に戻りました。飛行機の便の関係で一足先に帰った井上さんを除いて、僕たちの仲間と平良さん、平良さんの子ども2人と一緒に夕食に行きました。何を食べるかは、もうすでに自然の家を出発したときから、決まっています。「ステーキ!!」と叫んでいたのは誰でしょう。

 自然の家の粗食が一転して、豪華なステーキをたっぷりいただきました。この日のうちに帰らないといけない渡邉さんと有馬さんを見送って、平良さんたちと別れ、僕たち4人は、那覇の国際通りをぶらぶら歩きました。観光客、修学旅行生たちがにぎやかに町を歩いています。キャンプの余韻に浸りながら、沖縄のお酒を飲んでいた坂本さんと溝上さんでした。僕は、もちろんウーロン茶です。

 翌日は、溝上さんの運転でレンタカーを借り、飛行機出発ぎりぎりまで、戦跡めぐりをしました。僕が最初に沖縄に訪れたときは、個人タクシーを借り切り、タクシーの運転手さんが事前にしっかり勉強してきて、解説付きで朝から夜7時ごろまで時間の限り回ってもらったのですが、回るところが多くて、一つ一つにあまり時間がとれませんでした。今回は、3カ所しか回らなかったのですが、その分、一カ所ずつ心ゆくまで時間をかけることができました。

 最初は、沖縄戦跡国定公園に指定されている沖縄県平和祈念資料館。摩文仁の丘を回り、亡くなられた方の名前を刻んだたくさんの碑に圧倒されました。今日も暑い日で、海も空もは真っ青です。がけから飛び込んだ人の血で真っ赤になっていたというその海は、悲しいほどきれいで穏やかでした。ゆっくりじっくり館内を見て回りました。無念の思いで死んでいった人たちを代弁する体験者の証言の数々は、圧倒的な重さで迫ってきます。歴史の真実から目をそむけることはできないと思いました。
 展示のむすびのことばを紹介します。

 
沖縄戦の実相にふれるたびに
 戦争というものは
 これほど残忍で これほど汚辱にまみれたものはない
 と思うのです

 この なまなましい体験の前では
 いかなる人でも
 戦争を肯定し美化することは できないはずです

 戦争をおこすのは たしかに 人間です
 しかし それ以上に
 戦争を許さない努力のできるのも
 私たち 人間 ではないでしょうか

 戦後このかた 私たちは
 あらゆる戦争を憎み
 平和な島を建設せねば と思いつづけてきました

 これが
 あまりにも大きすぎた代償を払って得た
 ゆずることのできない
 私たちの信条なのです

 その後は、旧海軍司令部壕に行きました。1944年日本海軍設営隊によって掘られた司令部壕で、当時は450メートルあったと言われています。カマボコ型に掘り抜いた横穴をコンクリートと杭木で固め、アメリカ軍の艦砲射撃に耐え、持久戦を続けるための地下陣地で、4000人余の兵士が収容されていたそうです。1944年といえば、僕の生まれた年です。

 最後に、ひめゆり平和祈念資料館に行きました。修学旅行生がたくさんいて、外からは観光地化しているようにも見えましたが、中に入ると、屈託のない笑顔の写真がたくさん飾られており、それが逆に戦争の悲惨さを浮き彫りにしているようでした。生き残った人の証言は、歴史の真実を語っています。ここでもまた、平和への思いを新たにしました。

 溝上さんのおかげで、ゆっくりと回ることができました。この事実を前にして、この国の沖縄に対する国の対応や、平和を今を思うと絶望的になりますが、それでも今生きていることを噛みしめ、僕にできることをこつこつ続けていきたいと思いました。

 大阪に戻り、「スタタリング・ナウ」の編集・発送を終え、先週末は島根県松江市で、「幼児吃音」をテーマに講演を行い、大阪に戻り、やっと沖縄キャンプのブログの最終にたどり着きました。気温は、10度。東京は雪だとか。ほんの少し前の沖縄は、30度もあったのに。夏から一気に冬になりました。今年も残り1ヶ月。やり残している仕事の山を少しずつ崩していこうと思っています。

沖縄キャンプの写真をまとめて紹介します。

日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2016/11/28
 

どもる子どもの保護者、臨床家のための横浜相談会


 吃音相談会のお誘い

 毎年、この時期に、横浜で吃音相談会・講演会を行ってきました。企画してくれているのは、僕が大阪教育大学の教員をしていた時、僕の研究室で助手をしていてくれた清水俊子さんです。清水さんは、その後、豊中市の教育センター・ことばの教室に勤めていたのですが、結婚を機に神奈川県に移り、現在もスクールカウンセラーとして活躍しています。ずっとつきあいは続いていていて、15年前から、この吃音相談会・講演会を企画してくれています。初めてであったときから数えると、長いつきあいの、信頼できる仲間の一人です。

 横浜での相談会のこれまでの14年間には、いろいろな人との出会いがありました。横浜で出会ったどもる子どもが滋賀県の吃音親子サマーキャンプに参加したこともありました。ことばの教室の担当者が、自分の勤めている市の研修会に僕を講師として呼んでくれたこともありました。

 世界で活躍する音楽家
 そして、忘れられないのは、両親の背中に隠れるようにしていたひとりのどもる大学生1年生のことです。横浜での出会いから、彼は、僕たちが開催した吃音ショートコースに参加しました。その年のテーマは、サイコドラマでした。よくどもる彼は、自分の課題を差し出し、講師の増野肇さんとともに、曼荼羅を経験しました。
 その様子は、その年の年報(サイコドラマのすすめ 増野肇ワークショップ)に詳しく掲載しています。また、ヴァイオリンを学んでいた彼は、大変な努力をして、ウィーン国立音楽大学に留学し、今はウィーン・ヨハン・シュトラウス管弦楽団の団員です。今年の1月、「ニューイヤー・コンサート2016」の日本公演で来日したのですが、東京での公演は、東京ワークシヨツプと日程が重なり、会うことはできませんでした。
 世界に羽ばたき、自分の夢を実現させて活躍する姿を思うたびに、横浜相談会の出会いを思い出します。
 このことについては、日本吃音臨床研究会のニュースレター「スタタリング・ナウ」245号(2015.1.20)に母親の手記という形で載せています。

 ひとつの出会いが、その人の人生を変えるきっかけになることがあります。僕自身も、たくさんの出会いで生かされてきました。きっと今回も、いい出会いがあるでしょう。
 ご都合がつきましたら、ぜひ、ご参加下さい。

 どもる子どもの親と臨床家のための吃音相談会( in 横浜 )のご案内


 吃音とともに豊かに生きていくことをテーマに、参加者とともに作り上げていく相談会として続けてきたこの会も、横浜での開催は今年で15回目となりました。子どもの成長に関わる様々な課題と同様に、吃音の課題も、幼児期、学童期、思春期と進むにつれて変化します。子どもの吃音とどう向き合い、子どもにどのように接すればよいのか、適切な情報が少ない中で、悩んでいる親や臨床家は少なくありません。日頃、子どもの吃音について悩んだり困ったり、疑問に思ったりしていることなどを持ち寄って、話し合いましょう。 
 当日は「吃音親子サマーキャンプ」を27年間続けて開催し、どもる子どもとその保護者の方々と直接関わってきた講師とともに、吃音について学び、話し合います。どうぞお気軽にご参加ください。お待ちしています。
(企画:清水俊子)

日時:2016年12月3日 (土) pm. 1:15 〜 4:30 ( 受付 1:00より )
会場:一般財団法人 横浜市教育会館 1階第2研修室
〒220-0044 横浜市西区紅葉ヶ丘53番地
TEL 045-231-0960 (車でのご来場はご遠慮ください)

交通:JR根岸線・横浜市営地下鉄「桜木町駅」より徒歩10分
   京浜急行線「日ノ出町駅」より徒歩10分

対象:どもる子どもをもつ親、どもる子どもに関わる人、共に考える臨床家、吃音に関心のある人 (子どもの参加は原則、ご遠慮いただいていますが、事情のある方はご相談ください。)

参加費:1500円 (資料代)
講師:伊藤伸二(日本吃音臨床研究会代表、元大阪教育大学講師)
スタッフ:溝口稚佳子(元公立小学校教諭、支援学級担任)
     清水俊子(学校心理士、臨床発達心理士)
申し込み:〇疚勝↓⊇蚕蝓↓E渡叩↓い子様の年齢、 ズい辰討い襪海箸篩蠱未靴燭い海函△鮟颪い堂宍にお申し込みください。参加確認証と会場案内図をお送りします。
   ※はがき送付先:〒243-0122 厚木市森の里4−18−2  清水俊子宛
   ※メール送付先:y-shimizu@ai.ayu.ne.jp
   ※TEL/FAX申し込み及び問合せ先:清水俊子(TEL・FAX 046-250-4356)
   ※電話でお問い合わせの際は、留守電に連絡先の電話番号を入れてください。後程お電話します。
締め切り:11月30日(水)
✻当日、会場でも受け付けております。参考図書も当日紹介させて頂きます。


日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2016/11/23

吃音親子キャンプ沖縄の報告 番外

 第1回沖縄吃音キャンプ。初めてのことで不安があるだろうと、吃音を生きる子どもに同行する教師・言語聴覚士の会(吃音プロジェクト)の仲間が駆けつけました。その一人、千葉市立院内小学校のことばの教室の教師である、渡邉美穂さんが、仲間に当てたメールです。そのまま採録します。


 吃音プロジェクトのみなさんへ

沖縄に行ってきました。もう1週間前ですが。報告遅くなりました。
あたたかいと予想をしていましたが、暑い!と感じることや
セミの声に「夏かな?」と思うくらいいろいろと驚きがありました。
これまで、家族と沖縄に行ったことがあったのですが
沖縄の人たちとの交流で、もっと沖縄が好きになりました。
あたたかい気温と気持ちで、心地よい時間を過ごせました。

金曜日の研修会で伊藤さんの話を聞き、今回のメインの「対話」に
ついて、また勉強しました。会話と対話の違いや、対話の大切さを
考えながら、沖縄親子キャンプに入りました。

第1回の初めの活動である「出会いの広場」を担当させてもらいました。
子ども、親、ことばの教室の教師、ST、大阪スタタリングプロジェクトのみなさん
が楽しそうに、ゲームをしたり表現したりしてくれて安心しました。
沖縄吃音研究会(OKK)のシンボルマークに「波」「魚」「太陽」が描いてあった
のでその3つのグループ分かれて、体で表現してもらいました。
初めての活動なのに、こんなに表現できるんだ!と感動しました。
沖縄の人は、すごい!
本当にパワーを感じました

その後の話し合い活動も、低学年グループに入れてもらいました。
一生懸命に話してくれるのを、聞きながら対話を楽しみました。
吃音親子サマーキャンプのように先輩となる常連の子どもがいなくても
話す雰囲気や話し合い活動ができることを感じました。
困っていることがあっても自分たちなりに前向きに考えているな
という印象です。さすが沖縄!なんくるないさーなんですね。
でも、最後の感想でみんなの吃音についての考えや思いがわかって
よかった。と言っていました。やっぱり話し合い活動、大事ですね。

最後は、オープンマイク(ふり返り)を全員で円になって行いました。
臨床家のための吃音講習会や吃音ショートコースなど大人だけのものは何度か経験ありますが
子どもも一緒に行いました。きちんと、キャンプで大事にしているものを
しっかりと捉えて子どもも感想を言っていました。

沖縄キャンプは、あっという間に終わってしまった。という感想です。
心地よい空間にもう少しいたかった。と思います。
来年の開催、応援しています! 来年も行きたいなぁ〜!と思っています。
楽しかったです!
                           渡邉美穂


 日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2016/11/22

吃音キャンプ 沖縄 報告 3 キャンプ基礎講座


 キャンプで大切にしていること
 2日目の朝の放送が鳴らず、少し寝坊してしまい、朝の体操ができませんでした。滋賀のキャンプでは考えられないことです。沖縄のゆったり感がすっかり身についてしまったようです。
 最初のプログラムは、親と子は作文、スタッフは全員、キャンプの基礎講座です。
 まず、僕たちが、滋賀での吃音親子サマーキャンプで考えていたことを話しました。第1回目から、目指していたのは、普段、話をする機会が多くない吃音の話をしようということと、苦手な芝居に挑戦しようということです。
 
 楽しさと喜び
 初めの数回は、自治体の聴言センターの言語聴覚士と合同で実行委員会を作っていましたが、意見の食い違いがだんだん大きくなっていきました。言語聴覚士たちは、普段しんどい思い、つらい思いをしているのだから、とにかく楽しいものにしようと思っていました。スイカ割り、ぶどうの種とばしなど、子ども会のキャンプならそれでもいいでしょうが、僕たちは、きちんと吃音に向き合いたいと思いました。楽しいキャンプではなく、喜びを味わってもらうキャンプにしたいと考えたのです。他のどもる子どもと出会う喜び、嫌だと思っていた吃音の話をする喜び、苦手としていた芝居に挑戦してみてこんなことができるのだと新しい自分をみつける喜び、そんな喜びは、きっと楽しさに変わります。
 芝居は初めは簡単なことしかできませんでしたが、何回目からは演出家の竹内敏晴さんがキャンプのために脚本を書き下ろして下さって、合宿で演出をしてもらいました。その事前のレッスンがあるから、キャンプ当日、子どもたちの前で芝居をし、練習をし、上演までもっていけるのです。
 2泊3日のキャンプのプログラムは、かなりハードスケジュールですが、「早くしなさい!」という声かけはほとんどなく、すーっと流れていきます。話し合いと芝居の練習のほかにあるのは、2日目の午後の山登りです。楽しい要素はほとんどないように見えますが、参加した子どもたちは、楽しかったと言います。僕は、沖縄のほかに、静岡、岡山、島根、群馬でのキャンプに行っていますが、それぞれ違います。遊びを大切にしているキャンプもあるし、保護者と僕の時間をたっぷりとるキャンプもあります。その地域でできることをしたらいいと思うのです。だから、沖縄は沖縄のキャンプを作りあげていってくれたらと思います。
 そんな話をして、参加者から質問をしてもらいました。

続けて参加する人はいますか。
 複数回参加する人たちが、話し合いのときのいいモデルになります。初めて参加した親は、今までのことを思って泣きます。そしたら、先輩の親が、私も最初はそうだったと言ってかかわっていきます。リピーターは多いです。

治したいと思って参加した子が、治らないと聞いて葛藤が起こりませんか。
 葛藤は当然起こります。葛藤は早いほうがいいでしょう。映画監督の羽仁進さんは、家で「どもり。どもり」と言われたそうです。どもりを否定的にとらえていないから、そう呼んだのでしょう。「放任主義」という本で書いています。そのことは社会に出てから、免疫となり、よかったそうです。葛藤があったり、傷ついたりということは誰でも起こりえます。どこかで傷つくのなら、僕たちがいるところで、傷ついた方がいいです。サポートができるからです。僕は、真実は決して人を傷つけないと信じています。

今回、子どもと成人とのかかわりがなかったのは、何か意図がありますか。
 どもるという経験があるというだけで、どもる成人と会ったり話をしたりすることは危険だと思います。吃音のことや、グループとは何かを学び、生きる上で大切な心理学を勉強している成人のどもる人ならいいのですが。まだ、自分が悩みのまっただ中にいる人と会うと、ネガティヴな話ばかりになってしまいます。あることばの教室が、成人のどもる人に会わせたいと思い、そういう企画を立てたそうです。でも、苦しかった、つらかったという話ばかりで、聞いている子どもも保護者もだんだん暗くなって、つらくなり、治さなきゃ!となったそうです。
 滋賀の吃親親子サマーキャンプに参加したいと申し込んでくる成人のどもる人は実は少なくありませんが、すべてお断りしています。大阪吃音教室でしっかりと吃音について学び、自分の問題をある程度解決できている人、あるいは解決の道筋を知っている人に限定しています。親から、尋ねられて、自分のことばで語れる人で、親にマイナスの影響を与えない人でないとだめなのです。どもる経験があるというだけではだめです。
 カウンセリングでも同じことがいえます。何らかのトラウマをもつ人がカウンセラーになることは少なくなく、それは悪いことではないのでしょうが、自分の課題がある程度処理できている人でないと、同じような課題を抱えるクライエントと出会うと、自分の問題が浮かび上がってくると思います。そういうときは、チェンジするそうです。渦中にある人に出会わせるのはある意味危険だと僕は考えています。
 僕が関わっている、静岡、岡山、島根、群馬のキャンプが長く続いているのは、どもる子どもに焦点を当てているからです。どもる子どもとその親の幸せのためにという、この視点がぶれなければ、続いていくということなのでしょう。成人は、成人のセルフヘルプグループに参加すればいいのですから。

◇ことばの教室で吃音について勉強している子と、何も知らずに参加した子とがいると思いますが、初めて話を聞いてどう思うのだろうかと思いました。
 全く問題はないと思います。意識させるとどもりがひどくなると言われてきました。アメリカ言語病理学にも「沈黙の申し合わせ」というものがあり、大人は知っていて心配もしているのに、子どもがどもっても何も言わない。そういう「しらんぷり」をするのはやめようと僕は言っています。3歳の子どもでも、吃音やどもりということばは知らなくても、自分が話しにくいこと、ほかの子どもと違うことに気づいています。意識させるのが悪いのでなくて、マイナスのものと意識させることがいけないのです。むしろ、僕は、早期自覚教育を提唱しています。

 時間ぎりぎりまで、まだまだ質問は続きました。滋賀での吃音親子サマーキャンプに参加してもらうのが一番ですが、沖縄から滋賀は遠いです。でも、お寺に総本山があるように、2泊3日のキャンプは総本山のようなものなので、一度是非、参加してみて下さいと薦めました。
 僕たちが「キャンプ基礎講座」をしているとき、子どもと親は、作文を書いていました。話し合いでは、みんなで吃音のことを考えます。作文の時間は、自分ひとりで吃音のことを考えます。どちらも大切な時間だと改めて思いました。

 次は、2回目の話し合いです。1回目の話し合いをしているメンバーと同じメンバーで話し合いを続けます。1回目の話し合いを共有して、2回目の話し合いが成立するのです。
 自分の話を聞いてもらうだけでそれが特効薬だと言った人がいます。そういう場が今までなかったということなのでしょう。こんな場が大切だと思えました。参加していたスタッフは、みな参加者のそんな発言を聞きながら、続けていきたいという思いを強くしたようです。子どものためにと思って参加した親も、実は自分のためでもあったのだと気づきます。先輩のどもる子どもや大人に出会って、先の見通しを持てたことがよかったと言う人もいました。年代が違う人と同じ場にいることでわかったことです。いろいろな情報が飛び交っているので、ちゃんと知ることが大切だという話もでました。何も知らなかったら、間違った情報に出会ったとき、判断する力がなかったら困ります。情報を選びとる力が大切になってきます。

 キャンプのふりかえり
 午後は、全員で輪になり、キャンプを振り返りました。吃音ショートコースという大人のためのワークショップでは最終プログラムとして定番でしたが、キャンプでは初めてです。これくらいの参加人数なのでできることでした。ひとりひとりが、マイクを持ち、感想を話していきます。子どもも大人も対等に、感想を話していきました。
 子どもたちは、どもるのが自分ひとりではないと分かって安心したという話をしました。本を読んで僕のことを知っていた子が僕を見て、「ほんものがいる」と言ってくれたそうです。僕の知らないところで、本を読み、共感してくれ、そういう生き方をしようとしてくれている人がいることを知って、本当にうれしかったです。
 対話の重要性を再確認し、子どもと哲学的対話を心がけたいとの感想もありました。学校で困っていることを出して、対策を考えたけれど、ひとりでは思いつかない事もみんなで考えたらたくさん出てきて、やっぱりキャンプはすごいと思ったという話もありました。
 自分のことばで自分の思いを語ること、それを聞くことの快さを存分に味わった最後のプログラムでした。
 来年も続きそうです。1年後の再会を約束して、キャンプを終わりました。
 外は、まだ蝉が鳴いていて、カラッとした暑さが続いていました。まったりということばがぴったりだった沖縄でのキャンプ。英気を養い、また現実の世界で、ときに悩みながら、ときに困りながら、それでも自分らしくどもりながら生きていってくれるでしょう。そんな子どもたちのしなやかな強さを感じた2日間でした。
 実行委員の皆さん、いろいろとありがとうございました。

日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2016/11/21

吃音親子の交流会 千葉市で開催


 「吃音を生きる子どもに同行する教師・言語聴覚士の会」の渡邉美穂さんから、案内が届きました。
 僕も何回か参加したことのある交流会です。36回も続いているとは驚きです。
 僕の仲間たちの会なので、関東地方の人、安心してご参加下さい。周りの人に知らせていただけるとありがたいです。日本吃音臨床研究会 伊藤伸二

第36回 ことばのなかよし交流会

 おまたせしました!ことばのなかよし交流会の日時がきまりましたので、お知らせします。今回も、院内小学校のプレイルームで遊びます。楽しみにしてくださいね。吃音(きつおん)がある子どもたちや保護者の交流の場として楽しい一日にしたいと思っていますので、みんなさんの参加をお待(ま)ちしています!
 はじめて参加する方も、大歓迎です。

  日時(にちじ)       平成28年   12月 11日(日)
           10:00〜15:30(受付(うけつけ)9:45)
  集合   千葉市立院内小学校 プレイルーム(西校舎) (東千葉駅から徒歩7分 )
  持ち物  昼食・飲み物 *親子で別々に食べられるようにお願いします。

連絡    参加できる方(かた)は、ご連絡ください。駐車場は院内小学校内にできます。
  椿森陸橋を降りて東税務署のところを左折、ファミリーマートを右折すると校舎がみえます。
  (体育館側ではなく、こちらの入口からお入りください。)

連絡先     千葉市立院内小学校  ことばの教室  渡邉美穂  電話(043)227−5576

ことばのなかよし交流会について
千葉市立院内小学校 ことばの教室担当 渡邉美穂

 今回で36回になります。
これまで多くの親子の参加があり、出会いやつながりを大事にしてきました。以前は、千葉コミュニティーセンターで行いポートタワーまで散歩して芝生の上で子どもたちは遊び、大人は話し合いをしていました。現在は、私の勤務する千葉市立院内小学校で行うようになり、車で参加される方が楽になったと言ってくれます。
 この「ことばのなかよし交流会」の名称は、参加していた子どもたちによって考えたものです。その子たちも現在は、社会人として元気に働いています。

 交流会の内容は、どもる子どもたちが出会うことを大事にしていますので、一緒に活動する中でそのことを感じていけるように企画しています。これまで、すごろく作りや的当て作りなど絵や工作を作り、見合いながら交流をしています。また、体ほぐしや昼食をとりながらお互いの話をするような時間もあります。子どもたちは「友だちができた」と短い時間でも仲良くなって帰ってくれています。

 大人の話し合いでは、吃音について不安や心配を抱えている保護者の相談を中心に個々の考えや思いを話し合っています。中学生や高校生の保護者も参加している場合は、これまでの経験や苦労をどう乗り越えてきたかという体験を話してもらうこともあります。

また、私の知っている情報やことばの教室での取り組みを中心に吃音について お話させてもらっています。このような話し合いから、お互いに子育てのヒントになったらいいなと考えてきました。「相談できてよかった」「自分だけで悩んで不安だったけれど、先輩のお母さんの話を聞いて、見通しがもてました」「吃音について情報を得ることができた」などの感想をもらっています。

最近は、幼児の保護者の方の参加もあります。保護者だけの参加も大歓迎です。よかったらご参加ください。お待ちしています。
 

 日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2016/11/20

吃音こそ芸の肥やし 桂文福さん 21日再放送


 『ハートネットTV』ブレイクスルーFile.64
「“きつ音”こそ芸の肥やし―落語家 桂文福」
11月14日(月)夜8時[再放送:21日(月)午後1時5分]

 桂文福さんのブレイクスルーが放送されました。
僕は、沖縄キャンプに行っており、放送日には見ることができなかったのですが、沖縄から帰ると、桂文福さんから留守番電話が入っていました。とてもいい番組だったと感激した様子でした。僕もさっそく見ましたが、見事に吃音の世界がそこに広がっていました。かなり、どもりながら、堂々と自分を表現している文福さんがいました。10月10日のブログに書いたのですが、僕と最初にお会いしたときは、こんなにもどもっていなかったように思います。
 「伊藤さんに出会って、吃音をカミングアウトできた」と桂文福さんはよくおっしゃいます。それからは吃音について本当にオープンで、40周年の記念パーティーには僕を呼んで下さり、「日本吃音臨床研究会の伊藤会長です」とみなさんに紹介もして下さいました。会場の300人ほどでしょうか、全員が吃音を肯定的にとらえている姿に、あたたかいものを感じました。以前のブログに書きましたが、ご夫人の「どもって、なまって、それでも落語の世界で立派に生きてきた」と紹介した姿は、今でも強い記憶として残っています。

 桂文福さんとのつきあいの深い、大阪吃音教室での様子も番組の最後の方に出てきます。僕も少しうつっています。

 見落とした方、11月21日の午後1時5分から再放送されます。
 是非、吃音の豊かな世界を見て下さい。
 番組のホームページから貼り付けます。


【あすのHNTVは、ブレイクスルー】
ブームに沸く落語。
大阪に、不動の人気を誇る異色の落語家がいます。
 
高座では古典落語をほとんどせず、怒濤のごとく繰り出される小ネタの連続。その型破りな芸風で、老若男女から愛される大ベテラン、桂文福さん。
 
そんな文福さんは、3歳の頃からきつ音症に悩んできました。人と関わることを避け続け孤立する日々。そんな時、心の支えとなったのが落語でした。5代目・桂文枝さんの陽気で豪快な語り口を聞いて、弟子入りを決意、稽古に励みますが想像以上にきつ音の壁は高いものでした。
 
芸歴45年、泣き笑いの落語家人生。ハンディキャップのきつ音をあえて武器にし、言葉が命の世界で勝負する、桂文福さんのブレイクスルーに迫ります。
 
▼出演者インタビュー
風間さん→http://www.nhk.or.jp/hearttv-blog/2800/256476.html
AIさん→http://www.nhk.or.jp/hearttv-blog/2800/256473.html
桂文福さん→http://www.nhk.or.jp/hearttv-blog/2800/256475.html

新 文福1新 文福2

日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2016/11/20

吃音親子キャンプ 沖縄 報告2


 
 沖縄でのキャンプ、最初のプログラムは、出会いの広場です。担当は、千葉の渡邉美穂さん。吃音親子サマーキャンプでも、ここ最近ずっと出会いの広場を担当してくれています。ジャンケンゲーム、仲間をみつけてゲットする「おきなわGO」でだんだんと盛り上がっていきました。そして、最後に沖縄キャンプのシンボルマークからとった3つのテーマに分かれてのパフォーマンス。魚と波と太陽の3つに分かれ、からだ全体をつかって表現しました。初めて出会う人が多いのに見事なチームワークです。

 午後からは、保護者とスタッフのための講演会。スタートは、伊藤伸二の人生をお話することから。鬼、挟、郡ときれいに分かれている僕の人生、そのとき何があったか、できごとや人との出会い、転機などを話しました。そして、今、注目している「対話」について、いろいろな角度からお話しました。会話と対話の違いについて、劇作家・平田オリザさんや哲学者・中島義道さんのことばを紹介しながら話をすすめました。
 レジリエンス、オープンダイアローグ、目新しいことばに少し戸惑いもあったようですが、共通している大切なことはしっかりとつかみとっていだたけたようです。その実例として、11月8日に行った滋賀県東近江市での子どもたちとの対話を紹介しました。どもる子どもが僕にいくつか質問をしてくれたのですが、その質問を紹介し、その質問にあなたならどう答えるか、どう話を続けるか、そんな参加者とのやりとりをしながら、哲学的対話の大切さを伝えていきました。
 ことばの教室で、言語指導室で、していただきたいのは、次の2つです。
 ‖佻辰離譽奪好鵝´日本語のレッスン
 これが、どもる子どもやどもる人の、吃音が変化する力を育てる条件となるだろうと僕は確信しています。新しい出会いの中で紹介してもらった「読書介助犬」のことも話しました。
 読書介助犬って何をすると思いますか?この質問をすると、必ず、ページをめくってくれるという意見が出るのがとてもおもしろいのですが、沖縄でもやはり同じでした。
 「そんなはず、ないでしょう」と言いながら、笑いが起こり、関心を持っていただけます。最後に、自分の人生を自分でコントロールできると子どもが実感できることが大切で、そのためには、決定権は常に子どもにあることを話しました。
 世間には、たくさんの情報があります。流されてしまわないよう、しっかりと吃音哲学をもつことの重要性を話して終わりました。

 次は、吃音についての話し合いです。子どもは子どもで、親は親で集まって話し合いです。子どもも大人も2グループずつ、計4グループに分かれました。スタッフの数が多いので、参加者に余計なプレッシャーを与えないよう、ファシリテーター以外はそっと見守ることにしました。
 低学年の子どもたち、最初はベッドにのぼったり、動き回ったり、落ち着かないようでしたが、少しずつ集中していきました。スタッフとして入っていた鹿児島のことばの教室の教師で、自分も吃音に悩んできた溝上茂樹さんが語り始めると、みんなしっかりと聞いていました。当事者の語りのもつ力でしょう。吃音キャラクターの絵も描きました。溝上さんの吃音キャラクターも子どもたちが描いてくれたそうです。溝上さんは大事そうに持って帰りました。

 高学年の子どもたち、特に女の子たちは、初めて会ったとは思えないほど短時間で仲良くなりました。将来就きたい仕事があるけれど、それは話すことが多くてできないと思っているのでみんなには言っていないという子には、実際出会ったことのある人の話を実例として挙げ、考えるきっかけとしてもらいました。
 自分がどもるようになった原因は、下の子が生まれて親の愛情がその子にいったからだと言った子もいました。親からそんな話を聞くことは多いのですが、子ども自身から、そう感じていることの話を聞くのは初めてです。改めて、社会や世間のいろんなドミナントストーリーを受けていることを知らされました。

 親グループは、笑いあり、涙ありの90分でした。ここで、大阪スタタリングプロジェクトの井上詠治さんが大活躍したそうです。井上さんの人生を聞きたいというリクエストにお答えして、「井上詠治、人生を語る」みたいな大講演会になりました。どもりを否定して生きてきた井上さん、その根源は、自分をどもりに生んだ両親にある、人生うまくいかないのはすべてどもりのせいだと思い込みます。治すために横隔膜バンドを買ってほしいと頼み、それを断られ、その後、吃音親子サマーキャンプに出会います。吃音の話ができる同世代の仲間との出会いが一番よかったと振り返ります。

 ふとネットで検索してみつけた大阪吃音教室に参加し、「井上君。元気だった?」と覚えていてくれたことがうれしくて、参加を続け、吃音親子サマーキャンプにはずっとスタッフとして参加します。そこで親の話し合いに参加し、どもる子どもの親の思いを聞き、自分の親の思いを想像しました。そして、自分の親も悩んでいたのかもしれない、子どものことを思っての行動だったのかもしれないと思えるようになり、どもりは誰のせいでもない、原因は分からないのだから、親は何もできないけれど、子どもが頼ってきたときに、最後の相談相手になってほしい、どもりの勉強をして知識を持ち、見守ってほしいとしめくくりました。人生ドラマを聞いているようで、参加している保護者にはかなりインパクトがあったようです。そして、そのときから、お母さんや、ことばの教室の教師は「井上先生」と呼ぶようになりました。「井上先生」、そう呼ばれると、なんだか普段の発言にも重みが増してきたような。これからは「井上先生」と呼ぼうと、大阪からの参加者は皆笑いながら盛り上がりました。
 プログラムとプログラムの間がゆったりとしていて、僕たちが主催している滋賀のキャンプとはちょっと違います。これが沖縄スタイルなのかもしれません。

 1日目が終わり、スタッフ会議です。話し合いのグループでの様子が報告されていきました。それらを聞きながら、このキャンプでの出会いが、点から線になり、面となって静かに広がっていくのを感じました。

 部屋に戻るとき、朝、開会式をした真ん中の芝生広場にまだ人がいます。寒くはなくて、外にいても平気です。いつのまにか、リンパ腺の腫れがひいていました。押さえたら痛みは残っているけれど、もう大丈夫です。

 静岡、岡山、群馬、島根のキャンプは僕一人が講師として参加しています。今回は、大阪や、千葉、鹿児島から仲間が参加しています。だからこのような報告ができます。一人で参加したところでは、なかなか詳しい報告はできませんので、せめて沖縄のキャンプだけでも、詳しく報告したいと思います。つづきます。

 日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2016/11/17
 

吃音キャンプ おきなわ 1


 沖縄は真夏のようだった

 静岡、岡山、島根、群馬、沖縄と5週連続の吃音親子キャンプが終わりました。それは、どもる子どもと保護者、それを支えることばの教室の教師や言語聴覚士との対話の旅でした。
 今年で、静岡は15回、岡山は14回、群馬は8回、島根は18回目の開催となります。各地で吃音キャンプが続いていくのはなぜでしょう。中心的な担当者が変わっても、それを引き継ぐ人たちがいます。それは、子どもや保護者の変化や成長する姿を短時間に実感でき、その成長が次の年の参加で確認できるからではないでしょうか。キャンプに関わる者として、こんなうれしいことはありません。「また、来年も参加したい」との子どもや保護者の思いを受けて、来年もがんばろうと思うのだろうと思います。

 63名が参加した、第1回吃音親子キャンプinおきなわの最後のセッションでも、参加者が「ぜひ、継続して開催してほしい」と口々に発言していました。そんな思いに答えたくて、各地のキャンプは続いてきたのです。僕も、すべてのキャンプに毎年参加してきたのです。

 「吃音は治せない、治らない」からこそ、考え、取り組まなければならないことは多いです。吃音について学び、取り組み、そして、成長していく子どもたちの姿を見るのはうれしいし、子どもたちと「哲学的対話」ができるのが本当に楽しいのです。
 今年の吃音親子キャンプロードでも、たくさんの魅力的な子どもたちと出会いました。このブログで、子どもたちとの対話の一部ですが、紹介していこうと思います。

 その前に、終わったばかりの沖縄キャンプについて少し報告します。

 5週連続の吃音キャンプロードのしめくくりは、今年初めて開催の沖縄キャンプ。「沖縄でもキャンプができたらいいな」の素朴な思いが、たくさんの人の力で実現につながったものでした。
この沖縄でのキャンプを最初に考えたのは、言語聴覚士の専門学校の平良和さんとの出会いは、5年前の第1回吃音講習会でした。平良さんは、吃音講習会に参加して「これだ!!」と思ったそうです。それからの平良さんの動きは大きく、そして迅速でした。

 沖縄でのキャンプの大きな特徴は、キャンプの企画・運営を、言語聴覚士とことばの教室の担当者が共同で行っているというところです。ほかのキャンプは、ほとんどがことばの教室の担当者が主導で行われています。沖縄のスタッフの中で、滋賀県の吃音親子サマーキャンプに参加したことのある人は3人。みんな、手探りで準備をすすめてきたと言います。

 11月11日(金)、到着便が遅れたため、30分ほど遅れて伊丹から沖縄に向けて出発しました。偶然同じ便だった坂本さんと一緒に那覇空港に到着。迎えに来て下さった名護さんの車で、鹿児島からの溝上さんも含めて自然の家に向けて出発しました。
 キャンプ前日の夜には、吃音勉強会が予定されており、19時からの勉強会に参加したのは、23人でした。キャンプ中に、保護者やスタッフ向けの講演会が組み込まれているので、そこでの話とだぶらないよう、参加者から質問を出してもらい、それに答えるという形で進みました。遺伝するか、構音障害との関係、どもる症状も受け止め方も違う子どもに対する指導方法、吃音とチックの関係、吃音の自覚に乏しい子どもの指導、どもりカルタの実践、「治りますか?」と聞かれたときの答え方など、さまざまな質問が出され、僕は、自分の体験に基づいて話しました。

 シャワーしかない!?
 これが、沖縄の普通のようでした。沖縄も夜になると涼しくなり、湯船につかるという習慣をもつ僕にはシャワーのみでは風をひきそうで入れません。掛け布団はなく、毛布1枚。これはやばいかもと思いましたが、とにかく疲れていたので眠りました。朝起きてみると、ガーン!左あごの上、リンパ腺が腫れているようです。だんだん腫れてきて、熱っぽく、少しあせりました。
 キャンプ初日が始まりました。手作りの横断幕が、参加者を迎えます。中庭の芝生広場で、開会の集いが始まりました。スタッフは、OKK(おきなわ吃音研究会の頭文字をとった)のおそろいのTシャツを着ています。いよいよ、始まるという気持ちになってきました。蝉が鳴いています。沖縄キャンプは、蝉が鳴く中、真夏の熱気の中で始まりました。

日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2016/11/16
livedoor プロフィール
QRコード(携帯電話用)
QRコード
  • ライブドアブログ