伊藤伸二の吃音(どもり)相談室

「どもり」の語り部・伊藤伸二(日本吃音臨床研究会代表)が、吃音(どもり)について語ります。

2016年01月

身に余る、感謝状  50年の吃音人生への贈り物

感謝状感謝状だけ

 2016年最初の大阪吃音教室の例会で、想像もできなかったうれしい出来事がありました。NPO法人・大阪スタタリングプロジェクトの運営委員の総意で僕たちに感謝状が贈られたのです。


 東野晃之会長の挨拶

 日本吃音臨床研究会主催の吃音ショートコースは、2015年11月で1995年から続けられた21年の幕を一応幕を閉じました。
 吃音ショートコースは、体験的に学ぶというワークショップ形式で、精神医学、臨床心理、教育など様々な領域の第一人者を講師に2泊3日の研修会として開催されました。どもる人たちだけでなく、吃音の臨床に関わる人、吃音でなくても自分らしく生きたい願う人などの学びと出会いの場となりました。

 大阪スタタリングプロジェクトにとって、この学びの経験が即、大阪吃音教室の吃音と上手につき合う吃音講座に取り入れられました。吃音ショートコースは私たちの活動にとって、なくてはならないものでした。会の専従者はなく、私たちはそれぞれに仕事を持ちながら会の活動に携わります。だから「できることを、できる人がする」というスタンスを貫きますが、それは自分が関わらないことに無関心でいいということではなく、他の人の尽力や貢献を認め、その意義の共有に努めることでもあると思います。ひとりひとりが活動の意義を共有することは、非営利のセルフヘルプグループにとって大切なことだと考えています。

 21年間、主催者として尽力くださり、貢献いただいた日本吃音臨床研究会の伊藤伸二さん、稚佳子さんに感謝の意を表し、感謝状と記念品を贈りたいと思います。
 

 メンバーの藤岡千恵さんからは、こんなメールがきました。

 藤岡です。今年のカルタも楽しすぎました。毎年参加していても、毎回、心揺さぶられる読み札に出会います。今回、奥野さんの読み札とイラストがいい味でしたね。今日の伊藤さんと溝口さんへの感謝の贈り物、とても感動しました。
 これまでたくさんの吃音親子サマーキャンプの卒業生に賞状を渡してこられた伊藤さんと溝口さんが、東野さんから感謝状を受け取られる姿は、とても新鮮で、とても感動しました。東野さんがご用意くださった感謝状とメッセージはとてもジーンときました。
 「読むのは苦手ですが」と言いながら東野さんが読み上げるメッセージを聞きながら、私が参加した10年間のショートコースの思い出がよみがえりました。

 吃音ショートコースで出会ったたくさんの人、体験したこと、様々な講師の方たち…。論理療法や交流分析、アサーション、認知行動療法、アドラー心理学、ナラティブアプローチなど、こういうことを学ぶことができたことは、生きていく上でものすごく強いことだったと感じています。

 伊藤さんや、大阪吃音教室に出会っていなかったら、もっと大変な人生だったかもしれないなと、時々思います。これまで吃音ショートコースを思う存分味わえたこと、本当に幸せなことでした。残念ながら、講師を招いていただくショートコースは終了となりましたが、これからは皆で作る吃音ショートコースを作っていけたら嬉しいです。改めて、伊藤さん、溝口さん、ありがとうございました。
 東野さんが用意くださった、東さんの会社のオジコの Tシャツもとても素敵な贈り物ですね。東野さん、いつも色々と考えてくださり、ありがとうございます。
 


 本当にありがたい仲間たちです。この仲間がいるからこそ、50年続けた活動を、まだこれからも続けられるのだと思います。感謝の気持ちをこめて、僕はこんなメールを仲間に送りました。


 新年の幕開けにふさわしい楽しい「どもりカルタ」例会でした。

 何度もしているカルタづくりなのにつきないものだと、どもりの世界の豊かさを思います。思いがけずに、吃音ショートコースに対する、東野さんのことばと、感謝状と、記念品、とてもありがたく、うれしく受け取りました。
 自分たちが興味をもつこと、楽しいことをしてきたことに、みなさんが輪の中に入って下さったことが、私たちの人生を豊かなものにしたわけですから、私たちの方こそ感謝の気持ちでいっぱいです。

 吃音ショートコースには、考えられる限りの素晴らしい講師をと常に考えてきました。それが、一年一年と積み重なり、精神医学、臨床心理学や教育、演劇の世界の人が、「よくまあ、こんなすごい講師が3日間もきてくれましたね」と、いろんなところで、うらやましがられた21年間でした。それは、19冊の吃音研究誌と、金子書房からの4冊の書籍の出版が証明してくれています。

 そんな、思い入れが強く、この素晴らしいゲストから、少しでも多くのことを学びたい、吸収したいとの思いか強く、一般的な研修では考えられない、夜遅くまでのハードスケジュールになりました。それにつきあい、その後の大阪吃音教室の講座に反映させ、学び続けて下さっているみなさんに、改めて、心からの敬意と、感謝の気持ちをお伝えします。

 東野晃之会長の挨拶、そして私たちのコメントを自分たち自身も聞きながら、楽しい、幸せな21回の吃音ショートコースだったなあと振り返っていました。個人的な関心、好みでスタートしたものであっても、多くの人にいい経験をしていただいたことが、今回あらためて分かり、温かい気分になれました。
 吃音の世界は、風雲急を告げています。50年で初めての逆風かもしれません。私は、さだまさしの「風に向かって立つライオン」が好きです。いかに強い風であっても、しっかりと立って向かっていきたいと思います。その勇気を昨日いただきました。ありがとうございました。

 日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2016/01/28

 

学習・どもりカルタ、販売しています


 どもりカルタによせられた思い

どもりカルタ ランダムな並び

自己紹介 分かってもらう近道は どもって 自分を語ること

 −高校のクラブの合宿での自己紹介が嫌で、大好きだったスポーツをやめた人がいる。このように自己紹介が苦手という人はとても多い。自分の名前がすらすら言えないのはつらいことだ。
 しかし、どこへ行っても自己紹介はついてまわる。苦手意識をとり、自己紹介から逃げないために、カルタのように考えよう。本当の自分を分かってもらいたいのであれば、たまたまどもらないでうまくしゃべるよりも、どもる自分をありのまま出した方がいい。−
 

 読み札には、ひとつひとつこのような解説がされています。読み札をつくった背景を、子どもが実際に経験したことや、つぶやきなどをもとにして、解説しています。全国のことばの教室では、この「学習どもりカルタ」を使って、個人指導や、グループ学習の実践が積み重ねられています。

 この「どもりカルタ」を参考に、大阪吃音教室の人たちが、毎年、どもりカルタをつくっているように、全国の子どもたちも、どもりカルタづくりを楽しくすすめています。

 これらの、さまざまな「どもりカルタ」の実践が積み重ねられているが、それらもいずれ紹介したいと思います。

 「学習・どもりカルタ」は、市販されていません。日本吃音臨床研究会に直接お申し込み下さい。


どもりカルタ1セットの代金(解説書つき)  1200円(送料含む)
申し込み方法
 
\攫蝪隠横娃葦瀛を日本吃音臨床研究会にお送り下さい。
  〒572−0850 寝屋川市打上高塚町1−2−1526

⇒絞愎饗惴座をご利用の上、ご送金下さい。
  口座番号  00970−1−314142  加入者名  日本吃音臨床研究会

この「どもりカルタ」が広がることが、吃音への理解へつながっていくことと信じています。多くの人にご紹介いただければうれしいです。

日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2016/01/27

どもりカルタは、ナラティヴ・アプローチ


 僕たち、日本吃音臨床研究会では金子書房、ナカニシヤ出版、解放出版社などから吃音に関する書籍を出版していますが、自主出版としての年報を発行しています。さらに、ふたつの教材があります。ビデオ教材と、どもりカルタです。いずれも好評で、多くのことばの教室で使っていただいています。前回、大阪吃音教室での新春どもりカルタの紹介をしましたので、今回、どもる子どもの保護者、ことばの教室の教師向けの教材としての、「学習・どもりカルタ」を紹介します。

 全国のことばの教室に在籍する子どもたちがつくったたくさんの読み札から、インターネットで投票し、みんながこれでいこうと決めた読み札に、どもる子どもの保護者が絵札を描いた、素敵なカルタです。「学習」と名付けたので、読み札、絵札に解説書がつきます。どもるこどもがどんな思いで子の読み札を書いたのが、本人からも聞き、僕たちも想像して開設しました。その解説書の冒頭にかいたのが、紹介する「どもりカルタの意味」です。

 これを作った当時、ナラティヴ・アプローチについてあまり勉強していなかったのですが、勉強し始めた今は、どもりカルタの意味として、後で挙げた9つに付け加えて、これも付け加えたいと思います。
 {ドミナントストーリーからオルタナティヴ・ストーリーへ、無理なく、子どもと一緒に考えられる}

 
 どもりカルタの意味

 話せなかった辛い体験や思いを、自分のことばにして語り、同じように悩んできた人に話して、「そうそう、私も同じ」と聞いてもらい、自分も人の話に聞き入ったときの喜び、うれしさは何ものにも代え難いものとして、私の心の中に残り続けている。

 〈気持ちの分かち合い〉〈情報の分かち合い〉〈考え方の分かち合い〉がセルフヘルプグループの大きな意義だ。私たちは、〈気持ちの分かち合い〉のひとつの形として、過去のできごとを吃音川柳にして笑いとばしてきた。吃音の問題を客観的にとらえ、違う角度から見直すことで、過去は変えられないが、過去への意味づけが変わった。そこから、吃音は恐ろしい、難しい大きな問題ではなく、十分対処可能なものに姿を変えた。

 今回、ことばの教室で「どもりカルタ」の実践を重ねる教師の会の仲間たちと、「どもりカルタ」の制作に取り組んだ。子どもたちのカルタに込められた思いを読み、選び、読み札の解説書をみんなで書いている中で、単なる遊びや〈気持ちの分かち合い〉を超えて「どもりカルタ」の大きな意義を再発見できた。セルフヘルプグループの3つの意義が体験できるだけでなく、芸術療法としての意義に気づいたのだ。

 音楽、絵画などの芸術療法として、詩歌療法は、詩のもつリズムによるコミュニケーション機能、リズムとことば、カタルシス機能などの力によって、諸外国では、心理療法の一翼を担っている。それに比べ日本では、1990年、『俳句・連句療法』(創元社〉が初めての本といえるくらい、大きな注目は浴びていない。

 音声言語表現に直接結びつく詩歌療法は、吃音の臨床に大いなる可能性をもつ。
 カルタのべースにある俳句は、学校教育でも教えられ、日本人にとって日常生活に入り込むほどに馴染みが深い。俳句と違つてテーマを自ら抱える問題に絞り込むために、吃音の体験や、吃音への思いや考えを比較的たやすく表現できる。今回「どもりカルタ」の制作の過程で、いわゆる療法ではなく、吃音臨床の学習教材として使えることが分かったのは、大きな収穫だった。その意義についてまとめる。

 ゝせちや考えの言語化による力タルシス効果がある。
◆’亢腓魎靄椶箸靴唇貅景源程度の定型は、作りやすい。
 子どもの頃から馴染んでいる五七調の音のリズムは声に出して記憶しやすい。
ぁ〆遒辰燭發里鮨籀覆掘∀辰傾腓ぁ△海箸个鯑れ替えることで意味が深まる。
ァ仝渕慶瓦離螢坤爐日本語の発声・発音のリズムを育てる。
Α.瓮奪察璽言のある読み札で、新しい考え方、価値観に出会う。
А\爾暴个掘△泙進垢ことで自分自身を、周りを勇気づける。
─ゝ媛擦鮖予住佑寮擇蠍で語り、これまでの吃音の思いや考えをとらえ直すことができる。
 読み札に込められた体験や思いを想像する力が育つ。

 
 自分のカルタだけでなく、他者のカルタを共有し、読み合わせて遊ぶことで、「そうそう、私も同じ」と共感し、ほっとし、「そうか、こんな考え方もあるのか」と新しい発想、価値観に出会う。覚えやすいために何度も口ずさむことで、自分自身のものになっていく。勇気づけになる。今回のこのカルタに込められた四十四通りの吃音への思いは、現在吃音に悩む子どもに、〈あなたはあなたのままでいい〉〈あなたはひとりではない〉〈あなたには力がある〉というメッセージを、やわらかいタッチの絵札のイメージとともに、やさしく語りかけていくことだろう。勉強という肩肘張ったものではなく、楽しく遊びながら吃音について学び、そして吃音とともに生き抜く力が育つ。
 この「学習・どもりカルタ」が世に出ることを、仲間と共に喜び合っている。

 日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2016/01/23

どもりカルタで、大阪吃音教室の一年の幕開け

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どもりカルタ

 今年最初の大阪吃音教室は、どもりカルタで始まりました。毎年恒例となっているこの講座、そろそろネタ切れになるかと思うのですが、終わってみればそんなことは全くなく、今年も味のあるすてきなどもりカルタができあがりました。

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 4つのグループに分かれ、ア行、カ行、サ行など行ごとに読み札を作っていきます。40分ほどで即興でかんがえるので、なかなか思い浮かばない音もあります。それでもなんとかこじつけでも全ての音を作っていきます。1グループは6人ほどなので、その中でひとりひとりの体験を語り、聞く時間を大切にしてほしいと担当者から話がありました。その読み札が出てきた背景、そのことばを使いたいと思う背景をじっくり聞き合うことができたようです。

絵札を作る
 童心に返って、読み札に合う絵を描いていきます。絵札の大きさは、小学校時代に描いた画用紙の大きさです。「絵なんて、最近全然描いてないし…」と言いながらもお互いに見せ合って楽しい時間になっていました。画用紙には、大きく文字も書いてあるので、たとえ絵があまり上手でなくても大丈夫。そう言うと笑いが起こり、みんな安心して描いていました。普段知らない、意外な才能も発見できて楽しい時間です。

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 ホワイトボードに、できあがった読み札を全て書いていきます。そして、「あ」から順に読んでいきます。その気持ち、分かる!という共感を覚えるもの、なるほどそうか!と新しい発見があるもの、誰が作ったの?と作者への興味をそそられるもの、その読み札の背景をぜひとも聞きたくなるもの、思わず笑い出してしまうユーモアたっぷりのもの…時間をかけて味わいました。感想や質問も自由に出してもらって、読み札にこめられた作者の思いも知ることができました。最後に、気に入ったもの3つに挙手して、票数の多い順に今年の傑作を選びました。

ぅルタとり大会をする
 最後に、絵札を会場の床にまき、読み札を作ったグループ対抗でカルタとり大会をします。けがをしないように充分気をつけて始めるのですが、だんだん熱が入って、思わず遠くにみつけたカルタめざしてダイブする人も現れます。声で勝ちにいく人もいます。子ども時代に戻って、大いに楽しみました。18枚とったグループが優勝でした。

2016 カルタ22016 カルタ1

 読み札は、ときに応援歌になります。落ち込んだときの元気グッズにもなります。お気に入りの1枚を心に持ち、今年もいろいろあるでしょうが、サバイバルしていきましょう。

 今年のどもりカルタを紹介します。☆印のついているものが今年の傑作として選ばれました。


 あ 焦っても いない時にも 出るどもり
 い 今は楽しみ 予期不安
 う 嘘のよう 悩んだ時が なつかしい
 え ええやんか どもった事も 悩んだ事も
☆お 愚か者 治療改善 めざす奴

 か かんだって 言わないでよ どもってるの
 き きつつきもオレも連発 でも脳しんとうは 起こさない
 く 食う、寝る、どもる またどもる 毎日毎日 楽しいな
 け けんかして どもって言えない くやしさよ
 こ 言霊(ことだま)は どもるマグマの 発露かな

 さ 探してた 自分を見つけた 大阪吃音教室
 し 心配するな! どもる先輩、有名人 たくさんいるぞ! 大丈夫!
 す スイッチON どもりモードに入ったら どもるにまかせて ありのまま
 せ 先手必勝 あいさつは わたしから
☆そ 存在感 自然と持てる どもる人

 た 旅先のホテルで 名乗るのも ひと仕事
 ち 力抜き ラクにどもれる ぼくになる
 つ つまっても 最後まで聴きたい あなたの言葉
 て 天罰か どもりまねして 自分もどもり
 と どもりと親しくなるほど 人と親しくなれる

☆な 難発で 言葉出てこず 真っ赤っか
 に 二枚目が どもってみせると カッコイイ
 ぬ 抜きんでる物はないけど どもれるでぇ
 ね ねえ、あんた そんなにどもって どうすんの
 の 呑む程に どもり全開 桂文福さん

 は 話すこと みんなの反応こわくない だんだん気づく 大阪吃音教室
 ひ 光ってる どもりの個性が 無限大
 ふ 不思議だなあ〜 どもりの仲間を知ってから 今ではどもりと フレンドリー
 へ へこたれへん 言いたいことを 言うまでは
 ほ ほんまです どもる人には やさしい人が 多いこと

 ま 間が空くのも 味のうち
 み みんなが笑った わけじゃない
 む 難しい言葉を選んで どもりを回避
 め 面接でどもったおかげで 今がある
 も もじもじするより もう一声!

 や やくざにも どもる人は いるのかな
 ゆ ゆすり、たかり どもりがしても さまにならない
 よ 予期不安 よきにはからえ 予期不安

 ら 来週は しゃべってみたいな 苦手音
 り 力まずに どもっちゃっても ありのままで
 る 留守電に 声残すのに 汗びっしょり
 れ 歴史上 偉人も たくさん どもってた
 ろ ロケットで 行った先にも どもる人

 わ 忘れない どもって言われた プロポーズ

 日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2016/01/21

2016年の吃音の旅の始まりは東京から

 
 豊かな吃音の世界だから、3日間の吃音談義が楽しい

 2016年1月10日、東京北区の北とぴあで、第4回 吃音と向き合い、語り合う伊藤伸二・吃音ワークショップを行いました。今回の参加者は、16人。年齢も中学2年生から72歳まで幅広い人が参加しました。午前10時から午後5時まで、昼休みの1時間を除くと6時間の短いワークショップですが、毎回、ドラマがあります。人と人が出会い、濃密な時間が流れました。

 今回、始めての試みとして、希望者を募り、私と1対1で公開面接をしました。面接というか、ナラティヴ的な質問をしていきました。ウォーミングアップのように僕がしゃべり、参加者ひとりひとりが簡単な自己紹介をした後、希望者に手を挙げてもらいました。手を挙げたのは、4人

 その中に、ワークショップ直前に参加を決めた中学2年生の男の子がいました。ホームページを見て、相談のメールがあり、その答えとして「どもる君へいま伝えたいこと」(解放出版社)と、「親・教師・言語聴覚士が使える吃音ワークブック(解放出版社)、両親指導の手引き書を紹介したら注文してきて下さいました。その本を送るときに、東京でのワークショップのチラシを入れてお誘いしたのでした。母親だけでもと思っていたのですが、本人も参加するということで、僕たちも、楽しみにしていました。

 どもることに抵抗のあるR君は、どもらずに言えると確信できるまで、ことばを発しません。彼の口から出ることばはどもっていませんが、彼の心の中では出たがっていることばが思うように外に出ず、確かにどもっているという思いでいるのでしょう。ぽつりぽつりと語るR君の話は、思春期に入り、悩みも大きくなってきたのだろうと思わせるものでした。

 彼は、授業中より友だちとの会話で自分の思っていることが言えないことが一番の間悩みのようでした。思っているようにすらすら話せたら、どんなに会話が楽しいだめう、相手も退屈しないですむのにと思っています。僕たちは、彼が、自ら希望してこの公開面接に自らの意志で手をあげたことにまず驚きました。

 公開面接は30分程度と最初から決め、他の3人は、30分で一応納得して終わったのですが、彼の場合は、彼自身と、僕が納得出来たときは、60分たっていました。ぽつりぽつりと語り、質問を繰り返していったのですが、不思議と長いと感じませんでした。周りで聞いていた人も、集中してそれを聞いて支えていました。

 自分を語るときの重みを思いました。軽い、薄っぺらなことばが飛び交うことの多い現代にあって、どもる人のどもることばは、リアリティをもって伝わってきます。どもる人のどもることばは、それだけで、相手に届く力をもっているのだと思います。

 面接の詳しい内容は、後日、日本吃音臨床研究会の月刊紙「スタタリング・ナウ」などで、で報告するつもりでいます。

 このワークショップの前後に、『吃音を生きる子どもに同行する、教師・言語聴覚士の会』の合宿を行いました。9日は、午後1時から10時まで、10日は、ワークショップが終わって午後6時から10時まで、11日は、午前9時から午後5時まで。よくこんなにしゃべることがあるもんだと思います。この合宿への参加は、沖縄、鹿児島、島根、大阪、愛知、神奈川、埼玉、千葉、栃木から14名。新年の3連休によく集まるものだと、お互いに感心する、いい仲間たちです。

 2016年は、このように幕を開けました。わくわくするような企画も飛び出し、楽しみな一年になりそうです。

日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2016/01/19

吃音(どもり)の初夢


 新しい年の挨拶を致します。どうか今年もよろしくお願いします。

 今年は、15年ぶりかに大阪で新年を迎えました。毎年、島根県の玉造温泉、大分の由布院で年末年始を迎えていました。定宿としていた、厚生年金保養ホームが昨年6月に閉館となり、ここ10年由布院に行っていたのが行けなくなりました。3食付きで安くて、とても広い施設だから2週間も過ごすことができましたが、とても一般的なホテルや旅館では、年末年始は過ごせません。なので近場を少し旅行するていどの年末でした。

 珍しくどもりに関する夢を見ました。
 僕はとてもよく夢を見ます。リアルな夢、奇想天外な夢、壮大な夢、うれしい、楽しい夢、恐怖で無理矢理起きようとするこわい夢。子どものころはこわい夢ばかり見ていました。成績のよくなかった僕は、いまだに、試験でできないで焦っている夢をみます。どもっている夢も見ますし、寝言でもどもっています。そんなわけで、僕にとって夢は生活の一部とさえ言えそうなくらいで、鮮明に覚えている夢もあります。

 初夢にどもりに関する夢をみたのは、初めてです。支離滅裂ですがおもしろかったので紹介します。

 小学一年生の一番最初の授業です。少し遅刻した僕は、「いとうしんじ」と書かれた席に座りました。まわりは小さな一年生です。僕は自分のからだが大きいか小さいか、周りにはどう映っているのかはわからないのでか、心は今の大人の僕なのです。席に座って担任の男の先生が、一所懸命教育方針を話をしていますが、僕は醒めた思いで、聞き、眺めています。その時、これからの小学校の一年の生活を、大人の心をもった僕はどう生活をしていくのだろう。これは楽しいぞと思いました。

 そして放課後、クラスの生徒男子6人ほど、女子も6人ほどで親睦のため合宿を突然することになり。旅館の一室で車座になって話し合いが始まりました。すると、その時は全員が30代ほどの大人になっていました。長年、グループメンバーとしても、ファシリテイターとしても参加していた、九州大学の村山正治先生の、ベーシック・エンカウンターグループのように、みんなが自分について語って行きます。すると、ひとりが、「伊藤さん、どもりについて少し話してよ」と言いました。「いいよそんなん」と言いながら、どもりについて少し話しました。

 そこでまた、小学校1年の状況に戻って、「今、こうしてどもりについてみんなに分かってももらい、クラスの10人ほど仲良くなれたのだから、これからの小学校生活は楽しくなるだろうなあ・・・・・・と思ったところで目が覚めました。

 僕は、メモをとりたくなるような夢もたくさん見ます。夢の中で号泣して、その当時のつらさから解放された経験もあります。しかし、夢分析はしたことがありません。今回のこの夢、自分でかってに解釈してみました。

 僕は、どもりに深く悩んでいたために、とても苦しく、つらい学童期・思春期を送りました。楽しい思い出は何一つありません。なので、時々講演や講義などでこんな話をすることがあります、

 「僕は時々、小学時代、中学時代、高校時代をもう一度やり直したいと思うことがありますが、どもらない少年として、どもりが治った少年として戻りたいのではなく、どもりについて勉強し、どもりとのつきあい方を知っていて、どもっていても大丈夫と、どもりながら生活している、少年としてだ」

 このことが、夢の中で実現しようとしていたのかもしれません。

 今週末、沖縄や鹿児島、近畿、関東の「吃音を生きる子どもに同行する、教師・言語聴覚士の会」の仲間が15人ほど集まって、3日間の合宿があります。その時、8月に行う「親・教師、言語聴覚士のための吃音講習会」の実行委員会もしますが、昨年に続いて、「どもる子どものレジリエンス」がテーマです。

 学童期のどもる子どもが吃音とうまとつきあうためにどうするかをかんがえるのですが、今年一年の僕たちのすべきことの出発して、このような夢をみたのかもしれません。

 今年もよろしくお願いします。

日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2016/01/04
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