伊藤伸二の吃音(どもり)相談室

「どもり」の語り部・伊藤伸二(日本吃音臨床研究会代表)が、吃音(どもり)について語ります。

2015年11月

21年の吃音ショートコースの歴史に幕を下ろしました 2

21年の吃音ショートコースの歴史に幕を下ろしました

 今回のショートコースに流れていたものは、これまでの20回の吃音ショートコースを振り返るということでした。参加者がそれぞれ記憶を辿り、講師のことば、学んだことのキーワード、出会った人のことば、その回のテーマで大切なことなど思い出しながら、ホワイトボードに書き並べていきました。

ショートコース1
 発言のたびに、ああ、そうだった、そんなこともあった、と、そのときどきの人の顔やエピソードが浮かんできました。参加したときの自分のからだや心理状態によって、受け止め方は様々です。あのことばに救われた、あの人のあの話が心に染みたというものもありました。たくさんのことを学び、たくさんのことを考え、たくさん話し合い、たくさん語り、たくさん聞き合った歴史がありました。そして、それらはすべて、私たちが、どもりながら自分らしく豊かに、幸せに生きていくときの、大きな助けに、大きな力になってくれました。吃音を生きるレジリエンスとして実を結んだといえましょう。

ショートコース3
 桃山学院大学教授、東洋大学教授を経て、現在、おおさか地域生活支援ネットワーク理事長、西宮市権利擁護センター運営委員長の、講師の北野さんは、ご自分の半生を赤裸々に語って下さいました。丁寧に自分の物語を振り返っていただいたことで、参加者もまた自分のこれまでの生き方と重ね合わせて聞くことができました。専門分野であるエンパワーメントのお話も、体験に基づき、具体的で、分かりやすいものでした。私たちは、一人の人間のもつレジリエンスの歴史を聞いたようでした。

 最終日、北野さんと僕との対談の最後に、僕は、このショートコースが生まれた背景と、今回でゲストを招いての吃音ショートコースは終了しようと思うとの話をしました。この吃音ショートコースという場を、新しい学びのできる場、人生を振り返る場、ほっとできる、居心地のいい場と言って下さり、大切に思っていて下さっていることは充分承知しながらの決断でした。20年間、皆さんからいただいた、たくさんの励ましは私たちへの身に余るご褒美でした。ありがとうございました。
ショートコース2

 改めて21年間を振り返ってみると、言語障害の分野にとどまらず、というか純粋に言語障害の分野のゲストは、第1回だけで、後は、本当に広いジャンルの第一人者から直接多くのことを学びました。そして、それらは、年報という冊子や、金子書房から書籍として出版することができ、私たちの大きな財産になっています。

 21年間の吃音ショートコースのテーマと講師を紹介します。
 また、年報の在庫も少しありますので、ご希望の方は、お申し込み下さい。送料を含めて、どれも1冊1000円です。郵便振替用紙での送金でも、代金分の切手を送っていただいても構いません。
☆印がついている年報は、在庫があります。その他のものは売り切れました。

日本吃音臨床研究会
    〒572−0850 寝屋川市打上高塚町1−2−1526
郵便振替用紙  口座番号  00970−1−314142
        加入者名  日本吃音臨床研究会

    これまでの吃音ショートコース  テーマとゲスト
 
 1回  障害の受容  内須川洸・筑波大学名誉教授
               梅田英彦・東京正生学院

 2回  からだ・ことば・こころ  竹内敏晴・演出家

 3回  自己表現−アサーションのすすめ−  平木典子・日本女子大学教授

 4回  表現とことば  谷川俊太郎・詩人
                内敏晴・演出家

 5回  吃音と論理療法  石隈利紀・筑波大学教授
                  村田喜代子・芥川賞作家 

 6回  吃音と人間関係  村瀬旻・慶応義塾大学教授
                  羽仁進・映画監督

 7回 実践的交流分析入門  杉田峰康・福岡県立大学名誉教授

☆8回 演劇に学ぶ自己表現  鴻上尚史・劇作家、演出家

☆9回  建設的な生き方  K・レイノルズ博士・文化人類学者                                               桂文福・落語家

☆10回 トランスパーソナル心理学  生きる意味を考える 
             諸富祥彦・明治大学教授

 11回 笑いの人間学  松元ヒロ・笑いの芸人
                 井上宏・日本笑い学会会長 

 12回 こころの自然治癒力
      認知療法・認知行動療法     大野裕・慶應大学教授
                           重松清・直木賞作家

☆13回 カール・ロジャーズの パーソンセンタード・アプローチ入門
                          村山正治・九州大学教授
     

☆14回 どもる子どもとどもる人のことばのレッスン  竹内敏晴・演出家

☆15回 アドラー心理学入門  岸見一郎

☆16回 サイコドラマ入門  増野肇・ルーテル学院大学大学院教授

 17回 当事者研究  向谷地生良・北海道医療大学教授、浦河べてるの家理事

☆18回 ゲシュタルトセラピー  倉戸ヨシヤ・福島学院大学教授

 19回 内観療法  三木善彦・大阪大学名誉教授

 20回 ナラティヴ・セラピー  国重浩一・ニュージーランドカウンセラー協会会員

 21回 エンパワーメント  北野誠一・おおさか地域生活支援ネットワーク理事長

 なお、3回、5回、12回、17回は、金子書房から書籍として出版されています。書店でも購入できますが、日本吃音臨床研究会にお申し込みいただければ、送料は当方負担で、他の資料も添えてお送りします。

第3回…話すことが苦手な人のアサーション〜どもる人とのワークショップの記録〜
       平木典子・伊藤伸二共著    1890円
第5回…やわらかに生きる〜論理療法と吃音に学ぶ
       石隈利紀・伊藤伸二共著    1890円
第12回…ストレスや苦手とつきあうための認知療法・認知行動療法〜吃音とのつきあいを通して〜
       大野裕・伊藤伸二共著     2100円
第17回…吃音の当事者研究〜どもる人たちが「べてるの家」と出会った〜
       向谷地生良・伊藤伸二共著   2100円

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二  2015/11/27

21年の吃音ショートコースの歴史に幕を下ろしました  1

11月21日〜23日、講師に北野誠一さんをお迎えし、滋賀県のアクティプラザ琵琶で開催した、第21回吃音ショートコースが無事終わりました。今回の吃音ショートコースのテーマは、エンパワーメント〜内なる自分の力の再発見〜でした。

 過去20回、ワークショップ形式にこだわり、精神医学、臨床心理学、教育学、演劇などから、その領域の第一人者に講師をお願いし、様々なテーマで取り組んできました。ジョゼフ・G・シーアンの吃音氷山説の、吃音を否定的にとらえることで起こる問題となる行動、思考、感情、からだに対して、どのように向き合い、取り組むかを20年間、吃音ショートコースを通して学び、考え、話し合ってきました。

様々な悩みをもつ人の、悩みに影響を受ける行動、思考、感情は、吃音に悩む人だけに起こることではなく、人生の様々な問題に直面する人たちに、共通する、普遍的な人間の悩みへの対処でした。僕が、是非みんなで一緒に体験的に学びたいと考えたテーマは、昨年の20回でほぼ出尽くしました。なので、その20回で吃音ショートコースをやめると発言しました。すると、多くの人がこの貴重な場を閉じるのはもったいないとの声が相次ぎ、とりあえずはもう一回開くことに僕の中では考えました。

 だから、今回は20回の吃音ショートコースをみんなで振り返ると同時に、たくさん学んできたことを、講師の北野誠一さんと一緒にふりかえってもらい、今後の指針にしたいと考え、「エンパワーメント」のタイトルとしました。ゲストを招いての吃音ショートコースは、今年の21回目をもって、終了すると決意して臨んだ吃音ショートコースとなった今回、資料集にこんな文章を書きました。


 第21回吃音ショートコース
 2015年11月21日〜23日 
 エンパワーメント−本人と支援者が一人ひとりの物語を紡いでいくために−
 日本吃音臨床研究会  伊藤伸二 



 ワークショップ形式にこだわり、精神医学、臨床心理、教育など様々な領域の第一人者を講師に、2泊3日の学びのワークショップを20回も続けてこられたことは奇蹟に近い、と感慨深いものがあります。忙しいスケジュールをやりくりしながら、3日間、とても力を入れて誠実に関わって下さったからこそ、年報として18冊の冊子にまとめられ、その内の4冊は、金子書房の書籍として出版され、私たちの大きな財産になっています。

 昨年のこの挨拶文では、将棋を比喩として使い、相手の王将に向かって、一手一手と詰め進んでいった20年の歴史だったと書きました。そして昨年は、これまで吃音ショートコースで学んできたことを整理しつつ、私の1965年からの吃音の旅を、整理するために、ナラティヴ・アプローチを学びました。このナラティヴ・アプローチで、私が考えてきた、吃音ショートコースのテーマをほとんど学んだ気がします。私たちとつながる多くの仲間たちや、吃音親子サマーキャンプや、仲間のことばの教室などのどもる子どもたちは、自分なりの生き方に確信をもててきたように私には感じられます。

 ところが、たくさんのどもる人や支援者など吃音に関わる人たちは、まだまだ迷いの中にいます。私たちが詰め将棋のように歩んできた20年の道を、さらに整理し、多くの人たちが「吃音と共に幸せに生きる」航海に出発する、航海地図をつくることが、私たちの新たな役割として出てきました。吃音の世界は、100年以上も前の、混沌とした状況に逆戻りしつつあります。かつてのように「吃音は絶対治すべき、改善すべきだ」とする治療中心主義からは少し趣を変え、「治したいと思う人には、治すお手伝いをしよう」とする、善意の吃音治療が広がっています。かつて、営利を目的にした吃音治療と戦って来たときとは、比べようのないほどに、「敵」とも「味方」とも見分けがつかない大きな壁が出来ています。

 今、私たちは自らの生き方、自らのどもる子どもとの取り組みの中で、私たちのこれまでの取り組みに自信をもっていますが、それを丁寧に社会に「航海図」として示す必要に迫られています。40年前「吃音者宣言」を出したとき、伊藤の考えは分かるが、それを具体的にどう実現できるのか、「航海図」を示せと言われました。その時は、私はひとつの方向性を示しただけで、その後どう生きるかは、それぞれの人が自分自身の生き方を貫けばよいことで、「航海図」など作らないと言ったことがあります。

 しかし、50年の活動をもってしても、100年前に逆戻りしつつある現状では、やはり「航海図」の必要性を認めざるを得ません。今回の吃音ショートコースの講師の北野誠一さんは、大阪セルフヘルプ支援センターでの活動の時の戦友です。北野さんは、エンパワーメントを「共に生きる価値と力を高めること」と定義しています。どもる私たち本人と、どもる子どもに関わる支援者がともにひとり一人の物語を紡いでいくことが、結果として「航海図」の作成につながるのだと思います。

 今回の吃音ショートコースでは、講師の北野さんと一緒に、考え、整理するものになるでしょう。そのこれまでとは違う、吃音ショートコースに、戦友でありながら、音信不通になっていた北野誠一さんをお迎えできること、大きな縁を感じます。その大切な吃音ショートコースに皆さんとご一緒できる幸せに感謝します。

日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2015/11/25

一年に一度の 関東地方の吃音(どもり)相談会


       どもる子どもの親と臨床家のための吃音相談会・講演会(横浜)のご案内

横浜での相談会は今回で14回目となります。吃音と共に豊かに生きていくことを考え続けた年月でした。
幼児期、学童期、思春期と進むにつれて吃音の問題は変化します。子どもの吃音とどう向き合い、どのように接すればよいのか、適切な情報が少ない中で、悩んでいる親や教師は少なくありません。日頃、子どもの吃音について悩んだり困ったり、疑問に思ったりしていることなどを持ち寄って、話し合ってみませんか? 皆様のご参加をお待ちしております。
                                        (企画:清水俊子)

日時:2015年12月5日 (土) pm. 1:15 〜 4:30 ( 受付 1:00より )
会場:(横浜市健康福祉総合センター内)横浜市社会福祉センター 8階大会議室8A
〒231-8482 横浜市中区桜木町1−1
TEL 045-201-2060 (車でのご来場はご遠慮ください)
   JR京浜東北線、横浜市営地下鉄;「桜木町駅」下車 徒歩2分
対象:どもる子どもをもつ親、どもる子どもに関わる人、共に考える臨床家、吃音に関心のある人
     *子どもの参加は原則ご遠慮ください。詳しくはお問い合わせください。
参加費:1500円 (資料代)
主催:日本吃音臨床研究会   〒572−0850 大阪府寝屋川市打上高塚町1−2−1526
                   TEL・FAX 072-820-8244
スタッフ:伊藤伸二(日本吃音臨床研究会代表)
     溝口稚佳子(元公立小学校教諭)
     清水俊子(学校心理士、臨床発達心理士)
申し込み方法:
(1)メール又はFAXで、〇疚勝↓⊇蚕蝓↓E渡叩↓い子様の年齢、ズい辰討い襪海箸篩蠱未靴燭い海函  ,鮟颪い討申し込みください。
 (2)メール送付先:y-shimizu@ai.ayu.ne.jp
 (3)FAX申し込み及び問合せ先:清水俊子(TEL・FAX 046-250-4356)
電話での問い合わせは午後8時30分以降にお願い致します。
締め切り:12月4日(金)
✻当日、直接会場でも受け付けております。参考図書も当日紹介させて頂きます。

☆こんな相談会です☆
参加者は、どもる子どもの親、どもる子どもを指導することばの教室の先生、病院などのスピーチセラピストなどさまざまで、毎回、20人くらいが参加します。
 この相談会は、参加者と共に作り上げていく相談会です。参加者の自己紹介の後、今、気になっていることや知りたいこと、相談したいことを出していただきます。共通することが多いので、参加者みん なで自分の体験を出し合いながら話し合います。

 話し合いの中で、
◇どもりに関する基礎的な知識、
◇大切にしたいどもりについての基本的な考え方
◇具体的な場面での対処法、
◇どもりについての世界の情報、
◇ことばの教室での実践、
◇子育てで大 事にしたいこと、
◇様々な困難な場面をサバイバルしているどもる人やどもる子どもの体験、など、必要なことを紹介します。
 毎年、あっという間に時間が過ぎてしまいます。
 不安そうだった参加者の顔が、相談会が終わったときには少し緩み、すっきりした表情になるのを見ると、私たちもほっとします。どうぞ、お気軽にご参加下さい。

ナラティヴ・セラピー 研修のお知らせ


 秋の吃音キャンプロードが群馬のキャンプで終わりました。
 また、ブログを再開しますが,その前に、昨年僕たちの秋のワークショップ「吃音ショートコース」に講師として来て下さった、国重浩一さんが、ニュージーランドから来日し、ワークショップを開きます。ナラティヴアプローチは,僕が今、もっとも関心をもち学んでいるものです。もちろん、僕も参加します。なかなか本物のナラティヴ・アプローチを学ぶ機会は日本ではありません。是非この機会に参加されることをおすすめします。
 詳しくは、このアドレスまで http://kokucheese.com/event/index/345829/

 ナラティヴ・セラピーの会話術入門(大阪)

 12月19日・20日

研修の概要

 研修会では、ナラティヴ・セラピーの概要とその進め方についてできるだけ専門用語を使うことなく説明していきます。デモンストレーションまたはセッションのビデオを紹介して、ナラティヴ・セラピーのイメージをつかんで頂いた後で、いくつかの基本となる技術についてのワークに取り組んで頂きたいと考えております。「ナラティヴ=語り」という理解からもう少し踏み込んでナラティヴ・セラピーに取り組んでいくきっかけになれば幸いです。

研修の内容
概要の説明
デモンストレーションまたはセッションのビデオ
技術習得のためのワークなど

講師紹介

国重浩一
ニュージーランド在住
ダイバーシティ・カウンセリング・ニュージーランド マネージャー兼スーパーバイザー、カウンセラー
日本臨床心理士 
ニュージーランド・カウンセラー協会員
ニュージーランド・ワイカト大学カウンセリング大学院
元鹿児島県スクールカウンセラー
鹿児島メンタルサポート研究所・研究員
元宮城県緊急派遣カウンセラー(東日本大震災)

【翻訳書】
「ナラティヴ・アプローチの理論から実践まで—希望を掘りあてる考古学」
「ナラティヴ・メディエーション—調停・仲裁・対立解決への新しいアプローチ」
「心理援助職のためのスーパービジョン—効果的なスーパービジョンの受け方から、良きスーパーバイザーになるまで」
「ナラティヴ・セラピストになる—人生の物語を語る権利をもつのは誰か? 単行本」
「サボタージュ・マニュアル—諜報活動が照らす組織経営の本質」

【著書】
「ナラティヴ・セラピーの会話術―ディスコースとエイジェンシーという視点」(金子書房)
「ナラティヴ・プラクティスを通して見た東日本大震災後の気仙沼」(NPO法人ratik)
「震災被災地で心理援助職に何ができるのか?」(NPO法人ratik)


国重さんのセミナー


http://kokucheese.com/event/index/345829/
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