伊藤伸二の吃音(どもり)相談室

「どもり」の語り部・伊藤伸二(日本吃音臨床研究会代表)が、吃音(どもり)について語ります。

2015年07月

26回吃音親子サマーキャンプの劇のレッスン


 先週末は、第26回吃音親子サマーキャンプの劇の取り組みのための、レッスンでした。25名が参加して楽しい合宿でした。詳しくは写真と共に報告をしたいと思っていますが、明日から全国難聴・言語障害児教育研究協議会の東京大会で、僕たちの仲間が吃音分科会で発表しますので、応援に行きます。

 その後が、僕たちの「親、教師、言語聴覚士のための吃音講習会」です。レジリエンスについて楽しく学びます。東京へ行く前にとすこしだけ、レッスンにかんしてです。

 劇はずっと竹内敏晴さんが演出してレッスンをして下さっていたのですが、お亡くなりになってからは、東京学芸大学の渡辺貴裕さんが演出をして下さっています。渡辺さんへのお礼のメールです。

 渡辺貴裕様

吃音サマーキャンプの事前レッスン、ありがとうございました。ほんとにお忙しい中、事前の、せりふの見直しから、1泊2日という貴重な時間まで、作っていただき、感謝しています。

 竹内敏晴さん最後の演出だった「雪わたり」、感慨深いものがあります。
芝居そのものももちろんですが、子どもたちとの練習に生かせるいくつかのエクササイズ的なものを教えていただいたこと、とてもよかったです。

2つのグループに分かれての、掛け合いの練習、初めはこわごわ食べ始めて後でおいしい!となる食べ方、
など、おもしろかったです。

用意しておられたものもあったでしょうけど、その場で思いついたものをエクササイズの形にしてしまわれるところ、すごーい!と思いました。本当にありがとうございました。さあ、これで安心! とはいかないところが、私たちです。
復習して、本番に臨みたいと思います。

まだ今年のサマキャンが終わっていないのに、来年のことを心配しなくてもいいのですが、秋になったら、少し余裕ができると思うので、これまでの芝居の台本など整理してみたいと思います。データを、またお送りしますよろしくお願いします。

お忙しい夏でしょう。
どうぞ、おからだに気をつけて下さい。
では、8月21日、荒神山で。
よろしくお願いします。

日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2015/07/29
 

吃音の旅 沖縄


 7月11日〜13日と、沖縄で吃音三昧の時間を過ごしてきました。
初日は、7名の沖縄の言語聴覚士が集まって下さり、5時間以上、吃音についての、いろいろな質問を受け、あっという間でした。沖縄に、吃音について考え、どもる子どもの支援をしてくださる、いい仲間ができそうです。

 2日目は午前が講演会で、午後がワークショップでした。たくさんの人が聞いて下さり、思いきって話せました。午後のワークシヨップは、3人の臨床心理士他、ことばの教室の教師など、違った角度からの質問はありがたいことでした。

 沖縄のことばの教室の担当者が、吃音ワークブック(解放出版社)を使って実践しいてるのを聞いて、心強いことでした。
 2013年の夏に、鹿児島での全難言大会(全国のことばの教室担当者の全国大会)で僕は記念講演をしましたが、僕の話を聞いて、共感して下さり、僕の本をいくつも買って、子どもの指導に役立てていると話して下さいました。その指導の中で疑問を、いろいろと、いろいろと具体的な質問をしてくださいました。楽しい、ワークショップになりました。

 3日目は、沖縄リハビリテーション福祉学院、言語聴覚科に一日講義です。事前に「英国王のスピーチ」をみての感想をおくってもらっていました。僕は大学や専門学校で講義の前に、必ず映画「英国王のスピーチ」の感想をレポートしてもらいます。今回も提出してもらいました。

 今回は、吃音の講義を受ける前に映画を見て、講義をうけてから再度見ての感想だったので、学生は、びっしりとレポートを書いていました。たくさんのレポートを読んで、あまりしっかりと書いていたので、折角のレポートをムダにはできないと、しっかりと読んで、レスポンスもしっかりしなければと準備しました。

 結局、専門学校の午前、午後2コマの講義は、「英国王のスピーチ」について、久しぶりに力を入れて話しました。これだけ時間をかけて話せる、やはり「英国王のスピーチ」は、吃音の学習に最適な教材だと、改めて強く思いました。

 専門学校の講義の後、専門学校の言語聴覚科の学科長はじめ教員との食事会は、食事もおいしく、楽しい時間でした。吃音が縁で、いい時間をすごせる幸せを思いました。

 沖縄に、「吃音はどう治すかではなく、どう生きるかだ」の考え、実践が浸透していくことを願っています。

日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2015/07/28 

第4回 吃音講習会


 第4回 親、教師、言語聴覚士のための吃音講習会が近づいてきました。今回は、世界的に注目されているレジリエンスについて、初歩的なところから、今後の臨床に役立つところまで、2日間で学びます。
ご都合のつく方は、是非ご参加下さい。楽しく学べる講習会です。再度案内します。

・講習会のホームページ www.kituonkosyukai.com
・日本吃音臨床研究会のホームページ www.kituonkenkyu.org

ホームページからからも申し込むことができます。

日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2015/07/22


2015年6月1日
各所属長並びに関係の皆様

吃音講習会実行委員会
顧問 牧野泰美
(国立特別支援教育総合研究所)

   子どものレジリエンスを育てる

第4回 親、教師、言語聴覚士のための吃音講習会のご案内

1 趣 旨

 精神医学・臨床心理学などの領域で注目される「レジリエンス」は、『児童心理2014年8月号』(金子書房)に特集が組まれるなど、教育の世界でも関心がもたれるようになってきました。この「逆境を乗り越え、心的外傷となる可能性のあった苦難から新たな力で生き残る能力、回復力」というレジリエンスの概念は、どもる子どもたちと重なります。子どもたちは、音読や発表で苦戦しながら、時にからかわれ、落ち込みながらも、元気で生き延びています。

 吃音について人一倍悩み、マイナスに考え、自己紹介を避けるなど行動面にも影響を受けていた子どもが、3年生になり「クラスのみんなに伝えたいことがある」と自分や自分の吃音について語り始めました。彼は、言語訓練などで、吃音が改善することによってみんなの前で話せるようになったわけではありません。吃音について学習し、自分を見つめ、自分を語ることの大事さや必要性を知り、どもるのが自分の話し方だと考え、話す場面から逃げずに毎日をていねいに生きるようになりました。そして自分の思いを周りの人に語る経験を重ねる中で、少しずつ彼が本来持っていた力を取り戻していったのだと思います。私はその過程の中に、「レジリエンス」につながるものがあるように感じます。

 私がつきあっている多くのどもる人たちは、子どもの頃、吃音に悩みながらも、今は、吃音と向き合い、自分のしたい仕事に就いて豊かに生きています。一方、吃音の悩みから抜け出せず、不本意に生きる人がいることも知っています。この違いは、レジリエンスがあるかないかだと、レジリエンスモデルでは考えます。子どもの頃から、レジリエンスを学び、育てることができれば、どもる子どもの現在、そして将来にとって、「吃音治療・改善」よりはるかに大きな生きる力になるのではないでしょうか。
 長年、学校心理学、スクールカウンセラー、チームによる心理教育的援助サービス等に取り組んで来られた、筑波大学副学長で筑波大学附属学校教育局教育長の石隈利紀教授に、レジリエンスの基本的な考え方を学び、レジリエンスをどもる子どもの指導にどう生かすか、参加者と実践を交流しながら、一緒に考えていこうと思います。
              大会実行委員長 渡邉美穂(千葉市立院内小学校ことばの教室)


2 主 催  吃音を生きる子どもに同行する教師・言語聴覚士の会
       日本吃音臨床研究会

3 後 援  NPO法人全国ことばを育む会
       NPO法人大阪スタタリングプロジェクト

4 日 時  2015年8月1日(土)10:00〜19:45
              2日(日) 9:15〜16:30

5 会 場  帝京平成大学 池袋キャンパス 613−B教室
 〒170-8445 東京都豊島区東池袋2−51−4 03−5843−3111

6 アクセス JR「池袋駅」東口駅から徒歩12分、有楽町線「東池袋駅」から徒歩10分
キャンパス内は駐車スペースがありません。近くの有料駐車場をご利用ください。
なお、「帝京平成大学」ホームページ(下記URL)に、詳しい道順等が載っています。そちらもご参照ください。https://www.thu.ac.jp/access/access_ike.html


7 内容・プログラム 予定
【8月1日(土)】
 9:30  受付
10:00  基調提案 ^貌伸二・日本吃音臨床研究会
11:30  休憩(昼食)
12:30  講 義  \亰利紀・筑波大学副学長・筑波大学附属学校教育局教育長
14:10  講 義◆ \亰利紀
16:00  対 談   石隈利紀&伊藤伸二
17:30  グループ討議
18:15 休憩
18:30  質問を中心とした全体でのディスカッション
19:45  公式プログラムの終了  懇親会会場に移動

【8月2日(日)】
 9:00  受付
 9:15  基調提案◆)厂鄲挌・国立特別支援教育総合研究所主任研究員
10:00  基調提案 桑田省吾・兵庫県 神戸市立本山南小学校 教諭
10:45  実践発表と討議  嵳鳥期の実践」
12:00  休憩(昼食)
13:00  実践発表と討議◆ 岾愼鹸の実践」
14:30 休憩
14:45  みんなで語ろう、ティーチイン
16:30  終了
8 講習会参加費  5,000円

9 参加申し込み   参加ご希望の方は、参加申込書に必要事項を記入し、郵送、またはメールに添付し、下記の申し込み先までお送りください。同時に郵便局より参加費の振込をお願いします。入金確認ができましたら、受講票をお送りします。申し込み締め切りは2015年7月28日(火)です。なお、参加費は当日キャンセルされてもお返しできません。受講票は他の方にお譲り下さい。

※郵便振替 加入者名:吃音講習会 口座番号:00960−0−282459

10 申し込み先   栃木県宇都宮市立陽東小学校 ことばの教室  高木浩明
            〒321−0904 栃木県宇都宮市陽東2丁目16番36号
          Mail:  kituon-kosyukai@live.jp

11 問い合わせ先  日本吃音臨床研究会 TEL/FAX 072−820−8244
      〒572−0850 大阪府寝屋川市打上高塚町1−2−1526

12 宿泊その他    宿泊は、各自直接お申し込み下さい。池袋駅・大塚駅周辺には、たくさんビジネスホテルがあります。早めに宿泊の予約をされることをおすすめします。講習会中の食事は、近くの食堂やコンビニ等をご利用ください。研修会場内での飲食は可能です。

13 講師紹介
【特別講師】
◇石隈利紀 筑波大学副学長・筑波大学附属学校教育局教育長
  学校心理学の第一人者。学校心理士スーパーバイザー・特別支援教育士スーパーバイザー。文 部科学省中央教育審議会専門部会委員歴任。福島県子どものこころのサポートチーム協議会委員。 著書として『学校心理学―教師・スクールカウンセラー・保護者のチームによる心理教育的援助 サービス』、『寅さんとハマちゃんに学ぶ助け方・助けられ方の心理学〜やわらかく生きるための 6つのレッスン』(誠信書房)、『石隈・田村式援助シートによるチーム援助入門〜学校心理学・ 実践編』(図書文化)、『学校の効果的な援助をめざして〜学校心理学の最前線』(ナカニシヤ出  版)、『よくわかる学校心理学』(ミネルヴァ書房)など。

【講 師】
◇牧野泰美 国立特別支援教育総合研究所総括研究員
  専門は言語障害児教育、言語獲得、コミュニケーション障害とその支援など。「全国公立学校 難聴・言語障害教育研究協議会(全難言協)」をはじめ、各地の「きこえとことばの教室」の担 当者や、親の会等と連携しながら、子どものことばやコミュニケーションへの支援の在り方、き こえとことばの教室の役割などについて研究活動を進める。
  著書に、『言語障害のおともだち』(ミネルヴァ書房)など。

◇伊藤伸二 日本吃音臨床研究会会長・国際吃音連盟顧問理事
21歳の時、セルフヘルプグループ言友会を創立。大阪教育大学専任講師(言語障害児教育) などを経て、現在伊藤伸二ことばの相談室主宰。第1回吃音問題研究国際大会を大会会長として
 開催し、国際吃音連盟の礎を作る。論理療法、交流分析、アサーティヴ・トレーニング、認知行 動療法などを活用し、吃音と上手につきあうことを探る。著書に、『両親指導の手引き書41 吃音と ともに豊かに生きる』(NPO法人 全国ことばを育む会)、『吃音の当事者研究−どもる人がべてる の家と出会った』(金子書房)など。

「子どもの心の発達を支援するために」

筑波大学人間心理学域教授 日本学校心理士会会長  石隈利紀

 2011年3月11 日に起こった東日本大震災は、地震、津波、そして原子力発電所の事故により放射能の問題となりました。子どもや学校は、今なお危機的状況にあります。子どもは、震災による心の傷、親しい人やものそしてふる里の喪失、転校など学校生活の変化に対処しながら、子ども時代を生きています。子どもは厳しい状況のなかで、学校に通い、授業や特別活動、友達や教職員との関わりを通して、自分のペースで、ゆっくりと、でも確実に発達しています。震災後、私はあらためて「学校の力」を感じております。友達と一緒に、勉強して、昼食を食べて、遊んでという日常生活を通して、子どもは回復していきます。自分の成長を自覚する機会が、授業にも、行事にも、部活動にも、たくさんあります。やはり学校は、すごいところです。
 子どもの回復を支える力を「レジリエンス」(苦しい状況のなかでも健康を回復し、維持する特性や力)と言います。レジリエンスは、子ども自身の力(自助資源)の発見と活用、そして周りの力(援助資源)の発見と活用が鍵となります。子どもなりにできていること(例:朝、顔をあらう、学校にきている)、工夫していること(例:友達と助け合う)を見つけ、「よくやっているね。ありがとう。すごいね」と声をかけることが、子どもに力を与えます。そして子どもの周りの大人もよくがんばっています。先生方、職員の方々、保護者の方々、地域の方々が、お互いにお互いのできていることや工夫を認め合うことです。「ありがとう。助かります。すごいですね」と、口に出すことで、互いの力を維持したいものです。
 子どもの心の発達を支援するのは、援助する人々の「チーム」です。普段なら、子どもが状況に応じて、大人に相談します。子どもが周りの援助を活用するのです。でも今日のような厳しい状況では、援助者の方が意識的にチームを組む必要があります。学校では、生徒指導・教育相談担当、特別支援担当、養護教諭、管理職などをリーダーとする先生方が、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーとともに、子どもの援助チームで取り組むことで、子どもへの良質の支援が可能になります。保護者も子どもの援助チームの重要なメンバーです。
 どんな厳しい状況でも、子どもは、発達していきます。この状況が少しでもよくなることに努めながら、その間も、子どもの発達をきちんと支援していかなくてはなりません。子どもを支える大人は、当事者として「危機」を共有し、子どもの援助者として「責任」を共有し、子どもと共に生きる者として、子どもの将来と未来の社会への「希望」を共有しましょう。

〜福島県子どもの心のサポートチーム協議会リーフレットより〜



懇親会のお知らせ

 講習会1日目の終了後に、懇親会を企画しました。これまでも、この時間に講習会で学んだことがベースになって、本当にいろいろな話ができた。日頃どもる子どもたちと関わる中で感じていることが、お互いに共感できた。ちょっと悩んでいることへの解決の糸口が見つかったなどの感想が寄せられています。とっても貴重で、素敵な出会いの場になっています。ぜひ、皆様のご参加をお待ちしております。
 なお、会費は講習会参加費とは別に、当日、3,500円を集金させていただきます。(懇親会会場は、講習会会場から徒歩1分の場所です。)

吃音の悩みや影響の、大きな個人差に注目する


 神戸の相談会の続きです。

 理学療法士のように、吃音が大きな壁になり、逆境に陥ったとき、これまでの吃音の臨床では「吃音を治す、改善に」向かいます。しかし、このアプローチは、1903年からの治療の歴史の中で失敗してきています。100年以上たった今でも、吃音の治療法はゆっくり話すことしかない。アルバータ大学のアイスターという、世界有数のトップクラスの吃音治療所が何をしているかを知ってびっくりしました。

 1903年から始まっている「みーなーさーんー、わーたーしーのーなーまーえーはー、」というゆっくりしゃべる、スピードコントロールが治療法の中心です。僕が1965年に経験した東京正生学院で教えてもらったのと全く同じ方法です。どもりの治療法はひとつしかない。ゆっくり話す方法だけです。ゆっくり話すか、メトロノームに合わせて言うとか、ひどいもんでしょう。こんなもの、とっくの昔になくなっているだろうと思っていた。この方法を、2015年の今、この時代に、北米のトップクラスの大学でしている。

 僕は、言語聴覚士の専門学校に行っていますが、アルバーター大学の現実を話しても、それでも、何か、治療法があるはすだと期待している。これだけ科学・医学が進歩しているのだから、どもりぐらいの治療法がないわけがないと思い込んでいるのです。楽天的な考え方をもっている。

 アイスターで言語聴覚士として働いていた人の話では、15年間、治すために必死にがんばり、500万円のお金を使って、有名な大学の教授の治療を受けるなど、500万円も使ったそうです。年収1000万円を超えるファイナンシャルプランナーだからできたのかもしれないけれど、普通の人には、500万円も使っていられない。また、15年も諦められずに続けるのは、僕には信じられません。誰ひとり、「15年も治そうとしてだめなんだから、そろそろ諦めようよ」と言う人がいなかったことが、とても不思議です。

 じゃ、何をすればいいのか。もうそろそろあきらめて、個人差に注目したいんです。理学療法士と、消防士のこの大きな個人差はどこからくるのか。吃音の悩み、影響の大きな個人差はどこから来るのか、ここに注目するのが、レジリエンスです。

 7つのレジリエンスについては、また説明するとして、今ここで、皆さんの中に、どもりで苦しんだ時代はあったけれども、今こうしてどもりながら自分なりの人生を生きているのは、こういうきっかけがあったからじゃないか、こういうことがあったから自分はここまで生きてこれたんだという、何か自分で思いつくこと、思い浮かぶことがあったら、順番ではないので、手を挙げて話をして下さい。(つづく)

日本吃音臨床研究会 2015/07/21 伊藤伸二

吃音の悩みや、影響の大きな個人差

 神戸の相談会の続きです。

 個人差についてもう少し話します。
 先日吃音ホットラインに、23歳の保護者からの電話がありました。今理学療法士養成の専門学校で勉強しているが、実習先が大きな病院で、大勢の理学療法士の前で、報告などしなければならない。挨拶なども大きな声でしろと強く言われた。僕は言語聴覚士の専門学校で講義をしているけれども、どもる人が実習で苦戦することはよくあります。彼の場合は、厳しいところに当たった。はきはきと挨拶をしろなどと言われてしゃべれなくなってしまった。彼自身は、どもる度合いはあまり重くない。だから、今まで母もだいじょうぶだと心配をしないできた。実習先での苦戦はある意味、逆境です。彼は、精神的に苦しくなって、心療内科に行って、薬をもらって、これ以上がんばれと言って、実習を続けていては、彼が壊れてしまうので、実習を中断することにした。中断すると単位がとれない。その瞬間に1年間留年が決まりました。

 そういうかなりのプレッシャーになる逆境でも耐えられる人もいる。たとえば、吃音親子サマーキャンプの冊行政の兵頭君は、理学療法の病院の実習なんかとは比べられないくらいに厳しい逆境の中にいました。

 消防士になりたいと東京都の消防士に採用されたが、消防学校は、ものすごく厳しい。病院の厳しさとは比べものならない。自分の指導担当教官に、報告に行かなければいけないときに、ノックして、何年度、何々隊の何々入ります、よし、入れと言われないと入れない。そういうときに、自分の名前が言えずに、自分の後ろに続いてくるみんなも入れなくて、早くしろと言われ、教官からは、自分の名前くらい言えなくてどうする、練習しろと言われて、取り残されて、ノックするところから、何度も練習をさせられて、挙げ句の果てには、「お前のようなどもっていて、緊急の無線連絡がとれないとか、電話ができないとかで、消防士ができるのか、消防学校にいる間にどもりを治せ、そんなことで、東京都民の命が守れるのかと言われる。これは、大変な逆境です。

 病院で、ハキハキ挨拶しろという程度じゃない。給料をもらっている消防学校での出来事です。でも、彼は、そんな中でも、1年間ちゃんと耐えて、消防学校を卒業して、消防士として働いています。理学療法の専門学校生の母親の話では、そんなにどもる方ではない。どちらがどもるかというと、消防士の方がずっとどもります。同じようにどもっていても、どもることを指摘されても、最後まで頑張った消防士と、実習をリタイアした専門学校の学生。このように、吃音から受ける影響には大きな個人差があるという、ここまでのことでは、「ガッテン」していただけましたでしょうか。

日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2015/07/06

吃音とレジリエンス


 神戸吃音(どもり)相談会 2015.6.28


 僕の講義や講演は、まず質問から入ることが多く、相談会の時は特にそうなのですが、この日は、レジリエンスについて、僕から少し話して、それから質問などで展開することにしました。
 冒頭で、話したことを少し紹介します。

 レジリエンスは、精神医療・心理学の分野で、ここ数年、アメリカなどではかなり前から言われています。日本では、東日本大震災を契機に、レジリエンスということばが新聞にも出されましたし、アメリカのオバマ大統領の演説にも出てきました。本来、物理学用語で、弾力性とか回復力と訳される。たとえば、ボールを押すとへこみますが、離したらぐっと跳ね返りますね。ぐっと圧力がかかるものが、ストレスで、そのストレスに対してポンとはね返す力がレジリエンスです。震災で、経済や町やいろんなものが壊れて、そこから回復していくときにも使われる。

 これまでは精神的な強さが大切だと言われた時代が続きました。でも、人間、そんなに強くない。強さの研究はずっと昔からなされてきたが、強さだけでは、なんともならない。しなやかさの方が強いのではないか。堅くて強い樹は、何かの拍子でぽきっと折れるけれど、柳に雪折れなしのも、しなやかさが最近、注目される。これは、吃音にとって、ものすごく役に立つ考え方。今年あたりから、吃音プロジェクトで、このレジリエンスを中心に考えてみようとしている。レジリエンスということばを知らない前から、僕たちは、ずっと考えてきた。

 1965年に僕はどもりに悩んでいて、治らないと人生はない、どもっている僕は、社会人として生きていけない。大学生だったので、将来、仕事をしているイメージが全くつかめなかった。小、中、高校とみじめな生活を送っていた。電話も、音読も、発表もできない、この僕が社会人として生きていけないだろうと思っていた。自分がそうだったので、どもる人はみんな0僕のように苦しみ悩み、将来、仕事につけないんじゃないかとしか想像できなかった。東京正生学院というどもりを治す学校に行くと、300人くらいの人が来ていた。こんなにたくさんのどもる人に出会うと、僕のように、僕以上に悩んでいる人も中にはいたけれど、悩みながら、元気に生きている人もたくさんいた。小、中学校時代苦しかったと話しても、僕は、中学校時代楽しかった、高校時代はよかったという人がいる。本当かなあと、自分の苦しさを思うと、信じられなかった。いい友だち、いい先生がいたとの話がうらやましく、同じようにどもっていても、ずいぶん違うなあと思った。

 当時僕は大学1年生で、社会人として生きていけるかと不安を持っていたので、そこに来ている人たちは、夏に、1週間や10日と、短期に来ている人で、どもりに悩んでいるから、治したいと思って来ているには違いないが、地元に帰れば、みんな仕事に就いている。どもりであれば仕事に就けないと思っていたのが、話を聞いてみれば、中には先生をしている人もいたり、お坊さんがいたり、僕には想像できないような、話すことが多い、話さなければならない仕事に就いていた人もいた。これは僕にとっては、新しい発見でした。
 ひとりで悩んでいたら、悩みの中での堂々巡りで、どもって失敗した、だから、〜しない、しないから社会的経験がないから、何かをしたときに失敗する、その負のスパイラルにはいってしまう。どもりながら生きていく、どもりながら仕事に就いてちゃんと生きていく、そんなことが想像できなかった。でも、そういう人に出会ったときに、僕は僕でも生きていけるかもしれないと思った。300人くらい来ていた中で、その人たちは、特別な能力のあるスーパーヒーローではないだろう、その人たちにできて、僕にできないことはないだろう、と当然思います。

 1965年、小学校2年生からずっとどもりに悩み、暗黒の時代を生きてきた。友だちもいない、勉強もしない、社会的にある意味引きこもりの状態で生きてきて、でも、この21歳からがらりと変わって、今は、どもることはかなりあるけれども、どもりに悩んだり困ることは全くない。僕は21歳から、ぱっと変われたけれど、変われない人もいる。僕は、東京正生0学院で1ヶ月間、治療を受けて、治らなかったので、そこで、きっぱりとあきらめた。ところが、あきらめきれずに、ここはだめかもしれないけれど、ほかならいいかもしれない、もうちょっとがんばったら治ったんじゃないかと、ずっと治すということに対して、なかなかあきらめきれない人間はいっぱいいる。

 この個人差は何なんだろうと、ずっと考えてきました。そこで、最近出会った「レジリエンス」の概念は、これまで僕が、どうしてこの個人差を説明ができるか考えあぐねていたのを、ぱっと解決してくれました。レジリエンスで「吃音と共に生きる」が説明できると思いました。
 レジリエンスは、回復力、弾力性とやくされますが、強さというより、しなやかさです。これまで、何かの問題や、欠点、病気などがあると、そのだめな部分だけを調べて、だめな部分をなんとか治そう、克服しようとしてきました。治るものなら、治せるものなら、治っていいし、治したらいいと思うけれど、世の中には、治せない、治らないものはたくさんある。そういう治せない、治らないものに、これさえ治れば幸せになれるのに、と考えてしまうと、それが治せる時代がいつくるのか、治せなかったら、その人は不十分なままなのか、そういうふうにマイナスの考え方から入る精神医学、心理学、教育学はもう破綻をしています。

 それよりも、違う角度で、考えていこうというのが、レジリエンスです。ことばを変えれば、この人はこんなに苦しい状況にありながらこんなに元気で生きていけるのだろう、これだけの困難な状況をどうして乗り越えられたのだろう、こういうプラスから入っていくのが、今後のひとつのありかたとしてあると思います。
 僕自身、21歳までは、確かに苦しくて辛い。何度も、死にたいと思いながら生きてきたけれども、21歳からは、どもりに全く悩むことも困ることもなく生きてきた。それは一体何なんだろう。ずっと考えてきた。僕がどもりに悩まなくなった。どもっている状態は変わらないのに、自分らしく生きられるようになったきっかけは何か。これはよく質問を受けます。

 2日前、国立特別支援教育総合研究所が神奈川県にありますが、そこで一日講義をしてきたが、そこでも、どうして伊藤さんは、21歳から、どもりにあまり悩まなくそれなりに生きるようになったのか、いうふうに、当然質問を受けた。そういうときに、いつも答えていたのは、初恋の人と出会えたからかなあ、愛されたという実感を持てたから、同じような仲間に出会えて、初めて自分の苦しみ、悩みを語ることができた、一ヶ月訓練をしても治らなかった。その事実に向き合って、それを認めることができた、いくつか僕なりに考えたことがあります。ここでいう回復という言い方は好きじゃないけど、元気になった原因を考えた。1965年から、レジリエンスについて考えてきたということになります。そして、ずっと、吃音の3つの事実に注目しようと言ってきました。

ーN鼎鮗けようと受けまいと、必死にいろんな所に行っても、どもりは治っていない。
∪こγ罎匹海砲癲△海Δ垢譴个匹發蠅治るという治療法がない。
G困澆筺吃音から受ける影響には、とても大きな個人差がある。

 どもる程度以上に、悩みの深さ、マイナスの影響を受ける度合いにはものすごい個人差があります。こんなにどもっていて大丈夫かと思う人が平気で生きているし、連れ合いがどもっているのが全然分からないくらいの人が、すごく悩んでいます。どもる程度は同じように思えるのに、片方は話すことの多い仕事に就いて楽しく生きているのに、ある人はだめだと言って就職活動を諦めるひとがいます。この個人差はとても大きい。

 この個人差に注目して、なぜこんな個人差があるのか。あるひとはどもりながらある意味、平気で生きている。ある人は、どもりながら社会的に引きこもり、不登校になり、就職しないと言ってみたりしているここに注目しようということを40年くらい前から言ってきたが、多くの人が納得する説明ができませんでした。「吃音とともに生きる」子どもになるには、どう育てればいいかに対しては、僕自身が経験したことを話したり、どもりについて話をして、吃音に向き合って、勉強して、どもっていても大丈夫思えるようになろうと話してきた。この、レジリエンスという考え方に出会ったときに、これはしめたと思いました。僕がずっと整理しようと思ってきたことを、レジリンスという切り口で考えると、全部整理できてしまう。吃音とともに生きるという言い方だと、なかなかみんなにはピンとこなくても、困難や逆境にあったとしてもそれに負けないで、しなやかに生きていこう、じゃ、この逆境の中で生きられるための要素があったら、人は逆境から立ち直り、生きられるかということに対して、レジリエンスは、7つの項目を挙げています。それが、皆さんに配った、レジリエンスのマンダラです。
 洞察、独立性、関係性、イニシアティヴ、創造性、ユーモア、モラルについて少し説明します。

日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2015/07/05

吃音講習会のホームページ開設

 8月1日、2日と東京で開かれる第4回 親、教師、言語聴覚士のための吃音講習会の準備が進んでいます。先月名古屋で14名が合宿をし、「レジリエンス」について学習しました。同時に、講習会のホームページの制作もすすんでいました。過去の講習会の報告や、ことばの教室、言語聴覚士の実践を掲載していきます。実践だけでなく、子どものナラティヴ(語り、物語)、親のナラティヴも紹介していきます。是非多くの方に知っていただきたいと願っています。ご紹介下さい。


 講習会ホームページについて
 

 
日本では東日本大震災を契機に、レジリエンス(弾力性、柔軟性、回復力)が、「困難な状況から立ち直る力・しなやかに生き抜く力」として、精神医療、臨床心理だけでなく、教育の世界にも広がり始めています。

 どもる子どものみんなが、吃音(どもり)に困り、悩んでいるわけではありません。吃音に悩み、学校へ行きたくないと思う子どもがいる一方、多少の困難があっても、元気に学校生活を送り、将来に明るい展望をもっている子どもがいます。また、どもる大人も、かなりどもりながら、吃音に行動や人生を左右されず、様々な仕事に就いて豊かに生きている人がたくさんます。その一方、周りが気づかない程度の人が、吃音に深く悩み、不本意な生活を送っています。吃音の悩み、吃音から受ける影響には、とても大きな個人差があります。

 この差を、私たちは「レジリエンス」の視点でとらえます。そして、どもる子どもが、どうしてこのようなしなやかな力をもって、学校生活を送れるようになったのか、子どもたちの語り(ナラティブ)を聞くことを通して、子どものもつ「レジリエンス」を整理し、この「レジリエンス」を育てることが、どもる子どもへの支援である。さらには、子どもの現実の日常生活への対処だけでなく、 思春期・成人期を迎えたときの、将来への予防的な取り組みにもなると考えています。

 このホームページでは、私たちの仲間の実践や、吃音講習会での講演や話し合いなどの記録を中心に、この立場からの実践を多くの人たちからも寄せていただいて、充実したものにしていきたいと思います。

吃音を生きる子どもに同行する教師・言語聴覚士の会
 


親、教師、言語聴覚士のための吃音講習会のHP
www.kituonkosyukai.com


日本吃音臨床研究会のHP
www.kituonkenkyu.org

日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2015/07/02

吃音講習会 子どものリジリエンスを育てる

 第4回講習会の案内です。
 どもる子どもの保護者、ことばの教室の教師、言語聴覚士のための講習会ですが、保育所や、幼稚園の先生、児童相談所や、子どもセンターなど、子どもにかかわるお仕事をされている人も、参加出来ます。子どものリジリエンスを育てるは、医療、福祉、教育の世界で今後大きなテーマになると確信しています。

 吃音をひとつの切り口にしていますが、広く、すべての子どもにとって必要なレジリエンスです。関心を持たれた方は是非ご参加下さい。

日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2015/07/01


各所属長並びに関係の皆様
吃音講習会実行委員会顧問 牧野泰美 (国立特別支援教育総合研究所)

子どものレジリエンスを育てる
第4回 親、教師、言語聴覚士のための吃音講習会のご案内


1 趣 旨

 精神医学・臨床心理学などの領域で注目される「レジリエンス」は、『児童心理2014年8月号』(金子書房)に特集が組まれるなど、教育の世界でも関心がもたれるようになってきました。この「逆境を乗り越え、心的外傷となる可能性のあった苦難から新たな力で生き残る能力、回復力」というレジリエンスの概念は、どもる子どもたちと重なります。子どもたちは、音読や発表で苦戦しながら、時にからかわれ、落ち込みながらも、元気で生き延びています。

 吃音について人一倍悩み、マイナスに考え、自己紹介を避けるなど行動面にも影響を受けていた子どもが、3年生になり「クラスのみんなに伝えたいことがある」と自分や自分の吃音について語り始めました。彼は、言語訓練などで、吃音が改善することによってみんなの前で話せるようになったわけではありません。吃音について学習し、自分を見つめ、自分を語ることの大事さや必要性を知り、どもるのが自分の話し方だと考え、話す場面から逃げずに毎日をていねいに生きるようになりました。そして自分の思いを周りの人に語る経験を重ねる中で、少しずつ彼が本来持っていた力を取り戻していったのだと思います。私はその過程の中に、「レジリエンス」につながるものがあるように感じます。

 私がつきあっている多くのどもる人たちは、子どもの頃、吃音に悩みながらも、今は、吃音と向き合い、自分のしたい仕事に就いて豊かに生きています。一方、吃音の悩みから抜け出せず、不本意に生きる人がいることも知っています。この違いは、レジリエンスがあるかないかだと、レジリエンスモデルでは考えます。子どもの頃から、レジリエンスを学び、育てることができれば、どもる子どもの現在、そして将来にとって、「吃音治療・改善」よりはるかに大きな生きる力になるのではないでしょうか。

 長年、学校心理学、スクールカウンセラー、チームによる心理教育的援助サービス等に取り組んで来られた、筑波大学副学長で筑波大学附属学校教育局教育長の石隈利紀教授に、レジリエンスの基本的な考え方を学び、レジリエンスをどもる子どもの指導にどう生かすか、参加者と実践を交流しながら、一緒に考えていこうと思います。

大会実行委員長 渡邉美穂(千葉市立院内小学校ことばの教室)


2 主 催  吃音を生きる子どもに同行する教師・言語聴覚士の会
       日本吃音臨床研究会

3 後 援  NPO法人全国ことばを育む会
       NPO法人大阪スタタリングプロジェクト

4 日 時  2015年8月1日(土)10:00〜19:45
              2日(日) 9:15〜16:30

5 会 場  帝京平成大学 池袋キャンパス 613−B教室
 〒170-8445 東京都豊島区東池袋2−51−4 03−5843−3111

6 アクセス JR「池袋駅」東口駅から徒歩12分、有楽町線「東池袋駅」から徒歩10分
キャンパス内は駐車スペースがありません。近くの有料駐車場をご利用ください。なお、「帝京平成大学」ホームページ(下記URL)に、詳しい道順等が載っています。そちらもご参照ください。https://www.thu.ac.jp/access/access_ike.html


7 内容・プログラム 予定
【8月1日(土)】
 9:30  受付
10:00  基調提案 ^貌伸二・日本吃音臨床研究会
11:30  休憩(昼食)
12:30  講 義  \亰利紀・筑波大学副学長・筑波大学附属学校教育局教育長
14:10  講 義◆ \亰利紀
16:00  対 談   石隈利紀&伊藤伸二
17:30  グループ討議
18:15 休憩
18:30  質問を中心とした全体でのディスカッション
19:45  公式プログラムの終了  懇親会会場に移動

【8月2日(日)】
 9:00  受付
 9:15  基調提案◆)厂鄲挌・国立特別支援教育総合研究所主任研究員
10:00  基調提案 桑田省吾・兵庫県 神戸市立本山南小学校 教諭
10:45  実践発表と討議  嵳鳥期の実践」
12:00  休憩(昼食)
13:00  実践発表と討議◆ 岾愼鹸の実践」
14:30 休憩
14:45  みんなで語ろう、ティーチイン
16:30  終了

8 講習会参加費  5,000円

9 参加申し込み   参加ご希望の方は、参加申込書に必要事項を記入し、郵送、またはメールに添付し、下記の申し込み先までお送りください。同時に郵便局より参加費の振込をお願いします。入金確認ができましたら、受講票をお送りします。申し込み締め切りは2015年7月28日(火)です。なお、参加費は当日キャンセルされてもお返しできません。受講票は他の方にお譲り下さい。

※郵便振替 加入者名:吃音講習会 口座番号:00960−0−282459

10 申し込み先   栃木県宇都宮市立陽東小学校 ことばの教室  高木浩明
〒321−0904 栃木県宇都宮市陽東2丁目16番36号
 Mail:  kituon-kosyukai@live.jp

11 問い合わせ先  日本吃音臨床研究会 TEL/FAX 072−820−8244
 〒572−0850 大阪府寝屋川市打上高塚町1−2−1526

12 宿泊その他    宿泊は、各自直接お申し込み下さい。池袋駅・大塚駅周辺には、たくさんビジネスホテルがあります。早めに宿泊の予約をされることをおすすめします。講習会中の食事は、近くの食堂やコンビニ等をご利用ください。研修会場内での飲食は可能です。

13 講師紹介
【特別講師】
◇石隈利紀 筑波大学副学長・筑波大学附属学校教育局教育長
  学校心理学の第一人者。学校心理士スーパーバイザー・特別支援教育士スーパーバイザー。文 部科学省中央教育審議会専門部会委員歴任。福島県子どものこころのサポートチーム協議会委員。 著書として『学校心理学―教師・スクールカウンセラー・保護者のチームによる心理教育的援助 サービス』、『寅さんとハマちゃんに学ぶ助け方・助けられ方の心理学〜やわらかく生きるための 6つのレッスン』(誠信書房)、『石隈・田村式援助シートによるチーム援助入門〜学校心理学・ 実践編』(図書文化)、『学校の効果的な援助をめざして〜学校心理学の最前線』(ナカニシヤ出  版)、『よくわかる学校心理学』(ミネルヴァ書房)など。

【講 師】
◇牧野泰美 国立特別支援教育総合研究所総括研究員
  専門は言語障害児教育、言語獲得、コミュニケーション障害とその支援など。「全国公立学校 難聴・言語障害教育研究協議会(全難言協)」をはじめ、各地の「きこえとことばの教室」の担 当者や、親の会等と連携しながら、子どものことばやコミュニケーションへの支援の在り方、き こえとことばの教室の役割などについて研究活動を進める。
  著書に、『言語障害のおともだち』(ミネルヴァ書房)など。

◇伊藤伸二 日本吃音臨床研究会会長・国際吃音連盟顧問理事
21歳の時、セルフヘルプグループ言友会を創立。大阪教育大学専任講師(言語障害児教育) などを経て、現在伊藤伸二ことばの相談室主宰。第1回吃音問題研究国際大会を大会会長として
 開催し、国際吃音連盟の礎を作る。論理療法、交流分析、アサーティヴ・トレーニング、認知行 動療法などを活用し、吃音と上手につきあうことを探る。著書に、『両親指導の手引き書41 吃音と ともに豊かに生きる』(NPO法人 全国ことばを育む会)、『吃音の当事者研究−どもる人がべてる の家と出会った』(金子書房)など。

「子どもの心の発達を支援するために」

筑波大学人間心理学域教授 日本学校心理士会会長  石隈利紀


 2011年3月11 日に起こった東日本大震災は、地震、津波、そして原子力発電所の事故により放射能の問題となりました。子どもや学校は、今なお危機的状況にあります。子どもは、震災による心の傷、親しい人やものそしてふる里の喪失、転校など学校生活の変化に対処しながら、子ども時代を生きています。子どもは厳しい状況のなかで、学校に通い、授業や特別活動、友達や教職員との関わりを通して、自分のペースで、ゆっくりと、でも確実に発達しています。震災後、私はあらためて「学校の力」を感じております。友達と一緒に、勉強して、昼食を食べて、遊んでという日常生活を通して、子どもは回復していきます。自分の成長を自覚する機会が、授業にも、行事にも、部活動にも、たくさんあります。やはり学校は、すごいところです。

 子どもの回復を支える力を「レジリエンス」(苦しい状況のなかでも健康を回復し、維持する特性や力)と言います。レジリエンスは、子ども自身の力(自助資源)の発見と活用、そして周りの力(援助資源)の発見と活用が鍵となります。子どもなりにできていること(例:朝、顔をあらう、学校にきている)、工夫していること(例:友達と助け合う)を見つけ、「よくやっているね。ありがとう。すごいね」と声をかけることが、子どもに力を与えます。そして子どもの周りの大人もよくがんばっています。先生方、職員の方々、保護者の方々、地域の方々が、お互いにお互いのできていることや工夫を認め合うことです。「ありがとう。助かります。すごいですね」と、口に出すことで、互いの力を維持したいものです。

 子どもの心の発達を支援するのは、援助する人々の「チーム」です。普段なら、子どもが状況に応じて、大人に相談します。子どもが周りの援助を活用するのです。でも今日のような厳しい状況では、援助者の方が意識的にチームを組む必要があります。学校では、生徒指導・教育相談担当、特別支援担当、養護教諭、管理職などをリーダーとする先生方が、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーとともに、子どもの援助チームで取り組むことで、子どもへの良質の支援が可能になります。保護者も子どもの援助チームの重要なメンバーです。

 どんな厳しい状況でも、子どもは、発達していきます。この状況が少しでもよくなることに努めながら、その間も、子どもの発達をきちんと支援していかなくてはなりません。子どもを支える大人は、当事者として「危機」を共有し、子どもの援助者として「責任」を共有し、子どもと共に生きる者として、子どもの将来と未来の社会への「希望」を共有しましょう。

〜福島県子どもの心のサポートチーム協議会リーフレットより〜




懇親会のお知らせ

 講習会1日目の終了後に、懇親会を企画しました。これまでも、この時間に講習会で学んだことがベースになって、本当にいろいろな話ができた。日頃どもる子どもたちと関わる中で感じていることが、お互いに共感できた。ちょっと悩んでいることへの解決の糸口が見つかったなどの感想が寄せられています。とっても貴重で、素敵な出会いの場になっています。ぜひ、皆様のご参加をお待ちしております。
 なお、会費は講習会参加費とは別に、当日、3,500円を集金させていただきます。(懇親会会場は、講習会会場から徒歩1分の場所です。)

レジリエンスで読み解く吃音

神戸相談会

 毎年4月ごろに開かれている神戸での吃音講演・相談会が、6月28日開かれました。8月1日、2日に東京で開かれる、「第4回 親・教師・言語聴覚士のための吃音講習会」のテーマが「子どものレジリエンスを育てる」で、筑波大学石隈利紀副学長を講師に開かれますが、その準備のために、レジリエンスに関する20冊以上の書籍に目を通してきました。

 レジリエンスを知れば知るほど、僕がこれまでの「吃音と共に生きる」の主張の説明に、ぴったりくるものだと思いました。1965年、どもりを治すために1か月通った東京正生学院で感じた「どもる人の悩み、考え方、人生の生き方の大きな個人差」。その後、吃音は治らない、治せないとして、この個人差に注目しようと言い続けてきたことが、リジリエンスの概念で説明が、見事に付きます。

 交流分析、論理療法、認知行動療法、アサーション、アドラー心理学、当事者研究、ナラティヴアプローチと吃音に役立つものとして学び続けて来たことが、レジリエンスを育てることになっていたのだと確信したとき、よく、まあ、「吃音治すことにこだわらない、吃音とのつきあい方」を考え続けて、さまざまな分野から学んで来たことが、レジリエンスの概念として結びついてことに、大きな喜びを感じました。

 45年ほど、考え、どう説明がつくのかと学び続けて来たことが、今ここに、説明する概念として「レジリエンス」を得たことは、やっと巡り会えたかとの、喜びと、ため息が出る感じです。

 いろんな困難、危機に直面しながら、ある人はそれに飲み込まれ、不本意な人生を余儀なくされる。一方で、悩みながら、困難に直面しながら、サバイバルして生きている。社会・心理的存在の人間の歴史として、実際にこのようなことは、歴史的に証明されているのに、なぜ、今まで、精神医学や、心理学、教育の分野で、これを声明する言語をもたなかったのかと、ため息がでるのです。

 1954年、ハワイのカウアイ島でから研究が始まり
 1982年、「弱き者されどうち負けされざる者−レジリエントな子どもたちと青年たちの長期追跡研究」
 1987年のレジリエンスの基本文献である、「心理社会的レジリエンスと保護のメカニズム」
 2013年、学会誌「レジリエンス」創刊 (仁平義明 作成年表)

 いまやっと、注目され始めたことに、ため息よりは、喜びを強く感じなければならないと思いました。国立特別支援教育研究所、大阪吃音教室につついて、神戸の相談会では、これまで質問から入る講演形式をやめて、90分ほど僕が一方的に「レジリエンス」について話しました。

 話しながら、これまでの僕の人生を振り返り、大勢の子どもやどもる人の人生、体験を紹介しながら、「吃音と共に生きる」を気持ちよく話せ、聞いた人たちも、よく理解できたと言ってくれました。ますます、レジリエンスと吃音との関係に自信を深めました。今日はとりあえずこのへんで。

日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2015/07/01

      
 
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