伊藤伸二の吃音(どもり)相談室

「どもり」の語り部・伊藤伸二(日本吃音臨床研究会代表)が、吃音(どもり)について語ります。

2015年02月

どもりカルタ どもりの豊かな世界


 子どもたちのどもりカルタ

最後に、栃木県・千葉県・鹿児島県の子どもたちが作ったどもりカルタの読み札が紹介されました。「吃音ワークブック」を作った<吃音を生きる子どもに同行する教師の会>のことばの教室に通う子どもたちが作ったものだです。大阪吃音教室の「どもりカルタ」の講座に合わせて、作ってくれました。作りながら、大阪吃音教室に参加する大人のどもる人たちが、このカルタを見てどう思うだろうか、ぜひ感想を聞かせてほしいと言っていていましたので、全作品をよみあげ、どれがおもしろかったか、投票することにしました。
 子どもたちの作品で、大人の僕たちに人気があったものを紹介します。

・うれしいな りかいしてくれて ありがとう (小学校3年生)
・神様が ぼくをどもる人に選んだよ (小学校1年生)
・けっこんしても ぼくの奥さんはきっと 気にしない(小学校1年生)
・「さっさと言えよ」 言われるほどに 出なくなる(小学校1年生)
・ずるいんだ どもらずしゃべる おとうとが (小学校3年生)
・なんとしても どもりをぜったい なおしたい そういう時も ありました 
(小学校6年生)
・ねえきいて! ぼくの言葉でしゃべるから (小学校3年生)
・むずかしい 漢字で 読めないわけじゃない (小学校1年生)
・ロシアでも ブラジルでも ハワイでも どもる人はきっといる (小学校1年生)

 子どもたちの作った読み札を見て、これ、小学生が作ったんと驚くものもありました。「うん、そうそう」とうなずくもの、「へえーっ、そんなことを考えてるの」と思わずつっこみたくなるもの、「さすが子どもたちがつくったものだ!」と笑いを誘うもの、子どもたちの豊かな発想に、心が和みました。みんなの感想を紹介します。

・子どもらしく、表現が素直。素直にことばを並べている。
・自分が小学生の頃には、こんなふうに表現することはできなかった。
・この子たちは、吃音に困ったり悩んだりした経験を通して、自分を表現する力をつけたのだと思う。
・自分たちのことをちゃんと分かってくれる大人がいると思うから、こんなカルタを作って自分のことを表現できるのだと思う。

 どもりカルタを毎回担当している担当者の感想を紹介します。

 遊び感覚で始めた〈どもりカルタ〉がこんなに広がりと深まりを見せたことに驚いています。どもることには、それだけの力が、エネルギーがあるということでしょう。共感し、新しい発見があり、ユーモアに富んでいる〈どもりカルタ〉がこれから、吃音を生きていくどもるこどもたちやどもる私たちの強い味方になってくれることを期待しています。
 今年で9回目だったと後で聞き、よく続いてきたなあと思います。読み札を作っているときのグループでの活動は、ナラティヴそのものです。ひとつのことばの奥に、背景にあるその人なりの語りに耳を傾ける時間は、味わいのあるいい時間でした。ある人の語りに他の人の語りが重なり合って、深みを増していたように思います。
また、今回、全国のことばの教室に通う子どもたちの作品を見せてもらい、刺激を受けました。子どもたちは、どもる大人である私たちの生き方を見ています。大人っていいなあ、大人になるっていいなあ、子どもたちがそんなふうに思ってくれるような大人でありたいものです。
 来年は、10回目。皆さん、一緒に、すてきなどもりカルタを作ってみませんか。

  吃音を生きる子どもに同行する教師の会では、全国の子どもたちの読み札を集め、それをインターネットで投票し選んだ読み札に、どもる子どもの保護者が絵札を書いた「学習・どもりカルタ」を制作しました。今、全国のことばの教室で使われ、すばらしい実践が続いています。

 『学習どもりカルタ』(解説書つき) 1200円 (送料込み)
 郵便振替でご送金いただければお送りします。口座番号 00970−1−314142 加入者名 日本吃音臨床研究会
 通信欄に「どもりカルタ」希望とお書き下さい。

日本吃音臨床研究会 伊藤伸二2015/02/12

どもりカルタ 豊かな世界


 またまた久しぶりの投稿です。不器用な僕は、仕事が立て込んでくると、ひとつの仕事にしか集中できません。いままで、大切な仕事が続き、残念ながら更新出来ませんでした。
 2015年のはじめから、再び再開です。どもる人のセルフヘルプグループ、大阪スタタリングプロジェクトの例会である、大阪吃音教室は、「新春・どもりカルタから始まります。楽しく、豊かなどもりの世界がひろがっていきます。 その報告です。

 大阪吃音教室だより どもりカルタを作ろう 2015年 1月 9日(金)


 今年でこの講座は9回目。9回目にもかかわらず、44文字のカルタが1文字も欠かすことなくできあがり、毎年毎年違うネタが出てくることには驚きます。それほどどもりのエピソードが多くあり、みんながいろいろな経験をしているのです。体験をカルタにすることで、大阪吃音教室の仲間と笑い合いながら共有できるこの時間が僕は好きです。

 講座の初めに今までのどもりカルタの例会を経験してきたことへの感想が発表されました。

・他の人の作る読み札を読んで、「ああ、その通りだ」とか「自分にも当てはまる」とか気づくことが多い。
・深く悩んできた吃音を笑い飛ばすことができるのはすごいことだと思う。
・吃音教室に来て日が浅くても楽しめる。
・違った視点で見られる。(角度が違う)
・一人じゃないと思える。
・どもりの悩みは大きいけれどカルタにすることによって悩みが小さくなる。
・大阪吃音教室は、ほかの機会にも「吃音を笑い飛ばす」文化がある。カルタの例会は、古くからの常連のそんな輪の中に、来始めて日の浅い参加者が入って来てくれる時間になっていることが嬉しい。


どもりカルタの例会は「読み札を作る」→「絵札を作る」→「読み札を味わう」→「カルタとり」の順に進められます。

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4つのグループに分かれて、読み札を作りました。今までの自分の経験を思い出したり、グループ内で発表したりし、どもりにまつわるエピソードを共有したりしました。昨年の流行語を取り入れたりして笑ったりしながら楽しく読み札を作るグループもあれば、なかなか思いつかずじっくり考えているグループもありました。

絵札を作る
読み札が完成したら次は絵札作りです。読み札を作る時に絵札のことは考えていないので、いざ絵を描こうとしてもなかなか描けなかったりします。「これ、どう描いたらいい?」とか言いながらも、最後は44文字全ての絵札もできあがります。

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ホワイトボードに書かれた全ての読み札を一つ一つ読み上げていき、絵札も発表し、「これ、わかる!!」「これ、おもしろい」「この絵、いいね〜」など言いながら44枚のカルタを発表しました。一通り読み上げた後、自分が気に入った読み札に手を挙げてもらいました。(一番得票の多かったものは、以下の読み札一覧のところに☆印をつけました)どもりで同じような思いをしてきたからこそ、共感できたり笑い合えたりするのだと思います。

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みんなで作り上げたカルタ(絵札)を床に並べてグループ対抗戦のカルタとり大会です。みんな真剣にカルタを見てダイビングして取りに行く人もいました。なかなか大人になるとカルタとりすることも少ないので例会でカルタとりができて楽しいです。なんと言っても自分たち手作りのカルタはまた一味違っていいものです。

2015年 どもりカルタ 読み札一覧

あ あっという間に 過ぎてほしい クラスで号令 日直の日
い 今一番 そのときどもりが 顔を出す
う うそみたい どもりに悩まぬ 今のぼく
え 笑顔でいれば どもっていても 人気者
お おもしろい 話のオチで どもってすべる

か 簡単だよ しゃべったらいいのに どうしたの?
き 危機一髪 チャイムが鳴って 助かった
く 苦労して やっと言えたのに 聞いてない
け 計測値 どもって言えず 「私が書きます」
こ 国語の本読み 地獄の時間

さ 最初はね どもってみせて 個性出す
し 心配だ 心臓ドキドキ 明日の朝礼
す すぐに出ない ちょっと待ってて もうすぐ出るから
せ 世界は どもることで ひらけるぞ
そ それとって 指さしながら 単語とる

た ダメよダメダメ 治ったら インパクトのない人生に
ち ちょっとだけ 笑わず 私を待ってくれ
つ 疲れてるときに どもらぬこともあり
て 天気予報 くもりが言えずに 晴れにする
と どもらない でも治っていない どもりです

な 仲間たち 代わりに返事してくれる
に にこにこと どもって言えずに 愛敬ばらまく
ぬ ☆ ぬかにクギ どもりに治療 猫に小判
ね 念力で どもりを直した 夢を見る
の 飲むほどに どもりの調子 絶好調

は はっけよい 残った残った ことばが踊る
ひ ひらめいた ジョーク言えずに くやしがり
ふ ふだんから 友だち大事に 助人候補
へ 平気だよ どもって営業 へこたれず
ほ 「ほらほら」と 分かっているのに 忘れたふり

ま まず一呼吸 しないと言えない 苦しいことば
み 身についた どもりの学習 人生に
む 向き合えば 吃音恐怖 消えていく
め 目で話す あせって口から 話せない
も もういいかい? そろそろことばが 出てきても

や やっぱりね 自分のことばで 話したい
ゆ 愉快だな どもって笑う ぼくらたち
よ よっぱらうと どんどん出てくる どもりさん

ら ライセンス 我ら人生の 有段者
り リベンジだ 今度はどもって プロポーズ
る 類義語を 使って何とか 切り抜けた
れ レジリエンス 生きる僕らに 強みあり
ろ 朗読は 次の行が 気にかかり

わ わすれてた どもりであった わすれてた

 今年は、栃木県・千葉県・鹿児島県の子どもたちが、ことばの教室で作ったどもりカルタとのコロボリーションが実現しました。次回、子どもたちの読み札を紹介します。

日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2015/02/10

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