伊藤伸二の吃音(どもり)相談室

「どもり」の語り部・伊藤伸二(日本吃音臨床研究会代表)が、吃音(どもり)について語ります。

2013年11月

どもることを意識しないで成長した二人


 こんな人も少なくないのでしょう

 大阪吃音教室初参加の二人について書くと以前書きました。一人が前回書いた「英語のスピーチ」の優勝報告にきた国吉さんです。もうひとりは立命館大学の学生で、吃音について卒業論文に書きたいという女子学生でした。
 話を聞くと、子どもの頃からどもっていたようだけど、それを吃音だとも分からず、大学に入って吃音を知り、これは私だと初めて意識をしました。子どもの頃、吃音を意識しないで育ったことが良かったと言います。
 なので、私が、「子どものころから吃音に向き合う必要がある」との主張をしている書籍などを読み、自分は意識しないまま来て、言いにくさを、いいにくいことばを言い換えたり、間をとったり上手に切り抜け、今、いろんなことで自信がついて、自分かを確立した後で、吃音について意識したのは良かった。だから、子どもに、子どものころから意識することの意義について、論文でまとめたいとという話だったと思います。

 これは、おもしろい視点です。どもるという状態があっても、それを吃音だとレッテルを貼らずに、ただ単に話しにくい状態だと意識していたものの、特に困ることも悩む子ともなかったと言います。
 同じような女子学生に、岡山のキャンプの時に会いました。彼女も周りからは「ちゃんとしゃべれ」と言われながら、「言語障害」と言われ、祖父からは「おまえの言っていることは分からん」と言われながら、持ち前の明るさと、積極性で、それを吃音だともしらずに生きてきたと言いいます。大学で吃音を学んで「私は吃音だ」と知ったと言います。

 このように、子どものころに吃音を意識せずに生きてきた人がいる。それで、いろんな意味で大人になったときに「吃音」だと知る。これもいいなあと思います。

 しかし、これまで会った人は、自分の話し方に悩み、ただそれが吃音だと知らなかったという人がこれまでは何人もあったことがありますが、悩まないで20歳を過ぎて、それなりにコミュニケーションがとれて、問題がないという人に会ったのは初めてで、それも、最近二人に会うというのもおもしろいことでした。

 ことばの教室に来たり、吃音親子サマーキャンプに来る子どもは。すでに意識している子どもなので、その子と、彼女たちがどう違うのか。卒業論文を楽しみにしているのです。

 明日は、横浜で吃音相談会です。帰ってから、群馬キャンプなどの報告をします。

 日本吃音臨床研究会 伊藤伸二  2013/11/29

吃音についての英語スピーチ 優勝

 群馬キャンプなどの報告のその前に

 前回、大阪吃音教室に参加した人を紹介したいと書きました。続きを書きます。

 その後、千葉や、栃木、群馬のキャンプと関東地方を回っていて書けませんでした。群馬のキャンプなどの報告を後日 しますが、その前にうれしいニュースです。

 10月頃、吃音親子サマーキャンプの卒業生から、スピーチに伊藤さんの名前を出してもいいかという電話がありました。聞くと大学の英語のスピーチのコンテストで、みんなに吃音について知ってもらいたいので、スピーチをしたいとの話です。予選と本選にゆけるかどうか分からないけれど。とにかく「吃音」について話したいと言いました。

 しばらくして、予選を通過して本選に出場できるファイナリスト6名に選ばれたとファックスが入りました。

 「私自身、どもりに悩んでいる実体験を踏まえて、「どもり」を多くの人にしってもらうために、懸命に伝えて本選にすすむことができて、本当にうれしいです」

 英語の原稿を送ってくれました。そして、本選の11月2日にコンテストで見事優勝したいのです。そのことを、11月8日の大阪吃音教室に報告しに来てくれたのです。

 実際に大阪吃音教室でもそのスピーチをしてくれました。
 最初、流暢に話し始めたのですが、途中、ぴたりと、声が出てこないブロック(難発)の状態になりました。それをなんとか声にしていきスピーチを終えました。本選の当日も、私たちの前でつまって声が出ない状態になり、3分間というもち時間をかなりオーバーして、減点をされたにも関わらず、内容がすばらしいと優勝したのです。

 あまりどもらなくなったから、ではなく、今、どもっていても、「どもり」について理解をして欲しいと、自ら立候補した彼女の勇気すごいです。彼女の年で、私にはとてもまねの出来ないことです。
 私が、書籍などで、「どもっても、話していくことが大切」と書いたとき、私の主張に反対し、どもらない話し方をすべきだと「リズム効果法」を提唱していた、埼玉県の望月勝久さんは、著書で「番茶も出花の、うら若き女性に、どもっても話すなんて無理だ」と書いていました。その若い女性が、自らどもることを承知の上で、大勢の前で、どもりながらスピーチをする。

 吃音親子サマーキャンプに参加した女性は、男性以上に大勢の前で吃音についてスピーチをしています。これまでも、NHKのコンクールに出たり、ラジオ放送をしたり、ことばの教室の担当者の研修会で講演したのも、中学生、高校生、大学生でした。
  
 大人が考える以上に、子どもたちは、たくましく成長していきます。吃音親子サマーキャンプや、全国各地で出会う、私たちの仲間のことばの教室の先生に教育された子どもは、本当にすごいど思います。

 彼女の大学のホームページの記事を貼り付けます。

 英語でのスピーチ力を競う「第29回中高大合同イングリッシュオラトリカルコンテスト」が開催され、学生、生徒らがレベルの高い英語力を披露しました。[2013/11/11更新]


 武庫川女子大学・短大の学生と附属中学・高校の生徒が英語でのスピーチの能力を競う「第29回中高大合同イングリッシュオラトリカルコンテスト」の本選が11月2日、附属中学・高校で行われました。大学・短大部門では、総勢29人が参加した予選を勝ち抜いた6人が出場、素晴らしいスピーチを披露し、国吉真夕さん(生活造形学科1年)=写真右=が優勝、木原慶子さん(薬学科4年生)=写真左=が準優勝しました。

 優勝した国吉さんは「Stutter’s Challenge」というタイトルで、自身が直面してきた困難とそれに立ち向かう姿勢について、説得力のあるスピーチをし、聞いている人を惹き付けました。準優勝した木原さんは「“Omoiyari” -The Key to Communication」のタイトルで、コミュニケーションにおける「思いやり」の大切さについて、オー・ヘンリーの「賢者の贈り物」の話を交えながらスピーチ、素晴らしいアイコンタクトでも聴衆に感動を与えました。

 日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2013/11/28 

大阪吃音教室の豊かな世界


 毎週金曜日、どもる人のセルフヘルプグループである大阪スタタリングプロジェクトの大阪吃音教室が開かれる。講演などで大阪を離れている場合を除いて、必ず参加する、私の金曜日の大切な時間だ。毎回、25人から30人ほど参加しているが、初参加の人も毎回と言っていいほどに参加する。今回も2人の初参加者があった。

 この日のテーマは、「ことば文学賞の作品を味わう」だった。今年で13回になる文学賞、以前は大阪吃音教室で授賞式をしていたために、多くの作品にふれることができた。最近は、授賞式が吃音ショートコースという、2泊3日のワークショップの場で開かれるため、最優秀賞、優秀賞以外の応募作品の多くは、ニュースレターで後になって読むことになっていた。やはり、みんなで共有したいと、今回は応募作品を味わうことにしたのだった。

 受賞作は3編だが、応募作品も受賞作に負けず劣らずすばらしいものが多い。どの作品が優秀賞をとってもおかしくないほどだ。選考は私がするのだが、名前を知らずに選考する。大阪吃音教室では、作者の名前が入ったものが、参加者全員に配られ、その日参加した応募者が自らの作品を読み、感想を言い合い、書いた人も、その書いた意図や、感想を話す。一度に多くの人の吃音人生に触れ、文章だけでは分からない部分を質問する。とても、豊かな世界になっている。しみじみと、この大阪の仲間たちと、「吃音と共に豊かに生きる人生」を生きていることを、ありがたいと思う。

 新しく参加した2人について、特別に書きたいことがあるので、次回に。
 今から、私の好きな、アドラー心理学を学びに横浜に行きます。東京から帰ってから、紹介します。

 日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2013/11/09

吃音の旅は、群馬、横浜、沖縄、東京、九州へと続きます



 今後の伊藤伸二の予定


 次に紹介する日程は、日本吃音臨床研究会のホームページに詳しく案内しています。
 いずれも、誰もが参加できますので、主催者にお問い合わせ下さい。
 特に、沖縄県には初めて行きます。お知り合いにお知らせいただければうれしいです。

吃音キャンプ IN GUNMA
 
 キャンプに先立って、16日午後、キャンプ参加しなくても、一般参加者のための、
 私の講演と国立特別支援教育研究所の牧野泰美さんの対談があります。
 日時  11月16日(土)〜17(日)
 会場  国立赤城青少年交流の家

どもる子どもの親と臨床家のための吃音相談会・講演会in横浜
 日時  11月30日(土)13:30〜16:00
 会場  横浜市社会福祉センター8階大会議室8F

沖縄県言語聴覚士会主催 吃音講演会
 日時  12月15日(日)9:30〜12:30
 会場  大浜第一病院 2階ふれあいセンター(駐車場あり)
 演題  吃音とともに豊かに生きる

伊藤伸二・吃音ワークショップ
 日時  1月12日(日)10:00〜17:00
 会場  北とぴあ
  
吃音相談・講演会in北九州
 日時  2月の日曜日
 会場  北九州市立障害福祉センター

吃音キャンプとアホな人たち



   12回 静岡吃音キャンプの打ち上げ会


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 静岡のキャンプの終わった後は、打ち上げ会です。いつもは清水区の魚市場のおいしい寿司屋でするのですが、今年は、世界遺産に指定された「三保の松原」を私に見せてくれるために、その近くの居酒屋を借り切って行われました。以前、仕事の時間を離れて、どもる子どものために、吃音キャンプなどに取り組む人たちのことを、敬意を込めて「アホな人たち」と書いたことがあります。

 吃音は独特の豊かな世界があるのだろうと思います。土、日と勤務以外の時間にたくさんの、ことばの教室の先生たちが集まって、一所懸命キャンプに取り組む。このアホな人たちと、一緒にキャンプができること、終わった後、おいしい食事をして、キャンプを振り返る。親や、子どもたちの感想文を読み合う。これし至福の時なのです。

 そして、静岡の人たちにとっては、よく来ているはずの三保の松原にみんなで行ってくれました。これまで閑散としていた海岸に、大型の観光バスが何台もとまり、賑わっていました。砂浜はいつものと変わらないのに、世界遺産と登録されたとたんに大勢が集まってくる。なんか、日本人の一面をまた見ました。台風が去った後の海岸からは、富士山がよく見えました。これまで12回もこの辺りに来ているのに、海岸から富士山を見たのは初めてです。静岡のみなさんの心遣いが、とてもうれしかったです。

 静岡駅までの車の道中、キャンプのことや、吃音についていろいろと話すことができる。ぼくは、本当に、心底吃音に惚れ抜いているのだと思います。以前、僕たちのニュースレター、「スタタリングナウ」216号に書いた「吃音キャンプとアホな人たち」を紹介します。

 










   吃音キャンプとアホな人たち
              

 「アホな人たち」
 自分の仕事上の立場や損得を超え、自分の気持ちに正直に、本音で何事かに一所懸命取り組む人。それが結果として人の役に立っているのを自分のことのように喜ぶ人。大阪では、というより私たちだけかもしれないが、親しみと共感、尊敬を込めて、私たちはこう呼び合っている。
 ことばの教室の教師は、本来、自分の教室に通ってくる子どもを、その時間真剣に指導すれば、それで誠実に仕事をしていることになる。吃音の、いわゆる吃音の症状だけの改善を目指す教師であれば、言語指導が役割だと考える人なら、教室だけの指導で終わることが多いだろう。
 しかし、吃音を生き方の問題だと考えると、活動は教室だけの枠では収まらない場合がある。小学校を卒業してからもずっとつきあっている人がいる。どもる子どもに会わせたいと考え、どもる子どもの集まりを続ける人がいる。それらは勤務時間外のことが多い。それでも、嬉々として子どもたちのために、企画し運営する人がいる。
 7月28・29日に開かれた「島根スタタリングフォーラムin隠岐」のスタッフ。隠岐の子どもたちにも「吃音キャンプ」を経験させたいと、いろいろと大変な準備をする人たちの熱い思いと、姿を間近で見て、「アホな人たちだなあ」とつくづく思った。そのアホな人たちと一緒にキャンプができる幸せを思った。
 私のかかわる吃音キャンプは、毎年5月か6月の島根スタタリングフォーラムから始まる。今年で14回だ。昨年のフォーラム終了の打ち上げ会に、翌日の島根県の難聴言語障害教育研修会参加の隠岐のことばの教室の教師がいた。隠岐からも参加したい子はいるが、船の便などが大変で、参加できないと言う。それなら、私たちが隠岐の島に行けばいいと、お酒の席のこともあって、来年は隠岐でフォーラムをしようと盛り上がった。
 一年に2回も島根県での開催など、半信半疑だったが、「アホな人たち」の熱い思いで実現した。 人口1万五千人の小さな島、どもる子どもがそれほどいるとは思えない。まあ少なくても、2家族でも参加できれば、じっくりとつきあうことができるからと、参加者の少ないことは予想していた。しかし、隠岐のことばの教室に通う子どもに参加を勧めたら、全員参加で6家族、松江市から2家族の計8家族が参加した。ことばの教室の教師も隠岐から3名、松江市や浜田市などからの教師が5名、総勢27名の参加となった。子どもたちは全員が初参加だった。
 最初の私と子どもたちとの話すセッション。話し合いが初めての子どもばかりだ。これまで公開しなかった、「第9回静岡県わくわくキャンプ」の、話し合いのDVDを、特別に15分ほど見てもらった。自分と同じような子どもたちの、楽しそうに話し合う映像を、子どもたちはじっと見ていた。子どもたちに感想を聞くと、緊張しているのか、活発な発言は出なかったが、「みんな自分の考えをはっきりと言っていた」「治したくないと言う訳が分からなかった」「みんな真剣によく話していた」の感想に、自分たちも吃音について話し合いたいとの思いは伝わってきた。初めてのキャンプにもかかわらず、その後のグループでは、よく話し合っていたようだ。静岡のキャンプと隠岐のキャンプがつながったこと、静岡の人たちはDVDの公開を許し、喜んでくれるだろうと思った。
 8月11・12日には、岡山で第10回目のキャンプがあり、10月には静岡で11回目のキャンプ、11月には群馬で4回目のキャンプと続く。それらのキャンプは、「アホな人たち」が、真剣に、楽しく企画し、運営する。この人たちと一緒に、キャンプで、たくさんのどもる子どもや保護者と出会えることは、どもりに悩んできた私へのご褒美なのだと思う。
 これらのキャンプの出発となった滋賀の吃音親子サマーキャンプは、タイからの参加を含め150名ほどの参加で、第23回目になる。
 私はこれからも「アホな人」の輪の中にいたい。 
                                2012年8月22日 記

どもる子どもの 日本語のレッスン


  第12回・静岡キャンプの親子活動


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 今年は、どもる人のための日本語のレッスンに全員で取り組みました。静岡のキャンプではこれまでいろんな活動をしています。親子で創作活動をしたり、表現活動をしたりしてきましたが、今年は私が担当しての日本語のレッスンです。ことばの教室の先生だけでなく、言語聴覚士や、言語聴覚士の専門学校の学生さんがスタッフとして参加しているため、低学年の子どもには難しいとは考えたのですが、親に知っておいてもらえればと「日本語の発音・発声」の基本をまず話しました。

 「からだとことばのレッスン」の竹内敏晴さんに25年ほどことばのレッスンを僕は受けています。このレッスンは竹内敏晴独自のもので、後継者はいません。私も人にレッスンをしたことはありません。しかし、竹内さんが亡くなって丸4年がたち、統合的アプローチの「ゆっくり、そっと、軟らかく」などの意味のない言語訓練が紹介され、そのようなものが広がるのは困ると、「どもる子ども、どもる人」の日本語のレッスンを、私なりに学んだことを伝えていかなくてはいけないと思うようになりました。

 藤原書店から「セレクション 竹内敏晴のからだと思想」(全4巻)が出版されました。その中にはさむ冊子に原稿依頼があり、「私の決意」という文章を書きました。不十分であっても竹内さんの「日本語のレッスン」を伝えて行かなくてはならないと書いてからの、初めてのレッスンです。

 二人組になり背中を合わせての「からだゆらし」の後、いくつもの童謡・唱歌を、からだを使いながら表現する歌としてしました。
 たとえば、「どんぐりころころ」は子どもがドングリになって、小池に落ちて、どじょう役の親とであって遊ぶという。会場をいっぱいに使って動き回って歌うのです。竹内敏晴さんからは、いろんな種類のレッスンを受けましたが、僕は竹内さんの「歌のレッスン」が一番好きでした。一泊2日の合宿で、歌だけのレッスンをしていただいたのは、僕たちの大きな財産になっています。

 たくさんの歌を歌った後、北原白秋の「まつり」を4つのグループに分かれて練習し、表現してもらいました。短い時間なのに、それぞれのグループが創造的な表現を、声量豊かにしてくれました。たのしい時間でした。
 感想分の中に「日本語の豊かさ」「童謡のよさ」を再発見したと書いて下さっていたので、まあ、役割ははたせたかなあと思っています。

 竹内敏晴さんとのレッスンのビデオがたくさん残っています。それらを丹念に見直し、今後も、機会があれば、ことばの教室の先生や、言語聴覚士や親に、「日本語のレッスン」をしていこうと、決意を新たにしました。

 日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2013/11/02
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