伊藤伸二の吃音(どもり)相談室

「どもり」の語り部・伊藤伸二(日本吃音臨床研究会代表)が、吃音(どもり)について語ります。

2012年12月

2012年 この1年のご愛読に感謝します。


 早いもので今年最後のブログとなりました。

 今年一年も、いろんなところで講演や講義、相談会、キャンプなどで、どもる子どもや保護者、ことばの教室の担当者や言語聴覚士、吃音にかかわる人々と出会ってきました。そのとき話したこと、聞いたこと、感じたことなどを、このブログで書きたかったのですが、次々と仕事が続くと書かない間に、次の仕事があり、かけなくなっていました。読者のひとりから、伊藤さんの文章が長すぎるから、つい書くのが滞る。日記のように軽く書けばいい、とアドバイスされました。だけど、吃音をとりまく環境は、私の視点からすれば、ねんねん厳しくなっています。いよいよ、アメリカ言語病理学への傾斜が強まっていると思えるのです。

 日本語でどもる私たちには、日本の吃音臨床があっていい。アメリカからこれまで多くのことを学んできました。そのことは感謝し、アメリカ言語病理学を評価しつつも、問題点を明らかにして、日本の吃音臨床を作り上げる時期にきていると私は確信しています。仲間はそれほど多くはないのですが、志を同じくする人たちと、力を合わせて、日本のどもる人が、どもる子どもが幸せに生きられる道を確立するために、来年は一段と頑張りたいと思っています。その大きな起爆になるのが、べてるの家の向谷地生良さんとの共著「吃音の当事者研究」と保護者や教師向けのパンフレットです。

 湯布院で執筆しているのが、どもることもの教育のためのパンフレットですが、これまでのどもる子どもの指導の書籍など目を通していると、はっきりと書くべきことが浮かび上がってきました。今、一所懸命に書いています。来春には発行予定です。また、案内しますのでぜひお読みください。

 というわけで、年内の相談会や講演会について、書いていないものについて、年をまたいでしまいますが、書いていきたいと思います。どうか引き続きお読みいただき、吃音に関心をもつ人々にできるだけ、ご紹介いただければうれしいです。読んでくださる人がいると信じられるから書き続けることができます。どうか、よろしくお願いします。

 お読みくださっている皆様、ご健康で良いお年をお迎えください。

 日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2012年12月31日

 

第18回吃音ショートコース

 吃音ショートコースの今年のテーマはゲシュタルトセラピーでした。

 大阪商工会議所のあるセミナーで始めてゲシュタルトセラピーを知ってから、もう30年以上になります。そのとき知ったゲシュタルトセラピー9つの原則は、私が吃音の悩みから開放されていくプロセスで、知らず知らずにしていたことだと知ったとき、うれしかったと同時に、ゲシュタルトセラピーについて学びたいと思いました。しかし、インターネットがまだ普及していなかった時代、書籍もなかった時代、またカレー専門店を経営していた時代でもあり、時間的な余裕もなく時間が過ぎていきました。
 倉戸ヨシヤ先生のワークシヨツプに出会うのに少し時間がかかりました。
 吃音に悩んでいたとき、どもる自分が許せず、認められず、どもりが治ることばかりを夢見ていました。常に想像の世界で不安や、恐怖を募らせていました。9つの原則を知ったとき、吃音に悩んでいたときには、これらができなかったのだと思ったのです。
 第一原則:『今に生きる』
 治ることばかりを夢見て、今、自分にできることすらしませんでした。今ここに生きていなかったのです。
 第二原則:『ここに生きる』
 どもっているのは「仮の姿」と考えていましたので、ここに生きていませんでした。目の前のことに向き合えませんでした。どもる事実を認めて、苦しくても、今、ここに生きることが必要だったのです。
 第三原則:『想像をやめて、現実的に物事をとらえる』
 吃音の大きな問題は、予期不安です。どもるかもしれない、失敗するかもしれない、どもると人から嫌われるかも知れないと、悪いことばかりを想像して、常に不安でした。やれば出来たことでもそのためにしないで逃げてばかりいました。不安に思ったことが、現実に起こることはそれほど多くはなかったでしょう。
 第四原則:『考えることより、感じることを選ぶ』
 傷つくのを異常に恐れていたために、自分を主張することが出来ませんでした。何かに感じても、表現できないのであれば感じないようにしようと、堅い鎧を身にまとい、感じないようにしていました。
 第五原則:『判断するよりも、表現する』
 常にネガティブに考える、判断する習慣がついていたために、これを言ってもわかってもらえない、こういうと嫌われると、ありのままをとりあえず表現することが出来ませんでした。
 第六原則:『不快な感情も受け入れる』
 嫌なことは避けてばかりで、向き合うことはありませんでした。不安や恐怖など不快な感情をもてあましていながら、それを表現することも、当然受け止めることも出来ませんでした。
 第七原則:『権威者を作らない』
 誰かが、私の吃音を治してくれる。「吃音矯正所」の言うセラピーに任せよう。実際に1ヶ月、この人の言うとおりに頑張れば治ると信じて、頑張りましたが治りませんでした。もう、権威者に頼らないと決心しました。
 第八原則:『自分自身に責任を持つ』
 吃音矯正所に自分の人生をゆだね、努力した結果治らなかったとき、吃音は人に頼って治してもらうものではなく、自分の力でなんとかするものだとの自覚が生まれました。もう、何事かできないことを吃音のせいにしないでおこうと思いました。吃音を治すことをあきらめたことで、自分の言動に責任を持てるようになりました。
 第九原則:『自分自身であろうとする』
 誰かに教えられたり、作られた自分ではなく、ありのままの自分でいようと思いました。どもらない人をうらやむのでなく、誰かの真似をするのでもなく、自分らしく生きようと決めました。
 
 ゲシュタルトセラピのこの原則に近い生き方をしようと決めたのが、21歳の秋でした。ここから、私の人生は大きく転換していくのです。

日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2012/12/30 湯布院にて

どもりと脳


 脳検診

 由布院厚生年金病院で、脳診断を受けました。保養ホームと病院のタイアップ事業で、MRI MRA、コンピューター断層撮影です。糖尿病の私は、脳梗塞などがしんぱいなので、いい機会だと受けました。
 15分ほどで撮影が終わり、院長自らがその画像を見せながら、たっぷりと説明してくれました。12月28日の御用納めで外来患者はお昼からはいないせいか、ゆったりと私に向き合って、丁寧に、穏やかに解説をしてくださいます。相手の目を見ながら、穏やかに丁寧に説明されると、患者というある意味弱い立場にいるものとして、こんなに安心、信頼できるのかと、とてもうれしくなりました。

 糖尿病は血管の病気です、少しは異変があるのかと不安がありましたが、「この脳は、この年齢からすると、きわめて若いすばらしい脳」だと言っていただきました。びっしりと詰まっているのが画像でわかります。萎縮している部分もまったくなく、血管も問題なく「若い脳」だといっていただいて、とても安心しました。

 以前、演出家の竹内敏晴さんが毎月大阪で「からだとことばのレッスン」をしてくださっていました。そのとき、ホテルの浴室で倒れて、頭も打ったので、大騒ぎしたことがありました。病院でたぶん私がしたような脳診断があったのでしょう。そのとき、「年齢にとは思えない若い脳だ」といわれたと言っておられたのを思い出しました。そのとき、何事もなかったのですが、竹内さんの言っておられた「若い脳」とはこういうものかと、画像を見て思いました。

 ゆったりとした時間だったので、「私は、どもりで、どもりに取り組んでいるのだけれど、吃音と脳について少しお起きしていいですか」と訪ねました。3歳ごろからどもり、小学2年生から68歳のいままで、どもり続けていますが、何かこれまで見てこられた脳と比べて、異常な部分はありますか」とたずねました。
 当然だと思っていましたが、微塵もそのようなものはないとのことでした。その病院はリハビリ専門病院で27名もの言語聴覚士がいる日本有数の病院ですが、脳卒中、交通事故などで脳のダメージを受ければそれは当然、画像にも表れるか吃音の場合はないだろうとのことでした。

 どもり続けた私の脳の画像を見て、どもりと脳についてあきらめられずに追求し続けるアメリカ言語病理学に不思議な思いがしました。仮に病変が見つかったとして、吃音と脳の関係が発見されたいと、いわゆる吃音治療にどう生かされるのでしょう。アルツアイマー病などは脳のこのあたりが、こうなると説明していただきましたが、脳で病変がわかったとても、それが病気だと診断されても、その対策はあまりないのですから。

 私は、好奇心があり、よくしゃべり、笑います。そして、何よりも吃音に興味関心があり、勉強し続け、吃音について話し、本を書くなどしてきました。吃音で脳に病変がなかったものの、吃音に悩んだおかげで、吃音について深く考え、吃音キャンプなどで、子どもたちとに付き合うことが、私の脳の若さになっていると思うと、吃音さまさまだと思えるのです。

 愉快な、脳診断でした。

 日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2012/12/28

大変ご無沙汰しました。今、例年のごとく由布院です


 ぼちぼち更新します

 12月23日から大分の由布院に来ています。以前は山陰の玉造温泉で年末年始を過ごしていました。年末のあわただしい中で、島根のことばの教室の先生方が松江市内のことばの教室で講演会を開いてくださり、その夜の懇親会が盛り上がり、それが、どもる子どもたちとのキャンプである「島根スタタリングフォーラム」に結びつきました。 玉造温泉もすきなのですが、今年をいれて連続して3年は、大分の由布院です。厚生年金保養ホームは、一日1600キロカロリーの食事なので、糖尿病の私にはありがたとところです。

 大阪を出発前に、来年出版予定の「吃音の当事者研究」の編集原稿を、べてるの家の向谷地生良さんにお送りしなければならなくて、大変でした。せっかくのご家族が集まれる数少ない機会である、年末年始にご校閲をお願いする無粋なことをしましたので、私も今年の由布院は仕事三昧にしました。来春発行予定の「吃音パンフレット」を滞在期間中に書き上げる予定です。「吃音の当事者研究」に集中していたために、まつたく手付かずになっていたので大変です。

 さて、このぶろぐ、群馬キャンプの後、吃音ショートコースでゲシュタルトセラピーを学び、言語聴覚士の専門学校の講義、横浜の相談会、三重県津市でのどもる子どもや保護者との語る、私立中学校・高等学校の人権講演会などが続いたのですが、「吃音の当事者研究」の編集に終われて何も書けませんでした。

 そこで、由布院では「吃音パンフレット」の執筆に追われるのですが、少しは時間を見つけて、このブログを更新していこうと考えています。いろいろと思い出だしながら書きたいと思いますので、よろしくお願いします。

 由布院は寒い日が続いていたのですが、今日はひさしぶりにおだやかで晴天でした。由布岳が久しぶりに頂上までくっきりと見えました。パンフレット執筆もペースがつかめてきましたので、このブログにも少し時間を避けそうです。よろしくお願いします。

 日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2012/12/27

東京で吃音ワークショップ開きます。

 しばらく開けなかった東京でのワークショップ再開します。
 一年に一度の関東地方での集まりです。お知り合いにもご紹介下さい。

     吃音と向き合い、語り合う 伊藤伸二・吃音ワークショップ

 「吃音を治すことにこだわらず、どもりながらどう生きていくかを目指そう」と、大阪を基盤に活動している日本吃音臨床研究会の伊藤伸二と一緒に、どもる問題について考えたり話し合ったりする関東地方でのワークショップです。
 参加者ひとりひとりの吃音の悩み、知りたいこと、体験したいこと、学びたいことに関わり、それを皆で共有するスタイルで進めていきます。吃音について深く考えたい方、どもりながら生きていく上でいろんな思いを抱えている方、吃音の仲間とじっくり話したい方、伊藤や日本吃音臨床研究会の活動に関心があっても大阪まではなかなか行けない方、この機会にぜひご参加下さい。

◇吃音を生きる、論理療法、交流分析、認知行動療法、アサーティヴ・トレーニングなどについて。
◇吃音で苦戦している問題についての具体的対処。
◇どもって声が出ないときの対処・サバイバル。
◇吃音を治す言語訓練に代わる、日本語の発音・発声のレッスン。         

□日時 2013年1月13日(日)10:00〜17:00
□会場 北トピア 東京都北区王子1−11−1 TEL 03−5390−1100
  JR京浜東北線「王子」駅北口徒歩2分
  東京メトロ南北線「王子」駅ト崕亳直結
□定員 18名  
□参加費 5,000円
□申し込み方法 
 〔樵亜 ´年齢  住所  づ渡暖峭罅 ´タΧ
 Π貌伸二・吃音ワークショップを知ったきっかけ 
を書いて郵送かFAXでお申し込み下さい。
□申し込み締め切り 2013年1月10日
□問い合わせ・申し込み先 日本吃音臨床研究会
 〒572-0850 寝屋川市打上高塚町1-2-1526
 TEL/FAX 072-820-8244
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