伊藤伸二の吃音(どもり)相談室

「どもり」の語り部・伊藤伸二(日本吃音臨床研究会代表)が、吃音(どもり)について語ります。

2012年09月

第23回吃音親子サマーキャンプ   子どもたちの話し合い


 子どもたちとの話し合い

 キャンプの一日目、夕食が終わってからの90分、年齢別に話し合います。昨年は高校生のグループで人生についていろいろと話しました。特に女子高生が3人仲がよくて、好きな男の子に話しかけられないと話があり、「すごくどもりながら、結婚相手の親に挨拶に行った人が、このキャンプのスタッフでいるよ」と話したら、食事の時高校生の3人が彼女に恋愛相談をしていたのが印象に残っています。
 
 私は今年は、小学5年生、6年生の担当でした。
 まず、自己紹介の時一番最初に話した女の子が、名字はすっと言えたのに、名前がぜんぜん出てきません。かなりの時間でしたが、みんなが、目をそらすことなく、じっと彼女がことばが出るのを待っていました。子どもたちの真っ正面からその子に向き合い、待つ姿が印象的でした。
 でも、あまりまっても彼女もつらいです。時を見計らって「何々さん、名字はすっと言えたのに、名前がなかなか出てこないね。今、どうしたい。このまま僕たちは待ってもいいし、今は出ないから、あとでするかい」と介入しました。彼女は、ほっとした様子で、後にすると言ったので、順番をすすめました。そして、しばらく話し合ってから、もう一度彼女にたずねました。「どうですか、さっき、あなたが一所懸命名前を言おうとしていたのに、僕がストップをかけたのは嫌だった? それともあれでよかった?」と尋ねました。長く待たずに声をかけてもらってよかったと言い、学校でもよくあると言ってくれました。少し暗かった顔が、明るくなり、2日目の話し合いでは、本当にあかるくなっていました。「いい子ですね」とキャンプが終わって変えるとき、お父さんに声をかけました。
 作文でも、びっくりするようなしっかりした考えを書いていました。
 楽しい、笑いにあふれた5年、6年生の話し合いでした。
 記録に書かれていたものの一部を紹介します。

自己紹介・なぜキャンプに来たのか
・行ってもいいなあと思ったら、お母さんが予約してくれた。
・ お母さんの友だちが紹介してくれた。はじめは知らないところへ行くのが不安で少し抵抗していた。今も緊張している。
・話を聞いて楽しそうだったから。
・ 3年のとき来て楽しかったから。
・ ことばの教室の先生の紹介。伊藤伸二の本を読んで会いたくて来た。
・ ことばの教室の先生の紹介。5年のとき参加して楽しかったから。
・ ことばの教室の先生の紹介。来たいと思った。
・ 名前の「あおい」が言いにくいから来た
・ 静岡のキャンプにも行ったことがあるので来た。

○学校でのエピソード
・ どもると笑ってくる子がいた。帰りの会で、自分がどもることを伝えた。先生も少し付け加えてくれた。その後も同じ子が笑ってきたとき、先生が「別に変なことじゃないよ」って言えばいいじゃんと励ましてくれた。
・ 緊張するとどもるけれど、周りはあまり反応しない。
・ 友だちが聞き流す。聞き流してくれる。前に、「なんでそんな話し方、するの」と、授業の音読中に友だちに言われてショックで休んだ。そのとき、先生がクラスのみんなに言ってくれた。その後、クラスの様子が変わった。
・ 去年、僕も同じことがあった。
・ 年下の子たち3、4人や他の学年の子たちにも言われて嫌だった。逃げることもあったけど、逃げられずに泣いた。家に帰ってお母さんに相談した。ことばの教室の先生が担任に伝えてくれて、クラスの総合の時間にどもりについて話してくれた。同学年の子にはもう言われなくなったが、年下の子に言われると、やっぱり逃げる。
・ 発表のとき、どもって声が出なくなってせかされた。次の日、お母さんが、伊藤さんの書いた「どもる君へ 今伝えたいこと」を買って、クラスにもっていったら、先生が話してくれた。
・ 小4のときの先生は、クラスのみんなに何もしてくれなかった。一緒に言ってくれたりしたけど、先生が説明してくれたらよかった。お母さんと一緒に頼みに行ったが、あまり理解してくれなかった。
・ 他の子がクラスでどもりのことを伝えた話を聞いて発表しようと思った。そしたらスッキリした。4年生のころは、どう行ったらよいか分からなかった。みんなの反応が恐かった。でもやってみたら全然平気だった。
・ 小学校1年生のときから、「なんでどもるの?」と聞かれて「僕のくせだよ」と行っていたら、周りの人も理解してくれた。
・ 全校の発表のとき、つっかえて嫌な思いをした。周りのこからは何も言われなかったが。周りの子は受け流している。
・ 友だちは少ないけれど、話を最後まで聞いてくれる友達がいる。長くなると、とちゅうでそっぽ向く人も多いが。担任の先生は理解している。どもっても、最後まで目をそらさずに聞いてほしい。
・ どもっていたら、お手伝いしてほしい。最後まで聞いてほしいときもある。

○中学校について
  発表の機会が増えるのではと不安。
  他の小学校から来た子に説明。
○どもったときの対処法  田中実
  あかさ、たなかみのる とリズムに合わせて一気に言うる
  みのる たなか
  マイクの調子が悪いふり
  前もってみんなに話しておく。
  他の人に助けてもらおう。

 日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2012/09/24

吃音親子サマーキャンプ スタッフの劇の上演


 夕食後は、キャンプの一番の柱、吃音についての話し合いです。23年のキャンプの歴史の中で、プログラムの中でもっとも大事にしてきたのがこの話し合いです。残念ながらグループに分かれますので、他のグループのことはわかりません。私のグループにかぎっても、これまでたくさんのドラマがありました。今年は小学5年生、6年生のグループを担当しました。このグループ分けが難しいのです。基本的には同学年の子どもですが、その年によって同じ学年の子どもが10名もいたりする年もあれば、どうしても、違う学年と一緒にしなければならない年もあります。中学3年生と高校生というグループもありました。どのグループにどのスタッフを入れるかも、毎年迷います。ことばの教室の教師と成人のどもる人を基本にして3名。どのような話し合いがあったかは後日報告します。

 90分の話し合いの後、2日間で仕上げていく劇の見本の上演です。7月合宿で稽古をし、8月にも復習しますがなかなか動きが難しい。夕食前、早めに切り上げた夕食後に通し稽古で本番に備えます。私たちスタッフの出来具合で,子どもたちの劇への、役への興味が違ってきます。自分の演じた役を子どもたちが興味を持ってくれるか、多少のライバル意識が働きます。子どもたち同様、スタッフにも、劇の主役は初めてだという人もいます。かなりどもりながら自ら主役を希望して、演じる人もいます。それがとてもいいのです。劇をスムースに進行するなら、どもらない、ことばの教室の教師や、言語聴覚士がセリフの多い役をするでしょう。そうではないところが、私たちの劇の特徴です。どもりながら、真剣に取り組み、どもっても最後まで言い切る、どもる大人の姿を見てほしいのです。

 劇の上演は、さすがに観衆が多い緊張する場面だとできるものです。稽古以上のできばえでした。「コニマーラのロバ」はストーリーがわかりやすく、いじめっ子と守る側の子どもの対立など、学校生活の中で起こりえるシーンもあって、子どもたちもみんな真剣に見つめています。大成功でした。

 長い一日のしめくくりは、スタッフ会議です。これまでの動きの報告と、検討、明日の流れの確認です。実行委員会も何も開いたことがない。その日はじめて合うスタッフが、ほとんど話し合いもない中で、150名近くの集団の動きがスムーズ流れていく。毎年不思議に思います。チームワークのよさ、伝統なのでしょう。初めて参加のスタッフは、最初とまどいながらも、ベテランの動きに見よう見まねでついていく。いちいち説明して、教える時間はないのです。動きながら、動きをつかんでいくしかありません。
 
 各グループでどのような話し合いがなされたか、どのような子どもが、どのような発言があったか、気になる子どもだけ、気になる親のことは丁寧に報告されていきます。他ののグループの様子を知ることができる唯一の機会です。ユーモア、やじや、大阪特有のツッコミが入り、常に笑いにあふれています。これらの話を聞きながら、ここに集まるスタッフの人間的な温かさをいつも思います。実によく子どもや親を見ています。このいい仲間とスタッフを組んで、キャンプができることの幸せを感じることができるスタッフ会議です。長い一日が終わりました。

 日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2012/09/14

DSC_0081-001
DSC_0083-001
DSC_0096-001
DSC_0098-001
DSC_0108-001
DSC_0111-001

吃音親子サマーキャンプ 劇の見本の準備 8/24


 スタッフにとってキャンプの一日目がとてもハードなのは、劇の準備があるからです。7月に合宿をして劇の演出指導を、竹内敏晴さんが亡くなった後を、渡辺貴裕さんが引き継いでくれています。しっかりと練習をしたはずなのに、すっかり忘れており、再度集まれる人だけが集まって復習をして、今日を迎えます。
 その復習の練習に参加できていない人もいるので、夕食前の30分、夕食を早くすませて30分の時間に復習をします。この慌ただしさはなんとかならないのかと思いますが、この復習をしておかないと、子どもたちの前で劇の見本の上演はできないので、まあ仕方がないかと、みんな一所懸命です。今年の劇を子どもたちはどう受け止め、楽しんでくれるか頭にえがきながら、このハードスケジュールをこなしていくスタッフに頭が下がります。
 あわただしく終わって、次は吃音についての話し合いです。

 日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2012/09/12



DSC_0065
DSC_0067-001
DSC_0070 - コピー - コピー-001
DSC_0072-001
DSC_0075 - コピー-001
DSC_0077 - コピー-001

吃音親子サマーキャンプ 出会いの広場


 楽しく盛り上がる出会いの広場 8月24日

 初めての参加が今回は多かったので、特に出会いの広場ば重要なプログラムです。初めての所、それも複数回参加している人は、話が弾みますが、初めてだと心細いものです。私もいろんなワークシヨップに出たときもった疎外感を、キャンプにくる子どもや親には味わってほしくない。この初期不安がなんとか乗り越えないと、後のプログラムがいかによくても、なじんでいくのにかなりのエネルギーを必要とします。最初の私の挨拶でも必ずこのことに触れるのはそのためです。
 150人近く区 
出会いの広場担当は千葉の渡邉美穂さん。何度も担当して下さっているので安心できます。誕生月で集まる、吃音親子サマーキャンプクイズなどで少しずつ声が出て、なじんできます。宿泊室ごとに集まり、その部屋の名前を3つの声や動きで表現する時にはかなり動きがよくなっています。たとえば「ひばり」の名前の部屋では、その動きをみんなで話し合って工夫します。今、初めて出会う人たち、グループなのに、それぞれができていくのが不思議です。最後に、三重県の小島玉子さんの名人芸とも言える尺八の名演奏を聴き、もったいないことにその演奏に合わせて、炭坑節の盆踊りでしめくくりでした。
 楽しいキャンプの幕開けです。

 日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2012/09/11

DSC_0026
DSC_0029
DSC_0030
DSC_0045-001
DSC_0046 - コピー - コピー - コピー-001
DSC_0048 - コピー - コピー - コピー-001
DSC_0050 - コピー - コピー
DSC_0051-001
DSC_0055 - コピー-001
DSC_0057-001
DSC_0059 - コピー - コピー-001

第23回吃音親子サマーキャンプ

DSC_0021-001
DSC_0008
DSC_0012 - コピー - コピー - コピー - コピー-001
DSC_0015
DSC_0019 - コピー - コピー - コピー-001
  8月24日キャンプ開幕

 これまで147名が最大でしたが、今年は151名という過去最大の規模になりました。さすがに大きな体育館も人でいっぱい。初参加が多い割には雰囲気は和やかです。これが私たちのキャンプの伝統でしょうか。体育館で自然の家のオリエンテーションを受けてから、学習室に移動して開会式です。
 私は挨拶で昨年3月11日の大津波で亡くなった阿部さんのことを紹介しました。昨年は黙祷を捧げましたが、今回は彼女がキャンプに参加して、一回の話し合いを経て、2日目の午前中に書いた作文を読み上げました。
 小学6年生になって、からかいやいじめにあって不登校になった彼女は、一日目の夜の話し合いで、泣きながら自分の思いを語りました。みんなからレスポンスをもらって、90分の話し合いの終わり頃には、涙がすっかり消え、笑顔になっていました。その夜をみんなと過ごして、翌日の朝にこんな作文を書きました。

 「中略・・・・・話し合いがあり、その時思ったのが、みんな前向きにがんばっているんだ!なのに私は、どもりのことを引きずって全然前向きに考えてこなかった。その時私は思いました。どもりを私の特徴にはちゃえばいいんだ。それと同時にキャンプに行く前にお父さんに言われたことを思い出しました。どもりも、立派ないい大人になるための、ひりょうなんだよ。そうだどもりは私にとって大事なものなんだ。今日、朝起きたら気持ちが楽でした。まだサマーキャンブは始まったばかりだけれど、学校でしゃべれる自信がとてもつきました」

 彼女は秋には学校に行けるようになり、その後2年連続して宮城県女川町から参加しました。とても元気になり楽しい中学生活をへて、仙台の育英高校に進学が決まっていて、将来をとても楽しみにしていたのに、あの大津波でなくなりました。私は、彼女のことを決して忘れずに、作文などを紹介して語り継いでいきたいと思います。

 この、阿部さんの話と、大勢の参加で大変だけれど、ゆったりとキャンプを楽しみましょうと話を締めくくりました。23回目のキャンプはこうして始まりました。

日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2012/09/09

三重県特別支援教育研究会研究大会

 桑名の大会の翌日は、津市で、第57回三重県特別支援教育研究会の研究協議会の大会がありました。
 支援教育の中の「言語の指導」の分科会に、吃音の指導事例が出されました。
 提案者の小島 玉子さん (津市立修成小学校教諭)から、ことばの教室の教師以外の教師が多く参加するので、吃音について多くの人に知ってもらいたいので、たくさん話してほしいと事前に依頼されていました。

 提案主題 「吃音のままでいい」 〜もっと力をぬいて生きてほしい〜です。
 「ことばの教室」に通うA児について、発音指導は、日常会話や集団の中では注意をしたり、言い直しはさせないで、日常生活の中で「どもっても話していく」を基本に、話すことの楽しさや大切さをわかるように、心と体をリラックスさせ、本人の話を聞くことを大事にしてきた。との提案があり、質疑応答の後、通常の分科会の形式をも提案者、司会者の相談で、休憩時間に私への質問をかいてもらい、その質問に応える形で残り時間を使ってほしいというものでした。たくさんの質問が出され、すべてには応えられなかったもののできる限り質問にそって話しました。
 前日の東海四県の研究会ではあまり話せなかったのですが、今回は時間いっぱい話させてもらいました。
 
 さっそく報告集にまとめが届きました。このような話を質問にそって話しました。
  その部分だけ紹介します。

〜助言者からの応答〜
  ●就学前の吃音の子どもの一番大事なことは?
 ・吃音をネガティブに思ってしまうと、自己肯定にかなりの時間と努力を要してしまう。幼児期の吃音はマイナスに意識しないが大切。それには「かわいそうだ」と思わないこと。
  ●「通級をやめる」と言っていることについて
 ・本人の意思に任せるが、困ったときはいつでも来られるようにしておく。
  ●子ども(低学年)に吃音を認識させることについて
 ・基本的には子どもたちの力を信じる。吃音を自覚し「吃音を生きる」力を育てる。
  ●絶対にしてはいけないことは
   ・吃音を否定しないこと。吃音を否定すると強い劣等感をもち、吃音を理由にして人生の課題から逃げることが起こる。自分の持つ力で子どもの時代をどう乗り切っていくかを見守る。
  ●吃音がきつくなってくると…
   ・あわてて手だてを打つ必要はなく、自然に変わってくるのを待つ。
  ●吃音の子からの相談に対して
   ・本人との対話の中から選択肢を多く用意し、自分で選ばせる。自己決定力を養う。
  ●吃音がきつくなるのは
   ・プレッシャーも多少関係があるが、(症状が)「重い」「軽い」で一喜一憂しない。
  ●卒業式をどのように取り組んでいけばよいか。
 ・大きな行事をチャンスととらえる。子どもは苦労しながら生きていく力をつけていく。自分の力で乗り切ったという   思いを持つことが大事。そのために、支援の複数の選択肢を用意し、こどもが自分で選ぶ。そのとき、必ず「パ ス」という『逃げ』の選択肢も入れておく。
  ●子どもが何を言っているのか聞き取れない。言い直させてもいいのか。
・わかったふりをするのが一番失礼。「あなたの話を聞きたいから、もう少しゆっくり言って」など、吃音を否定するのではなく、内容を聞きたいから言い直してもらう。

 ○ 助言者より
  ●吃音サマーキャンプで…
   ・「話すこと(どもる)が怖かった」という思いから、どもる子どもとの話し合いの中で、「どもりは私の特徴」「どもりも、大人へ成長するための肥料」という認識へかわっていった。そのような認識が持てるような支援をしていきたい。
  ●環境を変えていく
・本人の訓練や努力で吃音を治すではなく、「どもっていても大丈夫」「何の問題ない」と周りが吃音を理解し受け止める環境で子どもは生きやすくなる。親や教師だけでなく、子ども本人にも環境を変える力がある。
  ●吃音の子どもが声を出すこと(発音)を楽しめるように
 ・日本語は母音さえ分かれば通じ合う。一音一音明確に言わなければとの思いを捨てる。
   ・日本語と英語とは違うのでアメリカの吃音指導は役に立たない。日本語の指導をする。
   ・やってみて教師自身も楽しいことしかしない。歌や詩を読む表現活動。
   ・日本語の発音・発声の基本を訓練していく。
    ・日本語は…話すために大事なのは息を吐くこと。母音の息の流れが大切
・子音と母音を同時に言う。(特に母音を)
    ・一音一音同じ長さで言う。(一音一拍)
            
  ●「共同体感覚」を育成する。
 ・「自分には居場所がある」「自分はここにいていいんだ」という安心感、安全感。
 ・「自己肯定感」(私は自分のことがすき)、「他者信頼感」(クラスの仲間や他人は信頼できる)「他者貢献感」  (私は人の役に立っている)。クラスや家庭で何かの役割をもって行動し、経験することで、これらの感覚をつけ ることで、「共同体感覚」は形成される。
   ・「ありがとう」「うれしい」「助かった」が言い合える学級にしていく。

 日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2012/09/08


どもり始めた、孫の相談。 三重県桑名市での出会い

 中学の同窓会の縁

 三重県桑名市で開かれる、東海四県言語・聴覚・発達障害教育研究大会の1か月ほど前、津市立西橋内中学の同窓生から電話がありました。

 「伊藤伸二さん、中学の同窓生です。吃音のことをしておられますよね。孫がどもり始めて、娘から相談を受けたとき、確か以前の同窓会で伊藤さんが吃音のことを話していたのを思い出しました。同窓会の幹事にこの電話番号を教えてもらって電話をしています。一度娘に会って、相談にのってくれませんか」

 2009年2月の同窓会のことは、このブログに書きました。(2009/2/24)
 同窓会にて


 この時、私は挨拶を指名されて話しました。
 「友達もいなかったので、みなさんは私のことを覚えていないでしょうが、吃音に悩んできました。今吃音をライフワークに楽しく生きています」
 その話を思い出して電話をしてくださったのです。うれしいことでした。偶然にも娘さんは桑名市にすんでいて、研究大会の会場から車で10分ほどのとこだというのです。大会が4時に終わるので、その後会うことにしました。

 こんな偶然が本当にあるんですね。
 そして、大会が4時に終わって会場で待っていましたが、その娘さんは現れません。40分ほどしてあきらめて、会場をでて駅に歩き始めたとき、小さな子どもをつれた女性が会場に入っていきました。ひょっとするとこの人かもしれないと会場に戻りましたが、姿が消えていました。
 
 会場の後片付けで残っていた人たちが心配して、電話をかけてみましょうかと言って下さったのですが、相手の番号がわかりません。お互い知らないもの同士です。お互いのケイタイ番号は教えあっていたのですが、肝心のケイタイを忘れてきたのです。

 私は、相手はホームページで顔が分かっているので、会場の玄関で声をかけてくれると思い込んで、会場から一歩も出ずに待っていました。
 相手は、私のケイタイ番号は知っているが、まだ仕事が続いているのかもと、私の電話を会場の前のコンビニの駐車場でずっと待っていたというのです。

 思い込みとはこんなものなのでしょう。
 電話をするとかできないとか、玄関で騒いでいるのをさきほどの子連れの女性が聞きつけて、声をかけて下さって、出会うことができました。40分ほどお互い待っていたことになります。
 すべては私がケイタイを忘れたことに責任があるのですが、その時、私もずいぶんと気が長くなったものだと思いました。イライラもせずに40分も待ったのですから。

 出会えるときは、どんな行き違いがあっても出会えるんですね。

 娘さんのご自宅でお孫さんに会いました。1時間ほどいろいろと相談にのって、翌日の津市の特別支援教育の研究会のために、宿泊先の津市にむかったのです。

 苦しかっただけの中学生時代、同窓会で特別にスピーチをさせてくれた同窓会幹事、それを思い出した同窓生、そして、タイムリーな桑名市での研究大会。偶然が重なって、少しはお役に立てたこと、うれしいことでした。
 
 ケイタイを持ち歩かないので、つい忘れてしまいます。これからは気をつけようと思いました。

 日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2012/09/07

世界に誇れる、日本のことばの教室の吃音(どもり)指導実践


 東海四県言語・聴覚・発達障害教育研究大会 吃音分科会

 吃音はアメリカやオーストラリアなどが進んでいて、日本は遅れていると思っている人が多いようです。では、それらの国でどもる子どもへの教育が成果を上げているかというと、世界大会などで私が海外の状況を知る限り、多くの臨床家が吃音の指導を苦手としている事情を聞くたびに、成果を上げているとはいえないようです。日本の方がはるかに進んでいると私は考えています。
 アメリカなどが、治療法がない現状でも、相変わらず「吃音治療、改善」にこだわっている中で、日本では、「治すことにこだわらない」取り組みがされていることばの教室が少なくないからです。
 今回の大会で二人の実践発表の場にいさせていただいて、実践を聞き、その後の質疑の中で、日本の取り組みのすばらしさを、もっとみんなが自信をもてばいいのにと強く思いました。

 8月20日、三重県桑名市で研究大会がありました。昨年の名古屋大会でも、吃音分科会の助言者の依頼を受けたのですが、予定がすでにあって残念ながらゆけなかった大会です。今年は都合よく日程が重ならずにありがたいことでした。
 三重県は私が物心をついてから高校卒業まで過ごした県なので特別の感慨があります。私が住んでいたのは津市ですが、会場の桑名市にもたびたび訪れたことがあります。

 さて、吃音分科会、ふたりの発表者の演題です。
   嵜び伸びと自己表現できる子どもをめざして」
 ◆ 峙媛擦呂海錣ない〜3つの輪を意識した支援の提案」
 この演題だけ読んでも、アメリカとの違いは明らかです。
 ,蓮◆峙媛擦あっても、話したいことを伝え、やりたいことわあきらめない子になってほしい」との願いをもって指導をしている」とまず基本的な教師としての態度が説明され、苦手なことは苦手なこととしてあるものの、得意なことで表現力を伸ばそうと、「絵を描く」学習が取り入れられていました。それが絵本作りに発展していきます。
 △蓮■海弔領悗寮睫世ありました。わ(わかるのわ)−児童理解、和(和やかな雰囲気の和)−環境、教材の工夫、輪(ネットワークの輪)−連携。担当者自身が吃音指導に当初は苦手意識をもっていたが、こわくない−安心をキーワードにした吃音指導の提案でした。
 お二人とも、教材を独自に工夫して、楽しく指導をされていました。

 助言者として30分ほどしか話す機会はなかったのですが、まず、ふたりの実践がどもる子どもが楽しそうに指導をうれている印象をまず話しました。その上で、「指導者が自分自身が楽しくない指導はしない」ことが大事だと話しました。自分がどもる子どもだったとしたら、このような指導が楽しいか、うれしいかを考える必要があると思うのです。私が民間吃音矯正所で受けた指導、「呼吸練習やゆっくり、そっと話す訓練」は、本当につまらなくて、「どうしてこんな練習しなければならないのか?」と常に疑問を感じながらしていました。
 楽しくも、おもしろくもない練習は、指導を受ける側としてはいやです。その点、ふたりの実践は、会話の録音を聞かせてもらいましたが、教師も、子どもも楽しそうでした。
 
 短い時間の中で、あまり話せなかったのですが、3つの輪にちなんで、場の持つ3つの機能を話しました。
  ,蓮安らぎ、居場所、ほっとできる場
 ◆‖佻辰箜惱をなどを通して、自分に気づける場
  課題があれば、それを練習する場
 日本のことばの教室は、それぞれ教材を工夫して、この3つの場を生かしていると私は思います。

 日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2012/09/06
 

どもる保護者の、担任教師への思い 第10回岡山吃音キャンプ

 吃音を担任教師が理解すれば
 

 岡山のキャンプで、初日のキャンプの夜はいつもは、コンサートのようなことをするのですが、今年は子どもの話し合い、保護者の話し合いがゆったりともたれました。
私にとっては、ゆったりと吃音に関われるとてもよいプログラムでした。

 子どもの話し合いでは、小学6年生、中学3年生、高校3年生が混じっていて、それぞれが人生の大きな転機を迎えて、不安があったようです。私は、小学5年生の中頃から、中学生になっての自己紹介などの不安におびえていました。中学生になるのがとても怖かった。しかし、岡山のキャンプに来ている子どもは、複数回来ている中で、いろんなことを学んでいるためか、話し合いをしてみると、私がかつて経験した大きな不安ではありませんでした。誰もが当然もつ不安で、対処できると子どもたちが考えているものでした。岡山の吃音キャンプの大きな成果だと思いました。

 また、保護者の話し合いもそうです。
 複数回参加している保護者の体験は、初めて参加の親に現実的で具体的なアドバイスはとても役に立っています。ここでも、グループのもつ力を感じました。その中で出てきたのが、通常学級の担任の教師の吃音についての無知、無理解でした。もう少し担任に理解があれば、子どもはもっと楽しく、あまり苦労なく学校へ行けただろうにとの話し合いになったそうです。
 そこで、どう担任に理解してほしいか、翌日の私の担当のグループでの話し合いで出してもらいました。
 このような親の思いが出されました。

     通常学級に望むこと、理解してほしいこと

・「吃音とは」の基本的なことを知ってほしい。
 「・・・・・」と声がでない、プロック(難発)が吃音と思っていない人がいるので、子どもがどもっている状態に気づけない。すぐにことばが出ないと恥ずかしがっているのか、緊張しているのかと思われる。
・発表場面があることを前もって言ってほしい。
 どのように発表するか、事前に子どもに相談してほしい。どもる子どもは一様に発表は嫌だろう、苦手だろうと決めつけないでほしい。
・からかいがあったら、素早い対応をしてほしい。
・教員の初任者研修などで吃音を取り上げてほしい。
・吃音は育て方が原因ではないことを知ってほしい。担任だけでなく、身近な人にも知ってほしい。
・原因なく波があるということ、規則性がないことも、知ってほしい。
・学校でどもらないからといって「大丈夫」と軽々しく言わない手ほしい。「前、どもる担任したことがある」というベテラン教師のわりには、ひとりひとり違うことを知らない。
・幼稚園で、子どもの吃音について相談したら、「子どもに知られたら傷つくから小さい声で、子どもに聞こえないようにはなしましょう」と言われた。吃音は意識しない方がいいという神話がある。
・吃音の話を担任にすると、「親が熱心すぎる」と言われる。「家でもプレッシャーを与えているのでは?」と誤解される。
・幼少期のときにどこかに相談に行くと、「大丈夫」と安易に言われる。真剣に聞いてもらえない。
・いじめ、からかいの芽を早く摘んでほしい。
・吃音に気づいて相談したら、自分の学校にことばの教室があるにも関わらず、ことばの教室を紹介されずに、カウンセリングを紹介された。ことばの教室は、親勧めにくいと言われた。まずは、通常学級の担任が、通級指導教室やことばの教室を知ってほしい。

日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2012/09/02
 

第10回 岡山吃音キャンプ


  吃音キャンプとアホな人たち
     

 「アホな人たち」
 自分の仕事上の立場や損得を超え、自分の気持ちに正直に、本音で何事かに一所懸命取り組む人。それが結果として人の役に立っているのを自分のことのように喜ぶ人。大阪では、というより私たちだけかもしれませんが、親しみと共感、尊敬を込めて、私たちはこう呼び合っています。

 ことばの教室の教師は、本来、自分の教室に通ってくる子どもを、その時間真剣に指導すれば、それで誠実に仕事をしていることになります。吃音の、いわゆる吃音の症状だけの改善を目指す教師であれば、言語指導が役割だと考える人なら、ことばの教室だけの指導で終わることが多いでしょう。

 しかし、吃音を生き方の問題だと考えると、活動は教室だけの枠では収まりません。小学校を卒業してからもずっとつきあっている人がいます。どもる子どもに会わせたいと考え、定期的にどもる子どもの集まりを続ける人がいます。それらは勤務時間外ですが、嬉々として子どもたちのために、企画し運営する人がいます。

 私のかかわる吃音キャンプは、毎年5月か6月の島根スタタリングフォーラムから始まり、岡山、静岡、群馬とつづくのですが、8月11・12日には、岡山で第10回目のキャンプがありました。
 記念すべき10回めでした。キャンプが始まったとき、はたしてどれくらい続けられるか話題になりました。3年は続けたいのことば通り、最初に企画した人は3年続けました。しかし、教育委員会への転出などで、企画ができなくなると、すぐに、私が継続すると手を上げて下さった人がいました。そして、その中心人物の一人も、教育委員会に転出すると、新たに新しい人が加わりました。10年ずっと関わって下さる人がいるから、中心人物が変わっても継続ができるのでしょう。継続することはとても大変なことにのです。

 「アホな人」でなければ、こんな大変なことはできないのです。しかし、「アホな人」は、周りが考えるほど、大変なことではないのです。だから続くのだと思います。とにかく10年続いたことがうれしくて、スタッフの皆さんに心からの敬意を表しているのです。また、10年も続けて私を講師として呼んで下さることに感謝しているのです。

 今年は、キャンプの前の午前中に私の講演会を企画して下さいました。キャンプのスタッフだけでなく、岡山県のことばの教室の先生が、私の講義だけを聴きに来て下さいました。できるだけ多くの人に私の話を聞いていただきたいと考えていますので、大変にありがたいことでした。
 キャンプの内容については、次回に。
 
日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2012/09/01

 IMG_0822
IMG_0821
IMG_0789
IMG_0780
IMG_0776
livedoor プロフィール
QRコード(携帯電話用)
QRコード
  • ライブドアブログ