伊藤伸二の吃音(どもり)相談室

「どもり」の語り部・伊藤伸二(日本吃音臨床研究会代表)が、吃音(どもり)について語ります。

2012年06月

 どもって生きる、覚悟を決める

島根県難聴言語障害教育研究会の一日研修

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 昨年度に引き続き、島根スタタリングフォーラムの翌日。島根県全域から参加する、ことばの教室、難聴学級など支援教育関係者の一日研修会がありました。いろいろな障害のある子どもの教育に携わる教員ですが、その中のひとつである「吃音」に、一日使って研修して下さるのは、本当にありがたいことです。
 これまで、何度も島根県の教員研修の講師をさせていただいていますが、人事で今年新しくことばの教室を担当する人も少なくないために、毎年のように研修をして下さっています。もちろん、何度も私の話を聞いて下さる人も多いのですが。

 私は講演の時、落語のまくらのような話を必ずします。今回は、前日、浜田市のレストランで、「べてるの家」の向谷地良生さんに出会ったことを話して、「べてるの家」について知っているかどうか、アンケートをとりました。意外に知らない人が多いのには少し驚きました。そこで、「治せない、治さない・精神科医の川村敏明さん」「相談を受けるのではなく、当事者に相談する・ソーシャルワーカーの向谷地良生さん」の話をしつつ、「べてる家」の話を少しして、吃音についても、「吃音は治せない、治さない」私の考えを話しました。

 まだ、このブログで紹介していないのですが、カナダで3年間言語聴覚士として仕事をし、日本に帰ってきた池上久美子さんの「北米の吃音治療事情」は衝撃的でした。ここまでひどいとは思いませんでした。カナダでは、日本で100年以上も前の治療法を、ほとんどの人が失敗してきた治療法を未だに続けているのです。アメリカやカナダ、オーストラリアなどの現状を話し、今私の考えている吃音の取り組みを紹介しました。

 90分ほど話した後、今年4月からことばの教室の担当者になった人に、その話を受けてや、吃音について知りたいことなど質問していただいて、対談するという、私にとって初めての試みをしました。やはり、新しく担当した人の質問は新鮮で、話が弾みました。おかげで、90分の話の中では話せなかったことを補うことができました。
 
 午後からは、グループに分かれていただいて、「どもって生きる覚悟を決めて生きる」子どもを育てるためには、どのような情報、知識、体験が子どもにとって必要か、また、具体的にどのような教育ができるか、考えていただきました。「吃音は治せない、治さない」のであれば、ことばの教室では、何もしないのかと、誤解をする人がいるのですが、「治す・改善」の取り組みよりも、はるかにことばの教室で教育としてしなければならないことが多いのです。グループで話し合い、発表していただき、それに私が解説するというスタイルでした。

 一日の研修は、講演、対談、演習と、これまでにないスタイルにしましたが、最後の振り返りのみなさんの発言から、この新しい試みが成功したように私には感じられました。また、私の主張を多くの人が「ガッテン」して下さいました。毎年話させていただいている、島根県ならではの反応ですが、私にとって、とても充実した、ありがたい、うれしい研修会でした。

 日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2012/06/26 

べてるの家の 向谷地生良さんとの島根県浜田市で奇跡の出会い

 天文学的な確率の出会い
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 第14回島根スタタリングフォーラムの後、翌日の島根県難聴言語障害教育研究会の一日研修会のために、浜田市に泊まることになっています。フォーラムの打上の会が、島根県のことばの教室の教員5人と、浜田市の、ケンブローという、豚肉のおいしいレストランでありました。3時間以上話題は吃音のことばかり、今後の計画などを話す、とても楽しい時間です。

 昨年もこの食事会に大勢が集まり、話が盛り上がって、隠岐でキャンプをする話がでました。そして、今年は7月、もう一度吃音キャンプが隠岐で開かれることになりました。隠岐の島は島根とは言え、なかなか遠いので、隠岐の人が島根スタタリングフォーラムに参加できないから、私たちが隠岐に行こうとなったのです。

 いつものように、いろいろと話が盛り上がり、計画も立てる楽しい3時間の食事を終えて席を立って、ふと右手の座敷を見た時、一瞬自分の目を疑いました。
 北海道浦河町のべてるの家の、向谷地生良さんが15人ほどの人と話し込んでいたのです。浜田市にある、刑務所ではあるけれども、ユニークな施設の職員との研修で浜田市にこられていたのです。

 昨秋、私たちのワークショップ、吃音ショートコースのテーマは「当事者研究」でした。向谷地生良さんは、3日間びっしりと私たちのつき合って下さり、「伊藤さんたちの主張が大きく広がる夜明けは近いですよ」と、私たちを励まし、「吃音の当事者研究」を共著で出版することを提案して下さいました。
 北海道と大阪の人間が、島根県の浜田市の小さなレストランで出会うのは天文学的な確率です。

 超多忙の向谷地さんが3日間も研修することなど、ほとんどないでしょう。
 それが実現したのは、浦河での《べてる祭り》に参加したとき、元TBSのディレクター斉藤道雄さんのご自宅での食事会で、向谷地さんのご家族を紹介され講師依頼ができたからです。その斉藤さんは、今、大阪吃音教室が例会場として使っている應典院が発行する小さな冊子に載った私の記事「弱さを社会にひらく」を読んで、東京から私に会いに来て下さいました。
 私の話に共感し、素晴らしいドキュメンタリー番組『報道の魂』は作って下さいました。そのきっかけとなった、大阪で最も有名なお寺、應典院の秋田光彦住職とは、読売新聞の森川明義記者の取材に同行した時、紹介されました。森川記者は、私自身や私の活動を7回シリーズを読売新聞で大きく紹介して下さいました。その森川記者とは、大阪セルフヘルプ支援センターの活動の中で知り合いましたが、支援センターの活動は、九州大学・留学生センターの准教授、臨床心理士の高松里さんの紹介でした。

 このように辿っていくと、たくさんの偶然の出会いが、人と人とを結びつけていくのが分かります。
 私はこのような不思議な縁に、風に吹かれるままに、風に逆らわないで生きてきたように思います。
 浜田市で、向谷地さんに出会って、そのようなことを感じました。

 日本吃音臨床研究会・会長 伊藤伸二 2012/06/21
 

高校一年生のうれしい質問


 どうしたら、伊藤さんのように会長になれますか?

 島根スタタリングフォーラムでは、すこしずつプログラムが変わっていっています。
 最近は、小学生からの参加者、保護者、ことばの教室の教師など、全参加者に1時間話すプログラムが定着しています。 聞く人が、子どもから大人までというのは、本当に話しにくいものです。子どもむけに話そうとすると、なんか、すぐに終わってしまいそうです。大人向けにすると、子どもはわかりにくいし、とても1時間はもちません。どだい無茶苦茶な設定だと言えなくはありません。しかし、参加者全員に同じ話を聞いていただけるというのも、素敵なことです。昨年は、映画「英国王のスピーチ」の話をしました。親に対しては、流暢に話すことよりも、まじめで、誠実なことが何よりも大切なこと、子どもには、アドラー心理学で言う、劣等性、劣等感、劣等コンプレックスについて話し始めたら、さっさく「劣等感って何ですか?」と小学生から質問が飛んできました。このように質問があるのはうれしいことです。

 あの映画は、兄と、弟の劣等感の葛藤の話だと、できるだけ分かりやすく話しました。兄がどもる弟に劣等感を強くもっていたとは、あまりみんな思わなかったようです。兄の方が、劣等コンプレックスを使って、自分より、弟の方が、誠実、責任感など人間性に対してもっている劣等感を使って、国王から逃げたという話をしました。

 さて、今年はと用意したのが、別のところでしているキャンプの子どもたちと私との対話のビデオをみてもらい、それには子どもたちがでてくるので、それをもとに話そうと計画しました。ところが、そのビデオ。新幹線の車中で忘れてきたことに気づきました。さて、どうするか、1時間の話をどうするか困りました。
 そこで、始めに、ごめんなさいと謝って、「リクエスト講演」にするので、どんなことでも質問して欲しいとお願いしました。実は、このような質問をしてもらって、それで話を組み立てるのが一番私にあっています。好きなのです。「大人になったら、どもりは治りますか」などの質問に混じって、「どうしたら会長になれますか」の高校生からの質問があったのです。「会長?」、一瞬とまどいましたが、「どうしたら、リーダーになれるかということですか?」と質問して確認しました。あまりに高校1年に似つかわしくない質問だったので、「伊藤さんのように快調に話せますか?」の質問と受け止めた、ことばの教室の教師がいたようです。

 「大人になったら治るか」について、私自身の21歳から、吃音と向き合っての人生と、ほとんどの人が治っていない現実を話しました。1時間はあっと言う間に過ぎて、あまり時間はなかったのですが、私の「リーダー」に着いての考えを、高校生に分かるように話しました。

 いろいろ話した中で、子どもにとっては思いがけないこととしては次のことを挙げました。
  ・弱さや、劣等感をもっていること
  ・できない事がたくさんあること

 私は、自分の弱さをずっと見つめてきました。昔は自分の弱さに強い劣等感をもっていました。しかし、1965年にどもる人のセルフヘルプグループ言友会を創立して、ナンバー2の幹事長になり、いらい、ずっとリーダーをしてきた私のエネルギーになったとは、弱さと劣等感でした。それに向き合ったことで、人とつながることができました。また、英語ができない、漢字が書けない、失敗が多いなどの他に、今では、パソコンがほとんど使えないなどの、人と比べてあまりにもできないことが多いのです。とても「伊藤をほっておけない」と周りが助けてくれるのです。英語ができないのに、第一回世界大会を開催し、3年ごとにの世界大会に参加して、基調講演やワークショップ、世界の機関誌を編集できたのも、通訳、翻訳で私を支えてくれる親友がいるからです。いろんな行事、吃音親子サマーキャンプができるのも、たくさんの人が助けてくれるからです。失敗することが多いから、周りはひやひやして私を助けてくれるのです。

 1965年から今で、私がずっとリーダーとして先頭を走り続けることができたのは、このようなことだと改めて思ってそのことを話しました。さて、どこまで通じたでしょうか。

 なぜ、高校一年生がそんな質問をしたのか、後でお母さんが教えてくれました。その子ことは長い付き合いで、私のことが大好きなのだそうです。そして、フォーラムの数日前に親子で、「伊藤さんも、そろそろ年だし、いつこのような活動ができるか分からない。伊藤さんが死んだら、あとどうなるのだろう」との思いが浮かんだそうです。「伊藤さんの後を継ぎたいとと思ったのだと思います」とお母さんが話して下さいました。
 本当にうれしいことです。私の考えが、この子どもたちに受け継がれるよう。残された日々を精一杯生きたいと思いました。

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日本吃音臨床研究会 会長・伊藤伸二 2012/06/19

第14回島根スタタリングフォーラム


 ふるさとは、今日も温かかった

 島根は私の心のふるさとのひとつです。21歳の時の初恋の人が島根の人でした。その人が住んでいた三瓶山の麓に国立青年自然の家があります。第一回のフォーラムがこの会場で、34年ぶりの再会をさせてくれた、思い出の場所でもありました。島根に入る前日の金曜日、午後4時に広島駅に、実行委員長の佐々本茂さんが迎えに来てくれます。広島から島根県の宿泊先浜田市までの車の中で、あれこれと話すのも私の楽しみのひとつです。島根県のことばの教室の現状、支援教育の現状、今、あの人はどうしているのか、転勤先はなど、何か、本当に生まれ故郷に帰ったような感慨にいつもなるのです。「吃音を治す・改善する」ことが、ことばの教室の役割だと考えることばの教室がある中で、島根のことばの教室の先生たちは、そうじゃありません。私が行くようになった以前から、島根には大石益男という、伝説的な人がいて、今の島根の特別支援教育や育児について、私に近い考えの実践をしています。35年以上も前に、私が大阪教育大学の教員の時代、全国吃音巡回相談会で松江市に行ったとき、当事松江市のことばの教室の担当者が大石さんでした。それからのつきあいなので、ずいぶんと長いものです。
 安心して、自分の考えや思いを、思い切り話すことができ、それを受け止めてくれる。それが島根のひとたちなのです。それでなのかしれません。車の中で私は自分がすごくどもっているのに気づきます。普段より、ずっとどもって、話しにくいのです。これも、ふるさとに帰った気になるひとつなのかもしれません。

 明日から、14年連続して参加させていただいている。島根の吃音親子キャンプ「島根スタタリングフォーラム」が始まる。ホテルは浜田市の繁華街、駅の近くです。夜、40分ほどホテルの周りを散歩すると、第一回のフォーラムがよみがえってきます。それが、今も続いていることがたまらなくうれしいのです。

 日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2012/06/19
 

伊藤伸二は元気です。


 久しぶりの更新でしょうか

 3月から千葉に行ったり、東京に行ったりとして報告したいことがたくさんあるのに、全く報告できずにいます。5月は東京で、日本小児科医師会で講演しましたが、その時の様子も紹介しないまま、岡山言友会の主催する吃音相談会などと、出かけていました。そして、今日からは島根県です。もう12回も続いている、どもる子どものためのキャンプ「島根スタタリングフォーラム」です。その後は、島根県の難聴言語障害教育の研修会の一日研修で話します。

 ブログの更新が滞っているのには理由があります。今、日本吃音臨床研究会のホームページをリニューアルして大改造をしています。リニューアルというものではなく、全く新しい、吃音のホームページになると思います。NPO法人大阪スタタリングプロジェクトの仲間が中心になり、プロジェクトを作って制作中です。その内容が多岐にわたりますので、その整理に追われていました。5月中にはアップしたいと考えていたのが、私の作業が進まないために、6月に入り込み、それももう中旬、早くアップしたいとあせっていますが、専門学校や大学の講義などがつづいて、なかなかすすみません。それでつい、ブログの更新が後回しになってしまいました。

 昨日、吃音ホットラインに相談の電話を下さったかたも読んで下さっていましたし、しばらく更新がないと、体調を楠しているのかと心配して、メールを下さる人もいて、やはり更新はしないとと思っています。
 とにかく、元気で動いています。ホームページあと少しで、途中ですが、アップします。ブログも更新します。どうか、今後ともよろしくお願いします。
 では、仲間のたくさんいる、ふるさとのような島根県に行ってきます。

 日本吃音臨床研究会会長 伊藤伸二 2012/06/15
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