伊藤伸二の吃音(どもり)相談室

「どもり」の語り部・伊藤伸二(日本吃音臨床研究会代表)が、吃音(どもり)について語ります。

2011年12月

1年間のご愛読、ありがとうございました

 今年も残り少なくなりました。
 ブログを読んでいただいた皆様、1年間、ありがとうございました。
 今年も、大阪吃音教室で、吃音親子サマーキャンプで、吃音ショートコースで、その他あちらこちらで、たくさんのどもる人やどもる子ども、またどもる子どもの親やことばの教室の担当者など臨床家の方々と出会うことができました。私が体験してきたこと、考えたことを聞いていただくことができ、本当にありがたく思っています。そのような場を与えていただき、幸せに思います。そのような場で感じたこと、経験したことを、このブログでまた発信できることもありがたいことでした。もっと更新したかったのですが、なかなかできませんでした。来年こそ、と思っています。
 また、来年は、日本吃音臨床研究会のホームページが生まれ変わります。仲間と共に知恵を出し合って、いいものを作ろうとがんばっています。どうぞ、ご期待下さい。
 これが、今年最後のブログです。
 「治す」波に押しつぶされず、「このままでいいよ」を伝えていきたいと思っています。
 来年もよろしくお願いします。よいお年をお迎え下さい。
                                                    伊藤 伸二

温かくて、深まりのある大阪吃音教室の忘年会

大阪忘年会 2011




12月17日は、大阪スタタリングプロジェクトの忘年会でした。
 今年は33名が参加。

 大阪の忘年会は、スピーチがメイン。30分ほど食事に専念した後、延々とひとりひとりのスピーチが続きます。ひとりひとりのスピーチに耳を傾けていて、涙がにじむこともありました。
 ひとりひとりの、誠実に、まじめな生活を続けた一年が伝わってきました。誠実でまじめであるがゆえに、今の社会はとても生きづらくなっています。時に悩み、落ち込んでも、私たちには帰る大阪スタタリングプロジェクトという港がある。だから、私は続けられるのだと、改めて思いました。
 スピーチの途中に、大阪らしいヤジやつっこみが入ることがあります。温かいヤジやつっこみは、スピーチをする人にとっていい合いの手になっているようです。そして、スピーチの後に、聞いていて思い出したことや補足やコメントや質問があちこちから入ります。それらは、話し手への応援と共感のメッセージです。 
 ひとりひとりのスピーチがあまりにもすてきだったので、途中からメモをとってもらいました。全体から見れば、ごくわずかですが、紹介しましょう。
 夕方6時に始まり、終了したのは午後10時。延々4時間も続いた、大阪スタタリングプロジェクト恒例の忘年会の様子を想像していただけることでしょう。
 

・ギャンブル依存とどもり。悩みは人を成長させるという話がさきほど出た。そのとおりだと思うけれど、一人ではダメ。仲間がいる中でこそ悩みは人を成長させると分かった。今年は、セルフヘルプグループとつながることのできたいい年だった。大きな節目の年になった。

・面接で失敗が続いて引きこもっていた。でも、就活を再開しようと思う。森田療法の講座で、気がついた。どもらないようにと考えて失敗していたんだ。どもりのためにいろいろなことを避けてばかりいた。これからは積極的に、前向きに、目的本意で取り組んでいきたい。

・吃音教室皆勤賞をねらっていたが、東日本大震災のボランティアのためにできなくなった。しかし、東北に縁ができて、ライフワークになりそうだ。昨年の吃音ショートコースで出会ったサイコドラマを、その後ずっと続けている。サイコドラマで、青春時代の自分にもう一度会いたいなあと思った。

・1989年に入会して、23年、長くお世話になった。自分がどもっているのも、他人がどもっているのも見るのが嫌だった。拒否していた。でも、今は、みんながどもっている姿を目をぱっちり開けて見ることができている。受け入れている自分がうれしく、会に感謝している。52歳の頃に出会っているが、変わることに遅すぎることはないと実感している。

・スピーチをすると聞いてはいたが、こんなにひとりひとりのスピーチがある忘年会は初めて。4月22日から参加し始めて、その後は皆勤賞。大阪吃音教室は、吃音のことはもちろん、吃音以外の、人生について考えることができた。いろいろな人としゃべって、いろいろな話を聞けた。今までの小さい世界が広がり、変化のある年だった。濃い一年だった。

・去年の忘年会の席で、詩吟の会の司会をする不安について話した。言いにくい固有名詞もあったけど、その司会はうまくいった。おかげで、またやってくれと言われた。もし、ひどくどもったら、「どもりだったので、詩吟をやっていたのだ」と言おうと思っている。

・去年の10月より参加。1年半ほど前よりどもりだした。みんなは、小さい頃からどもっていて、いろいろ悩んできて、今にいたっている。みんな強いなあと思った。途中からどもりだしたことは、受け入れるのに大変だった。

・忘年会は3回目の参加。最初の年は、新聞配達をやめて、介護の仕事に就くことになったという話をした。2回目は、だんだん慣れてきて、リーダーになるかもしれないという話をした。そして、3回目の今日は、そのリーダーの話をしたい。12月からリーダーを数回した。まだ、リーダーの入り口にいる段階だが、緊張する。未知の領域へ入っていく感じだ。みんなから勇気をもらってがんばりたいし、もしできれば、みんなに勇気が与えられたらうれしいなと思う。

・先週初めて吃音教室に行って、今日、図々しくも忘年会に参加した。どもることで馬鹿にする人もいるが、精一杯がんばっていればちゃんと見ていてくれる人もいる。どもりは、相手がどちらの人なのか、人を見分けることができるものだと思う。

・職場でいじめられ、しんどい一年だつた。悪い人もいるんだなと思ったが、仲間に救われた。毎月のようにあるレクリエーションでは楽しい時間を過ごすことができた。会社は、辞めるのはいつでも辞められる。しがみつこうと思う。

・禁煙をしているが、禁煙してみて、いろいろな不安やストレスがあるとき、気持ちが不安定になるとき、たばこに依存していたんだということに気がついた。仕事で、婚活セミナーの企画にスタッフとして参加した。小グループに分かれて、15分から20分くらいずつで交代していく。積極的にしゃべる人とそうでない人がいる。大阪吃音教室の小グループと同じでおもしろかった。

・娘のどもりがきっかけで大阪吃音教室に参加。吃音親子サマーキャンプに参加して以来、娘は、学校も、通っている劇団も楽しいと言っている。どんなところか見学しようという一回限りの参加のはずだった私が、ずっと参加している。吃音教室に行くようになって、謙虚になったと妻から言われる。吃音教室は、学びの場であり、集団の力を感じる。思いと力をつくして、これからも関わっていきたい。

北九州市立障害福祉センターの 吃音相談会

 
 しばらくブログを更新しない間に、横浜での相談会、栃木県・言語聴覚士会研修会、宇都宮市のことばの教室担当者との懇談会、そして、北九州の吃音相談会、その翌日は大阪府豊中市の特別支援教育コーディネータの研修と続いていました。このブログで書けないうちに、次の日程がきてしまい、書きそびれてしまいます。時間を前後してもなんとか書いていきたいものです。

 もう、何回、北九州のこの相談会に呼んでいただいているのか、記録をとっていないので分かりません。少なくとも15回は超えているのでしょうか。本当にありがたいことです。
 センターの二人の言語聴覚士がずっと計画をして下さっていたのですが、お二人とも一昨年、昨年で定年退職されました。しかしその後も、一人が職員として残っておられて、今年も継続して開いてくれました。昨年退職した一人も、小児科のクリニックで言語聴覚士として仕事をしておられますが、当日手伝いに来て下さいました。一年に一度ですが、吃音について、吃音を治すことにこだわらず、吃音とつきあうことをずっと実践しているふたりの言語聴覚士に会うことが、そして、情報交換できることがとてもありがたく、楽しみなのです。今年も二人に会うことができて、勇気づけられました。

 北九州市のセンターの主催なので、市政だよりなどの広報でお知らせがされています。だからなのでしょうか、毎回参加者の多いのには驚きます。今年も2部に分かれていて、吃瑤呂匹發觧劼匹發鯊仂櫃砲靴秦蠱眠顱↓局瑤蝋盥酸鍵幣紊料蠱眠颪任后子どもを対象にした相談会には40人以上、成人にも20人以上が集まって下さいました。

 受付のところでうれしい出会いがありました。小学4年生の子どもが、お母さんと通級指導教室の先生と3人で来てくれ、すぐに私を見つけて挨拶をしてくれました。「どもる君へ いま伝えたいこと」(解放出版社)をその子は読んでくれていて、その本を読んで、とても前向きで、元気になったそうで、私に会うのを楽しみにしていてくれたそうです。子どもが、私に会うのを楽しみにしてくれている、なんとうれしいことでしょう。この子と会えただけでも、北九州にきた甲斐がありました。

 今回は、映画「英国王のスピーチ」の映画を、ナラティヴセラピーの視点で整理し、子育てに生かすことを話しました。「どもっていては、 国王として失格だ」の物語から、「国民に語るべきことばをもち、どもりながらも誠実に話し、信頼される王になる」との物語につくり直すのに、家族や周りの人の大きな役割について話しました。
 吃音にまつわる、これまでにありがちな、 「どもりが治らないと、幸せにならない」という物語を、「どもりながら、楽しく幸せに生きられる」物語に書き換えようとの提案です。皆さんがとても共感して聞いていて下さったことが、感想文から分かりました。また、相談会の最後に、この小学生が代表して質問をしてくれました。

 大人の部では、「どもってはいけない場など何ひとつない」との話が中心で、日本語の発音・発声について話しました。竹内敏晴さんから学んだことを、大勢の人に伝えていけるのはうれしいことです。

 最終の新幹線のぞみ号の自由席は、誰かのコンサートがあったらしく、珍しく150パーセントの乗車率でした。指定席の一つだけあいていた席で、ゆったりと幸せな気分で、相談会を振り返っていました。

 日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二
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