伊藤伸二の吃音(どもり)相談室

「どもり」の語り部・伊藤伸二(日本吃音臨床研究会代表)が、吃音(どもり)について語ります。

2011年06月

自分を大切にする、がわからない


       今日の電話相談から

 吃音ホットラインという電話相談をしていますが、時々大阪を離れることもあるので、何度も電話をかけ直して下さる方もいらっしゃるようです。
 そういう訳で、自宅にいると毎日少なくとも3件は電話相談があります。子どもの相談が多いのですが、成人の相談も少なくありません。今日は35歳だったかの、牧師さんでした。

 これまで、人前で話すとき、どもりたくないために、吃音をコントロールすることに必死だったそうで、電話でも適度なゆっくりさで、あまりどもりません。吃音をコントロールしようとするあまり、相手とのコミュニケーションにゆき詰まり、宗教者にとって必要な、真実の相手とのかかわりができないと言います。そして、このブログでだか、「吃音を治す努力の否定」のことばに救われたと話されました。そして、吃音ワークブックや、論理療法の本、アサーションの本を注文して下さいました。本が届いて、「話すことの苦手な人のアサーション」(金子書房)を早速読んだ上での質問です。

 アサーションの「相手も自分も大切にしての自己表現」について、相手のことを大切にすることは分かるが、自分を大切にする、自分を尊重する意味がわからないとの質問なのです。
 少し驚きましたが、宗教者として、他者を相手を大切に尊重するということは、理解できるし、普段でも心がけておられることなのでしょう。常に相手を大切にする生活の中からは、相手も自分も大切にするということが、意識されてこなかったのでしょうか。自己犠牲が当たり前の生活なのでしょうか。自分を大切にしての自己表現が分からないとおっしゃるのです。
 
 とても、他者に誠実な方なのでしょうが、それに輪をかけて、どもりたくないという気持ちが強く、人と話すとき、人前で話すときは、どもらない話し方をすべきたという思い込みのために、まわりのことばかりを意識する生活習慣が身にしみているということでした。率直に、分からないことは分からないと話される態度に誠実さを感じました。
 だけど、非主張的な態度は、自分の人権を踏みにじっているだけでなく、かといって、相手の人権を尊重していることにはならない、自分を殺し、言いたいこと、感じたことも言わないためにかえって、相手に対する不誠実な態度になるのだと言うことが、最初はわかりにくいようでしたが、話していく内に、理解して下さいました。

 主張するかしないかは別にして、まず、今、この場面で自分はどんなことを考え、どのように感じているのか、まず、感じること、気づくことが、自分を大切にする第一歩だと話しました。ところが、相手との関わりで、どもるかどもらないかに多くの注意がいっているために、コミュニケーションの場面で、自分の気持ちに気づくことがおろそかになっていたことに、彼は気づいて下さいました。
 彼なりに、吃音をコントロールしていることは悪くはないのですが、それが、どもることを相手がどう思うかだけに意識がいくと、真実の自分を取り戻すことが難しいと考え、「どもるときは、自然にどもるにまかせる」こと。あまり、吃音をコントロールすることを考えず、むしろ、どもった方が、相手は信頼してくれるかもしれないよというような、話になりました。

 自分のことしか、大切に考えられない現代社会にあって、宗教者という職業だからということを差し引いても、とても誠実な方でした。アサーションや論理療法、そして、日本吃音臨床研究会の会員になって下さったので、毎月送られる、月刊紙「スタタリング・ナウ」を読んで、いろいろと勉強していくことになりました。
 「いい牧師さんになれるよ、きっと」でしめくくって、電話を終わりました。
 さわやかな気持ちになった、吃音ホットラインの電話でした。

 2011/06/26
 日本吃音臨床研究会 伊藤伸二

第13回 島根スタタリングフォーラム

      充実していた、島根スタタリングフォーラム

 相も変わらず、約束が守れず、ブログの更新できませんでした。すみません。
 オオカミ少年のようで信用をなくしそうですが、こりずに、覗いて下さい。これからは、更新します。・・と書いてもこれまでの、空白の実績があるので信用されませんね。

 昨年末から、いろいろのところに出かけて、いろんなことがありました。時系列で書かなくてはと考えると、前の分が書いていないと、次が書けなくなくなります。私にとっては時間の流れがあっても、読んで下さる皆さんには、そのようなことはあまり関係ないことだろうと思いますので、これからはあまり気にせずに書きたいと思います。昨年末の出来事も、そのうち書きたいと思います。

 今回は、先週末行われた、島根スタタリングフォーラムと、翌日の島根県・難聴言語障害研究会の一日研修会について書きます。今回は、フォーラムです。

 すごいですね。今年で13回です。
 会場が第一回の開催地である、国立三瓶少年自然の家でした。
 島根スタタリングフォーラムの出発の地というだけでなく、私の初恋の人との34年ぶりの出会いをつくってくれたところです。第一回以降は別の会場で、今回は13年ぶりなのです。車で会場に向かう途中、はっきりとは覚えていないものの、なんともいえない、懐かしい感慨がひろがりました。第一回の終了後、スタッフと大成功の余韻にひたりながら、「一回きりではもったいない、是非来年も開こう」と話し合った、打ち上げ会のレストランの前を通り過ぎた時には、はっきりと、その時のことが思い出されました。

 島根県の親の会の30周年記念でひらかれた、どもるこどものキャンプ。最初企画した人は、一回きりの行事だと考えていたようでした。ところが偶然に運営をまかされた宇野正一さんとその仲間は、フォーラムが終わって、うれしい、晴れ晴れとした顔でかえっていくどもる子どもの親と子の姿をみて、一回きりで終わらせたくないとの思いがわき上がってきたそうです。そして、興奮状態での打ち上げ会で、「よし、来年もやろう」。それが13年も続いているのです。もちろん私を、親の担当として、13年続けて講師として招いて下さっています。島根スタタリングフォーラムが続く限り、私を招いていただきたいと私は願っているのです。

 今回のフォーラムで特に目立ったのは、子どもたちの話し合いの充実でした。私は、親の話し合い、学習会担当なので直接その場にいなかったのですが、担当者が小学生のグループの話し合いが、とても深いものだったと報告してくれました。どのような話し合いだったか、機会があれば少しでも紹介できたらと考えています。
 夏の、私たちの滋賀の吃音親子サマーキャンプのように、島根でも、子どもの話し合いを大きな柱にしています。最初の頃は話し合いがあまりできない状態だったのですが、複数回参加する子どもが、話し合いをリードすること、フォ−ラムでは吃音について話し合いをするものだということが、定着してきたのでしょう。

 もうひとつの特徴は、私の担当する親グループの活動です。この活動はすべての進行を私にまかされているのですが、毎年、参加者によってスタイルが変わっていきます。親のグループも、13年の歴史の積み重ねで、進化していきました。最初のころは子どもの将来が不安で、涙、涙の話し合いになることもあったのですが、これも、回を重ねるにつれて、親もどっしりとかまえることができるようになりました。
 小学一年の初めて参加の時、「どもりは一生なおらない」と、早朝登山の山頂で、周りに引きづられて、一緒に言っている我が子の姿に、びっくりし血相をかえて私に不安を訴えた母親の子どもが7年目になり、もう中学生です。そのときのことを思い出しながら、ずいぶん親子共にかわったと、その親は話をされました。その人はも今ことばの教室でお手伝いをしていて、翌日の教師の研修会にも参加されていました。今回は、吃音だからというよりも、いわゆるすべての子どもに通じる「子育て」について、私は時間をさいて話しました。

 もうひとつ、どもる子ども、親、スタッフの全参加者の前で、30分私が話す時間があります。大人も子どもも聞いているなかで、どこに焦点をあてるのかが、とても難しいのですが、今年は、映画「英国王のスピーチ」について、
国王の子どもである、兄と、弟の劣等感について話しました。どもる弟はどもらない兄に対して劣等感をもち、兄は、自分にないまじめさ、誠実さ、責任感をもっている、どもる弟に劣等感をもち、結局は、兄が劣等感から、王位を捨て、どもる弟が逃げなかったという話をしました。
 ふたりの子どもが、作文の中で「英国王のスピーチ」について書いてくれていたので、少しは伝わったのかと、うれしい気持ちになりました。

 来年は14回。どんな出会いがあるか、今から楽しみです。

                             日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二
 
 吃音に関する書籍の紹介や、吃音親子サマーキャンプ、吃音ショートコースなどの行事案内掲載の「スタタリング・ナウ案内号」と、「英国王のスピーチ」を話題にした見本紙(脚本家、主演者へのインタビュー、落語家の桂文福さんなといろんな人の感想文掲載)をご希望の方にお送りしています。
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