この日の初参加者は、家族と共に参加しました。父親、母親、妹の3人が付き添って参加しました。大阪吃音教室では、このように、親やきょうだい、友人、上司など、本人とかかわりのある人が一緒に参加することがあります。特に初参加の場合は、成人であったとしても、できれば家族の参加をすすめています。家族が行く場所がどのようなところか知っておいてもらうことで、本人が安心して参加できると思うからです。本人が参加しなくなっても、きょうだいや親だけが参加し続けることもあります。講座の内容は、どもらないその人たちにとっても、自分の人生を振り返るいい機会になるようです。
 今回の「どもり内観」は、新しく参加した人にとって刺激的だったように思います。
 
《どもりさん》に対して「して返したこと」

・会社の同僚に、吃音を公表した。
・どもりだからだめだと思われるのが嫌だから、仕事の出来る人間になろうと努力した。
・どもりはこんなにおもしろいのだと、いろんな人に話した。
・どもりを隠さず、堂々とどもってあげている。
・どもりながら、人に笑顔で接することで、どもりにお返しをした。
・人からどもりを指摘された時、ごまかすのではなく、肯定してあげた。

伊藤 聞き返されたり、どもることを指摘されることは、嫌なことと思わずに、チャンスと考えたい。わざわざ自分から言うよりも、指摘された時のほうが吃音を公表しやすい。
 僕たちの大阪吃音教室の例会や、吃音親子サマーキャンプのスタッフとして参加していることが、どもりに対するお返しだと思う。どもりを否定的に考え、どもっているとかわいそうだと思っている人たちに対して、どもっていても大丈夫、吃音について考えることで、いろんなことを勉強する機会になる。「どもりっていいものなんだぞ」、「どもりながら豊かに生きることができるんだぞ」と、どもる子どもや、社会一般に伝えることになり、どもりさんに対していっぱいお返しをしてると思う。

《どもりさん》に「迷惑をかけたこと」

・しなければならないことで、うまくできなかった時、できないのは全てどもりのせいにしてた。
・若い頃だけど、どもりをなくしてしまおうと思った。
・どもりで悩んでいる時、どもりってこんなに悲惨だということを他人に印象付けた。
・どもるくらいなら、他に障害があったほうがマシだと思ったことがある。
・音読で、先生が順番に当てていく時、先生は僕を当てずに飛ばした。どもったらかわいそうだと思ったのだろうけれど、担任の先生に余計な気遣いをさせた。
伊藤 どもりで悩んでいた時は、自分のどもりを蔑み、虐げ、呪い、否定し、隠し逃げ、どもりさんに悪いことをしたなあと思う。だから、許しを請うというか、かけがえのない自分のパートナーなんだから、一生運れ添う相手として大切にしたいなあとしみじみと思うようになった。

《参加者感想》
・心が軽くなった。
・これからも吃音と仲良くつき合いたいと思えた。
・これまで吃音を否定して来たけれど、今は少し、そうではなくなった。
・今、気持ちが温かくなり、ほんわかして、不思議な感じがする。
・もっと自分のどもりを大切にしたい。
・吃音がマイナス面だけではないと知って、とても勉強になった。(付き添って参加した母親)
・気持ちが楽になった。
・自分自身は吃音をまだ否定的に思っているが、みんなの話を聞いて、すがすがしい思いがしている。
・否定してばかりで、吃音に悪かったなと思う。
・単なるプラス思考ではなく、事実として吃音には良いところがたくさんあることが分かった。
・自分には「どもりさん」という友だちがいると分かって、うれしい。
・こんなことを初めて考えた。自分とは別にもう一人の自分がいるような感じがしている。
・昔は兄の吃音を馬鹿にしていたが、馬鹿にしていた自分が恥ずかしい。(付き添って参加した妹)
・今日は初めて来て、新しいことを知ることができた。参加して良かった。(付き添って参加した父親)   (どもり内観の報告 了) 2006.2.24


日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2020/11/30