どもる人の電話とのつき合い方

 これは、日本に限らず世界中のどもる人のテーマです。大阪吃音教室では、「吃音と電話」のテーマはいつも話し合われますが、「電話とのつき合い方の3段階活用」として、僕たちの中では定着しています。

 第1段階の電話をかける前は、森田療法の活用。
 第2段階の電話をかけている最中は、「竹内敏晴からだとことばのレッスン」で学んできた日本語レッスンの基本を生かすことです。
 第3段階の電話をかけた後、ひどくどもったり、失敗したと思ったときは、自分を助けるための対処法として、論理療法や認知行動療法が有効です。
 では、大阪吃音教室で話された、第2段階と、第3段階を紹介します。

 
大阪吃音教室報告
《かけている時→どんな工夫ができるだろう》

◎立ってする方がいい。体を動かしてする方がいい。
◎普段話しているスピードよりは、かなりゆっくり目に話している。音声だけなので、電話は「ゆっくり目に話す」ことがマナーだと考えている。
◎第一声が出ないから、ペンを持ち、字を書きながらだったら比較的出やすい。ペンを持ったら出るという安心感がある。
◎周りがシーンとしていて聞かれているのが一番プレッシャーだから、ざわついている所でする。ウォーミングアップとして、肩のはらない相手にまずかけてみてからする。
◎電話というものは、相手も半分喋るのだから、まずしっかり聞くことに集中する。相手が話したとき、「ハイハイ」を多用する。聞いているのだということを相手に伝えることになるし、自分も声を出していることになる。
◎立って電話をすることが多く、喋るのに時間がかかることより、どもるために足を踏ん張って電話する姿がおかしいとよく言われるのが気になる。
◎そういうことには慣れた。人から見たら、なんで足をトントンしているのかと思われるけど、私はこんなんやということが分かったら気にならなくなる。
◎メモをとるようにしている。書きながら電話するのがいい。「切らないで」と言って電話するなど、とにかくまずは声を出そう。

《かけた後→気持ちをどう立て直すか》

◎次の用事をみつけて、すぐにその用事をする。失敗したことを考えないようにする。目の前の仕事をさがすようにしている。
◎電話をし終わると、汗をかくから、まず手を洗い、ついでに顔も洗ってすっきりさせる。体をすっきりするさせたついでに、気分もすっきりさせる。
◎電話を10回しようと思ううちの1回くらいしか実際にはできなくても、1回でも電話できたということで、いい気分になる。
◎どもって、どもって話したことは事実だけど、目的はそれなりに達成できたことで、満足する。100%流暢に伝えなければいけないと目標を定めるとだめだけど、流暢性の水準をかなり落とすと随分楽になる。
◎どもりなんだから、どもって電話をするのは、当たり前だと考える。
◎嫌な気分を跳ね返すために、気分転換をする。
◎嫌な気分を立て直さないと、次の《かける前》にいかない。また、電話をとろうという気持ちになるよう、どもった後の「みじめ」をうまく処理をする必要がある。これには論理療法が役立つ。どもったからといって、切られたからといって会社をクビにはならない。「電話くらいまともにできないのか」などと周りの人に言われた言葉に縛られているのだから、言葉には言葉で対抗したい。電話に関係する、自分を支える言葉を作っていきたいと思う。
◎どもって喋るのは嫌だ。親からも、否定的な考え方を言われ、人前でどもって喋るなと言われた。喋らない方がいいと思ってきた。しかし、社会人になって生活していくうちに、どもってもつまっても、喋らないといけなくなった。喋らなくてもいいという状態に自分を置けば簡単だけど、それでは進歩はない。どうなってもいいから、喋っていかなくては。18歳から19歳の頃に、考え方を変えた。どんどん喋っていこうと変えた。きっかけは、自分は何もない人間だけど、何かないかなあと考えた。喋ることは好きだったので、人に受けるかな、おもしろくなるかなと、笑いの方にいった。ギャグの方に自分をもっていった。不安でいっぱいなんだけど、自分をだんだんと訓練していった。

◎質問です。吃音を病気とみるか、癖とみるかについてです。癖として自分もみて、相手にもみてもらうと楽なんですが、こういう考え方はどうでしょうか。
◎癖と思いたい。思ってしまえば、そこでどもりの悩みは解決したといえるのではないか。自分も相手も受け入れていればね。癖ってそういうものでしょう。
◎ジョーク、ユーモアを武器として使っていくのも素晴らしい。
◎癖というよりか、どもることが自分の本質だと思ってしまえばいい。癖なら、まだ自分の横に置いているみたい。どもる人間そのものが自分だと思えたら受け入れたことになるのではないか。癖というより個性だな。
◎どもりをマイナスのものと考える癖がいけない。世間の目や自分の思惑にしばられている癖がいけない。どもりの症状の癖よりも、みっともないとか、弱点と思うことがしばられていることが癖だろう。それをなんとかとっていきたい。


日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2020/7/29