大阪吃音教室〜どもる人の、電話とのつきあい方

 どもる人にとって、困りごとの一番が電話です。大阪吃音教室でも、毎年の講座スケジュールに「どもる人の、電話とのつきあい方」はかならず入ります。NPO法人大阪スタタリングプロジェクトの機関紙「新生」に、そのときの様子が掲載されていましたので、2回に分けて紹介します。大阪吃音教室では電話を次の3段階に分けて考えています。

 1 電話をかける前 2 電話をしている最中 3 電話をし終わった後
 

大阪吃音教室だより〜電話とどうつき合うか〜(1)

 電話が苦手だという人は多い。それは、どもる私たちだけでなく、就職したばかりの新人の会社員の多くが、電話で困っているということからも分かる。かといって、今、ここにおもちゃの電話機をもってきて、電話の練習をいくらしてもまったく意味がない。
 また、電話は日本人だけでなく、世界中のみんなが困ってきた。あの著名な言語病理学者であるチャールズ・ヴァン・ライパーも電話がとれないため、困ったという。イギリスではどもる人に、長距離電話料金の割り引きをするべきだとの主張が国会で取り上げられ論議された。割り引きは実現しなかったが、どもる人の電話に対する恐れや、不利な点は、理解がすすんだのではないだろうか。
 今日の講座では、《電話をかける前》《かけている時》《かけた後》の3つに分けて、その対処法をみんなで考えていきたい。

☆アンケート調査  参加者26人
・かける前、不安だなと思う人…参加者のほぼ全員
・かけたいと思ったけど、避けたことのある人…13人
・かけなければいけない時、避けたことのある人…4人
・相手に切られたことのある人…10人
・相手にどなられたことのある人…4人
・かけている時、聞いている周りの人から苦情を言われたことのある人…8人

☆相手にどなられた時の様子について
・「お前、誰や。何言うてるんや」と言われて、なおさら声が出なくなった。「すみません」と言って切ったと思う。
・「何言うてるねん」と言われて、向こうから切られた。
・20歳頃、「電話くらいちゃんと喋らんかい。誰や、名前くらいちゃんと言え」と言われた。

☆相手に切られた時の様子について
・相手はクール。「もしもし」と言っても声が出ないからプチンと切ってしまう。

 現代の世の中、電話は避けられないので、どうつき合うか、みんなで知恵を出し合おう。

《かける前→不安や恐れとどうつき合うか→森田療法の考え方で》

◎ずっと電話は怖かったけど、今は電話を一日10本くらいしている。森田療法を学んだおかげで、何も考えず、受話器をとるようにしている。もし、一度切られたとしても3回くらい続けてかければ、相手も「どもる人間」からの電話だとわかり、それが何回かあると、僕がどもっているのを分かってくれ、聞いてくれる。とにかくめげないこと。
◎どもることを自分の弱点と考えていたら、電話はできない。弱点ではないと自分に言い聞かせる。そうすると、なんとか喋れる。暗示を与えるということ。
◎久しぶりに、父と母とに最近電話したとき、母から「最近ひどいなあ」と言われた。普通の会話と電話と、交互に周期があるようだ。自分はどもりじゃないんだと言い聞かせ、全く考えないで白紙にして電話をするようにしている。
◎周りが静かな所でかけるようにしている。周りがうるさいと大きな声を出すから、かえって力が入るから。
◎僕は、周りがざわついている方が電話しやすい。
◎やかましい所だと、自分がどもってもそれをごまかすことができる。最近の携帯電話は便利だ。固定電話よりずっと話しやすい。
伊藤 電話が鳴ったら、まず話すチャンスだと思って、即とる、と決めておく。どもったからといって、話す内容がちゃんと伝われば、仕事に差し障りはないし、首になるわけじゃないとか、考え方を整理しておくといい。
◎予期不安で思い描いている最悪の状態というのは、ガチャンと切られることだ。しかし、現実にはそうされることはそれほど多いことではない。多少、出にくくても、なんとかなるもんやと考えていいのでは。
◎自分が、伝えなければならないこと、伝えたいことからは逃げないこと。
◎電話を好きになることだと思う。電話のいい面をいっぱい認めていくことだ。
伊藤 相手がどもっていたら切るという人は、イラついて待つことができない人だ。仕事のできない人だと思えばいい。サービス業や電話交換手など、電話を受けることを仕事にしているような人は相手がいくらどもっても切らないと思う。切られることを恐れることはない。森田療法の考えを取り入れて、不安があっても恐れがあっても、電話をしたいとき、しなければいけないことはするということが大事。


日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2020/7/28