群馬吃音キャンプ 若い人たちとの対話 7       
    部活と吃音


参加者 高校の部活の大会で、僕と組んでいる同級生の子が結構おとなしく、声がとても小さい。大会で審判をやるときに、その子がやると、全然伝わらないし、僕がするとどもるので時間が延びる。全然伝わらないよりは、延びてもいいかなと思っているんですけど、


群馬キャンプ 集合写真伊藤 おもしろいね。相方はそんなに声が小さいのか。
参加者 声がとても小さいです。
伊藤 あなたは声は大きいけど、どもるわけだ。
参加者 どもって、時間がどんどん押してしまって、
伊藤 何の審判だっけ。
参加者 部活は、テニスです。
伊藤 テニスか。『ストレスや苦手とつきあうための認知療法・認知行動療法』(金子書房)という本を書いたけれど、その中に、同じことが出てくる。僕が参加しているどもる人のグループの大阪吃音教室に、女子高校生が愛知県から参加した。彼女もテニス部なんだ。試合に勝ち残ると、審判をしなきゃいけない。その審判が嫌で、部活をやめようと考えているけれど、私以外のどもる人ならどう考えるか聞きたいと参加しました。ちょうど認知行動療法がテーマの吃音教室だったので、彼女の問題を認知行動療法で考えた。そのときに、いろんなアイデアが出て、審判ができないからといって、テニスを辞めるのはもったいないの結論になった。彼女はテニス部は辞めないと決心して、帰って行った。よかったら本を読んで下さい。
 テニスを辞めるか、審判を辞めるかになったら、君には、テニスを辞める選択は全然ないんだよね。
参加者 ないです。
伊藤 だったら、時間が延びても、やればいい。彼女の場合は、他に人がいたので、自分がしなければならないことはないから、誰かにしてもらう、が一つの選択。それと、どもってどもって審判をしてみて、それで試合がうまくいかなくて、彼女に審判をさせられないと言われたら、ラッキーで、他の人間に代わってもらえばいい。ふたつの選択肢のどちらかにすると彼女は言い、テニス部を辞める選択肢はなくなったんだ。もし、君がどもってどもって、間があっても、進行できるのなら、成功していることだから、何の問題もない。でも、審判で長く間があくと、なんかテニスのテンポが悪くなるのかな。
参加者 流れが悪くなって、選手にちょっと嫌みを言われます。
伊藤 迷惑を掛けるのね。じゃ、そのときはどうしたらいいのか。ペアを組んでいるおとなしい男はどもらないんだよね。
参加者 どもらないです。
伊藤 じゃ、そいつをひっぱたいて、もっと声を大きくしろと言えばいい。おとなしいんだから、代わりに彼にやらせる。なんで彼はそんなに声が小さいの?
参加者 多分、元からおとなしい子だから、
伊藤 彼はテニスが好きなのか。
参加者 はい。
伊藤 テニスをやりたいのか。
参加者 はい。
伊藤 じゃ、相談をして、テニスをやりたいんだったら、もっと大きな声を出せと彼に迫って、審判をさせる方向もひとつだ。そして、君がテンポよくできないことで周りに迷惑をかけると思うんだったら、他のメンバーたちに相談して、僕、いくらでも審判するけど、僕がすると間が空いて、うまくいかないけど、それでもいいかと聞いて、みんながそれでもいいと言ったら、すればいい。テンポが悪かったら、流れが悪くなって困ると言われたら、じゃ、僕はしないから、他の人にやってほしいと言う。審判する候補は、おとなしい男以外にもいるだろう。ゼロではないんやろ。
参加者 ゼロではないです。
伊藤 なら、君はテニスがやりたいんだから、テニスはやるけど、審判はやらない。それとも、ペアの相手に声を大きく出させる。そんなところかな。どっちでもいいので、がんばってみな。そして大事なことは、テニスは絶対辞めちゃだめだよ。
参加者 はい。
伊藤 僕なんて、自己紹介が嫌だというだけで、大好きな卓球部を辞めてしまって、その後の高校生活がほんとにつまらなかった。だから、どんなことがあっても、君がテニスが好きなら辞めないで、ぜひ続けてほしい。どんな手をつかっても、辞めない。おとなしい相方に発声練習をさせて、声を大きくさせる。それとも、迷惑をかけていいなら、君がする。それで困るなら、代わってもらう。いいかな。
参加者 はい、ありがとうございます。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2019/12/29