第17回 吃音キャンプOKAYAMA PART1
子どもからの質問に答えて〜小学校のとき、どんな子どもでしたか?

 滋賀県での僕たちの吃音親子サマーキャンプが今年30回目を迎えましたが、各地でのキャンプも、かなり長く続いています。11月2・3日の島根スタタリングフォーラムは、今年21回目です。そして、先日終わった岡山のキャンプは、17回目でした。
 ことばの教室の担当者がめまぐるしく替わるという中で、これほど長く続いているというのは、本当に珍しいことかもしれません。事務局をつないで下さっている関係者の皆さんに、心から感謝しています。

 岡山のキャンプは、当初1泊2日でしたが、何年か前からいろいろな事情で1日だけのデイキャンプになりました。子どもや保護者との話し合い、ハイキング等のレクレーションなど、毎年、たくさんのスタッフが参加し、工夫してキャンプを続けてくれています。
 その中に、子どもたちと僕の出会いというコーナーがあります。事前に質問を募り、それをことばの教室の担当者である友浦さんが読み上げていってくれました。
 ちょっと整理しましたが、ライブ感覚で様子をお届けします。

友浦 伊藤さんのことを紹介します。通級で、吃音のことを研究している博士がいるよと習っていると思いますが、その博士が伊藤さんです。私も、吃音のことを勉強しているんだけど、世界中で一番詳しく吃音のことを知っているのが伊藤さんだと思います。吃音のことを伊藤さんに聞いてみます。伊藤さん、お願いします。
岡山キャンプ 質問に答えて
伊藤 合点承知の助。
友浦 まず一つ目の質問です。伊藤さんは、どんな小学生だったのですか。
伊藤 何年生?
友浦 3年生か、4年生くらいがいいかな。
伊藤 僕の小学生時代は、2年生の秋を境に、前と後とは全然違います。小学校2年生の秋までは、ものすごいやんちゃで、相撲が強くて、成績もよくて、逆立ちして300メートルくらい歩けるくらい、いろんなことができて、明るかったんだけど、小学2年生の秋から、別人28号になりました。がらっと変わり、ものすごくどもりに悩むようになりました。何があったと思いますか。分かる人? 何があったから、どもりに悩み始めたか。
子ども どもりが多くなったから?
伊藤 どもる量が多くなったから?。うん。他には?
子ども 先生に叱られたから?
伊藤 はい。ほかに?
子ども どもって、みんなに笑われたから?
伊藤 なるほど。
子ども やんちゃだったんだけど、どもりが多くなったから、やんちゃじゃなくなった。
伊藤 おとなしくなった? なるほど、おもしろいね。
 学芸会、今でいう学習発表会で、「浦島太郎」の劇をしたんだけど、僕は、どもってもちゃんとせりふのある役、たとえば、浦島太郎かカメか村長さんか、せりふの多い役をやりたかったんだけど、させてもらえなかった。その理由は、どもるから。なんで?と思うよねえ。
子ども どもるだけでねえ。
伊藤 どもる伊藤少年が、劇のせりふでどもると、かわいそうだから、どもらないように、3人で、声をそろえて「さよならー、カメ」と言う役だった。他の人はみんな、ひとりひとりせりふがあるのに、僕たち3人は、声をそろえて「さよならー、カメ」という役だった。75歳になっても覚えているくらい、嫌な思い出です。そのときに初めて、どもりはだめなことなのか、どもっていたらだめなのかと思った。そう思ってしまうと、学芸会の練習が始まり、本番が終わる頃には、全く別の人間のようになっていた。あれだけ明るくて元気で活発で、成績も良くて勉強もしていたのに、もう絶対手も挙げないし、音読もしないし、友だちとも遊ばないし、そんな子になってしまった。すごいよね。それはみんな、教師の配慮ですよ。セリフのある役でどもって失敗したら、かわいそうだから、どもらないですむように、3人で声をそろえて言う。僕は担任教師の合理的配慮で、人生を狂わされたんです。
友浦 劇でそんなことあったら、嫌だよね、みんな。
子ども うん。
伊藤 どもってても、やりたいよね。
友浦 やりたいよね。
子ども どもりながら、せりふ言っても大丈夫だよ。
子ども どもったら、もう一回やり直せばいい。
伊藤 何度でもやり直しができるよね。
友浦 どもりながら言えばいいよね。
伊藤 どもるからといって、一人で言わせないってふざけてるよね。
友浦 ちょっと、その先生、勘違いしてるよね。残念だったね。
子ども したかったよね。
伊藤 それともうひとつ。小学6年生のとき、児童会の会長に立候補させられた。そのときは、僕は、成績も悪くなっているし、人気もなくなってるし、あれはいじめだね。
友浦 ですか?
伊藤 だって、立候補のときは、みんなの前で立候補の挨拶しないといけない。その挨拶でどもる僕をからかおうと思ったと僕は思っていた。そのとき、学級の代表として伊藤を立候補させるかどうかという話し合いを学級でしたいたんだけど、それがとても嫌だったのをすごく覚えている。実際に、立候補させられて、みんなの前で、どもってどもって挨拶したのだと思うけれど、そのことは全然覚えていない。でも、学級会で、どもっている伊藤はかわいそうだ、あんなにどもっているのに会長なんて無理だ、そんなことを話し合っているときの様子や、雰囲気はよく覚えていて、あれが、小学校で一番嫌な体験だった。
友浦 みんな、伊藤さんのこんな話を聞いて、自分だったらどうか、どう思うか、通級の先生と話してみてね。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2019/10/31