吃音の豊かな世界を紡いで30年 

 今年の参加者は、地元・滋賀県や大阪府など近畿地方だけでなく、遠く南は、沖縄、鹿児島、大分、高知から、北は宮城、千葉、東京、埼玉、神奈川、そして東海地方の愛知、三重などまで、114名の参加でした。30年欠かさず続けてきたことになります。ひとつの節目を感じ、終わった今も、その余韻に浸っています。
 
 8月23日、キャンプ初日は、朝から雨が降り、雨脚がひどい時もありました。チャーターバスを降りてから荒神山自然の家まで、大きな荷物をもって移動するのは大変だなあと思っていたら、バスが着いたときには、からっと雨があがって晴れ間も見えました。なつかしい顔、初めての顔、様々な思いをもった参加者を迎え、いよいよ30回の吃音親子サマーキャンプがスタートしました。

 いつもと変わらないプログラムです。入所式を行い、スタッフの顔合わせをしました。スタッフも、全国から集まってきているので、事前に実行委員会をもつことができません。自己紹介をし、1日目の内容について確認をします。そして、開会の集いです。全参加者を紹介しました。その後、出会いの広場で、いきなり初参加者も含めてグループに分かれ、パフォーマンスを話し合い、練習し、披露しました。そのころには、たった1時間くらいなのに、参加者がすっとうちとけていました。初めての参加者の顔がほころんできたのが印象的でした。中には、このような出会いの広場を苦手にする人がいるものですが、無理強いしないこともあってか、他の所では考えられないことが起こっています。

 夕食の後は、このキャンプが大切にしている90分の話し合いです。年代ごとにグループを分け、どもる大人とことばの教室担当者か言語聴覚士がファシリテーターとして入ります。保護者も4グループに分かれました。
 午後8時には、全員が集合して、キャンプのもうひとつの柱である演劇の、スタッフによる見本の上演でした。事前に合宿で練習した芝居をみんなの前で披露します。どもりながら、確かに相手に届く声で表現しているスタッフの姿は、どもる子どもにもその保護者にとっても、どもりながらもなんとかやっていけるとの見本を見るようで、大きな安心感を与えるようでした。
 あわただしく、1日目が終わります。夜のスタッフ会議では、どもる子どものこと、保護者のこと、そして自分のこと、時間をオーバーして、参加者の物語が語られました。いいスタートが切れたようです。

 今回は、30回記念として、最終日の午後に、「吃音親子サマーキャンプとは何か」というテーマで、30年を振り返る時間を作りました。竹内敏晴さんが亡くなってから、芝居の担当をしてくれている東京学芸大学教職大学院准教授の渡辺貴裕さんをファシリテーターに、大阪スタタリングプロジェクト会長の東野晃之さん、サマーキャンプ卒業生の浜津光介さん、千葉市立院内小学校ことばの教室担当者の渡邉美穂さん、そして、僕が前に出て、サマーキャンプについて、参加者から募った質問・疑問に答えました。改めてサマーキャンプの中で起こっている素敵なことを確認することができました。

 不思議なのは、参加者やスタッフが変わるのに、終わったときに、毎年、満足できるキャンプだったと思えることです。今年も大満足のキャンプでした。それは、参加者が違っても、スタッフとして不動のメンバーがいるからでしょう。
 大阪スタタリングプロジェクトのメンバー、ことばの教室の担当者、言語聴覚士、吃音親子サマーキャンプの卒業生、卒業生の保護者、ことばの教室の元担当者など、年中行事のように思い、ずっと続けて参加してくれている人がたくさんいます。仲間のありがたさを感じました。そんな、安心できるメンバーがしっかりと脇を固めているから、参加者に変動があっても、乗り切れるのだと思います。今年も全国から48名ものスタッフです。たくさんの人の力が集まって、吃音親子サマーキャンプが開催できていること、本当にありがたく思います。

 話し合いや作文、劇の練習や上演を通して、自分や自分の吃音と向き合っている子どもたちに、今年もまた励まされました。「人に与えられた楽しさではなく、自分の中にじわじわと感じる楽しさ」がたくさん溢れていたサマーキャンプでした。

朝日新聞キャンプ JPEG 3 最終日の8月25日、朝日新聞朝刊に、キャンプのことが大きく掲載されました。キャンプ会場の近くのふたつのコンビニで「朝日新聞」を買い占め、朝の集いの時に紹介しました。みんなびっくりし、大喜びでした。
 このキャンプに参加し、取材をして下さっていた朝日新聞の記者が、リアルタイムで、キャンプの様子を伝えて下さいました。写真入りの社会面での大きな記事、30回という節目でもあり、とてもうれしかったです。どもりながらも豊かに生きている子どもや大人がいるということを発信できました。

 これから少しずつ、キャンプで起こっていたことについて、報告していきます。
 これまでに参加した人たちの声を届けたいと願っています。
 朝日新聞デジタル版でも配信しています。たくさんのところに拡散していただければうれしいです。
http://www.asahi.com/articles/ASM8T6W1SM8TPTFC001.html

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2019/8/28