島根県研修報告 3

 島根県には、島根スタタリングフォーラムで毎年来ていますが、島根県・難聴言語障害教育研究会での研修で講義をするのは4年ぶりくらいでしょうか。大石益男さんの思想が根付く島根は、僕にとってとても話しやすい県のひとつです。
 今回の話の中心は、精神医療・福祉の世界では大転換が起こっているのに、なぜ吃音の世界では大転換が起こらないのかとの疑問をなげかけ、大転換を作り出した、健康生成論、レジリエンス、ポジティブ心理学などと吃音との関係を紹介することにしています。
島根聴言研 パワポスクリーン ところが実は、1976年に、僕はすでに大転換を起こしているのです。「吃音者宣言」です。「吃音を治す・改善する」が、どもる人、どもる子どもにとって、幸せにつながる道だと、誰もが信じて疑わなかった大前提を転換することを、僕は提案したのです。それが、「吃音を治す努力の否定」と「吃音者宣言」です。構想から発表するまでは半世紀も前のことですが、僕は、今でもその考え方は全く変わらないどころか、ますます一つの方向としては正しかったと信じています。なぜなら、50年の風雪を耐えて、今まだ残っていることになるからです。
島根聴言研 会場全体みんな 僕は、今までほとんど語ることがなかった「吃音者宣言」について、再び語るようになりました。それは、1970年から1980年代という同じ時期に提案された、アーロン・アントノフスキーの「健康生成論」が40年以上の歳月を経て、今再び脚光を浴びているからです。また、レジリエンスも最近注目され、当事者研究、オープンダイアローグなど、僕がこれまで考え、実践してきたことと、とても似ていることが、集中して紹介されるようになったからです。
 とても傲慢に聞こえるかもしれませんが、1965年に創立したセルフヘルプグループ・言友会の活動の中で、50年前に構想し、発表した「吃音を治す努力の否定」「吃音者宣言」の路線が、吃音の世界では無視され、軽視されてきましたが、精神医療、福祉、臨床心理などの世界では、間違っていなかったことが証明されたように思えるのです。
島根聴言研 伸二講演中 吃音について語りながら、健康生成論やレジリエンス、ナラティヴ・アプローチや当事者研究、オープンダイアローグなどについても話せることはとてもありがたいことです。
島根聴言研 書籍販売 「親・教師・言語聴覚士のための吃音講習会」は今年で8回目になり、これまで、ナラティヴ・アプローチ、レジリエンス、当事者研究、オープンダイアローグ、哲学的対話などをテーマにしてきました。今後、「健康生成論」についても話していきますが、「健康生成論」について公の場で話すのは今回が初めてです。島根県の支援教育にあたる教員のみなさんが、どう受け止めて下さるかとても楽しみで、研修会資料を用意しました。
 今回の島根県の報告を3日連続でする予定でしたが、突然舞い込んだ仕事などで、できませんでした。今日から「新・吃音ショートコース」が2日間の日程で始まります。それが終わってから、もう一度仕切り直して報告したいと思います。
 21年間様々な領域から講師を招いて学んできた「吃音ショートコース」を終えて、「新・吃音ショートコース」では、参加者ひとりひとりのテーマについて、じっくりと、当事者研究風に、ナラティヴ・アプローチ的に、オープンダイアローグ的に話し合います。参加申し込み書の中には、それぞれ、今後の人生に影響しそうな、人生の大きなテーマが書かれています。気合いを入れて、しかし気負わずに、楽しく向き合っていこうと思います。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2019/6/15