国会議事堂前で、少数派の仲間と共に

 この年末年始、東京で過ごすことを決めた目的のひとつに、1月3日の国会前の集まりへの参加がありました。これは、88歳の作家、澤地久枝さん提案による「毎月3日午後1時に『アベ政治を許さない』を掲げて、「対話」をまったくしない、「アベ政治を許さない」静かな抗議の集まりです。
 2年前も、年末年始を東京で過ごしたのですが、1月3日の国会前での集まりについては、大阪に帰ってから、落合恵子さんが書かれたコラムで知りました。そのコラムには、「松元ヒロさんも来られていました」とありました。もしかしたらヒロさんに会えるかもしれないと思いながら、ぜひ、次回はと思っていたので、今日は、満を持して国会正面入り口に行きました。
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 もちろん国会議事堂の正面前には行けません。国会が正面に見える歩道の片隅に、通行人の邪魔にならないようにと線がひかれ、その周りに人が集まります。みんな、あのプラカードを持っています。「アベ政治を許さない」との力強い、故金子兜太さんが書かれた筆の文字のプラカードです。これを黙って掲げるという集会でした。歌もシュプレヒコールもデモもありません。黙って、ただプラカードを掲げることで、自分たちの抵抗の意思を示すのです。

 着いてすぐ、ヒロさんをみつけました。ヒロさんは、私たちを見て、本当に驚いていました。「えっ、伊藤さん。大阪から?!」でした。思わず握手して、写真を撮って、なつかしい再会でした。ヒロさんは人気者で、たくさんファンがいます。
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 しばらく待っていると、この集まりを始めた澤地久枝さんが来られました。88歳になられる澤地さん、座る椅子もなかったからなのですが、立ったまま、仲間のひとりとして参加されました。集まりの最後に、澤地さんは思いを語ります。いつも、マイクを通さず、生の声で、みんなにメッセージを届けるのだと聞きました。
 その澤地さんのご指名で、はじめにヒロさんが話しました。いつもの舞台の上のヒロさんのようでした。おもしろおかしく、しかし、鋭く社会をみつめる姿に、いつも勇気づけられます。その後、2人の方が話し、そして、最後に澤地さんの登場です。
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 「こういうことを掲げ続けることがもう過去のことになるように、今年はがんばりたいと思います。本当にこんなひどい政治はないです。全く問答無用で、野党さえ無視して、政治が暴走している。彼らが必要とする法律が次々に通っていく。これは許されないことだと思います。許されないということを、私たちは示さなければならない。ここに集まる会は、ほんのささやかな会ですけれども、そのほんのはしっこに属していると思います。もっとこういう力が大きい力になって、アベという人が心を寒くして、早くやめてくれるといいと私は心から願っています。今日はありがとうございました。お天気もよくて、何よりでした。皆さん、お元気で」

 ひとりの力は小さくても、思いを同じくする人が集まってその意思を示し続けていく、ただ黙ってプラカードを掲げ続けていく、許さないという毅然とした態度を示し続けていく、そんな人たちに、胸が熱くなりました。小一時間立ち続けて少々疲れましたが、年の初めに大きな勇気をもらったようで、豊かな気持ちになりました。今日の参加者は、120人、いつもよりは少し多いと主催者は言っていました。
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 国会議事堂前に集まった人たちは、少数派であることは自認しています。少数派だけれど、しっかりと現実をみつめ、少しでも社会が明るくなるようにと、あきらめず、粘り強く主張する仲間がいます。120人の集まった人たちは、松元ヒロさん、澤地久枝さんを除いて知らない人ばかりですが、熱い連帯の気持ちは共有できました。

 『どもる子どもとの対話〜ナラティヴ・アプローチがひきだす物語る力』の本を書き、対話を大切にしていこうとしているとき、徹底的に「対話」を拒否する「アベ政治」に抵抗する仲間と出会えたことはうれしいことでした。
 吃音の世界でも僕たちは圧倒的少数派ですが、仲間がいるから、今年もがんばれそうです。
 今年もよろしくお願いします。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2019/01/03