『どもる子どもとの対話〜ナラティヴ・アプローチがひきだす物語る力』、12月発行!

 「吃音が問題ではなく、吃音から受ける影響が問題だ」と考えている僕たちは、その影響への対処を、吃音ショートコースと名づけた2泊3日のワークショップで様々な領域から学んできました。その最終回と位置づけた20回目の吃音ショートコースのテーマに「ナラティヴ・アプローチ」を選びました。講師は、ニュージーランド在住の国重浩一さんにお願いしました。
 その吃音ショートコースの報告として昨年6月に年報を出しました。それを読んだ国重さんから、「本にしましょう」と提案していただきました。
 年報は、ショートコースの報告という意味合いが強く、参加者にはよく分かる内容ですが、本となると、読者の対象は大きく広がります。原稿を整理し、考えているうちに、どもる子どもが否定的なナラティヴをもたないように、ナラティヴ・アプローチを活用する本が、今、求められているのではないかとの思いに至りました。
 僕が吃音に悩み始めたのは、吃音に対してもった否定的なナラティヴで、そのナラティヴを書き換えていくことが、僕の吃音の旅でした。その体験から、子どもの頃に吃音に対する否定的なナラティヴをもたないことが最も大切だと考えてきたからです。
 僕の体験をナラティヴで整理するとともに、どもる子どもとの、ナラティヴ・アプローチ的な対話を続けることばの教室の実践を紹介することはできないかと、国重さんに相談しました。
 私たちの吃音の取り組みは少数派で、「吃音を治す、改善する」考え方が圧倒的多数であることを理解して下さっている国重さんが、この大きな編集方針の変更に賛成して下さったおかげで、「子どものナラティヴ・アプローチ」の本にすることが固まりました。
 共著者の国重浩一さんが、私たちの思いからくる、無理なお願いを聞いて下さったことで、「どもる子どもとの対話」のタイトルにふさわしい本になりました。国重さんには、ナラティヴ・アプローチを分かりやすく解説していただき、紹介した実践に対して解説・コメントしていただきました。ナラティヴ・アプローチが最も大切にしている、たくさんの質問も提示していただきました。実践を意味づけ、後付け、厚みを増していただいたと感謝しています。
 ナラティヴ・アプローチに関心をもつ人々にとっても、入門書的な分かりやすい本になりました。
 
 その金子書房からの新しい本『どもる子どもとの対話〜ナラティヴ・アプローチがひきだす物語る力』が、いよいよ12月上旬の刊行となりました。金子書房のホームページにも、素敵な表紙と共に近刊予定の本として紹介されています。
 ブログを読んで下さっている皆様には、一足先に、ご案内します。


金子書房より12月刊行!
 『どもる子どもとの対話』
     〜ナラティヴ・アプローチがひきだす物語る力〜
                  定価 2200円+税  四六判250ページ
                  編著 伊藤伸二・国重浩一   
 「吃音に対する否定的な物語」を書き換えることが大切だとする、ナラティヴ・アプローチ。
 そのために、子どもと親、子どもとことばの教室の担当者や言語聴覚士に、どのような対話が必要か、ニュージーランドの大学院でナラティヴ・アプローチを学んだ臨床心理士の国重浩一さんと、吃音を生きる子どもに同行する教師・言語聴覚士の会の仲間たちがディスカッションして作り上げた、実際の子どもとの対話に役立つ本。

………………………内 容…………………………
ナラティヴ・アプローチとはなにか
 国重浩一さんが分かりやすく解説。

ナラティブ・アプローチで読み解く伊藤伸二の体験と、
      それをもとに解説する吃音の特徴、吃音問題の本質

 吃音に対する否定的な物語と、「吃音は治る、治すべきだ」との言説が人生を縛ったと考え、その物語を書き換えていった伊藤伸二が、吃音に悩み始めた原因と、悩みから解放されていったきっかけを整理。世界の吃音研究・臨床の動向やさまざまな領域から学び、対話を続けたことを基に、吃音の特徴と吃音問題の本質を解説。

子どもたちの吃音に対する否定的なストーリーを
        肯定的なストーリーに書き換える共著者としての実践
 ☆初めて子どもと出会うとき   ☆吃音チェックリスト・吃音の氷山
 ☆言語関係図           ☆どもりカルタ
 ☆吃音キャラクター        ☆当事者研究 
 これらの具体的な取り組みの中で、実際に対話している、ことばの教室での11の学習場面を、睫攅戚澄ε邉美穂・溝上茂樹・黒田明志が紹介。

それぞれのナラティヴが変わる
 どもる子ども、どもる大人、どもる子どもの親、言語聴覚士、ことばの教室の教員の体験。
 ☆世界的なミュージシャンのスキャットマン・ジョンの体験 
 ☆世界的な小説家のデイビッド・ミッチェルからのメッセージ
 ☆消防士になりたいという夢をもっていたひとりの青年のインタビュー
 ☆3人の言語聴覚士、野原信(帝京平成大学)、平良和(沖縄リハビリテーションセンター)、池上久美子(カナダ・アルバーター大学吃音治療研究所)らの、自身の経験を丁寧にみつめ直し、「吃音を治す、改善する」の考え方から変わっていった体験。北米の吃音事情の報告は貴重。

伊藤伸二が語る、「どもる君へ」のメッセージ
 16のメッセージは、子どもたちの周りにいる大人へのメッセージ。
 ☆どもりは病気でも障害でもない  
 ☆君は自分の人生を自分で選択する力がある
 ☆君には耐える力がある 
 ☆どもりと仲良くなろう 
 ☆「小さな悩み」になったらいいね
 ☆相手に敬意をもち、尊重しよう 
 ☆安全基地をもとう 
 ☆生活習慣は変えられる
 ☆実力をつけよう 
 ☆考える力をつけよう 
 ☆さわやかに自分の気持ちを表現しよう
 ☆自分で自分の苦労を研究しよう 
 ☆楽しく、幸せに生きることをまず考えよう
 ☆君の強みは何か、それを知って生活に使おう 
 ☆哲学的対話が君を変える
 ☆自分なりのゆっくりさを身につけよう

牧野泰美(国立特別支援教育総合研究所)による「対話への期待」とする推薦のことば


日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2018/11/21