第2回ちば吃音親子キャンプ2 応援団長になりたい

 ちば吃音親子キャンプの夕食は、バイキングです。広い、明るい、レストランと言ってもいいような食堂でいただきました。
 その後、夜のプログラムは、子どもも保護者も一緒に、どもりの問題を考えました。
 第1回のときは、オープンダイアローグの手法で、フィッシュボウルというエクササイズをしました。2重円を作って、中の円に子どもたち、外の円に保護者やスタッフが座って、子どもたちを囲みます。中の円に座っている人が話すことができ、外の円にいる人は、聞き役です。でも、話したくなったら、中の円に入ってきたらいいのです。中の円にいる人も自由に外に出ることができます。場所を移動することによって、話をする立場と聞く立場を相互に入れ替えて対話をしました。

 第2回目の今回は、当事者研究をしてみようと思いました。
 出したテーマは、「本当はしたかったのに、あるいはやってみたらできたかもしれないのに、どもるからといってしなかったこと」を、子どもたちに出してもらい、なぜしなかったのか、どうしたらできたのか、そんなことを考えてみようとしたのです。
ちばキャン 子ども当事者1ちばキャン 子ども当事者 伸二のみちばキャン 子ども当事者2ちばキャン 子ども当事者3 子どもたちに経験を聞いてみると、僕にはたくさんあるのに、子どもたちはその経験があまりないというのです。僕にとって、卓球は、どもりで辛い毎日の唯一の救いでした。高校でも、その卓球部に入りました。でも、男女合同の合宿があると聞いて、きっと自己紹介がある、入学式で好きになり、卓球部に入っていたその女の子の前でどもりたくないという、ただそれだけの理由で、合宿の前日に卓球部を辞めてしまいました。

 その例を話して、「自己紹介が嫌だからという理由で大好きだった卓球部を辞めた。あほみたいやろ」と言うと、思わず子どもたちもうなずきます。そして、自己紹介が嫌だからといって逃げたりはしないと言います。僕が、発表も音読も逃げたと言うと、みんな「ちゃんとしている」と言います。このテーマで話すことは無理かなあと思ったのですが、一緒に話し合いに参加していることばの教室の担当者に、どもりだからといって、やったらできるかもしれないことをしなかった子どもはいないかと聞いてみました。
 
 出てきたのが、本当は応援団長になりたかったのに、どもる自分には無理かなあと思って、応援団員にはなったけれど、団長には立候補しなかった子がいたという話でした。その話を聞いて、「そのことは、自分の体験と似ている」と話し始めた子がいました。応援団長や応援団のことは、子どもたちにとって、身近なことのようで、みんなも自分のこととして考えられそうな雰囲気でした。そこで、応援団長のことで、当事者研究をしてみることになりました。

 ところが、僕は、今時の小学校の運動会で行われる応援団のことがよく分かりません。団長になると、どんな仕事があるのか、どんなせりふを1人で言わないといけないのか、練習ではどんなことが大変なのか、当日はどんなことをするのか、など子どもたちにていねいに聞いていきました。応援団は、運動会の花形のようで、低学年のときからかっこいい団長を見てきて、ずっと憧れている子もいるようでした。

 そこで、この場で応援団長を誰かがして、ここで応援の様子を教えて欲しいと言いました。サイコドラマやゲシュタルトセラピーがそうですが、実際に「今、ここで」してもらうと、話が立体的になってがぜんリアリティーが感じられます。ここが僕の勝負所でした。「誰かしてみてくれないか」程度の提案ではみんな乗ってきてくれなかったかも知れませんが。「さあさあ、ここで応援団をつくってみよう」と、あたかも当然みんなが出て来てするものだと決めつけたように子どもたちを促しました。「えっー、ここでー」と言いながらも、僕の当然出てくるものとの気迫におされたか、5人の子どもが出て来ました。

 赤と白の2組に分かれてもらい、「フレーフレー、あかぐみ(しろぐみ)」と実際に応援団長になったつもりで、応援をしてもらいました。大きな声で真剣に、「フレーフレー、あかぐみ(しろぐみ)」と声を出す子どもに「かっこいい、すごい」など声をかけ、周りも手拍子で加わり、みんなで、わいわいと応援団をしているうちに、ふっきれたような、やってみればできるかも、みたいな雰囲気が出てきたようでした。初めに言い出した子も、ためらいながらも、実際に団長をしてみました。キャンプの参加者の前でしたが、みんなの前でやってみて、手応えを感じたのかもしれません。チャンスがあれば、次回、団長にチャレンジしてみると話していました。

 5、6年生が多かったので、応援団の話から、次は、間近に迫った中学校での心配ごとや、からかったり笑ったりしてくる子に対してどう対処するかという話に移りました。別の小学校からも集まってくる中学校では、自分のことを知ってくれている子ばかりではないので、やはり心配のようでした。きっと真似したりからかってくる子は出てくるだろうから、そのときどうしたらいいかと話が進みます。

 そこで、まねする子やバカにしてくる子の研究をしてみました。当事者研究は、自分のことを研究するのですが、相手を研究することもできます。真似する子やからかってくる子は、どんな子だろうと問いかけると、次のような答えが返ってきました。
・いつも先生におこられている子 ・僕のことを嫌いで、僕もその子のことがきっと嫌いな子 ・自慢する子 ・ことばづかいの悪い子 ・わざとひっかかってくる子 ・いじわるな子、などでした。
 具体的な子どもの像が見えてくると対処の方法も出てきます。そんな相手にこちらが嫌な気分になることはないとの思いが出て来ます。

・我慢する ・誰かに愚痴を言う ・距離を置く ・あいさつのみにして深くつきあわない ・笑ってごまかす ・別の友だちを作ってつきあわない、などでした。

 真似されたりからかわれたりして嫌な思いをし、落ちこむのではなく、そうしてくる子はどんな子だろうと研究してみるという視点をもつことの大切さを思いました。

 高学年が多かったのですが、初参加の1年生もいました。どもらない子どもたちも同じように参加していました。そんな子どもたちが、午後6時30分から8時まで、休憩なしで、話し合いをしたのです。これを見ている周りの保護者やスタッフにとっても、この1時間30分は、貴重な時間のようです。子どもたちが、こんなに、どもりのことを話すという事実は大きいようです。
 この同じ空間を、子どもも保護者のスタッフも共有できることが一番大切なことだったと思います。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2018/10/13