どもることをからかわれたら〜ちば吃音親子キャンプでの子どもたちの会話

 宿泊の部屋は、2段ベッドではなく、ひとりずつのベッドでした。子どもたちは、6つのベッドと、畳敷きのところに2人寝ることができる広い部屋に入りました。
 夜、それぞれの部屋ではどんなことが起きていたのでしょう。はしゃいでいて、自然の家の人に注意を受けたという話も聞きましたが、夜、一緒に過ごすというのはそれくらいエキサイティングなことだと思います。おそらく、保護者の部屋でも、いろんな話が出たのではないでしょうか。

ちばキャンプ11 上がった旗
 起床は、6時30分。ポールに、「スタタリング・ナウ ちば」の旗をあげました。
 部屋を片付け、午前のプログラムは、作文教室です。滋賀の吃音親子サマーキャンプと同じように、どもる子どもは自分のどもる体験を、保護者は自分の子どもの吃音にまつわるエピソードを、ことばの教室の担当者はどもる子どもとのできごとを、そしてきょうだいやスタッフの子どもたちはできるだけどもりに関係すること、あるいはどもりではない何かに置き換えて自分のことを、それぞれが書きました。内容にふさわしいタイトルをつけてほしいとお願いして、静かな時間がスタートしました。
 話し合いはみんなで吃音について考えますが、作文の時間はひとりで自分の吃音に向き合います。書き上げた子が持ってくるので、すぐに読んで、わかりにくいところは質問をします。そして、「そうか、それ、いいね。もうちょっと書き足してきて」とか、「ここをもう少し詳しく書いてきてほしい」とお願いをします。
ちばキャンプ12 作文教室
 その後は、子どもと保護者に分かれて、話し合いでした。保護者は、前日の学習会でできなかった続きの話をしました。

 子どもの話し合いは、質問からスタートし、みんなに聞きたいことへと続きました。

・世界中でどもる人はどれくらいいるのか。
・医学書に吃音はチック症と同じように書かれていたけれど、それでいいのか。
・みんなは将来、何になりたいのか。それはどもりと関係しているのか。

 話が盛り上がってきたとき、どもらない、スタッフの子どものひとりから、こんな話が出ました。その男の子のクラスにどもる子がいるそうです。今、教室で、隣に座っているそうで、そのどもる子のことで、みんなに聞きたいと話し始めました。

 「その子が、もし、真似されたりからかわれたりしたとき、きっと落ちこむだろうから、何か声をかけてあげたいと思う。でも、どんなことばをかけていいのか、分からない。どんなことばをかけてもらったら、うれしいのか、知りたい。みんなの経験を教えてほしい」 
 前夜、子どもたちは、クラスのみんなに自分の吃音のことを理解してほしいという話をしていたので、どんな答えが返ってくるか、楽しみにしていました。

どもる子  そっとしておいてほしい。
質問した子 でも、気になるから、何か伝えたい。
どもる子  だったら、ちょっと間をおいて、このちょっと間を置くというのが大事で、それから 「どう、大丈夫だった?」と聞いてくれたらいい。
どもる子  「どう?」と聞いてくれて、そっとしておいてほしい。
どもる子  友だちになってくれたらいいんじゃない。落ちこんだときに何か言うだけじゃなく、普段から仲良くするとか。
質問した子 でも、隣のどもる子は女子だから。
どもる子  えーっ、女子か。その子は男子だとばっかり思ってた。それなら、普段から仲良くしているだけでも、みんなに何か言われるかもしれないし、何か言ってくれたら、よけいにからかわれるかもしれない。
質問した子 だから、難しいと思って、聞きたかったんだ。
どもる子  気にかけてくれるのはうれしい。でも、落ち着いてから「どう?」と声をかけてくれるくらいがいい。
質問した子 (参加者で唯一のどもる女子に)ねえ、女の子として、どう?
どもる子  落ちこんでいるときは、そっとひとりにしておいてほしい。
質問した子 乙女心は分からんから、聞きたかった。

 こんなことばをかけてもらってうれしかったとか、こんなことばをかけてもらったらうれしいだろうという答えは返ってきませんでした。そっとしておいてほしいという意見が多数でした。でも、気にかけてくれることはうれしい、ちょっと間を置いて「どう、大丈夫?」と声をかけてくれたらうれしいというあたり、微妙な心の状態を表していると思いました。

 質問したスタッフの男の子は、聞きたかったことが聞けてよかったと話していました。

 どもる子がいて、どもらない子がいて、同じ場所で、お互いにフランクに、どもりについて、自分が知りたかったことを聞き合えるという空間がいいなあと思いました。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二  2018/04/07