岡山キャンプの親の講演会での質問の続きです。

5. どもりがひどくなるのはどんなときですか? そのときの周りは、どう対応したらいいのでしょうか?

 吃音は、「波現象」と呼ばれて、すごくどもる時と、そうでない時、もう治ったのかと思えるくらいしばらくどもらない日々が続くなど、どもる状態の変化がかなり大きいです。一般的に子どもがひどくどもるようになると、学校で何かあったのではないか、家庭の中で私が何かストレスやプレッシャーを与えたからではないかなど、つい、原因を探ろうとしてしまいます。原因らしきことが思い浮かぶ場合と、まったく思い浮かばないことがあるでしょう。仮に、これが原因かもしれないと思っても、必ずしもそれが原因とは限りません。何もなくても、自然に変化するのが吃音だと考え、原因探しをするのは、やめた方がいいと思います。
 とは言うものの、夏休みなど長期の休みの後、何かの発表会で人前に立たなければならない時、自分が何かの責任を持たなければならない時、その「予期不安」によって、どもることが多くなることはあります。ある意味それは正常な反応だともいえます。また、何かに挑戦しようとしている時、たとえば、今まであまり発表してこなかったけれど、今日はしてみようと思って発表したりする時など、慣れていない場合もどもるかもしれません。
 それらを全部ひっくるめて、どもりは「変化する」と考えて下さい。大きい変化も小さい変化も含めて、変化するのです。ただ、親からみて、異常な変化は、ひょっとすると、いじめなどの可能性もあるかもしれません。そのような時、「○○ちゃん、最近、前よりもすごくどもるように思うんだけど、何か変わったことがあったの?」と聞いてみることはいいと思います。「どもりは意識させてはいけない」がまかり通っているので、親はつい聞くのを躊躇してしまいますが、正直に、率直に自分の不安や懸念など、直接子どもに聞いてみることがおすすめです。
 つまり、いつでも吃音については話題にしてもいいんだと、親子ともども考えてほしいのです。子どものからだが何か変調を来しているときには、平気でからだのことは聞くことができるのに、どもりについては聞くことをためらうことが多いようです。
 
6. 小3の女子です。どもりを受け入れたようですが、その後、「どうせ、私はどもりだから」と冷めているようで、気になります。夢を持ってほしいと思うのですが?

 小学3年生から中学生頃までの僕の口癖は「もう、あかんわ」でした。小学2年生の秋からどもりに劣等感をもって悩み始めてからは、何事にも意欲がなくなりました。ちょっと難しくなると「もう、あかんわ」、からだが疲れて何かできなくなると「もう、あかんわ」でした。意欲も夢もない状態でした。今から考えるとこの「もう、あかんわ」のことばの癖は、いい影響をしなかったと思います。気持ちや生活態度、考え方は、普段よくつかうことばに影響されます。ネガティヴなことばを使うことで、どんどんネガティヴになっていった気がします。
 「どもりを受け入れているようだ」がどのようなことなのか、「どうせ、私はどもりだから」をどのような意味で使っているのか、子どもと、ゆっくりと「哲学的対話」を続けて下さい。子どもの思いをしっかりと受け止めて、親の「夢をもってほしい」の思いもしっかりと伝えていきたいと思います。対話の中で工夫すれば挑戦できること、がんばれることがみつかるかもしれません。後で話す予定にしている、「ポジティヴ心理学」が役に立つかもしれませんね。 
 「どうせ、私はどもりだから」のことばに代わることばを、親子で見い出せたらいいですね。

日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2018/01/07