絵本カフェ「ハーゼ」での豊かなひととき

 僕の家の近くには、大阪府立寝屋川公園という広大な公園があります。食後に、そこをスロージョギングすることが日課になっています。いろいろな健康法が取り上げられていますが、僕が続けられているのは、このスロージョギングだけです。大体45分から1時間くらい、本当にゆっくり走ります。いつも同じ道だと飽きてくるので、ときどき、道を変えます。

 昨年のこと、いつものように走っていて、絵本カフェ「ハーゼ」というお店をみつけました。お店らしくない、普通のおうちのようなエントランスですが、絵本カフェという名前に惹かれて入ってみました。壁の三方に絵本が並べてあります。一方はガラスで、明るい日差しが入ってきます。ゆったりとした気分で本を読むのに最適の空間でした。
 カフェオレを注文し、並べてある絵本を見ていると、店の方が話しかけてこられ、僕もつられていろんな話をしました。その方のお連れ合いが、僕とよく似ていることで話が弾みました。糖尿病仲間でした。僕も、合併症のことはいつも気になっていて、腎臓だけはなんとか死守したいと思っていましたので、予防もかねていろいろ質問しました。話し好きの方のようで、初対面でここまで話しますか?というくらいあけっぴろげにいろんな話をして下さいました。

 何より興味深かったのは、そのお連れ合いが幼児教育の専門家で大学で教えていること、絵本が好きで絵本を探して世界を旅していること、絵本のもつ力を伝えたいと思っていらっしゃることなど、僕の関心と共通していることがたくさんありました。

 その後、お連れ合いの長谷雄一さんともお会いしました。吃音についての絵本を作りたいという夢を持っているので、それについてご相談もしました。すてきな絵本も紹介していただきました。何度かハーゼにおじゃましていたのですが、最近は、忙しくて、顔を出すことができずにいて、気になっていました。そんなとき、絵本の集いをするからぜひとお誘いのお手紙をいただきました。なかなか実現できなかった集まりで、お話のタイトルは、「ムーミンの本当の姿」でした。
絵本カフェ ハーゼ
 10月30日(月)13時30分から絵本の集いが始まりました。参加者は、保育に携わっていた方、絵本が好きな方、ムーミンが好きな方のように見受けられました。総勢12、3名でした。

 僕は、ムーミンについては、全く知りませんでした。アニメも見たことがないし、本も読んだことがありません。知っているのは、姿がカバに似た動物だということだけでした。
 お話は、ムーミンはカバか妖精かというところから始まりました。カバではなく、妖精とのことでした。フィンランドにある民間伝承、日本でいう日本むかしばなしのように長く伝わっているもので、半分はお化け、半分は精霊だと長谷さんは説明されました。

 ムーミンに限らず、物語を見るときに、3つのポイントがあると言って、<三間>を紹介して下さいました。
 ゞ間 ∋間 C膣屬裡海弔任后

 ,龍間は、ムーミン谷で、誰もが安心して自分を出せる場所。
 △了間は、フィンランドは夏と冬の差が大きく、昼と夜の時間の長さも大きく違い、物語の描き方も季節によって違うとのこと。
 の仲間は、ムーミン谷の住人たちで、たくさんいるそうです。一番人気は、スナフキンだそうですが、僕は全く知りませんでした。

 <三間>は、教育、保育、子育てなどを考えるときも大事なポイントになります。忙しい現代の子どもたちにとっても、必要なことでしょう。長年続けてきたセルフヘルプグループは、まさに<三間>がそろっています。吃音親子サマーキャンプも、この<三間>を軸に考えることができるなあと、お話をお聞きしながら考えていました。

 ムーミンの作者であるトーベ・ヤンソンは、芸術家の家に生まれ、このお話は、1939年頃から構想を立て、1945年に発行されたそうです。ちょうど第二次世界大戦をはさんでいることから、反戦の意味がこめられているとお聞きしました。だから、ムーミンのお話には、ー屐´△金 K塾蓮,出てこないそうです。車は戦車をイメージするから、お金は経済戦争を、暴力はことばどおりです。

 ここで、僕は質問しました。暴力が描かれていないということだけど、「言い争い」程度はどうなのかと。言い争いということはあったようです。ぎりぎりのところまではいくとのことでした。

 ムーミン谷の住人の中で一番人気のスナフキンは、教育者らしからぬ教育者だそうです。命令はせず、相手に考えさせる問いかけをするそうです。アドバイスや提案はするけれど、決定は本人に任せるとのことです。問いかけの教育といいます。

 そこで、フィンランドといえば、オープンダイアローグ発祥の地。対等な関係で、話し合いをするということと、どこかでつながっていると感じました。
 ムーミンとオープンダイアローグが僕の中で結びつきました。ムーミンを生んだフィンランドだから、オープンダイアローグの発想が出てきたのだと、僕の中では結びついたのです。
 ムーミンと、オープンダイアローグの地、フィンランドに行きたくなりました。
 ムーミンのお話の奥深さに触れることができ、とてもいい空間でした。こんな時間もいいなあとしみじみ思いました。

日本吃音臨床研究会会長 伊藤伸二 2017/11/02