沖縄でのキャンプ、最初のプログラムは、出会いの広場です。担当は、千葉の渡邉美穂さん。吃音親子サマーキャンプでも、ここ最近ずっと出会いの広場を担当してくれています。ジャンケンゲーム、仲間をみつけてゲットする「おきなわGO」でだんだんと盛り上がっていきました。そして、最後に沖縄キャンプのシンボルマークからとった3つのテーマに分かれてのパフォーマンス。魚と波と太陽の3つに分かれ、からだ全体をつかって表現しました。初めて出会う人が多いのに見事なチームワークです。

 午後からは、保護者とスタッフのための講演会。スタートは、伊藤伸二の人生をお話することから。鬼、挟、郡ときれいに分かれている僕の人生、そのとき何があったか、できごとや人との出会い、転機などを話しました。そして、今、注目している「対話」について、いろいろな角度からお話しました。会話と対話の違いについて、劇作家・平田オリザさんや哲学者・中島義道さんのことばを紹介しながら話をすすめました。
 レジリエンス、オープンダイアローグ、目新しいことばに少し戸惑いもあったようですが、共通している大切なことはしっかりとつかみとっていだたけたようです。その実例として、11月8日に行った滋賀県東近江市での子どもたちとの対話を紹介しました。どもる子どもが僕にいくつか質問をしてくれたのですが、その質問を紹介し、その質問にあなたならどう答えるか、どう話を続けるか、そんな参加者とのやりとりをしながら、哲学的対話の大切さを伝えていきました。
 ことばの教室で、言語指導室で、していただきたいのは、次の2つです。
 ‖佻辰離譽奪好鵝´日本語のレッスン
 これが、どもる子どもやどもる人の、吃音が変化する力を育てる条件となるだろうと僕は確信しています。新しい出会いの中で紹介してもらった「読書介助犬」のことも話しました。
 読書介助犬って何をすると思いますか?この質問をすると、必ず、ページをめくってくれるという意見が出るのがとてもおもしろいのですが、沖縄でもやはり同じでした。
 「そんなはず、ないでしょう」と言いながら、笑いが起こり、関心を持っていただけます。最後に、自分の人生を自分でコントロールできると子どもが実感できることが大切で、そのためには、決定権は常に子どもにあることを話しました。
 世間には、たくさんの情報があります。流されてしまわないよう、しっかりと吃音哲学をもつことの重要性を話して終わりました。

 次は、吃音についての話し合いです。子どもは子どもで、親は親で集まって話し合いです。子どもも大人も2グループずつ、計4グループに分かれました。スタッフの数が多いので、参加者に余計なプレッシャーを与えないよう、ファシリテーター以外はそっと見守ることにしました。
 低学年の子どもたち、最初はベッドにのぼったり、動き回ったり、落ち着かないようでしたが、少しずつ集中していきました。スタッフとして入っていた鹿児島のことばの教室の教師で、自分も吃音に悩んできた溝上茂樹さんが語り始めると、みんなしっかりと聞いていました。当事者の語りのもつ力でしょう。吃音キャラクターの絵も描きました。溝上さんの吃音キャラクターも子どもたちが描いてくれたそうです。溝上さんは大事そうに持って帰りました。

 高学年の子どもたち、特に女の子たちは、初めて会ったとは思えないほど短時間で仲良くなりました。将来就きたい仕事があるけれど、それは話すことが多くてできないと思っているのでみんなには言っていないという子には、実際出会ったことのある人の話を実例として挙げ、考えるきっかけとしてもらいました。
 自分がどもるようになった原因は、下の子が生まれて親の愛情がその子にいったからだと言った子もいました。親からそんな話を聞くことは多いのですが、子ども自身から、そう感じていることの話を聞くのは初めてです。改めて、社会や世間のいろんなドミナントストーリーを受けていることを知らされました。

 親グループは、笑いあり、涙ありの90分でした。ここで、大阪スタタリングプロジェクトの井上詠治さんが大活躍したそうです。井上さんの人生を聞きたいというリクエストにお答えして、「井上詠治、人生を語る」みたいな大講演会になりました。どもりを否定して生きてきた井上さん、その根源は、自分をどもりに生んだ両親にある、人生うまくいかないのはすべてどもりのせいだと思い込みます。治すために横隔膜バンドを買ってほしいと頼み、それを断られ、その後、吃音親子サマーキャンプに出会います。吃音の話ができる同世代の仲間との出会いが一番よかったと振り返ります。

 ふとネットで検索してみつけた大阪吃音教室に参加し、「井上君。元気だった?」と覚えていてくれたことがうれしくて、参加を続け、吃音親子サマーキャンプにはずっとスタッフとして参加します。そこで親の話し合いに参加し、どもる子どもの親の思いを聞き、自分の親の思いを想像しました。そして、自分の親も悩んでいたのかもしれない、子どものことを思っての行動だったのかもしれないと思えるようになり、どもりは誰のせいでもない、原因は分からないのだから、親は何もできないけれど、子どもが頼ってきたときに、最後の相談相手になってほしい、どもりの勉強をして知識を持ち、見守ってほしいとしめくくりました。人生ドラマを聞いているようで、参加している保護者にはかなりインパクトがあったようです。そして、そのときから、お母さんや、ことばの教室の教師は「井上先生」と呼ぶようになりました。「井上先生」、そう呼ばれると、なんだか普段の発言にも重みが増してきたような。これからは「井上先生」と呼ぼうと、大阪からの参加者は皆笑いながら盛り上がりました。
 プログラムとプログラムの間がゆったりとしていて、僕たちが主催している滋賀のキャンプとはちょっと違います。これが沖縄スタイルなのかもしれません。

 1日目が終わり、スタッフ会議です。話し合いのグループでの様子が報告されていきました。それらを聞きながら、このキャンプでの出会いが、点から線になり、面となって静かに広がっていくのを感じました。

 部屋に戻るとき、朝、開会式をした真ん中の芝生広場にまだ人がいます。寒くはなくて、外にいても平気です。いつのまにか、リンパ腺の腫れがひいていました。押さえたら痛みは残っているけれど、もう大丈夫です。

 静岡、岡山、群馬、島根のキャンプは僕一人が講師として参加しています。今回は、大阪や、千葉、鹿児島から仲間が参加しています。だからこのような報告ができます。一人で参加したところでは、なかなか詳しい報告はできませんので、せめて沖縄のキャンプだけでも、詳しく報告したいと思います。つづきます。

 日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2016/11/17