今、大阪吃音教室での僕の担当「吃音基礎知識」の連載をしています。
 ふと、1978に書いた「どもの相談」と名付けたパンフレットのチャールズ・ヴァン・ライパー博士の巻頭言を思い出しました。ヴァン・ライパーとは深い交流がありました。「吃音を治す努力の否定」「吃音者宣言」を翻訳して送ったところ、とても共感したとのメッセージを送ってくれました。

 僕が「どもりの相談」のパンフレットを書いていると、内容を説明し、巻頭言を書いて欲しいお願いしたところ、書いて下さったのが紹介する巻頭言です。今の連載にぴったりだと思いましたので、紹介します。


巻頭言

 恐怖・差恥・無知、私たちはこれまでこの3匹の悪魔にとりつかれてきました。その中でも、無知という悪魔は最も手ごわく、そのためにどもりは、わけのわからないのろいのように思われてきたのです。
このパンフレットは、3匹の悪魔すべてと戦うために編まれました。特に、無知という悪魔と戦うために、どもる人自身にも、またどもる子どもや、どもる人のまわりの多くの人々にも、どもりの本当の問題は何かを知らせています。
 私たちは、どもりながらも実りある人生を送ってきた多くの先輩たちに学び、どもることによっておこる恐怖から逃げたり隠れたりせず、どんどん話していかなければなりません。そうすることが、どもりのことをあまり知らない人々が作りあげたどもりに対する悪いイメージを変えていくことにもなるのです。

 どもることはそれ自体、少しも恥ずかしいことでもなく恐れるものでもありません。ただ、どもる人がどもらないようふるまおうとすることに問題があるのです。どもることを恐れ、恥ずかしがり、どもっていたら自分のやりたいことが何もできないと思いつめることにこそ周題があるのです。

 どもりにとらわれたあまり犯してきた私たちの失敗を、どもる子どもたちが繰り返さないように、また私たち成人のどもる仲間が自分を無価値な人問であると思いこんで卑下することのないように、私たちは私たち自身を変えていかねばなりません。また、社会を啓発していかねばなりません。
 どもるからといってそれにとらわれ、自分の人生を台なしにするのではなく、輝きあるすばらしい人生を共に送っていきましょう。 1978年10月
   ウェスタンミシガン大学教授(言語病理学)チャールズ・ヴァン・ライパー


日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2016/05/20