豊かな吃音の世界だから、3日間の吃音談義が楽しい

 2016年1月10日、東京北区の北とぴあで、第4回 吃音と向き合い、語り合う伊藤伸二・吃音ワークショップを行いました。今回の参加者は、16人。年齢も中学2年生から72歳まで幅広い人が参加しました。午前10時から午後5時まで、昼休みの1時間を除くと6時間の短いワークショップですが、毎回、ドラマがあります。人と人が出会い、濃密な時間が流れました。

 今回、始めての試みとして、希望者を募り、私と1対1で公開面接をしました。面接というか、ナラティヴ的な質問をしていきました。ウォーミングアップのように僕がしゃべり、参加者ひとりひとりが簡単な自己紹介をした後、希望者に手を挙げてもらいました。手を挙げたのは、4人

 その中に、ワークショップ直前に参加を決めた中学2年生の男の子がいました。ホームページを見て、相談のメールがあり、その答えとして「どもる君へいま伝えたいこと」(解放出版社)と、「親・教師・言語聴覚士が使える吃音ワークブック(解放出版社)、両親指導の手引き書を紹介したら注文してきて下さいました。その本を送るときに、東京でのワークショップのチラシを入れてお誘いしたのでした。母親だけでもと思っていたのですが、本人も参加するということで、僕たちも、楽しみにしていました。

 どもることに抵抗のあるR君は、どもらずに言えると確信できるまで、ことばを発しません。彼の口から出ることばはどもっていませんが、彼の心の中では出たがっていることばが思うように外に出ず、確かにどもっているという思いでいるのでしょう。ぽつりぽつりと語るR君の話は、思春期に入り、悩みも大きくなってきたのだろうと思わせるものでした。

 彼は、授業中より友だちとの会話で自分の思っていることが言えないことが一番の間悩みのようでした。思っているようにすらすら話せたら、どんなに会話が楽しいだめう、相手も退屈しないですむのにと思っています。僕たちは、彼が、自ら希望してこの公開面接に自らの意志で手をあげたことにまず驚きました。

 公開面接は30分程度と最初から決め、他の3人は、30分で一応納得して終わったのですが、彼の場合は、彼自身と、僕が納得出来たときは、60分たっていました。ぽつりぽつりと語り、質問を繰り返していったのですが、不思議と長いと感じませんでした。周りで聞いていた人も、集中してそれを聞いて支えていました。

 自分を語るときの重みを思いました。軽い、薄っぺらなことばが飛び交うことの多い現代にあって、どもる人のどもることばは、リアリティをもって伝わってきます。どもる人のどもることばは、それだけで、相手に届く力をもっているのだと思います。

 面接の詳しい内容は、後日、日本吃音臨床研究会の月刊紙「スタタリング・ナウ」などで、で報告するつもりでいます。

 このワークショップの前後に、『吃音を生きる子どもに同行する、教師・言語聴覚士の会』の合宿を行いました。9日は、午後1時から10時まで、10日は、ワークショップが終わって午後6時から10時まで、11日は、午前9時から午後5時まで。よくこんなにしゃべることがあるもんだと思います。この合宿への参加は、沖縄、鹿児島、島根、大阪、愛知、神奈川、埼玉、千葉、栃木から14名。新年の3連休によく集まるものだと、お互いに感心する、いい仲間たちです。

 2016年は、このように幕を開けました。わくわくするような企画も飛び出し、楽しみな一年になりそうです。

日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2016/01/19