話し合いとことばのレッスン  中学2・3年生

 毎年、この年代の話し合いは静かに進んでいきます。発言が次々に途切れることなく続いていくというわけにはいかないのですが、じっくり自分と向き合いながら考え、その気持ちにふさわしいことばを探しているようにもみえます。終わってみると、「話し合いがよかった」と言う子が少なくなく、それぞれが仲間の話、スタッフの話に耳を傾け、いい時間を過ごしているようです。
 今年初めてサマーキャンプにタイトルをつけました。「レジリエンスを育てる」どのグループも、またどの場面でも、スタッフは、このテーマを意識して、話し合いや活動を進めていました。
 中学2・3年生グループの話し合いでも、学校でいろんなことがあって大変な状況なのに、それでも学校に行っているみんなの強みについて、話し合いました。なぜ、学校に行くことができているのか、スタッフも考えました。

話し合い中2・3年

 自分の強み

・分かってくれる友だちや、話を聞いてくれる保健室の先生がいてくれる。小学校のときは本が友だちだった。でも、今は、本を読むより、友だちとしゃべる方が楽しいと思っているので、本は悲しさを紛らわすために読んでいる。
・吃音のことを分かってくれる友だちがいて、部活動が楽しいから。
・おもしろい子がいて、笑わせてくれるから。
・分かってくれる友だち、先生がいたから。中学校に行くと、分かってくれない子もいるけれど、分かってくれる子もいる。そんな子たちとしゃべっているのが楽しい。
・私の強みは、忍耐強さかな。それは、すぐに逃げたがるという短所とつながっている。
しゃべれないけれど、人と一緒にいることは好きで、人なつっこいとよく言われる。
・自分のことはよく分からない。説明を求められたら、できるだけ短く端的に答えようとしている。英語のときはほとんどどもらないので、好き。つっかえてもみんなつっかえているからあまり気にならない。
・なかなか言えないとき、がんばって言おうという気持ちがあるから最終的には言える。発表のときは、友だちが静かに待ってくれるし、一緒に言ってくれる友だちがいるから、休まずに行くことができる。
・堂々とどもりながらしゃべって、からかおうとしている子をがっかりさせている。
スタッフからは、こんなふりかえりもありました。
・友だちもなく、勉強もできなかったけれど、文章や日記を書くことが好きで、自分の気持ちを日記に書いていたことがよかった。また、卓球部に入って卓球をしているときだけは、どもりの苦しみを忘れることができた。
・友だちといえる人がクラスにひとりいた。その友だちが良き理解者だった。高校時代は、クラス替えのないコースを選んだ。放課後の時間が楽しかった。どもらないときの自分に対して自信をもつことができた。
・上手ではないけれど、多くの種類のスポーツがそこそこできた。種類の多さが自慢だった。「これは自分だけ」という、他の人と違うものを心の中で自慢していた。

 どうしてもことばが出ないとき〜ことばのレッスン

 話し合いが一段落した時、「どうしてもことばが出ないときはどうしたらいい? みんなどうしているか」をみんなに聞きたいとの質問が出ました。

・力を抜いたらいいと聞いた。
・息を一瞬吸って、いっぱい声を出すようにしている。
・下を向いて、自分の近くに落とそうとしていた。

 思春期に入っている子どもたちは、どもってもいいと頭で分かっていても、どもりたくないという気持ちが強くなってしまいます。そして、どうしても声がか細くなってしまいがちです。
 そんな子どもたちに、どもりは治らないけれど、どもりながら話すことはできる、どもっていても相手に届くことばを話すことはできる、そんなことを伝えたくて、「ちょっと声を出してみようか」と、その場が、声を出すレッスンの場になりました。
 ひとりひとり、声を出してみました。目をそらすのではなく、相手を見て話をすること、息を吸うことより吐くことを大事にすること、息を吐いて、相手に届けるようにすること、実際に声を出しながら、大切にしてほしいことを伝えました。
 ただ黙っていたのでは、相手には何も伝わりません。声を出そうとしている、何か話したいという気持ちがあるのだということは伝わるようにしよう。「どもっているなら、どもっていると相手に分かる必要がある」ということを以前言ったことがありましたが、コミュニケーションが大切な今、どもりながら話す私たちにできること、しなければならないことはたくさんありそうです。
 二人の子が、苗字を言ったあと、名前を言おうとしてブロック(難発)の状態になって、完全にストップして、息が流れません。そこで、伊藤伸二が、日本語の発声の基本を説明し、ブロックの状態になつた二人に、声を出して息を吐くこと取り組んでもらいました。例えば「伊藤・・・・・」と長く息が止まっている子に、「いとう・しししししし」といくらどもっても最後まで息を出し切ることを試みました。しばらく試みてみると、二人ともなんとか、苗字と名前がつながりました。つまり、出ないのではなく、激しくどもる状態をみせたくないから、ちゃんと声が出ると思えるまで、息を詰めているのです。二人の内の一人が、苗字と名前の間で切れないでつながって言えたのは初めての経験だと言いました。
 
 なぜどもるの?と聞かれたとき

 また、話し合いの再開です。なぜどもるの?と聞かれたらどうするか、ひとりひとりが自分の体験を語りました。
・今までは「まあ…」とごまかしていた。
・相手が笑いながら聞いてくるから、私も「ハハハ」と言って無視していた。しつこい子には「何、言ってるの?」と言った。
・ちゃんと聞いてねと説明した。
・英国王のジョージ6世と同じ、とか誰かと同じって言うのはどうかな。
・「あなたはどう思う?」と返す。「分からない」と言うので、私も「分からない」と言ってハハハと笑う。
・私は何も答えなかった。
・オランダの世界大会のとき、缶バッジをもらったが、そこには、「私はどもります。それが何か?」と書いてあった。どもることは悪いことではないのだから、そう言えたらいいな。

 今回の話し合い、ことばのレッスンをしたのは初めてですが、今後は、声が出ないタイミングで必要なレッスンをしてみようと思いました。

日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2015/09/20