話し合い〜当事者研究〜 小学校4年生

 吃音親子サマーキャンプでの話し合いの報告を続けます。
 次は、小学校4年生のグループです。
 この話し合いの様子を、ファシリテーターとして入っていた、大阪スタタリングプロジェクトの川益彦さんがまとめて下さいました。そのまま、紹介します。

話し合い4年



      小4当事者研究

川益彦

 2015年吃音親子サマーキャンプの話し合いは、5人の小学校4年生を平良さん、溝口さん、僕の三人のスタッフで担当した。子どもは全員男子で、4回目が二人、2回目が一人、初参加が二人だった。
 最初の話し合いでは、なるべくみんなが話せるように、一人の子どもに全員が質問し、その子が終われば次の子どもにみんなで質問する方法を繰り返した。
 初参加の二人は恥ずかしがることもなく、積極的に発言した。それは良かったのだが、複数回参加している子どもと比べたら、人の話を聴けていないことが分かった。聴くということには、単に相手の話を聞いていることだけではなく、それについて考えるという行為が含まれなければならない。初参加の二人は、聞こえた瞬間に自分の思いつきをしゃべった。当然深く考えたわけではないので、たとえ発言は面白くても、薄っぺらいし深まらない。その点、複数回参加している子ども達は違う。じっくり相手の言った状況を想像し、自分だったらどうするかを考えてから発言する。複数回参加することにより、相手の話を聴くという習慣が自然とできていることが良く分かった。

 二日目の話し合いは前日の反省から、みんながじっくり相手の話を聴いて考えるためにどうするかという作戦を立てた。たまたま僕が着ていたTシャツが「当事者研究」だったので、小4男子5人にできるかどうか分からなかったが、正統派の当事者研究をやってみることにした。
 毎年二日目の朝食後に全員で作文を書くので、それぞれに「何について書いたか、良かったら教えて」と言ってスタートした。全員が作文で書いたこと、すなわち今一番心に残っている事や、引っかかっていることを教えてくれた。
 子ども5人と平良さんと僕で輪になって座り、その真ん中に「問題」を抱えた子を座らせる。その状態で真ん中に座っている子どもから改めて詳しくその時の状況を聞き、それから「問題」だけを真ん中に残したまま、その子どもにも輪に加わってもらい、みんなでその問題について研究する。つまり場所を移動することによって子どもと問題を分かりやすく分離し、困っている子ども自身も客観的に自分の問題に向き合うことができる。
 それからみんなでその問題に名前を付けた。例えば、しつこくどもりをからかわれるケース。これを事件と捉え、みんなでその事件に名前をつけた。それも単に「どもりからかわれ事件」といった単純な名前ではなく、火曜サスペンス劇場みたいにタイトルだけで事件の概要が判り、可能ならちょっとユーモアのある名前にしようと提案した。名前が決まったら、みんなで対処方法を研究した。困っている本人も当事者として研究する。有効かどうか、現実的かどうかは気にせず、自由に発想する。ここでは思いつきもOKだ。この場面ではたとえ暴力沙汰でもかまわない。他の子どもの発言を聞いて、それに改良を加えても良い。
 平良さんの提案で、すぐに発言するのではなくじっくり考えるために1分間をシンキングタイムとし、その間は黙って考えるというルールを作った。シンキングタイムが終われば自由に発言できる。しかし誰かが研究発表しているときは静かに聴くのは当然である。
 取り扱った問題は具体的には、一人の子どもからしつこくからかわれて困っている事件、どうしようもない教師がいて訴えた結果担任を外させたがそれでも気持ちが収まらない事件、学年代表に選ばれて全校生徒の前で自己紹介して結果的にどもらずに言えたが順番を待つ間ドキドキして不安だったという問題などだ。
 最後のテーマでは、どもらずに言えたから良かったというのではなく、待っている時間とても不安でドキドキしたことを問題にして、その間どうすれば良いかをみんなで考えた。ある子どもは「Hなことを考える」と発言し、爆笑を誘った。
 
 サマキャンの話し合いの必需品として、毎年僕は『どもる君へ いま伝えたいこと』と『吃音ワークブック』を持っていく。これは話し合いの手段に困ったときのネタに使ったり、質問や疑問が出た時の参考書にもなるので、必ず持っていく。
 今年は当事者研究の中で、みんなの研究発表が終わってから「伊藤さんだったらどう答えるだろう?」ということで、「Q15どもりをどう説明したらいいか」と「Q19学級代表になりそうなので、どうしたらいいか」を読んだ。みんなはひたすら静かに聞き耳を立てて聴いていた。
 「どもりをどう説明したらいいか」では梶崎大生くんの体験を読み、みんなだったらどうするか、全校生徒の前で発表するか、自分のクラスの中だけで発表するか、あるいは先生には言うがクラスのみんなには黙っているか、およびその理由を順に聞いていった。みんなそれぞれ自分の現実のクラスや学校を思い浮かべながら真剣に考えていた。これも、一人ずつが研究したからこそ深く考えることができたのだと思う。

 このようにして、全員の事件や問題を順番に研究し、小4の当事者研究は予想以上に成功裏に終わった。当事者研究の良いところは、「いじめられている子ども」ではなく、「いじめられるという問題に困っている子ども」というように、問題と子どもを分離して問題を外在化することで、困っている本人も客観的に考えるところにある。また、名前をつけたり研究発表という型にはめる事で、ゲーム感覚で楽しみながら出来る事が分かった。このように当事者研究は、年代を問わず、楽しみながら、しかも真剣に話し合うための強力な手法であることが分かった。