日本吃音臨床研究会では、毎月「スタタリング・ナウ」と名付けた、ニュースレターを発行しています。
 この4月号で、248号になります。吃音と共に生きるのテーマで、よくここまで続いてきたと思います。幅広い領域から学んだこと、世界大会の話題や、どもる子どもや、どもる人、保護者やことばの教室の先生や、言語聴覚士の実践など、毎月掲載してきました。その特集に合わせて、僕が1面の巻頭言を書いています。

 その巻頭言も248回書いたことになります。
 「スタタリング・ナウ」の全ての内容は、年会費5000円で購読して下さっている多くの人たちのことを考えると掲載できませんが、一面の巻頭言だけでも、ときどき紹介していこうと思います。その時、どのように考えていたかも、書ければ書きたいと思います。

 日本吃音臨床研究会が活動を初めて記念すべき第一号が、小学校の時代から、どもることでいじめにあってきた青年の体験です。僕がインタビューしたものを掲載しました。今、それを読み返しても、からだが震えるほどの怒りをいじめた友達、教師に覚えます。このようなことは、今はないとは言い切れないと思います。この第一号からずっと、僕たちは「いじめ」への対応を考え続けて来ました。おいおい、お伝えしたいと思います。
 
 
   いじめは人殺しや


 「いじめは人殺しと同じや。僕は本当に何度死のうと思ったか分からへん」
 彼は今、死なずに生きている。しかし、頭痛、胃痛、不眠、目の前のちらつき、等様々な身体症状は消えない。
 どもりが原因で幼稚園の頃から辛い体験を繰り返した。それでも、どもりでいじめられないようにと、彼はスポーツや勉強に打ち込む。そして、ラクビー部でも勉強でも人一倍がんばり、人からも認められ、自信がつく。いい中学校のスタートを切ったかにみえた時、いじめが始まった。

 いじめられている子どもの味方にならなければならない教師が、反対にいじめの側にまわる。教師公認となったいじめは執拗に続き、彼の気力も体力も奪っていった。
 彼に、いじめられ体験を書いてくれるよう頼んだ時、この問題に決着をつけるためにも書きたいと言った。しかし、書き始めると、なかなか書けない。書くことで、辛く、嫌だった過去を思い出すからだ。思い出しては眠れない日が続く。「書こうとするけれど、書けません。聞いてもらえれば、話せると思います」

 伝えてあった原稿締め切り日の数日前に、彼から電話があった。私と向かい合い、マイクを前にして、彼は2時間近く話してくれた。その生々しい、いじめの実態に耳を傾け、怒りと、腹立たしさに、私のからだは震えた。

 彼は、昨夏の吃音親子サマーキャンプに参加し、程度は違っても、どもりのために、からかいやいじめを体験している同年代の子どもたちと出会った。また、かつてどもりに悩んだ経験をもち、現在はどもりながらも、教師やスピーチセラピストとして働く吃音の先輩と出会った。

 同じ悩みを持つ子ども、先輩との出会いの中で、自分自身を見つめた彼は、少しずつ元気が出始める。そして、高校を卒業したら、大学では教育か心理の方面に進みたいとの意欲をもち始めた。
 しかし、意欲はあっても、あまりにも体が弱っていた。何度も病院で検査を受ける。検査の数値上では異常はないが、頭痛、胃痛その他のからだの変調は相変わらず彼を苦しめる。

 通っていた高校で、彼に対するいじめがあるわけではないが、からだがついていかない。このまま、高校を卒業するまで、からだと気持ちをなんとかだましながら頑張れるだろうか? 彼は悩んだ。いろいろと話し合う中で、無理をして、からだに逆らってまで、学校にこだわる必要はないとの結論になり、彼は退学を決意する。大学に行きたいとの気持ちが堅かったため、自分のペースで学べ、大学受験の資格も得られる、通信制の高校に入学し直す事を考えた。両親も納得し、高校に退学届けを出した。その後、彼は高校に合格し、新しい道を歩み始めている。

 幼稚園の教師から、中学校の教師まで、彼は随分ひどい教師に受け持たれている。小学校1・2年の時の教師だけが彼を理解し、その時の彼は生き生きし、どもることへの悩みもなかったと言う。
 子どものころに教師から受ける影響は絶大だ。
 彼の小学校の教師の場合、どもりに対する、無知、無理解というより、教師そのものの適性が問われるべきだと言いたい。中学の暴力教師は、「僕は、子どものために指導しているんだ。子どもから嫌われる教師を目指す」とうそぶき、体罰教師として、反省することなく、教師の仕事を続けている。 このような、体罰で子どもを押さえつける教師が力を持つ学校は、学校そのものが、いじめを生み出す。暴力教師はもう、犯罪者だといえよう。
 彼のような暴力教師がいるかぎり、犠牲者は後を絶たない。この特集は怒りの告発でもある。

                         『スタタリングナウ 癸厩罅戞 。隠坑坑粥ィ供ィ

 日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2015/05/02