楽しかった3時間

 健康増進センター湯布院では、食事は1600キロカロリーの食事三食ついています。四人がけなので、誰か相席になるかで、話が弾む楽しい食事になります。昨年はTBS系列の福岡の放送局のプロデューサーで演出家であった半田明久ご夫妻と同席でした。東芝日曜劇場やドキュメンタリー番組の制作の裏話や、小津安二郎の映画の話題で、あっという間の二週間をすごしました。四年前は山口大学農学部教授で、天文学、農業、環境学の権威の、早川誠而ご夫妻と同席で、このときも、教育や、農業、環境問題などの話を聞いたり、僕の話をしたりし、楽しい時間が流れました。半田さん、早川さんは過去に同席したことがあり、昨年は三組の夫婦で、近くの隠れ家的な食事処でたのしく食事をしたのでした。帰ってから「吃音当事者研究」(金子書房)の僕の著書をお送りし、早川さんからはご自分の著書やいろんな資料を、半田さんからは、小津安二郎についての論考や、映画と音楽についての文章を送っていただき、またの再会を楽しみにしていました。

 そして、今年も半田さんと事務所に頼んで同席になり、二日遅れて早川さんもこられました。再会を喜び、また六人で食事処で食事をしました。互いのこれまでの仕事に敬意をもつ人との語り合いほど楽しいものはありません。現在の政治状況、環境問題、教育もんだいなど話題は多岐にわたり、大笑いしながらも真剣な、楽しい語らいです。半田さんは80歳、早川さんと僕は同年齢の70歳。それぞれがひとつの仕事を成し遂げた上に、さらに仕事を続けています。半田さんは、書家、画家としてカルチーセンターで3つも講座をもち、講演もされています。早川さんも「日本学術会議」の環境部会での活動や、シンポジウムやワークシヨップなどを主催しています。

 これまで誇りの持てる仕事をしてこられた人と、こうして対等に会話を楽しめるのは、僕も、僕にしかできない仕事を長年続けてきた、そしてこれからも続けるという自負があるからです。

 もし僕が、学童期・思春期、どもりにあれだけ悩むことなく、生きてきたら、今のこの充実した人生はないだろうとはっきりということができます。どもりに悩んできたから、そして「吃音を治す・改善する」にとどまらずに、「吃音と共に生きる」を45年以上追求してきたから広がった世界。幅広い、いろんなことに関心をもち、いろんな人との出会いの中で学んできたたくさんのこと。それが今、花開いているような気がしてなりません。

 六人が大きな声で笑いながら、それでいて、人として大切なことを、真剣に話ができるのはもこれまでの人生、それぞれの人生の中で、語ることばをみにつけてきたからです。こんなときにも、「どもりに感謝」している僕がいるのです。

 日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2014/12/30