吃音親子サマーキャンプの意義

 東京吃音ワークショップの中身の報告の前に、いろいろと考えることがありました。思いついたときに書かないと、忘れてしまいますので書きます。あまり前後関係を考えないようにします。お許し下さい。

 7年前に感動的な卒業式を経験した教師の経験がその後にも生きるには、前にも書きましたが、その体験を文章にして書く、誰かに語る、できれば多くの人に語る必要があったのです。

 吃音親子サマーキャンプは、語りの場です。90分、120分の話し合い、90分の作文の時間があります。子どもたちは、昨年の経験を語り、経験したことを聞き手がいる中で確認できます。さらに、90分の作文教室で、ひとり静かに自分の体験に向き合います。体験はしただけでは身につかないものだろうと、常に考えてきました。

 たとえば、ベーシック・エウンカウンター・グループやサイコドラマ、ゲシュタルトセラピーなど、毎月のように参加した時期がありました。一年に一度の出会いもありました。グループで自分の悩んでいることを語り、あるいは、ドラマにし、セラピーを受け、大いなる気づきがあり、この悩みはなんとか対処できるかに思えました。
 ところが、一年経過して、たまたま同じグループになることがあります。すると、昨年ある程度解決した、対処力がついて、楽に生きているかと思っていた人が、自分の悩みを語り始めると、「あれ、去年も同じようなことを話していた」という場合が少なくないのです。

 気づきはとても大切ですが、気づいただけ、体験しただけではだめなのだろうと思います。それを自己概念にまでからだにしみこませるには、体験を丁寧に吟味し、文章に書くなどする必要があります。あるいは、論理療法や認知行動療法などを使って、体験をきっちり整理し、自分の思考に組み込んでおくと、類似の問題が発生したとき生きるのです。私は、いつも、繰り返し同じような悩みを話す人に出会うと、せっかくいい経験をしたのにもったいなあと思います。

 小学4年生から参加していた、Uさんは、あまりどもらない方でしたが、高校3年生まで、吃音親子サマーキャンプに連続して参加していました。語り合い、作文に書き、生活の中での体験を、吃音親子サマーキャンプで振り返り、後付けしていたのでしょう。「もう、どもりはこれからの人生で欠点とはならないと思う」とさわやかに卒業していきました。
 ところが、大学2年生の頃から、かなりひとぐどもるるようになりました。本人はもちろんですが周りの人たちが本当にびっくりしました。私も彼女がキャンプにスタッフとして参加したとき、こんなに変わるものかと驚きました。ところが、彼女は過去のあまりどもっていない状態を知っている、吃音親子サマーキャンプにスタッフとして参加したぐらいですから、そのことを受け止めていたのです。案の定「どうしたの?」とみんなから聞かれていましたが、どもりながら丁寧に答えていました。
 
 彼女の自己概念にしっかりと「吃音と共に生きる」がしみこんでいたからだと私は解釈しました。「どもりを治す・改善する」を目標にしていたら、これほどどもり始めたら、かなり落ち込み、気力もなくなるかもしれません。
 今は、かなりどもっているが、またそのうちなんとかなるだろう。もし、このままでも大丈夫とかんがえたのかもしれません。これは、すごいことだと思いました。

 体験は、そのまま放置していたら、体には組み込まれないと強く思いました。

 日本吃音臨床研究会のホームページに、昨年の吃音親子サマーキャンプの報告が、やっと完結しました。ホームページ制作スタッフが写真をふんだんに使い、素敵な文章で紹介してくれています。
 ちょつと遅くなりましたが、忙しい仕事の合間の作業です。夏のキャンプが冬の公開になりましたが、是非見て下さい、読んで下さい。今回の話題に関連づけて読んでいただくとありがたいです。

 このホームページ、関心のある人にも是非ご紹介下さい。よろしくお願いします。

 日本吃音臨床研究会 伊藤伸二  2013/01/22