2011年2月26日 心の健康セミナーで話してきました。
 
 (財)メンタルヘルス岡本記念財団の主催する「こころの健康セミナー」で話しました。

 私の前にお話になったのが、黒川内科医院院長・黒川心理研究所所長の黒川順夫先生です。
 「対人恐怖は、自分の症状を人に告白できれば全治する」は、症状が再発しても後戻りできないために、人に告白するのだする考え方は新鮮でした。自分を追い込んでいく厳しさを感じました。森田療法の思想は、症状が残っていても日常生活に支障なく、上手く付き合えるようになれば「治った」、「全治」であるです。一般に考えている「全治」とは違うことが改めて理解できました。

 私も著書や友人の話からよく知っている、水谷啓二先生の啓心寮での生活のお話は、楽しそうにいきいきと話され、私が入った東京正生学院の生活とよく似ていて、懐かしいもののように思いました。その対人恐怖、赤面症の悩みのお話は、吃音にとてもよくにていて、つくづく、対人恐怖や神経症は吃音と親戚だと思いました。
 50歳になってようやく、対人恐怖で悩みや、森田療法の取り組んだ過去の体験を人に話されたということを、正直に誠実に話されるのがとても印象的でした。
 
 黒川先生のお話の後、すぐに私の紹介があったのですが、トイレに行くたくなって、講師から「すみません、ちょっとオトイレに行かせて下さい。ちょっと待って下さい」と言う、なんともしまらないことで、講師がいないのですから、結局休憩時間になりました。

 さて、私の話ですが、どんなに深く吃音で悩んできたかを、歌と、ジェームス・ディーンの映画「エデンの東」の紹介から入りました。いきなり私が歌を歌ったので、おそらくみなさんびっくりされたことでしょう。スタッフのみんさんとの夕食会で、講演会での歌は始めて聞きましたと話しておられました。
 
 「悩みの中から掴んだ生きる力 吃音は創造の病」が私のテーマでした。

 大阪スタタリングプロジェクトの会長・東野晃之さんが、私たちのグループのメーリングリストに流して下さったものをそのまま紹介します。
 
 −いつもレジメどおりでなく、臨機応変に伝えたいことを話す講座スタイルがいいです。講演内容の大よそは、大阪吃音教室などで繰り返し聞いた話ではありますが、マンネリにならないのはこのスタイルにあり、また伊藤さん自身が様々な経験で日々変化しているからでしょう。宮城まりこの「ガード下の靴磨き」の歌、何度聴いても
ジンとくる歌です。どもりが治ってからの姿を夢みて、どもりの殻に閉じこもっていたとき、吃っている現実の自分には、未来を想像することが、未来を想像することができなかった。どもりを憎み、嫌悪し、治ることを夢見るこ
とで心の均衡を保ってきたのかも知れない。
 なぜ、治すのではなく、吃る事実を認め、どもりとつき合うのか、吃音に悩んできた自分の半生を語り、その経験知からの話しには説得力がありました。どもりを全く知らない人にも、その苦しさや対人関係上におこる悩みの核心は伝わったのではと思いました。
 「吃音は、創造の病である」。講演の冒頭で話されましたが、全ての話を聞き終わって私にはそのことがわかりました。悩みのとらわれから解放され、人が変わっていく過程そのものが、創造的な姿だと思えるからです。また自分の変化だけでなく、吃る人のセルフヘルプグループを創り、世界で初めての国際大会を開催し、他者貢献をしてきた伊藤さんの体験を聞くと、吃音は創造の病だったことがわかります。吃る人のなかに、小説家や学術研究者、芸術家など創造的な世界で活躍する人が多いのも吃音が創造力を秘めているからでしょう。いつもの大阪吃音教室とは違う、吃音の伝道師のような伊藤さんの姿を見たようでした−

 いつも聞いている話なのに、14名もの仲間が聞きにきて下さったこと、心強い応援でした。仲間の支えで、みんなさんの代わりに、大阪吃音教室の実践を話しているような感じでした。 
 この後、東野さんたちは、その日公開の「英国王のスピーチ」にみんなで観にいきました。

 2011年2月27日 日本吃音臨床研究会 伊藤伸二