仲間がいるから
 
「金沢こころの電話」の関係は今回が最後です。
 「金沢こころの電話」では電話相談だけでなく、調査活動もしています。石川県内で実施した街頭調査で、自殺願望を抱いたことがある人が3人に1人に上ることが分かり、その理由として、若年層は自信のなさ、中高年は孤立感が目立ちました。自殺に傾く心情は年代によって違いがみられ、「年代別の自殺防止策が必要」と指摘し、7月に福岡市で開かれる日本電話相談学会で発表するそうです。
 一年間に「もう生きていたくないと思ったことがある」と答えた人は36%で、
2008年の国の全国調査の19%のほぼ倍。年代別では、男性は、40代50代が38%台と中高年が高く、逆に女性は10代と20代が46〜47%と若年層が多かったと報告しています。

 その結果から、こころの電話は「自殺を考えたことがある人の割合は予想以上」として対策が必要と判断し、深刻な悩みを受けた際に相談者の元へ向かう緊急援助を強化したり、相談の24時間対応やカウンセラー増員を検討するとしています。
 こころの電話の山内ミハル会長は「まじめな人ほど生きづらい時代になっている。心に寄り添う支援をしていきたい」と話しています。
 このような資料をみせていただき、全体研修会で講演をしました。その後で、中心的に活動する役員との懇親会がありました。15名ほどが参加していたでしょうか。その席で、「なぜ、こんな大変な仕事をやっているのか」とひとりひとりに話してもらいました。1期生から20期生以上の人まで、さまざまでしたが、みんなが口をそろえて言ったのは、「仲間がいるから」「日常的に困ったときに、相談もできるし、世話人になっているから、こんな懇親会に参加するという特権もある」「同期生がいるから」などと話していました。

 自殺したいと、切羽詰まってかけてくる電話ですから、ひとりで背負ったら大変です。ベテランも、話が重いのでなかなか頭から離れないと言っておられました。自分自身もしんどくなるのです。そんな時、仲間の力がとても大きいのだと思います。
 こころの電話に参加した動機がそれぞれに違うのはあたりまえですが、共通することとし、心理学、臨床心理学を学びたかったというのがありました。一般市民が心理学の勉強をする機会はそうそうありません。無料なのかどうかは聞き忘れましたが、とにかく、向学心がベースにあり、当初は、電話相談の担当になるつもりはなかったという人が、意外に多かったのには驚きました。同期の仲間がし始めたから、先輩からすすめられて、電話当番のローテーションに入ったそうですが、仲間の力で続けられていると、全員が口を揃えて強調していたのは、私もセルフヘルプグループの活動で経験していることなので、とても頷けることでした。

 あっという間に楽しい2時間ほどの懇親会は終わりましたが、大変な仕事を仲間と共に、苦しくても、楽しく続けている人達と出会えて、幸せな気持ちで、金沢の繁華街の香林坊へ、一人で歩いて出かけました。金沢はやはり好きな町です。

          2010年4月13日  日本吃音臨床研究会 伊藤伸二