2008年7月12日13日

 「ありがとうございます」が言えない

 第6回目になる今年のワークシヨップ。遠くは沖縄からの参加がありました。関東地方の人が中心ですが、大阪からも参加。今年は新しい人が4人。複数回参加する人と、新しく参加する人のバランスのいいのがこのワークシヨップの特徴です。
 いつものことなのですが、今吃音に関して知りたいこと、自分の解決したい問題について出していただき、みんなで考え合うというのが一つの基本スタイルです。
 その中のひとつ。コンビニを経営している人が、「ありがとうございました。またお越し下さい」が吃っていえない。どうしたらいいかというものです。
 接客用語や、職場での挨拶「おはようございます」「お先に失礼します」などで吃るために困っている人はとても多いようです。これらがいつでも、スラスラといえたら、その人は「どもり」ではありませんね。
 どもり・吃音とは、このような誰でもが、何の苦労もなくできていることができないのことなのです。私もねカレー専門店を経営していた時、「ありがとうございました」がいえませんでした。「おおきに」と関西弁で言ったり工夫をしました。

 伊藤伸二が提唱する「吃音サバイバル」とは、どんな手を使っても「生き延びる」ということですが、そのためには何が必要でしょうか。
 「吃音は治る・改善できる」ということをまず諦めることです。その上で何ができるか考える。できるだけ「ありがとうございます」が言えないときの選択肢をもつことです。この人の場合、経営者として、他の人の模範を示さなければならないのに、接客用語の基本ができないことに困っています。模範を示すには他のことでもできます。正直に自分が吃音であることを全従業員に話すことがまず必要です。そうしないと。えらそうなことを言っている店長ができないじゃないかとなってしまいます。
 できないことはできないのです。「ありがとうが言えない」どうしたらいいか、従業員と相談すればいいのです。
 おもしろいアイディアがでてくるかもしれません。できないことはできないと正直にいう店長を従業員は決してばかにすることはないでしょう。むしろ、親しみをもつこででしょう。

 クリアーに、明瞭に「ありがとうございます」をいわなければならないとの考え方を捨てることがまず大事です。どんなにクリアーに発音ができたとしても、感謝の気持ちがなければ伝わりません。マクドナルドやミスタードーナツなどで、多くの人が経験していることでしょう。ただ「音」を出しているだけです。マニアルにあるからではなく、本当に「ありがとうございました。またお越し下さい」の気持ちがあるのなら、どんな言い方でも伝わります。
 
 1 「あ」がでなければ、「・りがとうございます」「・・・とうございます」などと言っても、相手には感謝の気持ちがあれば伝わります。
 2 どうしてもいえないときは、プラカード」や「カード」に書いておき、それを見せてにっこり笑う。
 3 どうしてもでないときだけ「サンキューカード」をだす。不思議がられたら、吃るからいえないのだと話してもいいし、カードに書いておく。そのカードが10枚たまれば、景品をもらえる。そのようにすると、カードをもらった人はラッキーです。評判を呼んで集客につながるかもしれません。
 4 思い切り吃って「あああありがとうございます」と大きな声で言う。このコンビニの店長はすごく吃る人だと地域の人に知らせる。吃りながら、頑張っている姿を見せることは地域社会に何か新しい風がふくかもしれない。

 こんなことを話し合いました。
 「ありがとうございます」がいえない。だから私はダメな人間だではなく、ーありがとうがいえない、だから私は・・・・」はいくつもの選択肢があるのです。

 このようなことが実際にはできないと考えている人は、どもりは治る、改善できるという幻想をいつまでも持ち続けているからです。
 「どもりは治せない」と本当に諦めたら、何だって出来るのです。

 今回は、「どもりが治らない・改善できない」までも、力の入った押しつぶしたような声の出し方ではなく、少しでも楽に「声」がでるようにと少しだけレッスンをしました。日本語のレッスンについて話をし、歌を歌い、お芝居のセリフを読みました。
 
 初めて参加した人のひとりは、「伊藤伸二さんは、どもりは治らないと言っているのだから、言語訓練のようなことは、一切しないのだろうと思っていたので、びっくりした」と感想を言っていました。
 実は、大阪スタタリングプロジェクトや、吃音親子サマーキャンプなとで、私たちは、「どもりを治す」ためではなく、日本語を豊に話すための言語訓練はとても熱心にしているのです。よく誤解されるところです。
 
 次回のワークショップでは、ことばのレッスンを中心にしてもいいなあと思いました。      伊藤伸二