吃音親子サマーキャンプの場の力 2
  「自分を語ることば」が育つ


『児童心理』4回連載の2回目を紹介します。

吃音親子サマーキャンプの場の力 「自分を語ることばが育つ」
                      日本吃音臨床研究会 伊藤伸二

子どもの語りを支える

 「嫌だったどもりについて話すことが、こんなに楽しいとは思わなかった」とキャンプに参加した高校生がよく言う。安心して話せ、聞いてもらえる場では、子どもたちは実によく話す。90分間、子どもたちが話し合いに集中することに、初めて参加したことばの教室の教師はまず驚く。子どもたちは、気持ちの分かち合いでほっとし、情報の分かち合いで学校での吃音への対処のコツを学び、価値観の分かち合いで「どもっても大丈夫」を自分のものとしていく。


話し合い中1年
・笑われて、泣いちゃった(小学1年)
・音読でどもった後、休み時間に「アイウエオ、と言ってみな」と言われて悔しかった(小学2年)
・どもるのは僕だけではないとわかってほっとした(小学3年)
・からかわれたら、「それがどうした」と言い返す(小学3年)
・「どもりをかわかわないで」と、キャンプの後、校長先生に頼んで、全校生徒の前で話した(小学3年)
・健康観察で「片山ひでき、元気です」の「か」が言えないときは「か」を飛ばしているよ。(小学4年)
・「神様が百分の一の人にどもりをプレゼントして、僕たちは、そのプレゼントに当選した人だと思ったらいいよ」とK君が言ってくれて、すごく心に響きました。(小学5年)

 キャンプでの話し合いが豊かに機能するために次の要素がある。

.侫.轡螢董璽拭爾量魍筺〇劼匹發燭舛世韻任力辰傾腓い脇颪靴ぁことばの教室の教師や言語聴覚士などの専門家と、成人のどもる人が入る。質問し、整理し、深めるために、専門的な知識や、成人の体験が役に立つ。
∧数回参加の子どもの役割 初めて参加する子どもは、複数回参加している子どもの聞く態度、話し方、話す内容をいいモデルにしている。この伝統が引き継がれている。
B慮海鯤絃呂膨屬襦]辰傾腓い両譴任良集修篭貅蠅世、ひとりで向き合い体験を綴る場では自分を表現できる子がいる。この時間を挟むことが、2回目の話し合いで生きる。
は辰江譴旅渋げ宗〜或兇蠅里燭瓩離押璽爐篁談などはなく、「ここは、吃音について話す場」だと明確に伝え、話し合いに集中する。

宮城県女川町から参加したAさん
 
 小学6年生の新学期、転校生ら3人からひどいいじめを受けたAさんは学校へ行けなくなり、8月末のキャンプに参加した。初日の話し合いで彼女は、学校へ行けない悔しさを泣きながら話した。話し合いに慣れている子どもたちは、彼女にどんどん質問をしていく。質問に答えながら、彼女は体験を整理できたようで、修了間近に男子が言った、「Aさんはすごいと思う。自分を変えたいと思うから、遠い所からキャンプに参加したんだね」で、笑顔が出て、話し合いは終わった。キャンプが終わってすぐに彼女は学校へ行きだした。中学校も楽しく過ごし、高校入学が決まっていた2011年3月11日、大津波で彼女は母親と共に亡くなった。1回目の話し合いを終え、翌朝90分の体験を綴る時間に彼女が書いた作文は私の宝物だ。彼女を忘れずに伝えていくことが私の使命だと考えている。

 「学校でどもると、『早くしてよ』と言われ、とてもこどくに思えました。でも、サマーキャンプはみんな私と同じで、ひとりじゃないんだと思いました。夕食後、同じ学年の人と話し合いがありました。みんな、前向きにがんばってるのに私はどもりのことをひきずって、全然前向きに考えてなかった。キャンプで、どもりは私にとって大事なものなんだ、どもりを私のとくちょうにしちゃえばいいんだと思いました。今日、朝起きたときは、気持ちが楽でした。まだサマーキャンプは始まったばかりだと思うけど、とても学校などでしゃべれる自信がつきました」
(伊藤伸二『両親指導の手引き書41 吃音とともに豊かに生きる』全国ことばを育む会 2013年 32ページ)

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2019/7/15