第17回 吃音キャンプOKAYAMA PART4
僕の吃音の失敗を繰り返さないでほしい


友浦 次の質問です。どもりと上手につきあうために、一番大切なことって何ですか。
伊藤 つきあうには、つきあう相手のことを知らないとつきあえないね。この人と友だちになりたいなあと思っても、その人を知らないと、どういう人か分からないと、とてもつきあえない。だから、つきあう相手、どもりについてしっかりと勉強することだね。みんなは学校で、国語、算数、理科、社会など教科を勉強しているね。それと同じように、吃音について勉強する。「吃音科」として、どもりについてしっかりと勉強することがひとつ。もうひとつは、友だちや家族など、自分じゃない別の人、他人のことに敬意を表す、その人のことを認めること。嫌な人間だとしても、からかったり、なんでこんなしゃべり方するのと言ってきたりする人だとしても、その人にも、きっといいところがある。相手のいいところを探したり、その人のがんばっているところを認めて、その人を信頼する。それが一番かなあ。僕は、小中高と、他人が信頼できなかった。だから、学校の友だちや先生はみんな敵だと思っていた。そんな敵だらけの学校の中では、どもって話すことはできない。嫌な奴も中にはいるけれども、全体としては、ちゃんと僕のことを見てくれているし、僕はこの社会に生きているんだという感覚を持つこと。そうでないと、どもりとは上手につきあえないなあと思います。
友浦 2つの大事なことがあったよね。1つ目は、吃音のことをよく勉強すること。2つ目は、人のいいところをみつけること。できそうだよね。
伊藤 きっといいところがあるから。自分にもいいところがあるし、相手にもいいところがあるよ。
岡山キャンプ 伸二と子どもたち後ろ姿
友浦 じゃ、最後に、ここにいる子どもたちに、メッセージをお願いします。
伊藤 一週間前に、「ヒロシマ」という原爆の映画を見ました。昔の映画です。原爆が落とされて、5年後か6年後にできた映画です。広島公園の記念碑に、「安らかに眠って下さい。過ちは繰り返しませんから」という文章が書いてある。僕は、どうしても吃音とくっつけてしまうんだけど、僕は、どもることは悪いことで、どもっている自分はだめなんだと思って、勉強も、友だちとの関係も避け、学校の役割もできるだけしなくて、楽しくない生活をしてきた。ものすごく失敗したなと思う。ちゃんとどもりを認めて、ちゃんとしゃべっていったら、そして勉強もしていけば、楽しい小学校時代、中学校時代、高校時代が送れたんじゃないかと思います。みんなには、僕がしてきた失敗はしてほしくないと思います。その失敗の一番は、「どもりは悪いもので劣ったもの、治さなければならないもの」と考える考え方です。その考え方をぜひ変えて、どもりながらでも、自分のしたいことはする、できるんだと思ってほしい。僕の失敗を、僕の過ちを繰り返してほしくないという思いがあるから、いまだにこうして一生懸命、しゃべっています。
 どうしてこんなに一生懸命にならないといけないのかと、自分でも思います。今回も、パワーポイントの準備をしました。結局は、それをうまく使いきれなかったけれど、一生懸命努力はする。それは、みんなに僕のしてきた失敗をくり返してほしくないからです。吃音についてどう思うかと聞かれたら、「後悔」ということばが一番当てはまる。何か行動をして失敗して後悔するならいいんだけど、何もしないで、どうせ僕はだめだと、行動しないうちから諦めていた。どもっていても、したいと思ったことは、してみたらよかったと思う。そういう後悔を、みんなにはしてほしくないなあと思います。戦争の過ち、戦争の失敗を繰り返さないようにと同じで、僕のしてきた失敗を子どもたちには繰り返して欲しくないと強く思います。
友浦 ありがとうございます。みんな、今日は、伊藤さんからいっぱいお話が聞けてよかったね。みんなでお礼を言おう。
こどもたち ありがとうございました。
伊藤 僕も、聞いてもらって、ありがとうございました。
子ども いえいえ。

子どもたちからの質問に答えていると、いろんなことが思い出されます。初めて参加する子どもたちも多かったのですが、楽しいやりとりの時間になりました。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2019/11/3